1年目

---カルファー視点

俺、カルファーは感心していた。
イタズラ仲間をしている親友二人が特定の女の子を気遣い心配しているからだ。
まずフォルテは節操がない。
顔がよく女の子達にモテるのをいい事に、女子の部屋へ侵入したり口説いたりしてよくファインに怒られていた。
豊満なスタイルを持つ彼女の体が目的で、からかい気を引こうとよく関わっていたのかと思っていたが…
今も姿のないファインを案じている様子から、そうでも無いのだなと感じる。
またカイザは無言無表情で人との関わりが最低限だ。
心根は優しく紳士で男前なのだが、その表面上の性格と自分達とつるんでいる事からか話しかける者も少ない。
それが女性を気遣いあんなに穏やかに笑っているとは驚きだ。
(周りには分からないかも知れないが、俺にはそう見える)
なによりコミュニケーションを取ろうと思った彼女に賞賛する。
末永く仲良くしてやってくれ…
そして俺はフォルテに元気でも分けてやるかと席に座ろうとした時、ハッフルパフの女生徒が入り口でオロオロしているのを見つける。
背が低く同い年かと疑いたくなる幼さだ。
席につくのはやめ、彼女に声を掛ける事にした。
「どうしたんだ?」
突然声を掛けられびくりと震えた彼女は、自分のネクタイの色を確認するとホッとしたように落ち着く。
「あの…ここにくる途中、親から貰った大切な髪留めを落としちゃって…」
一人での行動を禁止されており、誰しも事件の翌日に少数で出歩くのを嫌がる。
実際に自分もファインが倒れていたのを目撃しているため恐怖心が無いわけではない。
しかし余程大切なものなのか、どうしても探しに行きたいようだ。
「女の子が困ってるのに見捨てちゃ男が廃るよな!俺はカルファー。
一人じゃなきゃ良いんだろ?
俺が付き合ってやるよ」
そう言って笑顔を向けると女の子はパッと明るくなり嬉しそうに頭を下げた。

二人で食堂を出るとハッフルパフ寮へ続く道をゆっくりと歩く。
キョロキョロと廊下を歩く彼女が小動物みたいで可愛い。
「付き合ってくれてありがとう、私シーク。
同じ一年だから多分呪文学で一緒だったよね。
カルファーは有名だから名前は知ってたよ!」
「それ、悪い意味で有名なんだろ?」
そう言い二人で笑うと、こうして探し物に付き合ってくれてるし、噂は信用ならないねと一杯の笑顔で言ってくれる。
どんな内容の噂だったのか気になるが、眩しい笑顔を向ける彼女にまぁ良いかとまんざらでもなくなった。
食堂から少し戻った薄暗い廊下の隅にその髪留めは落ちており、シークがそれを拾う。
嬉しそうな姿と見つかった事にホッとして、早く帰ろうかと声を掛けようとしたその時。
何かの羽音を聞いた。
それは本当に小さなもので、虫にも似た鳥にも似たような…判別のつかないものだ。
そして次の瞬間、うなじにチクリとした痛みを感じる。
振り返ってみるが何もなく、痛みがしたところを触っても異変を感じられない。
「シーク、悪いけど俺の首見てくれないか?」
背の低い彼女にも見えるようしゃがむと、小さな歩幅でとてとてと近寄ってきて覗き込む。
背面にいるシークの表情は見えないが小さな声で「これって…」と震えた声が聞こえた。
「凄く大きな痣ができてるよ…こんなところ…ぶつけたり殴られたりしない…よね…」

それからは説教大会だった。
教員に報告に行くと「またあなたは!」と怒号が食堂に響く。
シークを連れ回してたと説明したため、グリフィンドールは減点される。
そして痣に関しては教員も気を配るよう言ってくれ、絶対に集団から離れないよう釘を刺された。
申し訳なさそうな彼女の頭を撫で、これ以上俺の評価が下がる事は無いしなと、なんでもないように笑ってみせた。
そしてその怒号で食堂にいる学生達はまたやらかしたのか?と視線を注ぐので、早くハッフルパフに帰るよう背中を押す。
自分もグリフィンドールの席に座ると、クロトが何をしたのか呆れたように聞いてくる。
隠す理由も特に無かったのでクルリと後ろを向き首を見せた。
その大きな痣にそれを見た生徒はどよめく。
女生徒だけが襲われていたのが、俺にそれが出た事により男生徒にも不安が伝染する。
クロトからは出歩いた事を再度怒られ心配された。
親友の二人には「バカじゃねぇの(ないの)」とけなされたが、表情の端に心配の色が見える。
…俺って愛されてんのな
当の自分には実感は無く、呑気にそんな事を考えていた。
「カルファーが倒れたら誰がこの二人を止めるんだよ…」
そう誰かが言ったかと思うと、一緒くたにされたフォルテとカイザが同時に「あぁ?」と声を上げる。
顔を合わせれば喧嘩をする二人だが、息がぴったりで思わず笑った。
「大丈夫大丈夫。なんとかなる。
先生も気にかけてくれるし、別に今は体も何もないし。
…そういや首に痛みが出る前、羽音が聞こえたな。
鳥に近いような…でも小さくてちょっと違うような」
そう言うとクロトは考えるようなそぶりをするが結論は出ず食事に戻る。
するとグリフィンドールの担当教員がやってきた。
「ファインが先程目を覚ましたました。
まだ完全では無いので3日程医務室で療養してから戻ります。
会いたい者はジルエット先生に許可を貰ってから尋ねるように。」
そう言ってその場を後にした。
すぐさまフォルテがガダッと音を立て席を立つので、慌てて食事を終えてカイザを引っ張って後を追った。
クロトとルキも俺も行くと声を掛け付いてくる。
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