【GG】Other

「なんでそうなったの?」
「知らねえ。急に生えてきたんだよ」
「急に生えてきた」

 真夜中の歓楽街を抜けた先。数多く立ち並ぶラブホテルの中でも特に目を引く大きな建物の一室。
 ケイオスの目の前に立つイノの股間には、本来ならばあり得ないーーある筈の無い、ご立派なイチモツがそそり勃っていた。太い。長い。そしてでかい。これが俗に言うビッグマグナムというものか。自らのモノでさえそう見る機会が無いケイオスにとって、他人のーーそれも女性の下半身から生えているーー男性器は非常に珍しい、新鮮なものだった。
 ことの始まりは一時間ほど前。特に目的もなく歓楽街をぶらついていたケイオスの前に、突然イノが現れた。そしてケイオスの姿を見るなりイノはその首根っこを引っ掴み、有無を言わさず近くにあったラブホテルへと連れ込んだ。建物は古いが掃除は行き届いているらしく、清潔感がある。そんなホテルのフロントで鍵を受け取り、最上階の部屋に二人で入って扉を閉めた後に、イノはケイオスの目の前で自らのホットパンツを脱ぎ、そのブツを見せてきた。ぽろんなんて可愛いものではない。ボロンと出てきたそれは既に固く勃起し、先端からは透明な液体が少量だが溢れ出ている。
 何でそうなったのかとケイオスが聞けば、イノは両手を顔の高さまで上げながら首を横に振り、何の前触れもなく生えてきたのだと告げた。シンプルでど直球。常識の通じる人間ならば信じられないとんでも発言。常識の通じないケイオスですら信じがたく、思わずその言葉を反芻した。
 
「まあ……何だ、バグみたいなヤツじゃねえかと思うんだが」
「あー……うん、バグ。そうだね。それが一番しっくりくる説明になるかな」
  
 イノはバックヤードから生まれたーー基切り離された特異な存在だ。その為、何かしらのバグが生じたとしても何ら不思議ではない。もっとも、それは彼女の半身であるケイオスだからこそそう思える事なのだが。

「それで、どうすれば元に戻るの? 僕としては、そのままでも面白いと思うんだけど」
「殺すぞ」
「冗談だよ」

 本当に冗談なのか分からないケイオスの発言に、イノはぎろりと彼を睨み付ける。普通の人間ならばその威圧的な姿と滲み出る殺気に震え、気の弱い者なら恐怖で泣き出してしまうかもしれない。しかしケイオスはおどけたように肩を竦め、謝罪のつもりなのか舌を軽く出して笑って見せた。
 
「多分、一発抜けば戻る気がする」
「なら自分ですれば?」
「はあ? 折角ご立派様が付いてんだ。ヤるに決まってんだろ」

 確かにご立派様だ。明らかにケイオスのものよりも大きい。それがギンギンになっているのだから、自分で致して終わらせるのは勿体ないーーのかもしれない。
 
「でも僕で良いの?」
「そりゃあ他にも考えたさ。あの澄まし顔のブロンド女とか、爆乳ジャパニーズとか。でもアイツ等の周りは面倒な奴ばっかりだから止めた」

 澄まし顔のブロンド女というのは終戦管理局の局長か。爆乳ジャパニーズは恐らく隻眼隻腕の女侍だろう。確かにイノの言う通り、彼女たちの周囲には厄介な男たちがいる。ただでさえややこしい事態が益々ややこしくなるのが目に見えている。

「乳臭いガキなんざ論外だし、ヴァレンタインの奴らもヤる気にならねえ」
「あー……うん、そういう事なら付き合うけどさ。君も物好きだね」

 消去法で仕方がなかったとは言え、男を掘る趣味があるとは。否、彼女なら可能性がないとも限らない。ただその対象が自分であることに、ケイオスは何とも言えない表情で言葉を返す。セックスなんて、何時ぶりだろうか。少なくとも今の姿になってからは経験が無い。イノの半身と融合する前だって、研究に夢中でほとんどする機会がなかった。更に言えば、自らが受け入れる立場になる事もなかった。しかも相手は男性器を持った女性だ。物凄い初体験。完全なる未知の世界。奇妙な話だが、恐怖よりも、どんな感じなのだろうかという好奇心が勝った。
 
