メガネハデバフ
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眼鏡はデバフ
以前の約束がようやく叶い、滑津さんを含めた三人でお昼を食べることになった。今日は三人で学食。混み具合はそこそこ。女子向けのお知らせがある掲示板の前は男子生徒は座りにくいらしく、なぜかいつも空いている特等席だ。
「そういや、あの子どうなった? 二口目当ての子」
パスタをフォークに巻きながら藍里ちゃんが滑津さんに問いかける。
「いっぱい食べないと部活までもたない!」と、滑津さんはから揚げのBランチ。彼女は箸を割りながら答える。
「正式入部して、マネージャーやってるよ」
「え、大丈夫なの?」
藍里ちゃんはちらちら私を見ながら言う。すると、滑津さんは心外そうに頬を膨らませた。
「もちろん、最初にマネの心構えは話したよ。『特定の部員に肩入れしたいなら、外から応援して欲しい』って。一応、部員とマネは恋愛禁止って不文律もあるしね」
「へー。そうなんだ~」
さすが強豪の運動部。マネージャーの入部条件もきちんとしている。
……そっか、部員とマネージャーは恋愛禁止なんだ。今さらだけど、よかった、とほっとしてしまう。
「何人がマネージャーで入ったの?」
私が聞くと、滑津さんはからかうように微笑んだ。
「例の子と、もう一人の合計二人。……あの子、大分雰囲気変わったよ。メガネかけ始めたし」
「「!!?」」
私たちが息をのんだ様子を見て、滑津さんが苦笑する。
「部活始める前におもむろにメガネかけるから、なんで? って思ってさ。『視力悪いの?』って聞いたらごにょごにょ言うから、ピンときちゃった。結城さんリスペクトかーって」
ぶっと藍里ちゃんがイチゴ牛乳を吹き出しかける。
「藍里、キタナイ」
「待って無理、リスペクトって何」
藍里ちゃんにティッシュを渡しながら、滑津さんは答える。
「あの時さ、結城さんに『メガネ外すなよ』みたいなこと、二口言ってたじゃない?」
確かに言ってたけど、それは……。
「それ聞いてたらしくて、次の週からメガネ持ってきてて。まあ別に悪いことはないから、『流れ弾には気をつけてね』とは伝えたよ」
ストローをくわえながら藍里ちゃんが白けた目で言う。
「……それ逆効果だよ。二口、メガネフェチなわけじゃない」
「そうなの!?」
滑津さんが驚いた顔で私を見るので、私は黙ってうなずく。それを受けて藍里ちゃんは続けた。
「うちのクラスじゃ有名だけど、二口、友紀がメガネ外すのアホみたいに嫌がるんよ」
「え? だから好きなんでしょ? どういうこと?」
クラスで有名って何……?
滑津さんの視線が私で止まる。私はしぶしぶ口を開いた。
「二口くん、別にメガネ好きじゃない……です……」
「???」
滑津さんはまだ理解できていない様子で、私と藍里ちゃんを交互に見る。
藍里ちゃんは『話していい?』という顔をする。……自分で言うのは恥ずかしすぎる。私は小さくうなずき、その先を託した。
「友紀のメガネ外したトコを人に見せたくない、素顔を知られたくない、ってことみたいよー」
「はぁ? それマジで?」
改めて第三者から言われると、余計に恥ずかしい……。
滑津さんがまじまじと私を見る。視線が痛い。私は下を向くしかない。
「そっか! やっと繋がった、それで! だからメガネ外させないんだ!」
「とんだスケベ野郎だよね~」
「ふーん。メガネはデバフだったかー」
うんうんと納得するように頷きながら味噌汁をすすった滑津さんが、はたと顔を上げる。
「これ、あの子に言ってあげた方がいいのかな?」
「うーん。あたしからは何とも……。そこんところは当事者に聞いてみましょか。ね、友紀サン?」
藍里ちゃんは完全に面白がって私に振る。
正直、どっちでもいいんじゃないかと思ってしまう。でも、それをそのまま私が言うのも感じが悪い気がするし……。
「……部活に支障がないなら、そのままでいいんじゃないのかな……?」
無難としか言いようのない回答を絞り出すと、藍里ちゃんがニヤリと笑う。
「わっるい女だなー」
「な、なんで!?」
「わかった〜。何も言わないでおくねっ!」
滑津さんまでニヤニヤして私を見る。
もう、何を言ってもからかわれるんじゃん……!
元はと言えば堅治くんがモテるのがいけないんだし、変にやきもち焼くから……
って、全部堅治くんのせいな気がするんだけど!
