First grade of Highschool
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もうあの頃にはいられない
「結城じゃねーか!!!」
「……西谷くん?」
春休み。県民体育大会が比較的うちに近いところの体育館であると茂庭さんが教えてくれたので来てみた。
ここに来ることは誰にも言っていない。気づかれないならそれでいいと思っていた。
同じ中学だった西谷くんは、かなり小柄だ。
それでも、結構な強豪だった私の母校、千鳥山中バレー部の中心人物だった。
「久しぶりだな!どうして、お前ここにいんだ?応援か?」
「そう。クラスの……友達が出るから、その応援」
「そうか!じゃあ、俺のとこと当たったら敵だな!」
そう言ってニカっと笑う西谷くんは、中学の時と全然変わってなくて何だかほっとする。
「相手ウチじゃないとことの試合だったら応援するよ。頑張ってね」
「おう! じゃーな!結城」
「うん、またね」
そう言って手を振って別れる。
オレンジ色のユニフォームを着た西谷くんは黒いユニフォームの人たちと合流する。
一人だけ違う色のユニフォーム。確かポジションでそういうのがあるっていうけど、なんて名前だったっけ。
そんなことを思いながら彼の後ろ姿を見送っていると後ろから声をかけられた。
「結城?」
「二口くん……」
振り返ると、ユニフォーム姿に肩からジャージをかけている二口くんがいた。
番号が変わっている。6番。
話しかけられたのはもうずいぶんと久しぶりの事のように感じる。
顔に笑顔がない。試合前でぴりぴりしてるのかな、と思った。
「アイツ、誰?」
遠ざかっていく西谷くんを指さして言う。
「……中学が一緒だった西谷くん。カラスノ高校の選手だよ」
西谷くんにも二口くんにも同じようなことを言っているなと思った。
「カラスノ……」
二口くんが西谷くんの去っていった方を見ながら呟いた。
「結城、どこの応援に来たの?」
「どこって……うちの応援だよ」
「……そっか」
違うチームの応援にわざわざ来たんだと思われたんだろうか。二口くんを応援しにきたのに。
心がすっと冷える。
迷惑なのかな。でも、これだけは言っておきたかった。
「……がんばってね」
「……うん」
二口くんは口元だけ笑うと、そのままコートの方へ走り去っていった。
◇◇◇
うちと烏野高校は共に勝ち上がり、奇しくも二回戦で対戦することになった。
「すっげーよな、あのリベロ」
「うん…すげえレベル高い」
「けど…攻撃がなあ」
青根くんと二口くんが前衛の時のブロックは圧巻だった。
相手のスパイカーが来る場所にざっと入り込むと一瞬で高い壁を築き、ことごとく敵の攻撃を跳ね返していく。
ハイタッチを交わす青根くんと二口くん。その一瞬だけ緩んだ表情も、相手コートの方を向いた時にはもう、鋭い視線が静かに相手を捕えている。
青根くんは烏野のエースに照準を合わせている。でも二口くんが見ている方向は少し青根くんとはずれているように感じた。
伊達工のブロックが跳ね返したボールを西谷くんが拾う、セッターがまたボールを上がる。
でも、烏野の3番が動かない。
戦意……喪失?
ぞわっと背筋に寒気が走る。
……こんなことってあるんだ。
慌てた烏野の1番の選手が自分の方へトスを呼ぶ。
ピッ ピピーッ
25-15
試合はそのまま伊達工が2セットを連取して勝利した。
「クッソぉ!!!」
床を拳で叩きつける西谷くんを、二口くんが静かに見下ろす。
その目は……今までに見たこともないぐらい冷たかった。
私の背筋がまたすっと冷える。
なんで、西谷くんに……?
わからなかった。二口くんが対戦相手にそこまで冷たい目を向ける理由が。
伊達工の選手がギャラリーの観客に向かって一列に並ぶ。その列の中に二口くんが遅れて入った。
「整列!」
茂庭さんの声が響く。
選手たちに拍手をしながらも、自分の今の所属の、二口くんと青根くん茂庭さんがいる伊達工業を応援していたはずなのに、心の奥で痛々しい西谷くんがいる烏野に同情する気持ちが沸き起こってスッキリと喜べない自分に気づいた。
「ありがとうございました!」
「「「「したーーーーっ!!!」」」」
バレー部員が一礼をする。
顔を上げた二口くんが、私を見つける。
さっき、西谷くんを見た目と同じ冷たい目。
まるで私が烏野に心を寄せてしまったことを咎めるように。
私が西谷くんと……話していたから……?