「分かったならさっさとケツ慣らせよ」
「え、僕がやるの?」
「何でアタシがテメエのケツを慣らさなきゃならねえの? ……ほら、そこのローション使えよ」

 そう言ってイノはベッドのサイドテーブルに置かれている、いかにもなピンク色の瓶を親指で指す。この手のホテルには良くある潤滑剤ーーローションだ。

「うーん、まあ……仕方ないか」

 言われるままケイオスは瓶を手に取り、下半身の衣服を脱ぎ捨てて四つん這いの体勢を取る。足を開き、ローションを手に垂らすと自らの秘部にそれを持って行った。当然だが、本来ならば排泄器官の役目を持つそこは固く閉ざされており、イノを受け入れられる状態まで解すのは時間が掛かりそうだ。

「へえ、本当にホクロあるんだ」
「……あんまり、見ないで欲しい……なあ」

 何時だったか、イノに自分の尻にはホクロがあると言った事がある。まさかこの場でそれを証明することになるとは思わなかったが。
 最初はくにくにとマッサージをする様に入り口付近を擦り、それから試しに人差し指の先端を押し込んでみる。それが難なく入れば、更にその状態で緊張を解そうと円を描く様に指を動かす。 排泄器官と言っても、ケイオスが今の姿になってから本来の用途で使われた事は一度もない。
 
「はっ……、ふぅ……」
「感じてんのか? テメエで弄ってんのに」

 慣れてきたら中指も挿入し、更に入り口を広げようと動かしていく。最初は傷つけないように繊細に。けれど余り時間を掛けるわけにも行かない為、徐々に大胆に中で指を別々に動かす。更に薬指も入れ、ぐちぐちと音を立てながら慣らして行くと、無意識の内に熱を持った吐息が漏れた。それを見逃さず、イノはケイオスを見下ろした状態でせせら笑う。
 
「……もう良い、かな?」

 ず、と指を引き抜き、外部の青ざめた皮膚とは対象的なピンク色の内壁が見える秘部をイノに晒す。

「ケツもっと高く上げな」 
 
 それを見たイノも十分だと思ったのか小さく頷き、ケイオスの背後に回ると自らが挿入しやすいようにしろとばかりにその臀部をぺちぺちと軽く叩く。ケイオスは言われるまま上半身を床の方に沈め、イノの方に臀部を突き出す体勢になった。
 
「出来れば優しくして欲しいんだけど」
「あ? そんなの知るかよ。精々良い声で鳴きな」

 ダメ元で聞いてみたが、やはり駄目だった。ケイオスの申し出をイノは無慈悲に却下し、彼の腰部分を片手で掴むともう片方の手で自らの性器をケイオスの秘部に狙いを定め、一気に押し込んだ。
 
「んェッ……!?」

 ずん、と。想像以上の圧迫感にケイオスは思わず両目を見開く。痛覚は元より無かったが、息が詰まるような感覚に思わず声が出た。本来ならば排泄気管である出口ーー今は入り口ーー故に、しっかり解さねばなるまいと。それなりに時間をかけ、十分に慣らしたと思った。それでも、足りなかったのか。みちみちと内壁を押し広げ、侵入してくるイノのそれにケイオスは驚き、自分たちの下に敷かれている絨毯を強く握り締めた。

「っは、キッツ……!」

 イノもまた、自身の性器を根本まで押し込んだ所で中のきつさに息を吐く。大分強引に突っ込んだが、何とか裂けずに挿入できた。内壁の締め付けは程よいを通り越して大分キツい。それでも、動いている内に慣れて行くと思ったのか。イノは両手でケイオスの腰を掴むと、容赦なく律動を始めた。
 
「ちょ、いきなり……ッ、動きすぎっ……!」

 イノの心に優しさや慈悲なんてものは存在しない。それは半身であるケイオス自身良く知っている。それでも、多少の手心があってもと。淡い期待は見事に打ち砕かれ、開幕から激しく責め立ててくるイノにケイオスは悲鳴染みた声を上げた。ただでさえ性器の圧迫感で息が詰まりそうなのに、更にそれが中で暴れ、ごりごりと擦って来るのだ。初めての感覚に戸惑い、余裕が持てない。万能の存在の半身と融合し、世界のあらゆる知識を吸収してきた身であるが、ここに来て未知との遭遇。本来ならば好奇心に心躍るところなのだが、はっきり言って今はそれどころではない。
 