まだワイワイ盛り上がる二人には気づかれないよう、私はため息をつき、ほんのちょっとだけ堅治くんを呪った。
以前の約束がようやく叶い、滑津さんを含めた三人でお昼を食べることになった。今日は三人で学食。混み具合はそこそこ。女子向けのお知らせがある掲示板の前は男子生徒は座りにくいらしく、なぜかいつも空いている特等席だ。
「そういや、あの子どうなった? 二口目当ての子」
パスタをフォークに巻きながら藍里ちゃんが滑津さんに問いかける。
「いっぱい食べないと部活までもたない!」と、滑津さんはから揚げのBランチ。彼女は箸を割りながら答える。
「正式入部して、マネージャーやってるよ」
「え、大丈夫なの?」
藍里ちゃんはちらちら私を見ながら言う。すると、滑津さんは心外そうに頬を膨らませた。
「もちろん、最初にマネの心構えは話したよ。『特定の部員に肩入れしたいなら、外から応援して欲しい』って。一応、部員とマネは恋愛禁止って不文律もあるしね」
「へー。そうなんだ~」
さすが強豪の運動部。マネージャーの入部条件もきちんとしている。
……そっか、部員とマネージャーは恋愛禁止なんだ。今さらだけど、よかった、とほっとしてしまう。
「何人がマネージャーで入ったの?」
私が聞くと、滑津さんはからかうように微笑んだ。
「例の子と、もう一人の合計二人。……あの子、大分雰囲気変わったよ。メガネかけ始めたし」
「「!!?」」
私たちが息をのんだ様子を見て、滑津さんが苦笑する。
「部活始める前におもむろにメガネかけるから、なんで? って思ってさ。『視力悪いの?』って聞いたらごにょごにょ言うから、ピンときちゃった。結城さんリスペクトかーって」
ぶっと藍里ちゃんがイチゴ牛乳を吹き出しかける。
「藍里、キタナイ」
「待って無理、リスペクトって何」
藍里ちゃんにティッシュを渡しながら、滑津さんは答える。
「あの時さ、結城さんに『メガネ外すなよ』みたいなこと、二口言ってたじゃない?」
確かに言ってたけど、それは……。
「それ聞いてたらしくて、次の週からメガネ持ってきてて。まあ別に悪いことはないから、『流れ弾には気をつけてね』とは伝えたよ」
ストローをくわえながら藍里ちゃんが白けた目で言う。
「……それ逆効果だよ。二口、メガネフェチなわけじゃない」
「そうなの!?」
滑津さんが驚いた顔で私を見るので、私は黙ってうなずく。それを受けて藍里ちゃんは続けた。
「うちのクラスじゃ有名だけど、二口、友紀がメガネ外すのアホみたいに嫌がるんよ」
「え? だから好きなんでしょ? どういうこと?」
クラスで有名って何……?
滑津さんの視線が私で止まる。私はしぶしぶ口を開いた。
「二口くん、別にメガネ好きじゃない……です……」
「???」
滑津さんはまだ理解できていない様子で、私と藍里ちゃんを交互に見る。
藍里ちゃんは『話していい?』という顔をする。……自分で言うのは恥ずかしすぎる。私は小さくうなずき、その先を託した。
「友紀のメガネ外したトコを人に見せたくない、素顔を知られたくない、ってことみたいよー」
「はぁ? それマジで?」
改めて第三者から言われると、余計に恥ずかしい……。
滑津さんがまじまじと私を見る。視線が痛い。私は下を向くしかない。
「そっか! やっと繋がった、それで! だからメガネ外させないんだ!」
「とんだスケベ野郎だよね~」
「ふーん。メガネはデバフだったかー」
うんうんと納得するように頷きながら味噌汁をすすった滑津さんが、はたと顔を上げる。
「これ、あの子に言ってあげた方がいいのかな?」
「うーん。あたしからは何とも……。そこんところは当事者に聞いてみましょか。ね、友紀サン?」
藍里ちゃんは完全に面白がって私に振る。
正直、どっちでもいいんじゃないかと思ってしまう。でも、それをそのまま私が言うのも感じが悪い気がするし……。
「……部活に支障がないなら、そのままでいいんじゃないのかな……?」
無難としか言いようのない回答を絞り出すと、藍里ちゃんがニヤリと笑う。
「わっるい女だなー」
「な、なんで!?」
「わかった〜。何も言わないでおくねっ!」
滑津さんまでニヤニヤして私を見る。
もう、何を言ってもからかわれるんじゃん……!
元はと言えば堅治くんがモテるのがいけないんだし、変にやきもち焼くから……
って、全部堅治くんのせいな気がするんだけど!
まだワイワイ盛り上がる二人には気づかれないよう、私はため息をつき、ほんのちょっとだけ堅治くんを呪った。
