【GG】Johnny✕Testament
「ハッピーバースデー!」
その人物は午後のティータイムに突然現れた。
「……ッ、何故貴方がここに!?」
「どうした、知り合いか?」
テスタメントが予想外の人物の登場に驚き、口に含んだ紅茶を吹きかける。同席していたジョニーはと言うと、テスタメントの動揺の仕方にサングラスの奥の瞳を軽く見開いた。
「知り合い、と言うか何というか……」
「つれないなあ、一緒にお茶した仲じゃん」
言葉を濁そうとするテスタメントに、その人物は随分とフランクに絡む。ばんばんとテスタメントの肩を叩き、空いている椅子が有るのを良い事にテスタメントの隣にどかっと腰かける。無遠慮な姿に、テスタメントの向かいに座るジョニーは僅かに眉を寄せた。
「お茶した仲っつぅ割には、お前さんあんまり好かれている様には見えないねえ」
「うーん、照れ隠しじゃない?」
「そ……れは、ない」
危うく置いてけぼりで話を進められそうになり、テスタメントは噎せながらその人物に突っ込みを入れる。
「確かに貴方とは……一緒にお茶をした。だがそれだけだ」
「それだけ? 十分だよ。君に会いに来る理由としてはね」
にぃ、と笑いながらその人物はテスタメントに小さな包みを差し出した。
「はい、誕生日のプレゼント」
「……私に?」
片手に乗る位のサイズ。赤い包装紙に、ピンクのリボン。確かにプレゼントらしい物体であるが、突然出されたそれに、テスタメントは首を傾げる。
「ちょっと待て、お前さん今日が誕生日なのか?」
「……え、まさか教えてないの?」
その人物が口にした言葉に対し、ジョニーは初耳だとばかりにテスタメントに訊ねる。ジョニーの反応が予想外だったのか、今度はその人物が驚いた様にサングラスの奥の瞳を瞬かせた。
「……教えていない、というか忘れていた」
「忘れてたって……」
そりゃあないじゃないのと、ジョニーの胸の内に何とも言えないもやもやした気持ちが湧き上がる。
「ふぅん、恋人相手に冷たいね?」
「……は? ま、待ってくれ。その、恋人って……」
「気付かないと思った?」
「いや、う……う、んんん……まあ、その…………」
その人物はテスタメントの焦った様子に笑みを深め、差し出した包みを押し付ける様にしてテスタメントに持たせた。
「大したモノじゃないけど、貰ってくれると嬉しいな。それじゃ」
そう言ってその人物は、テーブルの上にあるマカロンを幾つか掴み取り、椅子から立ち上がって去って行った。
「……テスタメント」
残された二人の間に、気まずい沈黙が落ちる。
「忘れていた、と言うのは」
「違う、そうじゃないんだ」
ジョニーの言葉を遮る様に、テスタメントは上ずった声で言う。
「お前に教えるのを忘れていたんじゃない。自分の誕生日そのものを、忘れていたんだ」
「……そんな事」
あり得ないだろう、と。そう言おうとして、ジョニーは言葉を飲み込んだ。
「ギアになる前は、父が祝ってくれていた。父はどんなに忙しくても、私の誕生日を忘れず毎年祝ってくれた。その日が来るのがとても楽しみだったよ。だが、ギアに改造されてからは、誕生日を祝ってもらった事なんてない。 ……だから、忘れていた」
「…………」
もう何十年も前の話だ。ギアとして殺戮の日々を送る内に、自分の年齢を数える事はやめていた。
兵器の誕生日を祝う者など、居るはずがない。そう思っていたのだ。それこそ、今日の今日まで。先程あの人物に、祝いの言葉を言われるまで。
「……悪い」
「お前が謝ることじゃない」
恋人なのに、誕生日を教えるのを忘れられていたと、一瞬でも勘違いしてしまった事をジョニーは恥じ、素直に謝罪した。それに対しテスタメントは首を振り、自分こそ悪かったとばかりに瞳を伏せる。
「……まあ、きっかけはアレだが、お前さんの誕生日が今日だってのは分かった」
まさか赤の他人に先に祝われてしまうとは思わなかったが。正直面白くないが。そこは大人の対応をしなければなるまい。ジョニーは僅かに苦笑し、サングラスをずらして直にテスタメントを見詰める。
「お前さん、今夜は暇かい?」
「……? ああ。空いているが?」
「それなら、一晩付き合って貰おうか」
何に、とは言わず片手を差し出す。
「……ああ、喜んで」
また、自分の生誕を祝ってくれる人がいる。その事実に、テスタメントは胸が熱くなるのを感じた。差し出された手を取り、テスタメントはジョニーに笑みかける。
