Second grade of Highschool
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適切な恋愛をしましょう
私と二口くんが付き合い始めて二週間が経過した。
あんな告白をしてしまった後では、顔を合わせるのが気恥ずかしくてしょうがなかった。それは二口くんも同じだったようで、しばらくはつかず離れずな感じでいた。
クラスも違うし、『今は部活を優先したい』という二口くんの意向もあって、あまり二人になることはなかった。
告白の時以来、吸血はされていない。その理由を聞いてはいないけれど、薬もあるっていうことだから、それで衝動を抑えられているからなんじゃないかと推測した。
私から『吸って』って言うのも変だし。恥ずかしいし……。そこは二口くんに任せようと思った。
自分のバイトがない時には練習を見に行って、微力ながらマネージャーさん達のお手伝いをさせてもらったりする。
マネージャーさん達には速攻でバレた。これ以上早くは無理だっていうのに「報告が遅いのよ!」「なんなら、くっつくのが遅すぎる!」とどつかれ、洗いざらい吐かされた。もちろん、吸血のことは除いて。
二口くんの先輩にとっては最後の大会だから、部活で一緒に過ごせる日常が貴重なんじゃないかと思うと邪魔になりたくなくて、行ってもマネージャーさん達とばかり絡んでいた。
そんな風に、二口くんとは距離が遠い毎日を送っていた。
そして迎えた夏のインターハイ予選。
私はマネ先輩と伊達工の応援団の隣で観戦させてもらっていた。
烏野高校との試合。
二口くんがボールに滑り込みながら手を伸ばすけれど、追いつかない。それを見て、マネ先輩の手を力いっぱい握りしめてしまったけど、先輩は何も言わずに私の背中をさすってくれた。先輩の方が辛いはずなのに。
「もう、大丈夫です」と言おうとして、先輩の顔を見て口をつぐんだ。私の背中を無心にさすりながら、こぼれる涙もそのままに唇を震わせている。先輩は、そうすることで懸命に自分の感情を抑えているんだ……。
私は彼女の気が済むまで、なされるがままにされていた。
伊達工業高校はインターハイ地区予選二回戦で敗退した。
その後。
二口くんは茂庭さんに後を託され、伊達工業高校バレー部の主将になった。
茂庭さんとの引継ぎ後に会いたい、と彼に言われたので、部室棟の前のベンチで待っていた。
部室の扉が開く。先に出てきたのは茂庭さんだった。茂庭さんは私に気づくと、微笑を浮かべてこちらへとやってくる。私は立ち上がって茂庭さんに一礼した。
「茂庭さん。お疲れさまでした」
「結城」
「はい」
「これから二口が伊達工バレー部を引っ張っていく。結城は二口を支えてやってくれないか?」
真っ直ぐにこちらを見つめてくる真剣な瞳に、応えなくてはならないと思った。
佇まいを正しながら力強く頷く。
「はい!……色々とありがとうございました」
そう言って茂庭さんが差し出した手と握手を交わす。力強く温かい手だった。
茂庭さんは行ってしまった。二口くんは……まだ出てこない。中にはもう二口くんしかいないはずだ。私はノックをしてから部室のドアを開ける。
制服姿の二口くんがベンチの前で立ち尽くしていた。ドアが閉まる音を聞いて、私を見ないまま彼が口を開いた。
「……ここで、泣いていたんだ3年生は」
「そう……」
私は二口くんの隣に歩み寄る。何も言えなかった。掛ける言葉が見つからない。
だから彼の手を両手で握る。振りほどかれるのも覚悟していたけれど、力強く握り返してくれたのでほっとしたその時。
「……ねえ」
二口くんが甘えるような声で私を呼んだ。
視線を上げると、彼の瞳が、甘く揺らいで私を見ているのにドキッとした。
くすぐるように手のひらを手繰られ、指を絡めてから握り直される。
「これから、頑張るからさ……、ちょうだい」
そう言われて、血、のことだと思った。
私は恐る恐る顔を上向きにして、首筋を晒すようにする。
彼が妖艶に微笑む。
背中に手が回され、そのまま彼の顏が近づいてくるから、来るべき甘い痛みに備えて、目を閉じる。
「!!!」
二口くんの唇が触れたのは私の唇だった。
初めてのキス
いや、多分、これは2回目。
でも、彼と付き合ってからは、初めて……。
そんなことを思っているうちに、ゆっくりと唇が離れていく。
恐る恐る閉じていたまぶたを持ち上げると、目の前で名残り惜しそうに見つめられていて心臓がきゅっとする。その視線を受け止めきれなくて目を伏せると、もう一度顔が近づいてくる気配があって、私は後ずさってしまう。
「うーん」
「な、何?」
私を逃げられなくするかのように肩に手をかけられる。それでいて、何か納得いかなそうに首をかしげる二口くんに、少し不安になる。
「俺ら付き合ってるんだよな?」
「う? うん……」
「もっと、恋人らしいキスをしたいんだけど?」
彼の言葉に時間差で恥ずかしさが襲って来る。でも、だって、私、前回のは実感がない。だけど、多分今回のと同じようになされるがまま、なんだと思う。恋人になったら私からも、何かアクションとか、ムードとか作らないと、いけないの? 黙って目をつぶるだけじゃダメ?