「あっ……ああ゛ッ、ひ……ーー!」

 ローションで潤った部分から腰を打ち付けられる度に聞こえる、湿った音と乾いた音。あのローションには媚薬成分でも入っていたのだろうか。明らかな熱をその部位に感じ、快楽へと変換される。内壁を擦られる度にぞくぞくと、悪寒にも似た感覚が背筋を這い上がって行く。圧迫感の中にも、確かな快楽を感じ、奥を突かれる度にケイオスは声を上げ、絨毯を握る手に力を込めた。

「んだよ、初めてにしちゃ随分感じてんじゃねえか。やらしいケツマンコだ、なぁっ……!?」
「ひぎィっ!?」

 ケイオスの喘ぐ姿に興奮したのか、イノは下品な言葉を敢えて選び、笑いながら彼を罵る。初体験にしては、随分といやらしく自身を咥え込んでいる。それこそ、男を受け入れる女性器の様な締め付け。そっちの素質があるのではないかと思いつつ、片手でケイオスの臀部を思い切り叩いた。いわゆる、スパンキング。予想だにしなかった臀部への痛みにケイオスは両目を見開き、男にしては甲高い悲鳴を上げ、上体を仰け反らせた。
 
「ははっ、締め付け良くなったじゃねえか。テメエ、マゾ気質だったのか?」
「そん、なこと……っ、ないとおもーーッ、んあ゛あ!」

 叩いた衝撃なのか、内部の締め付けが一段と強くなった。被虐嗜好があるのかと訊ねれば、当然ながら否定の言葉が返ってくる。その反応がイノの嗜虐心を擽り、何度もスパンキングを繰り返しながら最奥を犯した。
 
「はっはは! 違うって言う割にそのちんこは素直だなァ!? おらもっと鳴けよこの変態野郎がよぉ!」
「ひ、ひぐぅ……ッ! んああ゛っ! うあ、ぶたな……っでェ!」

 上体を横に傾け、ケイオスの股間部分を覗き込めば、彼の性器は犯される側であるにも関わらず質量を持ち、勃ち上がっていた。普通の人間にはない、青ざめた肌。それは性器も例外ではなく、更に血液ーー彼の場合は体液と言った方が適切だろうかーーが充満したことによりグロテスクな色合いとなってそそり立っていた。先端からは先走り汁が溢れ、ぽたぽたと下の絨毯に落ちている。
 
 「あっ、あァ……ッ! も、むりっ……イく……イぐぅう……!」

 その素質があるのか。あるいは慣らした時に使ったローションに含まれていた成分がそうしているのか。尻穴を犯され、臀部をぶたれ、視界には星がちらつく。このまま絶頂を迎えれば男として色々残念な結果になりそうだが、それでもケイオスは達したいと思った。

「ああ、イッちまえよ。テメエの中にッ、たっぷり……出してやるからよォ……!」

 イノ自身も限界を感じているのか。眼下のケイオスに堂々と中出し宣言をし、ラストスパートだとばかりに激しく突き上げ、最後に身体を密着させ、ぶるりと身を震わせる。
 
 「あ"あァあああっ……あ、あ"あぅ……ッ、り、リアリテイイいいィーーーーッ!」
「フォルテッシモぉオーーーーーーーーぅ!」

 内部に熱く濃厚な白濁が吐き出された瞬間、ケイオスは全身を痙攣させながら絶叫し、絶頂に達した。

 
 
「まさか本当に戻るとは思わなかった」

 事後。
 テンションがハイになったイノに滅茶苦茶に犯されたことにより疲弊し、絨毯の上でぐったりとしているケイオスは、男性器の消えたイノの姿を見ながらぼやくように言った。
 
「アタシも最初はどうなるかと思った」

 ケイオスより先に身なりを整えたイノは、ご立派様がいなくなった恥骨部分を軽く擦る。流石にあの状態で街中を歩くのは大問題だ。元々歩く十八禁などと言われているが、そこにご立派様が付けば最早歩く公然猥褻罪だ。警察や治安部隊が飛んでくるだろう。

 「もうならないと良いね」
「そう? アタシはまたなっても良いけど? ……アンタの中、悪くなかったし」

 一発致せば戻るなら、たまになるのも悪くないかもしれないと。イノは心底楽しかったと言うように笑う。

「…………丁重にお断りさせてもらうよ」 

 癖になると困るから。そう言いかけて、ケイオスは自らの自尊心の為にその言葉を飲み込んだ。
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