Second grade of Highschool
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ところで君のその首筋の痕はなあに
二口くんと別れて向かったのは女子トイレ。委員会当番なんて咄嗟の言い訳だ。
鏡の前に立ち、首元を確認する。
あー……。痕が残ってる。
一応傷口はふさがっているけど、慌てていたからか牙の痕が二つ、赤く残ってしまっている。
ゴムをほどいて髪を下ろしてみる。一応、隠せることは隠せる。動くと見えてしまうけれどしょうがない。むき出しになるよりましだ。
髪、伸ばしててよかった……とため息をつきながら手櫛で髪を整えてると、個室から人が出てきた。
「よ、友紀」
「葵ちゃん……」
クラスメイトの黒川葵ちゃんだった。葵ちゃんは私の隣で手を洗いながら、鏡越しに私をちらっと見てきた。
「友紀ってさぁ、二口と付き合ってんの?」
「え……あ、うん。……わかる?」
「そりゃわかるわ。二口、しょっちゅうウチのクラス来るじゃない。最初は小原のとこかと思ったけど、よくアンタ連れて出てくし」
「ごめん、言おうと思ったんだけど、なんというかタイミングが」
「あ、別にいいって、そーいうの、勝手に見つけるのが楽しいんだから」
そう言って、葵ちゃんはにやりと笑うと私の耳元で小さく聞いた。
「で、二口って激しいの?」
「え? 何が?」
きょとん、と聞いてみると葵ちゃんはいっそう愉快そうに笑う。
「何って、アレに決まってんじゃん」
「?……!!」
明け透けにものを言う葵ちゃんに絶句して、何も言葉が出てこない。
「首、隠そうとしているけど、見えてるよ?」
そうやって私の首にかけた髪をはらりとめくる。「あら、二つも?」と驚く声に硬直する。
「午前中普通に髪の毛くくってたじゃない。ってことは、学校でそんなのつけるくらいなんだから、すごいんでしょ」
もう何もかもお見通しのようなその口調に赤面するしかない。勝手に心臓がどきどきしてしまって、私はバカ正直に口走ってしまう。
「あ、あの、私たち、その、まだ……」
「え? してないの? え、それで? 学校で?」
葵ちゃんは信じられないという風に、引き気味に驚く。その言葉と鏡に写った自分の真っ赤な顔にいたたまれなくなってくる。
下を向いてしまった私に葵ちゃんは急におろおろしだした。
「ごめん、言い過ぎた。こんな、ウブな少女に……ったく、二口何か変な風にこじらせてるんじゃないの?」
二口くんには、まあ、事情があるんだけど、それを話すわけにはいかないので、私はうつむいたまま沈黙する。
それを恥じらいととらえてくれたのか、葵ちゃんは追及の手をゆるめてくれた。
ブレザーのポケットの生徒手帳を取り出しそこから「ハイ」と絆創膏を一枚渡される。
「そこ、貼っときな」
「ありがとう」
「あの、さ、二口に変なコト、されそうになったら……まあ、されるのは時間の問題か。……そうじゃなくて……、んーと、ヤダったら相談しなよ」
そう真剣な顔で言ってくれる葵ちゃんにまた恥ずかしくなったけれど、私は「うん」とうなずいた。
★★★
黄金川に俺の当番の分の部室の掃除を命じて、教室に戻ろうとすると正面から黒川が歩いてきた。
「あ、今度は彼氏の方だ」
「っ、なんだよ」
黒川は中学が一緒だった女子だ。高校では同じクラスになったことはないが、今は結城と同じクラスで結構仲がよさそうだ。中学の俺のあることないこと言いふらしてないといいんだけど。
って、コイツ、俺と結城が付き合い始めたこと知ってるのか?