テスタメントの中で止まっていた時計の針がまた一つ、動き出した。
その人物は午後のティータイムに突然現れた。
「……ッ、何故貴方がここに!?」
「どうした、知り合いか?」
テスタメントが予想外の人物の登場に驚き、口に含んだ紅茶を吹きかける。同席していたジョニーはと言うと、テスタメントの動揺の仕方にサングラスの奥の瞳を軽く見開いた。
「知り合い、と言うか何というか……」
「つれないなあ、一緒にお茶した仲じゃん」
言葉を濁そうとするテスタメントに、その人物は随分とフランクに絡む。ばんばんとテスタメントの肩を叩き、空いている椅子が有るのを良い事にテスタメントの隣にどかっと腰かける。無遠慮な姿に、テスタメントの向かいに座るジョニーは僅かに眉を寄せた。
「お茶した仲っつぅ割には、お前さんあんまり好かれている様には見えないねえ」
「うーん、照れ隠しじゃない?」
「そ……れは、ない」
危うく置いてけぼりで話を進められそうになり、テスタメントは噎せながらその人物に突っ込みを入れる。
「確かに貴方とは……一緒にお茶をした。だがそれだけだ」
「それだけ? 十分だよ。君に会いに来る理由としてはね」
にぃ、と笑いながらその人物はテスタメントに小さな包みを差し出した。
「はい、誕生日のプレゼント」
「……私に?」
片手に乗る位のサイズ。赤い包装紙に、ピンクのリボン。確かにプレゼントらしい物体であるが、突然出されたそれに、テスタメントは首を傾げる。
「ちょっと待て、お前さん今日が誕生日なのか?」
「……え、まさか教えてないの?」
その人物が口にした言葉に対し、ジョニーは初耳だとばかりにテスタメントに訊ねる。ジョニーの反応が予想外だったのか、今度はその人物が驚いた様にサングラスの奥の瞳を瞬かせた。
「……教えていない、というか忘れていた」
「忘れてたって……」
そりゃあないじゃないのと、ジョニーの胸の内に何とも言えないもやもやした気持ちが湧き上がる。
「ふぅん、恋人相手に冷たいね?」
「……は? ま、待ってくれ。その、恋人って……」
「気付かないと思った?」
「いや、う……う、んんん……まあ、その…………」
その人物はテスタメントの焦った様子に笑みを深め、差し出した包みを押し付ける様にしてテスタメントに持たせた。
「大したモノじゃないけど、貰ってくれると嬉しいな。それじゃ」
そう言ってその人物は、テーブルの上にあるマカロンを幾つか掴み取り、椅子から立ち上がって去って行った。
「……テスタメント」
残された二人の間に、気まずい沈黙が落ちる。
「忘れていた、と言うのは」
「違う、そうじゃないんだ」
ジョニーの言葉を遮る様に、テスタメントは上ずった声で言う。
「お前に教えるのを忘れていたんじゃない。自分の誕生日そのものを、忘れていたんだ」
「……そんな事」
あり得ないだろう、と。そう言おうとして、ジョニーは言葉を飲み込んだ。
「ギアになる前は、父が祝ってくれていた。父はどんなに忙しくても、私の誕生日を忘れず毎年祝ってくれた。その日が来るのがとても楽しみだったよ。だが、ギアに改造されてからは、誕生日を祝ってもらった事なんてない。 ……だから、忘れていた」
「…………」
もう何十年も前の話だ。ギアとして殺戮の日々を送る内に、自分の年齢を数える事はやめていた。
兵器の誕生日を祝う者など、居るはずがない。そう思っていたのだ。それこそ、今日の今日まで。先程あの人物に、祝いの言葉を言われるまで。
「……悪い」
「お前が謝ることじゃない」
恋人なのに、誕生日を教えるのを忘れられていたと、一瞬でも勘違いしてしまった事をジョニーは恥じ、素直に謝罪した。それに対しテスタメントは首を振り、自分こそ悪かったとばかりに瞳を伏せる。
「……まあ、きっかけはアレだが、お前さんの誕生日が今日だってのは分かった」
まさか赤の他人に先に祝われてしまうとは思わなかったが。正直面白くないが。そこは大人の対応をしなければなるまい。ジョニーは僅かに苦笑し、サングラスをずらして直にテスタメントを見詰める。
「お前さん、今夜は暇かい?」
「……? ああ。空いているが?」
「それなら、一晩付き合って貰おうか」
何に、とは言わず片手を差し出す。
「……ああ、喜んで」
また、自分の生誕を祝ってくれる人がいる。その事実に、テスタメントは胸が熱くなるのを感じた。差し出された手を取り、テスタメントはジョニーに笑みかける。
テスタメントの中で止まっていた時計の針がまた一つ、動き出した。