「そんなこと言われても……突然、だったし」
「いや、そうじゃなくて……。これなら、子供でもできるだろ?」
混乱のままに出した言葉をカウンターで返されて一気に顔が熱くなった。
そんな、キスって、恋人同士がするものだと思ってたけど、これは違うの?
でも、これ以外のなんて、知らない……。
「え、それって、どういう……」
「例えば、こういうの?」
甘い視線で見つめられ口を噤む。瞳が勝手に潤んでいく。まばたきで誘われ、やっぱりなされるがまま目を閉じると、もう一度、優しく唇を合わせられる。ここまではさっきと一緒で……。
言葉を止めたまま半開きになっていた唇の隙間から、彼の舌が入ってきた。私の舌と合わせられ、首の皮膚を舐められるのとは段違いの、感触に、息が乱れる。
いつの間にか私の後頭部に回っている彼の手が、逃がさないとばかりに私を追い詰める。思考が止まる。
舌から与えられる切なさに私が耐えられなくなってくのを見越したように、支えを失う私の身体は彼に引き寄せられて、さらに口付けが深くなる悪循環。
もう、このまま溶けてしまいそう……。
呼吸さえもままならなくなってきて、ようやく唇が離れる。
濡れた瞼が重い。閉じたまま潤んでいる目をやっとのことで開くと、目の前で二口くんが甘やかに微笑んだ。
心臓がおかしくなるほどに暴れ、彼の腕の中で呼吸を整えようと四苦八苦していている私に対して、彼は息一つ乱さず穏やかだ。
周りの風景にようやく目が行く。
ここは……バレー部の部室だ。
ということは、学校……。
学校で、こんな、事をして、いいんだろうか。
言いようのない背徳感に、痛いほどに心臓が疼く。
そんな私の気も知らないで、二口くんは、甘く甘く、私を蕩けさせるように囁く。
「それじゃ、こっちも、いただきます、か……」
「あ……」
ぺろり、と
これから牙を挿し込む位置をマーキングするように舌先でもてあそぶ。
「もう……、いじわる……」
まだ息が整わないうちに首筋に唇を這わせるから、抗議の声を上げたつもりだったのに。
彼の瞳が赤く光ったのを見て、私はあきらめて瞼を下ろした。
私と二口くんが付き合い始めて二週間が経過した。
あんな告白をしてしまった後では、顔を合わせるのが気恥ずかしくてしょうがなかった。それは二口くんも同じだったようで、しばらくはつかず離れずな感じでいた。
クラスも違うし、『今は部活を優先したい』という二口くんの意向もあって、あまり二人になることはなかった。
告白の時以来、吸血はされていない。その理由を聞いてはいないけれど、薬もあるっていうことだから、それで衝動を抑えられているからなんじゃないかと推測した。
私から『吸って』って言うのも変だし。恥ずかしいし……。そこは二口くんに任せようと思った。
自分のバイトがない時には練習を見に行って、微力ながらマネージャーさん達のお手伝いをさせてもらったりする。
マネージャーさん達には速攻でバレた。これ以上早くは無理だっていうのに「報告が遅いのよ!」「なんなら、くっつくのが遅すぎる!」とどつかれ、洗いざらい吐かされた。もちろん、吸血のことは除いて。
二口くんの先輩にとっては最後の大会だから、部活で一緒に過ごせる日常が貴重なんじゃないかと思うと邪魔になりたくなくて、行ってもマネージャーさん達とばかり絡んでいた。
そんな風に、二口くんとは距離が遠い毎日を送っていた。
そして迎えた夏のインターハイ予選。
私はマネ先輩と伊達工の応援団の隣で観戦させてもらっていた。
烏野高校との試合。
二口くんがボールに滑り込みながら手を伸ばすけれど、追いつかない。それを見て、マネ先輩の手を力いっぱい握りしめてしまったけど、先輩は何も言わずに私の背中をさすってくれた。先輩の方が辛いはずなのに。
「もう、大丈夫です」と言おうとして、先輩の顔を見て口をつぐんだ。私の背中を無心にさすりながら、こぼれる涙もそのままに唇を震わせている。先輩は、そうすることで懸命に自分の感情を抑えているんだ……。
私は彼女の気が済むまで、なされるがままにされていた。
伊達工業高校はインターハイ地区予選二回戦で敗退した。
その後。
二口くんは茂庭さんに後を託され、伊達工業高校バレー部の主将になった。
茂庭さんとの引継ぎ後に会いたい、と彼に言われたので、部室棟の前のベンチで待っていた。
部室の扉が開く。先に出てきたのは茂庭さんだった。茂庭さんは私に気づくと、微笑を浮かべてこちらへとやってくる。私は立ち上がって茂庭さんに一礼した。
「茂庭さん。お疲れさまでした」
「結城」
「はい」
