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二章:魔導士協会


ファインは目を覚ますとフォルテのベットの中にいた。
まだ太陽が顔を出したばかりで薄暗く、一体どれだけ寝ていたんだとボンヤリ天井を眺める。
外は静かで暴動が収まった事が分かり、ホッとした。
最後にフォルテと話していたことまでは覚えているが…なにがどうなったのかさっぱり分からない。
寝返りを打ち体を反転させると、目の前に眠るフォルテがいて驚く。
こんな時間なのだから寝ていて当然だが、なぜ一緒に布団に入っているのか…
はたまたなぜ自分は彼のベットで寝ているのか…
鼓動が煩く鳴るので顔を見ないように反対を向こうとすると、動きを止めるように肩を掴まれた。
思わず「ひっ!」と声を上げてしまう。
「…おい、お前俺を何だと思ってるんだ」
まだ眠そうな目を擦りながら悪態を吐く彼に苦笑いをし、怒ってはいない事に安堵した。
なにも答えないでいると、まだ眠いのかファインを抱き寄せ胸元に顔を埋める。
豊満な胸に気持ち良さそうに沈む彼に顔が赤くなった。
「ちょっと…セクハラですよ教官」
それでも跳ね除けることはせず、そっと頭を撫でた。
心地よいのかそのまま大人しくしている彼に目を細め微笑む。
なかなか目を覚まさない自分を心配してくれていたのだろうか。
「ねぇ、全然記憶無いんだけど…私どうして倒れてたの?」
使ったことの無い魔法の影響かと考えたがそうではないらしい。
フォルテは顔を上げると事の顛末を話し始めた。
意識の無い間にそんな大事な事が起きていたとは思っておらず、寝ていた自分は間抜けだなと落胆する。
どうやらあのような形で全員が顔を合わせるのは初めてだそうだ。
体を作り変えられるタイミングでカルナにのみ対面する。
最初だったクロトだけは嬉しそうにこれからの計画や自分達が生かされている理由を雄弁に語っていたようだが、クロトが非協力的だったためそれ以降は強制するように体を作り変えるのみだそうだ。
「それからジルと話して決まった事だが、お前、カルナの魔法や魔力は極力使うな」
カルナの復活が迫っている今、奇跡だ新たな英雄だと騒がれては身動きが取れなくなるのは困る。
ファインの魔法を見たもの達には緘口令を敷いた。
そのため大魔導士としては扱わず、今まで通り謀略の魔導士の弟子として業務をする事となる。
どうやら医術に特化している力であるようなので、たまにその仕事もファイン宛に回すと言っていた。
「じゃあ私は今まで通りフォルテのそばに居ていいんだ」
喜びを噛みしめるように唇をキュッと結ぶので、フォルテは思わず笑う。
笑われた事によりファインがムッと頰を膨らますと、悪いと謝りながらまだ笑っている。
「お前、ホント俺の事好きなんだな。
プロポーズまでしてくるくらいだし、当然か」
その言葉に「はぁ?!」と声をあげる。
意識を失う前に自分が言った事を思い出し、あれはそういう意味では無いと慌てて否定した。
するとニヤニヤ笑った彼はそっと頰を撫で、親指で唇を撫でる。
皮膚の薄いそこに彼を感じ、思わず後ろに逃げたが壁に背がついただけだ。
今度は首の後ろに腕を回すと逃げないようにガッチリ抑えこまれる。
「ほら、言ってみろよ。
じゃなきゃお前を別部署に異動にするぞ?」
「それは…!困る!」
慌てたようにしがみつくファインにフォルテはまた笑う。
顔を赤くし本気で困っていたが、既にバレているなら言っても言わなくても同じだとため息をつく。
今度はファインがフォルテの胸に頰を寄せる。
しかし顔を見せろと上を向かされ、意地悪と呟いた。
「フォルテ…好き。」
そう短くいうと恥ずかしさで消えてしまいたい…と身動いだ。
上出来だと言ったかと思うと、唇が重なりキスされた事に気づくのに数秒かかった。
柔らかい感覚に好きな気持ちが抑えられなくなりそうだ。
まだ返事も聞いてないのにと思いつつ、どんどん彼に溺れていくようでうっとりする。
気づいたら服を脱がされ下着になっており、ハッと我に返った。
「ま、待って!まだフォルテの返事聞いてない!
