Second grade of Highschool
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責任とってよね
A組を覗くと誰もいなかった。二口くんも青根くんも部活に行ってしまったようだ。
今日、話さなければいけない。昨日の今日でなければ、もう取り返しがつかないような気がする。
私は急いで体育館へと走った。部活が始まる前に間に合えば……。
「二口くん!」
体育館の入り口から、彼を呼ぶ。
二口くんと、周りにいたバレー部の人達がこちらを振り返る。背が大きい人達が一斉にこちらを注目してくるから一瞬ひるんだけれど、そんなのに負けてはいられない。
邪魔をしたいわけじゃない。たった一言だけ伝えられればいい。
こちらに向かって来てくれようとする二口くんを手で止めて、宣言するように私は声を張る。
「今日、一緒に帰れる?」
周りの部員が意味ありげにニヤっとしたけれどかまいやしなかった。
二口くんはこちらを見て微笑む。そして、よく通る声で言った。
「いーよ。終わるまで、待ってて」
◇◇◇
二口くんの部活が終わるまでの間、閉館時間まで図書室で時間をつぶすことにした。
うろうろと歩き回り開架の新刊コーナーから適当に二冊抜いてきた。図書室の窓際のテーブルに腰を下ろす。
真新しい恋愛小説。うちの高校でこんな本、誰のリクエストで入ったのだろう。参考にならないかとパラパラと目を通してみるも内容は頭に入ってこない。
今朝目覚めた時、私は去年の二口くんの誕生日のことを思い出せていた。
『俺、とんでもなくひどい奴かもしれないよ?』
はじめの違和感はこの言葉。
友達同士の戯れの会話の中で、私は二口くんのことが伊達工で一番好きだと言った。それに返す形で二口くんは『俺にダマされてない?』と私に言った後に続けた言葉。
どうして彼がこんなことを言ったのかわからなかった。
『結城は俺とは釣り合わねーよ』
次の違和感は、当時のクラスメイトに私とのことを聞かれたときに返した言葉。
『釣り合わない』と言われた理由がどうしてもわからなかった。だって、普通それを言うのは比較して劣ってる方だから。二口くんが私より劣っている所なんかどこにもないのに。
でも、私に聞かせようと思った言葉じゃないからこそ、これは二口くんの本音なんだと思った。教室の外でこの言葉を私が聞いてしまっていたことに彼は気づいていたと思う。それなのに、何も言わなかった。弁解をしなかった。
多分、これは私への警告だったんだ。二口くんは意識的に私を遠ざけようとしてくれていた。
昨年の二口くんの誕生日。
私は途中でありえないことに寝てしまっていた。気がついたときには、幸せな夢を見たという記憶だけあって、何で二口くんといる時に寝落ちしてしまったのか(それも外で)全く分からなかった。
点と点がつながる感覚。
二口くんに二回目の吸血をされたことで、記憶の蓋が開いたように思い出した。
彼は迷っていたんだと思う。多分、吸血するのは誕生日のその時一回きりのつもりだったんだと思う。
血が必要なら、私の恋心を利用して吸うだけ吸ってしまえばいい。
だけど彼はそれをしなかった。
それがどうしてなのか、今ならわかる。
二口くんは初めて吸血した時、私に拒絶されることを望んでいたんだ。
私は二口くんのことを好きだったから、彼が欲しいなら血をあげてもいいと思ってしまった。それで……。二口くんは私がそうすることをいいとは思わなかったんだ。彼の体質を知ってなお血を捧げようとする私が怖かったのかもしれない。
私は二口くんを諦めようとした。でも、彼は……。追いかけて来てくれた。
保健室で二口くんはすべてを話してくれて、私に選択肢をくれた。
逃げてもいいよ、と。
それは彼の優しさなんだと思う。
(でもね)
窓から差し込む日がだいぶ傾いて来ている。コツコツ近づいてくる人の足音。
彼に何て言ったらいいのかまだまとまっていない。
それでも……。
私の気持ちは決まっている。