「これから二口が伊達工バレー部を引っ張っていく。結城は二口を支えてやってくれないか?」
真っ直ぐにこちらを見つめてくる真剣な瞳に、応えなくてはならないと思った。
佇まいを正しながら力強く頷く。
「はい!……色々とありがとうございました」
そう言って茂庭さんが差し出した手と握手を交わす。力強く温かい手だった。
茂庭さんは行ってしまった。二口くんは……まだ出てこない。中にはもう二口くんしかいないはずだ。私はノックをしてから部室のドアを開ける。
制服姿の二口くんがベンチの前で立ち尽くしていた。ドアが閉まる音を聞いて、私を見ないまま彼が口を開いた。
「……ここで、泣いていたんだ3年生は」
「そう……」
私は二口くんの隣に歩み寄る。何も言えなかった。掛ける言葉が見つからない。
だから彼の手を両手で握る。振りほどかれるのも覚悟していたけれど、力強く握り返してくれたのでほっとしたその時。
「……ねえ」
二口くんが甘えるような声で私を呼んだ。
視線を上げると、彼の瞳が、甘く揺らいで私を見ているのにドキッとした。
くすぐるように手のひらを手繰られ、指を絡めてから握り直される。
「これから、頑張るからさ……、ちょうだい」
そう言われて、血、のことだと思った。
私は恐る恐る顔を上向きにして、首筋を晒すようにする。
彼が妖艶に微笑む。
背中に手が回され、そのまま彼の顏が近づいてくるから、来るべき甘い痛みに備えて、目を閉じる。
「!!!」
二口くんの唇が触れたのは私の唇だった。
初めてのキス
いや、多分、これは2回目。
でも、彼と付き合ってからは、初めて……。
そんなことを思っているうちに、ゆっくりと唇が離れていく。
恐る恐る閉じていたまぶたを持ち上げると、目の前で名残り惜しそうに見つめられていて心臓がきゅっとする。その視線を受け止めきれなくて目を伏せると、もう一度顔が近づいてくる気配があって、私は後ずさってしまう。
「うーん」
「な、何?」
私を逃げられなくするかのように肩に手をかけられる。それでいて、何か納得いかなそうに首をかしげる二口くんに、少し不安になる。
「俺ら付き合ってるんだよな?」
「う? うん……」
「もっと、恋人らしいキスをしたいんだけど?」
彼の言葉に時間差で恥ずかしさが襲って来る。でも、だって、私、前回のは実感がない。だけど、多分今回のと同じようになされるがまま、なんだと思う。恋人になったら私からも、何かアクションとか、ムードとか作らないと、いけないの? 黙って目をつぶるだけじゃダメ?
「そんなこと言われても……突然、だったし」
「いや、そうじゃなくて……。これなら、子供でもできるだろ?」
混乱のままに出した言葉をカウンターで返されて一気に顔が熱くなった。
そんな、キスって、恋人同士がするものだと思ってたけど、これは違うの?
でも、これ以外のなんて、知らない……。
「え、それって、どういう……」
「例えば、こういうの?」
甘い視線で見つめられ口を噤む。瞳が勝手に潤んでいく。まばたきで誘われ、やっぱりなされるがまま目を閉じると、もう一度、優しく唇を合わせられる。ここまではさっきと一緒で……。
言葉を止めたまま半開きになっていた唇の隙間から、彼の舌が入ってきた。私の舌と合わせられ、首の皮膚を舐められるのとは段違いの、感触に、息が乱れる。
いつの間にか私の後頭部に回っている彼の手が、逃がさないとばかりに私を追い詰める。思考が止まる。
舌から与えられる切なさに私が耐えられなくなってくのを見越したように、支えを失う私の身体は彼に引き寄せられて、さらに口付けが深くなる悪循環。
もう、このまま溶けてしまいそう……。
呼吸さえもままならなくなってきて、ようやく唇が離れる。
濡れた瞼が重い。閉じたまま潤んでいる目をやっとのことで開くと、目の前で二口くんが甘やかに微笑んだ。
心臓がおかしくなるほどに暴れ、彼の腕の中で呼吸を整えようと四苦八苦していている私に対して、彼は息一つ乱さず穏やかだ。
周りの風景にようやく目が行く。
ここは……バレー部の部室だ。
ということは、学校……。
学校で、こんな、事をして、いいんだろうか。
言いようのない背徳感に、痛いほどに心臓が疼く。
そんな私の気も知らないで、二口くんは、甘く甘く、私を蕩けさせるように囁く。
「それじゃ、こっちも、いただきます、か……」
「あ……」
ぺろり、と
これから牙を挿し込む位置をマーキングするように舌先でもてあそぶ。
「もう……、いじわる……」
まだ息が整わないうちに首筋に唇を這わせるから、抗議の声を上げたつもりだったのに。
彼の瞳が赤く光ったのを見て、私はあきらめて瞼を下ろした。