黒川は意味ありげにニヤリと笑う。なんだかイヤな予感がする。
「彼女、困ってたよ~。学校ではほどほどにしなー」
「はあ?」
クッソむかつく笑顔だ。彼女はトントンと二回、自分の首を指さした。
「友紀の首、つけたのアンタでしょ?二つ、赤いの」
「……」
あー……。やっぱ、痕残ってたか。クソ。よりによってコイツに見られたか。心の中で盛大に舌打ちする。
黄金川が入ってきたから、ギリギリ傷を塞いだところで止めざるをえなかったんだよな……。
黒川は沈黙した俺に畳みかけるように追撃する。
「一つならまだわかるけど、二つって! 盛りすぎでしょ」
「……」
二つ痕が付くのは牙が口の両側にあるんだから構造上しかたない。さすがにその説明はできないので、ふいっとそっぽを向く。
もういっそ、結城とも仲いいヤツだから、味方につけた方がいいか?という計算が働いて、俺は微妙に反省した風な表情を作る。
「しょーがねーだろ、部活忙しくて、あんま会えねーんだから」
「そっか! 二口だけに二つってこと? もー、自己主張はげしー」
マーキングか! と、バシバシ俺をたたきながらケタケタと笑う。
いい加減『うるせーよ!』と黙らせようとしたけれど、ふと黒川が真面目な顔になってるのに気づいた。
「友紀いい子よね」
「は? 知ってるけど?」
かぶせ気味に言うと、黒川は驚いた顔をした。
「アンタが、そんな風に言うなんて、成長したわよねー」
そりゃ、俺の中学の頃は、まあ、色々あったけど……。高校に入ってからは結城一筋であるつもりだ。誤解させるようなことは一度してしまったが……。
「大事にはしてるつもりだけど?」
そう言うと、俺の胸を叩き念を押す。
「泣かせるようなこと、しちゃだめよ」
「しねーって!!」
そう言って睨みつけると、やっと納得したように笑い、ひらひらっと手を振って去っていく。
彼女の後ろ姿を見ながら思う。
まあ、黒川はいいやつだ。話せる奴なのはわかる。結城とはいい友達でいてくれると助かる。
心の中で『結城をよろしく』とつぶやく、と、それが届いたかのようなタイミングで
「あ、そうだ」
黒川はそう言って引き返してくる。そうしながら生徒手帳を開きカバーに挟まった何かを取り出し、俺の手の中に握り込ませた。
「?」
手を開く。銀色のアルミに包まれた、丸い輪郭……。これ、
「ちゃんと、避妊はするのよー」
「ば、バカ! うっせーわ!!! こんなの持ち歩いてんじゃねーよ!!!」
「あんたこそちゃんと持ちなさいよ。紳士の嗜みでしょー」
叩き返そうと黒川を捕まえようとするも、ひらりとかわされ、ケタケタ笑いながら駆けてゆく。
大声で避妊とか言ってんじゃねーよ! 通りすがりの生徒がびっくりした表情で俺とその手の中のブツを見ている。
やっぱ、コイツ、とんでもねぇな! 結城にはあんまり近づけさせたくない。
さすがにコレをいつまでも白日の元に晒すわけにはいかない。俺は銀色のソレをこそこそと制服のポケットにしまった。
二口くんと別れて向かったのは女子トイレ。委員会当番なんて咄嗟の言い訳だ。
鏡の前に立ち、首元を確認する。
あー……。痕が残ってる。
一応傷口はふさがっているけど、慌てていたからか牙の痕が二つ、赤く残ってしまっている。
ゴムをほどいて髪を下ろしてみる。一応、隠せることは隠せる。動くと見えてしまうけれどしょうがない。むき出しになるよりましだ。
髪、伸ばしててよかった……とため息をつきながら手櫛で髪を整えてると、個室から人が出てきた。
「よ、友紀」
「葵ちゃん……」
クラスメイトの黒川葵ちゃんだった。葵ちゃんは私の隣で手を洗いながら、鏡越しに私をちらっと見てきた。
「友紀ってさぁ、二口と付き合ってんの?」
「え……あ、うん。……わかる?」
「そりゃわかるわ。二口、しょっちゅうウチのクラス来るじゃない。最初は小原のとこかと思ったけど、よくアンタ連れて出てくし」
「ごめん、言おうと思ったんだけど、なんというかタイミングが」
「あ、別にいいって、そーいうの、勝手に見つけるのが楽しいんだから」
そう言って、葵ちゃんはにやりと笑うと私の耳元で小さく聞いた。
「で、二口って激しいの?」
「え? 何が?」
きょとん、と聞いてみると葵ちゃんはいっそう愉快そうに笑う。
「何って、アレに決まってんじゃん」
「?……!!」
明け透けにものを言う葵ちゃんに絶句して、何も言葉が出てこない。
「首、隠そうとしているけど、見えてるよ?」
そうやって私の首にかけた髪をはらりとめくる。「あら、二つも?」と驚く声に硬直する。
「午前中普通に髪の毛くくってたじゃない。ってことは、学校でそんなのつけるくらいなんだから、すごいんでしょ」
もう何もかもお見通しのようなその口調に赤面するしかない。勝手に心臓がどきどきしてしまって、私はバカ正直に口走ってしまう。
「あ、あの、私たち、その、まだ……」
「え? してないの? え、それで? 学校で?」
葵ちゃんは信じられないという風に、引き気味に驚く。その言葉と鏡に写った自分の真っ赤な顔にいたたまれなくなってくる。
下を向いてしまった私に葵ちゃんは急におろおろしだした。
「ごめん、言い過ぎた。こんな、ウブな少女に……ったく、二口何か変な風にこじらせてるんじゃないの?」
二口くんには、まあ、事情があるんだけど、それを話すわけにはいかないので、私はうつむいたまま沈黙する。
それを恥じらいととらえてくれたのか、葵ちゃんは追及の手をゆるめてくれた。
ブレザーのポケットの生徒手帳を取り出しそこから「ハイ」と絆創膏を一枚渡される。
「そこ、貼っときな」
「ありがとう」
「あの、さ、二口に変なコト、されそうになったら……まあ、されるのは時間の問題か。……そうじゃなくて……、んーと、ヤダったら相談しなよ」
そう真剣な顔で言ってくれる葵ちゃんにまた恥ずかしくなったけれど、私は「うん」とうなずいた。
★★★
黄金川に俺の当番の分の部室の掃除を命じて、教室に戻ろうとすると正面から黒川が歩いてきた。
「あ、今度は彼氏の方だ」
「っ、なんだよ」
黒川は中学が一緒だった女子だ。高校では同じクラスになったことはないが、今は結城と同じクラスで結構仲がよさそうだ。中学の俺のあることないこと言いふらしてないといいんだけど。
って、コイツ、俺と結城が付き合い始めたこと知ってるのか?
