Second grade of Highschool
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呪いがそろそろ解けるころ
「……くんのことが……好きです」
霞がかかっていて顔はよく見えないけれど、確かに彼は私の好きな人。
現実感のない沈黙の中、心臓がドキドキと激しく鼓動を打つ。
彼の薄い唇の端が吊り上がり赤い弧を描く。
長い腕が私の身体を抱き寄せ、私は満ち足りた気持ちになっているのを感じた。
◇◇◇
幸せな夢を見た気がする。
起き抜けにいい気分で洗面所の鏡を見た。顔色も悪くない。
寝ぐせを直すためにブラシをとる。首筋にかかった髪の毛を払うと、右の首筋にぽつっと赤い痕。覚えがない。
触ってみる。傷跡のような盛り上がりはない。まさか……キスマーク?
あ、そうだ。
これ。
二口くんにつけられたやつだ。保健室で血を吸われた時に。
傷は塞いでくれたけど、痕は残っちゃったのかー。
……。
……………?!
今、私、なんて?!
◇◇◇
今日の1、2限はA組との合同授業。
前の方の席にいる、二口くんの姿を見る。隣の席の人と話しながら課題に取り組んでいる。様子は特に変わりはない。顔色も良さそうだし、元気そうだ。
昨日、二口くんに、首から血を吸われた。
どういうこと? そんなことってありえる?
この記憶が本物なのかどうか、現実感がなさすぎで確信が持てない。その前に、私が……。二口くんに告白したような記憶もある気がする。彼の返事が何だったのか全く記憶がないから、夢の中の出来事のような気もする。
どこまでが夢でどこからが現実なのかの境界線がはっきりしない。第一、そんな風に血を吸われたら首に穴が開いているはず。
じゃあ、この痕は何?
「結城!」
隣の席の小原くんが私の名前を怒鳴って、私は我に返った。指先に熱が走る。
「くっ……」
慌てて手を引っ込めて指先を抑える。
熱い。流れる血。
「ぼーっとすんな! バカタレ! 保健室行って来い!」
電ノコが掠めて手を切ってしまった。ぱっくり裂けた指先を押さえていると、血相を変えた先生がタオルを投げてくれたのを小原くんがキャッチし私に手際よく巻き付ける。じんじんする傷口の痛みに、これが現実であることを思い知らされた。
「強めに巻くけど、大丈夫か?」
「……うん」
小原くんが私の手を強く押さえつけて止血してくれている。
圧迫される痛みに思わず眉をしかめているところにもう一人誰かが来て私の肩を抱いた。
「せんせー、俺、保健委員なんで、結城さん連れてきまーす」
ざわざわとした教室内に通ったのは二口くんの声だった。
「二口、お前A組だろ」
「B組の保健委員結城さんなんすよ」
二口くんは「代わる」と小声で小原くんに言うと、私の傷口を押さえている手を交代する。
立ち尽くす私に目線を合わせるようにかがみ「歩ける?」と小声で囁く。私は力の入らない頭をやっと縦にふった。
先生は渋々といった様子で「それなら、二口、頼む」と、私と二口くんを送り出した。
教室から出たところで二口くんは立ち止まった。私の手に巻き付けたタオルが取れないよう押さえてくれているからなんだけど、このままではちょっと歩きにくい。
「……手は、自分で押さえる」
「大丈夫か?」
「うん……」
タオルで手をぐるぐる巻きにしてある。二口くんは慎重にそこから手を離して私に戻した。
正直手に力は入らないけれど、そこまで出血量も多くなさそうだ。保健室へは一人でも大丈夫そうだけど、彼がついてきてくれるなら心強い。
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「いいって」
二口くんは触れるか触れないかの微妙な距離で抱えるようにしながら、ゆっくりと私を保健室へ連れていってくれた。
「……くんのことが……好きです」
霞がかかっていて顔はよく見えないけれど、確かに彼は私の好きな人。
現実感のない沈黙の中、心臓がドキドキと激しく鼓動を打つ。
彼の薄い唇の端が吊り上がり赤い弧を描く。
長い腕が私の身体を抱き寄せ、私は満ち足りた気持ちになっているのを感じた。
◇◇◇
幸せな夢を見た気がする。
起き抜けにいい気分で洗面所の鏡を見た。顔色も悪くない。
寝ぐせを直すためにブラシをとる。首筋にかかった髪の毛を払うと、右の首筋にぽつっと赤い痕。覚えがない。
触ってみる。傷跡のような盛り上がりはない。まさか……キスマーク?
あ、そうだ。
これ。
二口くんにつけられたやつだ。保健室で血を吸われた時に。
傷は塞いでくれたけど、痕は残っちゃったのかー。
……。
……………?!
今、私、なんて?!
◇◇◇
今日の1、2限はA組との合同授業。
前の方の席にいる、二口くんの姿を見る。隣の席の人と話しながら課題に取り組んでいる。様子は特に変わりはない。顔色も良さそうだし、元気そうだ。
昨日、二口くんに、首から血を吸われた。
どういうこと? そんなことってありえる?
この記憶が本物なのかどうか、現実感がなさすぎで確信が持てない。その前に、私が……。二口くんに告白したような記憶もある気がする。彼の返事が何だったのか全く記憶がないから、夢の中の出来事のような気もする。
どこまでが夢でどこからが現実なのかの境界線がはっきりしない。第一、そんな風に血を吸われたら首に穴が開いているはず。
じゃあ、この痕は何?
「結城!」
隣の席の小原くんが私の名前を怒鳴って、私は我に返った。指先に熱が走る。
「くっ……」
慌てて手を引っ込めて指先を抑える。
熱い。流れる血。
「ぼーっとすんな! バカタレ! 保健室行って来い!」
電ノコが掠めて手を切ってしまった。ぱっくり裂けた指先を押さえていると、血相を変えた先生がタオルを投げてくれたのを小原くんがキャッチし私に手際よく巻き付ける。じんじんする傷口の痛みに、これが現実であることを思い知らされた。
「強めに巻くけど、大丈夫か?」
「……うん」
小原くんが私の手を強く押さえつけて止血してくれている。
圧迫される痛みに思わず眉をしかめているところにもう一人誰かが来て私の肩を抱いた。
「せんせー、俺、保健委員なんで、結城さん連れてきまーす」
ざわざわとした教室内に通ったのは二口くんの声だった。
「二口、お前A組だろ」
「B組の保健委員結城さんなんすよ」
二口くんは「代わる」と小声で小原くんに言うと、私の傷口を押さえている手を交代する。
立ち尽くす私に目線を合わせるようにかがみ「歩ける?」と小声で囁く。私は力の入らない頭をやっと縦にふった。
先生は渋々といった様子で「それなら、二口、頼む」と、私と二口くんを送り出した。
教室から出たところで二口くんは立ち止まった。私の手に巻き付けたタオルが取れないよう押さえてくれているからなんだけど、このままではちょっと歩きにくい。
「……手は、自分で押さえる」
「大丈夫か?」
「うん……」
タオルで手をぐるぐる巻きにしてある。二口くんは慎重にそこから手を離して私に戻した。
正直手に力は入らないけれど、そこまで出血量も多くなさそうだ。保健室へは一人でも大丈夫そうだけど、彼がついてきてくれるなら心強い。
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「いいって」
二口くんは触れるか触れないかの微妙な距離で抱えるようにしながら、ゆっくりと私を保健室へ連れていってくれた。