あぁ、噂通り手が早いんだから…
スっごくモテて女癖悪いって聞いてたから絶対惚れないと思ってたのに!」
体を隠そうと布団を引っ張るが腕を掴まれ阻止される。
「あのな…俺様がお前と出会ってから女を絶ってるのに気づいてるだろ?
それにこんなに手を焼いて気にかけるヤツなんて他に居ると思うか?」
察しろと言わんばかりにそう口にすると、強い力で布団を引き剥がす。
眠っている間触るのをずっと我慢してたんだと舌舐めずりするので、色っぽい仕草にゾクっとした。
3日風呂に入ってないと拒否すると風呂場でしたいのか?と言われ、教官!と呼び立場を思い出させようとすると、若い教え子を犯すなんて背徳感があるなと喜ぶのでお手上げ状態だ。
「いい加減諦めろ。
本当は俺に愛されて嬉しいんだろ?
期待してくるくせに」
そう言うと下着に手を掛けた。


教会に行くのを1日遅らせ、約束の時間に目的地近くの広場で落ち合う。
律儀で真面目なクロトがカインを連れ最初に来たが、後から来たジルエットがイリスとウィングを連れているのを見て固まった。
クロトは穏やかな笑顔を見せ挨拶をするが、ウィングには言葉の裏で警戒されているのを肌で感じた。
「あー、もうカインに触ったりしねぇよ
俺が愛しているのは主人で恋人のイリスだけだ。
安心しろ」
堂々と恋人宣言をするので、イリスが苦笑いをしながら何かしたら俺も怒るからと約束する。
ウィングはカインの指にハマった指輪を見て、人妻を寝とる程馬鹿じゃねぇよと言うと、長い付き合いであるジルとイリスは「えぇ!?」と声を上げた。
500年近く生きて今まで結婚しなかった彼が、妻をとった事が衝撃的だったのだろう。
人妻と言われ気恥ずかしくなったのか、カインは猫の姿になりクロトのローブに隠れてしまった。
「はは、傑作だな。
もうすぐ死ぬってなってから恋人だの妻だの、益々死ねなくなったな」
「遅くなってすみません!」
頭を下げるファインとは対照的にフォルテは一番遅く着いた事など意にも解さない。
クロトもジルも気にしないように言うと頭を上げさせる。
「体は大丈夫?目覚めるの遅かったのかしら?」
「いや、初めてだから一回で許そうかと思ったんだが。
久しぶりだったのと想像以上に体の相性が良くて止められなかった。
気づいたら抱き潰していた」
恥ずかしげもなく平然と言うので、ファインは顔を真っ赤にし彼の背中を叩く。
フォルテは痛てぇな…と不機嫌そうに低い声を出した。
「いま、ほんのちょびっとだけど、フォルテを好きになった事を後悔した…」
「あ?男だったら普通だろ。
散々我慢してようやく好きなヤツ抱けるってなったら止まらねぇよ」
な?と、同意を求めるようにクロトに話しを振るので苦笑する。
自分もカインを初めて抱いた時は無茶をさせたので言い返す言葉がない。
怒っているのはそこじゃないとファインは深くため息をついた。
その様子にウィングは死ぬかもって時に元気だなと4人の魔導士を眺めると、猫の姿になり教会の塀に登ると換気のため開けられた窓から中に入ってしまった。
イリスが制止する声も聞かず、ホンマに制御の効かん使い魔やと呆れさせた。
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