黒川は意味ありげにニヤリと笑う。なんだかイヤな予感がする。
「彼女、困ってたよ~。学校ではほどほどにしなー」
「はあ?」
クッソむかつく笑顔だ。彼女はトントンと二回、自分の首を指さした。
「友紀の首、つけたのアンタでしょ?二つ、赤いの」
「……」
あー……。やっぱ、痕残ってたか。クソ。よりによってコイツに見られたか。心の中で盛大に舌打ちする。
黄金川が入ってきたから、ギリギリ傷を塞いだところで止めざるをえなかったんだよな……。
黒川は沈黙した俺に畳みかけるように追撃する。
「一つならまだわかるけど、二つって! 盛りすぎでしょ」
「……」
二つ痕が付くのは牙が口の両側にあるんだから構造上しかたない。さすがにその説明はできないので、ふいっとそっぽを向く。
もういっそ、結城とも仲いいヤツだから、味方につけた方がいいか?という計算が働いて、俺は微妙に反省した風な表情を作る。
「しょーがねーだろ、部活忙しくて、あんま会えねーんだから」
「そっか! 二口だけに二つってこと? もー、自己主張はげしー」
マーキングか! と、バシバシ俺をたたきながらケタケタと笑う。
いい加減『うるせーよ!』と黙らせようとしたけれど、ふと黒川が真面目な顔になってるのに気づいた。
「友紀いい子よね」
「は? 知ってるけど?」
かぶせ気味に言うと、黒川は驚いた顔をした。
「アンタが、そんな風に言うなんて、成長したわよねー」
そりゃ、俺の中学の頃は、まあ、色々あったけど……。高校に入ってからは結城一筋であるつもりだ。誤解させるようなことは一度してしまったが……。
「大事にはしてるつもりだけど?」
そう言うと、俺の胸を叩き念を押す。
「泣かせるようなこと、しちゃだめよ」
「しねーって!!」
そう言って睨みつけると、やっと納得したように笑い、ひらひらっと手を振って去っていく。
彼女の後ろ姿を見ながら思う。
まあ、黒川はいいやつだ。話せる奴なのはわかる。結城とはいい友達でいてくれると助かる。
心の中で『結城をよろしく』とつぶやく、と、それが届いたかのようなタイミングで
「あ、そうだ」
黒川はそう言って引き返してくる。そうしながら生徒手帳を開きカバーに挟まった何かを取り出し、俺の手の中に握り込ませた。
「?」
手を開く。銀色のアルミに包まれた、丸い輪郭……。これ、
「ちゃんと、避妊はするのよー」
「ば、バカ! うっせーわ!!! こんなの持ち歩いてんじゃねーよ!!!」
「あんたこそちゃんと持ちなさいよ。紳士の嗜みでしょー」
叩き返そうと黒川を捕まえようとするも、ひらりとかわされ、ケタケタ笑いながら駆けてゆく。
大声で避妊とか言ってんじゃねーよ! 通りすがりの生徒がびっくりした表情で俺とその手の中のブツを見ている。
やっぱ、コイツ、とんでもねぇな! 結城にはあんまり近づけさせたくない。
さすがにコレをいつまでも白日の元に晒すわけにはいかない。俺は銀色のソレをこそこそと制服のポケットにしまった。