二口くんの口角が上がった。
私を睨みつけたまま笑ってる。
背筋が凍る。
初めて二口くんが怖いと思った。
伊達工業は勝ち残っていたけど、私は体育館を後にした。
次の試合なんて……。二口くんを冷静に見ることができないと思ったから。
「結城じゃねーか!!!」
「……西谷くん?」
春休み。県民体育大会が比較的うちに近いところの体育館であると茂庭さんが教えてくれたので来てみた。
ここに来ることは誰にも言っていない。気づかれないならそれでいいと思っていた。
同じ中学だった西谷くんは、かなり小柄だ。
それでも、結構な強豪だった私の母校、千鳥山中バレー部の中心人物だった。
「久しぶりだな!どうして、お前ここにいんだ?応援か?」
「そう。クラスの……友達が出るから、その応援」
「そうか!じゃあ、俺のとこと当たったら敵だな!」
そう言ってニカっと笑う西谷くんは、中学の時と全然変わってなくて何だかほっとする。
「相手ウチじゃないとことの試合だったら応援するよ。頑張ってね」
「おう! じゃーな!結城」
「うん、またね」
そう言って手を振って別れる。
オレンジ色のユニフォームを着た西谷くんは黒いユニフォームの人たちと合流する。
一人だけ違う色のユニフォーム。確かポジションでそういうのがあるっていうけど、なんて名前だったっけ。
そんなことを思いながら彼の後ろ姿を見送っていると後ろから声をかけられた。
「結城?」
「二口くん……」
振り返ると、ユニフォーム姿に肩からジャージをかけている二口くんがいた。
番号が変わっている。6番。
話しかけられたのはもうずいぶんと久しぶりの事のように感じる。
顔に笑顔がない。試合前でぴりぴりしてるのかな、と思った。
「アイツ、誰?」
遠ざかっていく西谷くんを指さして言う。
「……中学が一緒だった西谷くん。カラスノ高校の選手だよ」
西谷くんにも二口くんにも同じようなことを言っているなと思った。
「カラスノ……」
二口くんが西谷くんの去っていった方を見ながら呟いた。
「結城、どこの応援に来たの?」
「どこって……うちの応援だよ」
「……そっか」
違うチームの応援にわざわざ来たんだと思われたんだろうか。二口くんを応援しにきたのに。
心がすっと冷える。
迷惑なのかな。でも、これだけは言っておきたかった。
「……がんばってね」
「……うん」
二口くんは口元だけ笑うと、そのままコートの方へ走り去っていった。
◇◇◇
うちと烏野高校は共に勝ち上がり、奇しくも二回戦で対戦することになった。
「すっげーよな、あのリベロ」
「うん…すげえレベル高い」
「けど…攻撃がなあ」
青根くんと二口くんが前衛の時のブロックは圧巻だった。
相手のスパイカーが来る場所にざっと入り込むと一瞬で高い壁を築き、ことごとく敵の攻撃を跳ね返していく。
ハイタッチを交わす青根くんと二口くん。その一瞬だけ緩んだ表情も、相手コートの方を向いた時にはもう、鋭い視線が静かに相手を捕えている。
青根くんは烏野のエースに照準を合わせている。でも二口くんが見ている方向は少し青根くんとはずれているように感じた。
伊達工のブロックが跳ね返したボールを西谷くんが拾う、セッターがまたボールを上がる。
でも、烏野の3番が動かない。
戦意……喪失?
ぞわっと背筋に寒気が走る。
……こんなことってあるんだ。
慌てた烏野の1番の選手が自分の方へトスを呼ぶ。
ピッ ピピーッ
25-15
試合はそのまま伊達工が2セットを連取して勝利した。
「クッソぉ!!!」
床を拳で叩きつける西谷くんを、二口くんが静かに見下ろす。
その目は……今までに見たこともないぐらい冷たかった。
私の背筋がまたすっと冷える。
なんで、西谷くんに……?
わからなかった。二口くんが対戦相手にそこまで冷たい目を向ける理由が。
伊達工の選手がギャラリーの観客に向かって一列に並ぶ。その列の中に二口くんが遅れて入った。
「整列!」
茂庭さんの声が響く。
選手たちに拍手をしながらも、自分の今の所属の、二口くんと青根くん茂庭さんがいる伊達工業を応援していたはずなのに、心の奥で痛々しい西谷くんがいる烏野に同情する気持ちが沸き起こってスッキリと喜べない自分に気づいた。
「ありがとうございました!」
「「「「したーーーーっ!!!」」」」
バレー部員が一礼をする。
顔を上げた二口くんが、私を見つける。
さっき、西谷くんを見た目と同じ冷たい目。
まるで私が烏野に心を寄せてしまったことを咎めるように。
私が西谷くんと……話していたから……?
二口くんの口角が上がった。
私を睨みつけたまま笑ってる。
背筋が凍る。
初めて二口くんが怖いと思った。
伊達工業は勝ち残っていたけど、私は体育館を後にした。
次の試合なんて……。二口くんを冷静に見ることができないと思ったから。