第一話:スポーツロボット競技、スポコン!
ここは豊かな自然が多い街”グリーンピース・タウン”。
時刻は昼の3時、この街の小学校”グローバ小学校”の小学生達は帰宅時であった。
「それでは皆さん、気を付けて帰りましょう!」
「はーい、先生さようなら!」
「はい!さようなら、また明日ね!」
先生に帰りの挨拶をした5-4組の”洞道 ケン”は教育用ダブレットを鞄に入れて、教室から急ぐように出ていった。なぜ急ぐように出ていったのか、それは新しくダウンロードしたゲーム”ダン・モン”をやるためだ。
ダン・モンとはダンジョンにいるモンスターを捕まえて仲間にし、ダンジョン最下部で待ち構えているラスボスを打ち倒すというRPGである。
このゲームのためにケンは親の手伝いをし、テストは必ず百点を取ってみせ、お金をコツコツと貯めていった……そしてその成果が報われた。
ようやっとの思いでこのゲームを手に入れたのだ!もうケンは早くゲームがやりたい!とその気持ちに拍車が掛かり、駆け足になっていく。教室から飛び出て廊下を走り抜けていったためあっという間に下駄箱に着いたケンは、履いていた上履きから靴へとさっさと履き替えた。
すると、突然後ろから声を掛けられる。
「おーい、ケーン!ダン・モン買ったのか?今度バトルしようぜー!」
「うん!いいよー!」
「後でコード送るからなー!」
「わかったー!」
先ほど声を掛けてきたのは5-1組の同級生、”田中 ショウ”だ。
彼もまたケンと同じでゲームが好きで、よくケンとオンラインゲームする仲なのだ。もし、お互いどちらかがゲームが買えなかった時はどちらも買わないという誓いを立てるぐらい仲良しである。ケンはさっきとは変わらない足の速さで校門を駆け抜けていった。
「きゃあ!?」
ケンは避けたつもりなのだが、どうやら前にいた女の子の肩に当たってしまったらしい。
女の子が転ぶまでにはいたらかなかったが、女の子が怒るには十分であった。
「ちょっと、危ないわよ!」
「ごめーん!急いでいるんだ!」
女の子に見向きもせずそう告げて走り去ってしまったケンにその女の子は呆れ、遠くなっていくケンの背中を見つめていた。
学校から出て車道側まで走ってきたケンは、信号手前で止まった。歩行器のボタンを押して赤が青になるまでケンは待っていたが、待つ時間すらももどかしかった。
急いで帰宅したいケンは近道を通ることに決めた。ケンの自宅は通常で通っている学校のルートは少し遠い。
どうしてかというと、このルートの途中で長い川の橋を渡らなければならないからだ。しかも、信号は2回も通らなければならない。
真面目に帰るとなれば、ゲームする時間が減ってしまう。そんなのは嫌だ、少しでもショウより早く進めてレベルを上げたいとケンは思っていた。近道のルートはこの信号を通って真っ直ぐ進んで行ったところ十字路に出る。そこから右折して進んで行くと川通りに出るがそこには中間を通るための歩行者専用の橋がある。そこの橋を渡れば、ケンの自宅がある住宅地に出るのだ。
信号は1回しか通らないし、歩行者専用ならそのまま突っ走っていけて時間ロスも免れる。よし、これならいけるとケンは確信した。
信号が青になった途端、ケンはスタートダッシュを決めて走り出した。予想した近道のルート通り真っ直ぐに走って行き、十字路に出る。そこからケンは右折して川通りまで止まらないまま突っ走っていった。
目の前には歩行者専用の橋が見える。よしこのまま行こうとケンは止まらずに川通りへと出た。
……が、横から大きなクラクションが鳴り響いた。
そっちにケンは顔を向けると大きな運搬車がこちらに向かっていたのだ。
ケンは急な出来ことに走っていた足を止めてしまった。動物がどうして車にはねられるのか、ケンはよく分からなかったが今の自分の状況を考えて理解した。
どうしたらいいのか、分からない。
分からないから、動けない。まるで地面に足が縛られているように動けないでいるケンは、こちらへ突っ込んでくる運搬車をただ見つめることしかできなかった。あともう少しで、ぶつかる。ケンは、そう思った。
その瞬間であった――。
「あぶない!」
ケンは後ろから誰かに思いっきり突き飛ばされた。そしてそのまま急な坂を転げ落ち、川近くの土手でようやっと止まった。
さっきまで動けなかったケンは呪縛が解かれたように動き出し、起き上がって川通りの方を見上げた。
ぶつかりそうになっていた運搬車から怒声が聞こえたが、そのまま川通りを通って走り去ってしまった。
ケンは青ざめた、あともう少し遅ければ自分はあの運搬車に轢かれてたかもしれないことに……。
そこまで想像して、やめることにした。
ケンは自分を助けてくれた相手に礼を言おうと、相手側へ振り返った。
だが、その相手は――。
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