閉館を告げに来てくれた人に軽く頭を下げ、立ち上がる。
恋愛小説は二冊とも開架に戻した。
A組を覗くと誰もいなかった。二口くんも青根くんも部活に行ってしまったようだ。
今日、話さなければいけない。昨日の今日でなければ、もう取り返しがつかないような気がする。
私は急いで体育館へと走った。部活が始まる前に間に合えば……。
「二口くん!」
体育館の入り口から、彼を呼ぶ。
二口くんと、周りにいたバレー部の人達がこちらを振り返る。背が大きい人達が一斉にこちらを注目してくるから一瞬ひるんだけれど、そんなのに負けてはいられない。
邪魔をしたいわけじゃない。たった一言だけ伝えられればいい。
こちらに向かって来てくれようとする二口くんを手で止めて、宣言するように私は声を張る。
「今日、一緒に帰れる?」
周りの部員が意味ありげにニヤっとしたけれどかまいやしなかった。
二口くんはこちらを見て微笑む。そして、よく通る声で言った。
「いーよ。終わるまで、待ってて」
◇◇◇
二口くんの部活が終わるまでの間、閉館時間まで図書室で時間をつぶすことにした。
うろうろと歩き回り開架の新刊コーナーから適当に二冊抜いてきた。図書室の窓際のテーブルに腰を下ろす。
真新しい恋愛小説。うちの高校でこんな本、誰のリクエストで入ったのだろう。参考にならないかとパラパラと目を通してみるも内容は頭に入ってこない。
今朝目覚めた時、私は去年の二口くんの誕生日のことを思い出せていた。
『俺、とんでもなくひどい奴かもしれないよ?』
はじめの違和感はこの言葉。
友達同士の戯れの会話の中で、私は二口くんのことが伊達工で一番好きだと言った。それに返す形で二口くんは『俺にダマされてない?』と私に言った後に続けた言葉。
どうして彼がこんなことを言ったのかわからなかった。
『結城は俺とは釣り合わねーよ』
次の違和感は、当時のクラスメイトに私とのことを聞かれたときに返した言葉。
『釣り合わない』と言われた理由がどうしてもわからなかった。だって、普通それを言うのは比較して劣ってる方だから。二口くんが私より劣っている所なんかどこにもないのに。
でも、私に聞かせようと思った言葉じゃないからこそ、これは二口くんの本音なんだと思った。教室の外でこの言葉を私が聞いてしまっていたことに彼は気づいていたと思う。それなのに、何も言わなかった。弁解をしなかった。
多分、これは私への警告だったんだ。二口くんは意識的に私を遠ざけようとしてくれていた。
昨年の二口くんの誕生日。
私は途中でありえないことに寝てしまっていた。気がついたときには、幸せな夢を見たという記憶だけあって、何で二口くんといる時に寝落ちしてしまったのか(それも外で)全く分からなかった。
点と点がつながる感覚。
二口くんに二回目の吸血をされたことで、記憶の蓋が開いたように思い出した。
彼は迷っていたんだと思う。多分、吸血するのは誕生日のその時一回きりのつもりだったんだと思う。
血が必要なら、私の恋心を利用して吸うだけ吸ってしまえばいい。
だけど彼はそれをしなかった。
それがどうしてなのか、今ならわかる。
二口くんは初めて吸血した時、私に拒絶されることを望んでいたんだ。
私は二口くんのことを好きだったから、彼が欲しいなら血をあげてもいいと思ってしまった。それで……。二口くんは私がそうすることをいいとは思わなかったんだ。彼の体質を知ってなお血を捧げようとする私が怖かったのかもしれない。
私は二口くんを諦めようとした。でも、彼は……。追いかけて来てくれた。
保健室で二口くんはすべてを話してくれて、私に選択肢をくれた。
逃げてもいいよ、と。
それは彼の優しさなんだと思う。
(でもね)
窓から差し込む日がだいぶ傾いて来ている。コツコツ近づいてくる人の足音。
彼に何て言ったらいいのかまだまとまっていない。
それでも……。
私の気持ちは決まっている。
閉館を告げに来てくれた人に軽く頭を下げ、立ち上がる。
恋愛小説は二冊とも開架に戻した。