1年目

---カイン視点

クリスマスの朝眼が覚めると、ベットの横にプレゼントが置かれていた。
送り主は兄であるミドルと、親代わりであるウィングからだ。
…それからクロトからも。
驚いて一番にその包みを取り開くと、中には魔除けの魔法がかけられたペンダントが入っている。
一連の事件もあり、学園に滞在する自分を心配してくれたのだろうか。
嬉しくて頰が紅潮する。
それを首に下げ、慌てて身支度を済ませると学校の門へと走った。
帰り仕度ができた学生達が、久しぶりの帰省に心を躍らせている。
殆どの学生が帰る為か人混みに飲まれてしまいそうだ。
ふと、首元を引っ張られ壁際に引き寄せられる。
「兄さん…」
「見送りに来てくれたの?
ホントは残していくのは心配なんだけど…
ウィングの側からなるべく離れないようにね」
そう忠告され首を縦に振ると良い子だと頭を撫でられる。
「プレゼントありがとう、大事にする」
「いいえ。あれが有れば望遠鏡無くても自室から良く星が見えるよ。
カインも僕のためにプレゼント選んでくれてありがとう」
それよりも人探してるんでしょ?
と、背の高い兄さんが周囲を見渡す。
まっててと声を掛けると人混みに紛れ、直ぐに帰ってくる。
片手には襟首を掴まれたクロトが、何事だという顔でミドルを見上げていた。
「兄さん…ありがとう…」
苦笑いしながらお礼を言うと手を離し「またね」と言うと列車が待つ駅の方角へ歩いて行った。
驚いているクロトに首から下げたペンダントを見せ微笑みながら「ありがとう」と言うと、優しく笑いかけてくれた。
胸が暖かくなる。
「まさかくれると思って無くて、大したお返しができないけど…」
とポケットからレトロな懐中時計を取り出した。
元々身の無事を祈って持たされていたもので、肌身離さずだったのだが…
自分にはクロトから貰ったモノが有る。
今度はクロトを守ってくれるよう願いを込めて時計にキスをする。
チェーンを彼のベルトに付けて、時計をズボンのポケットに入れると、ありがとうと照れたように言葉をくれる。
しばらく顔を見えないと思うと突然寂しさを感じた。
学校で起きている事件もあってか、試験を控えている上級生以外はほぼ帰省するだろう。
自分が家族に見放されたのをひしひしと感じ胸が空いた思いだ。
黙ったままでいると何かを感じたのか優しく頭を撫でてくれる。
その手が暖かくて涙が出るのを必死でこらえた。
「やっぱり…俺の家くる?」
首を横に振り先生が居るから平気と笑って見せると、心配したような顔で笑い返してくる。
汽車が出る時間が迫っていると教員の声が響き渡り、彼の背中を見送った。


それからはウィング先生の自室で過ごす。
酷く面倒くさがりな彼だが、用事を手伝うと代わりに勉強を見てくれたため休みは暇をしないで済んだ。
たまに先生を尋ねてくるイリスとも仲良くなったが、「危険だから一人で出歩くな」と咎めながらも会いにくる彼女に心なしか嬉しそうな先生がらしく無くて笑える。
どうやら彼女はジルエット先生と二人姉妹で他に家族は居ないらしく学校に滞在しているようだ。
そしてあれからまだ誰も襲われたりはしていない。
これらを手紙に書き留めクロトにフクロウを送った。
そして1日すると直ぐに返事がくる。
彼の地元であろう美しい風景写真と一緒に家族でゆっくり過ごしているという内容の手紙が入っている。
君にも見せたいや、早く会いたいという文言に彼への想いが駆り立てられ、勘違いしてしまいそうだと鼓動が早まる。
手紙を読みながら表情が緩みそうなのを堪えていると、先生が変な顔をして頭を撫でていった。
もうすぐ休みも終わる。
また賑やかな生活が始まると思うと、しがらみや寂しさを忘れられそうで、好きな人に会えるのが待ち遠しくて仕方なかった。
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