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2年目

去年と違い特に事件は起きず、穏やかに12月に入った。
まぁ、僕は大好きな妹やルキとゆっくり過ごす事もできず、勉強や卒業後の準備に追われていた。
正直カインの事は心配だが、器量のいいアベルや何かコソコソ動いているウィングに任せるしか無いとため息を漏らした。
今日も夕食時にルキが課題を持ってくる。
最近魔法史の成績も上がってきているので、それを褒めると照れくさそうに笑うのが可愛くて仕方無い。
この時間は僕の唯一の楽しみで癒しの時間だ。
「ルキちゃん、今年もまたクリスマスパーティーが近づいて来たからさ。
今年は君が僕のパートナーになってくれない?」
「…え?俺なんかでいいのか?
スリザリンの女の子から毎年誘われるだろ?」
「あれね…もううんざりなんだよ。
僕は大好きなルキちゃんと気兼ね無く過ごしてたいし、もうパートナーが居るって事になったら、声を掛けてくる人も減るでしょ
だから付き合って」
何かと理由を付けて彼女の気を引こうとする。
すると少し頰を赤らめ「分かった」と言うので、その姿がいじらしく抱きしめたくなった。
折角受けて貰ったのだから、今日は寮まで送ると言うと久しぶりに彼女とゆっくり談笑しながら歩く事ができた。

「「あっ」」
中庭に差し掛かった時、クロトとカインが二人で話をしているのが見える。
それを見つけた途端、思わず柱の影に二人して隠れて様子を伺った。
「な、何で隠れるんだよ!」
「ルキだって…最近二人の様子、明らかにおかしいよね?
なんであんな事になってるの?」
「知らねぇよ…兄貴がイリスに気があるからだろ
最近よく話しかけてるし、カインにしてた事そっくりそのままイリスにしてるからな。
そりゃカインも何かを察して距離置くだろ」
しかし今は珍しく二人きりで居る。
クロトは普通だったが、カインは表情が硬くなり必死で感情を殺しているようだった。
小さいが二人の会話が聞こえくる。
「カイン、今年もクリスマスパーティーのパートナーになってくれないかな」
「えっ…」
それを聞いてカインは顔色を変えたが、少し考えてから口を開く。
「クロトは…他に一緒に行きたい人が居るんじゃないか?」
「あはは…よく分かったね。
だけどフラれちゃって…
別に代役でカインを選んだ訳じゃないよ?
カインなら気兼ね無く過ごせると思ったから。
他の人と行くなら君が良いんだ」
その言葉にカインは背中を向けると、うつむきながら「分かった。行く」と答える。
クロトはカインの肩を抱いて寮まで送るよと言う。
二人が中庭を去るのを見送ってから、大きなため息を零した。
「はぁああ!?
何あれ、カインが真綿で首絞められてるんだけど?
なのになんでクロトは平然としてるのかな??」
「落ち着けよ、兄貴に他意はねぇんだろうし
本命にパートナーの誘いはフラれたけど、友人としては本気でカインがパートナーに良いと思ってんだよ」
今にも走って行って殴りかかりそうな僕をルキが必死で止めるので、今の所は諦めて大人しく直る。
「イリスは本命がいるからクロトがどんなに好きでも敵わないとおもうんだけど…」
「は?イリス好きな奴居るのか?」
「ウィングだよ。見てたら分かる。
クロトとウィングじゃタイプが全然ちがうからね…イリスがクロトに気をなびかせるとは思えない」
かと言って人の恋路を邪魔するのもヤボで、イリスを諦めろなんて言うわけにいかない。
それにクロトは他人にとやかく言われても自分の意思は曲げないだろう。

そしてクリスマスパーティー当日、去年同様にカインを着かざらせていた。
浮かない顔をした妹が心配で仕方ない。
去年なら誘ってくれた事が嬉しくて仕方ないとそわそわしていたのになと、ため息を漏らした。
「カイン、嫌なら行かなくて良いんだよ。
そんな気持ちにさせてるクロトが悪いんだから」
「ううん…私の大切な人のお願いを断るなんてできない。
沢山良くしてくれたクロトに、今度は私が彼を信じて、幸せを願って側にいる番だ。」
彼女の意思が硬いのを感じて仕方ないなとカインを説得するのは諦めるが、辛い時は直ぐに頼るよう言った。
折角ルキのドレス姿を堪能しようと思っていたのに、気になる事が山積みで集中できないとため息をまた漏らした。
カインを送り出した後ルキを迎えに行くと、ルキも同じようで二人が気になって仕方ない様子だ。
それにしてもルキのドレス姿は美しい。
結い上げた金髪から覗く首筋と、胸元から見える豊満な巨乳に一瞬不安を消し飛ばされた。
彼女の腰に腕を回して近寄り抱き寄せる。
「ルキちゃん…色っぽい…お持ち帰りしたい…」
「は?もうすぐ18のお前は大人だろうけど、俺はまだ13だぞ!
最低かよ…」
本気でそうは思って無いだろうが、いつもの調子で掛け合いをするルキになんだか安心する。
5歳も年上の僕に合わせて背伸びをしてくれたのだろうか…大人っぽいドレスが良く似合っていてドキッとさせられた。
「にしても…また胸大きくなってない?
成長期だね」
「ドコ見てんだよ!」
恥ずかしがって腹を殴られたが、それすら久しぶりな気がして嬉しくて、自分が変態になったような気分だ。

ルキを会場までエスコートし、軽食やドリンクを取って会場の隅に置きひとまず腹ごしらえをする。
ついカインの姿を探してしまい、見つけて苦笑いをした。
それにルキも気づき視線の先を見ると、ため息を漏らす。
クロトは流石と言うようにカインを紳士的にエスコートしていたが、どこか上の空で会話は弾まない様子だ。
そしてイリスの方ばかりを気にしている。
当のイリスはウィングの横に座って嬉しそうに彼に話しかけていた。
ウィングも優しい目で彼女の話を聞いているので誰も間に入れる余地は無い。
今気づいたが、何人かクロトと同じように上の空でイリスを見つめる男子学生が見受けられた。
普通じゃないなと思いながら、カインが「彼を信じる」と何度も言う意味が今わかった。
…これは…何か魔術的な影響なのか。
それなら誠実なクロトが急に心変わりしたのも納得がいく。
ルキの耳元に顔を寄せ気づいた事を囁くと、こちらを見て難しい顔をする。
「きっとウィングも気づいてるよ。
可愛がってるイリスやカインが巻き込まれてるんだ、カインも我慢しているし、僕達もサポートしながら待ってみよう。」
表情を殺してクロトのそばで沈んだ顔をしているカインを見て、今すぐ抱きしめてあげたくなるがぐっと堪えた。
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