First grade of Highschool
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再生の仕方を知らない
付き合うふりをするのを断ってから二口くんと気まずくなってしまった。
無視してるとか話さないとか、そういうことはない。他の人と同じように接することはできるのに、なんとなく自分からは近づけない。
なんでこんなことになってしまったんだろう……。ため息をつきながら職員室の扉を閉める。渡されたクラス人数分のプリントの重さが気分にのしかかる。
階段を上がっていく。1年の教室がある階に来て、その手前にある空き教室の前まで来た時、中からガサガサっと物音が聞こえた。扉はほんの少しだけ開いている。
空き教室はこっそり使われているコトがあるのが生徒間の暗黙の了解だ。もしかするとデート中かもしれない。邪魔をしないように足早に進もうとすると、
『口にじゃなくてもいいっすか?』
びくっと体が反応して足を止める。……二口くんの声だ。
『フフッ、いいわよ……はじめはね』
この、声は、権田先輩?
中に……二人が一緒にいるの?
私は足音を潜めて扉に近づく。扉の隙間から中が見える。金縛りにかかったような体を必死で動かして隙間から中を覗く。
スチール棚の奥に人影が二つ。二口くんの後ろ姿。
その背中に絡みつく二つの腕。
何?なんで……。
次の瞬間、信じられないものを私は見た。
権田先輩の……、首筋に口づけをする二口くん。
数秒だったのかもしれない、けれど私には時が止まってしまったようだった。再度時間が動いたのは、二口くんの背中越しに、うっとりとした焦点の合っていない権田先輩の顔を見せられたことだった。
……何をしているの?
スイッチが切れたように力の入らない腕からプリントが落ちバサッと音を立てる。その音に背を向けていた二口くんが振り返った。立ち尽くした私と目が合う。
「……ご、ゴメン」
自分の身体にようやく電気が流れて動かせるようになった感じだ。私は一心不乱にプリントをかき集め、逃げるように走り出す。
1Aの教卓へプリントを置き、階段の最上階まで駆け上がる。屋上への扉は鍵がかかっていた。
「ハァ……、ハァ」
口の中に血の味がするほど心臓が脈打つ。
自然とボロボロとこぼれる涙。
二口、くんが権田先輩と……。
「ハァ……、ふっ、フフフ」
二人は付き合っているのかな?付き合っているんだよね……?
誰かに話を聞いて欲しいと思った。私の失恋話を一緒に笑い飛ばして欲しい。でも、その誰かが思い浮かばない。
そうか……。こういう時私は。すごくショックなことが起きた時に私は。
二口くんにそばにいて欲しいんだ。
でも、私の失恋話は、二口くんには、二口くんにだけは聞かせられない。
どうしてもそれは無理。そう思うと涙があふれてくる。
どうしよう。止まらない。次から次へと流れるそれを、子供のように両手でぬぐい取る。
あ、目元こすっちゃった。きっと、私は今、ひどい顔になっちゃってる。
始業のチャイムが鳴りはじめたけれど、私はそこから動くことができなかった。
付き合うふりをするのを断ってから二口くんと気まずくなってしまった。
無視してるとか話さないとか、そういうことはない。他の人と同じように接することはできるのに、なんとなく自分からは近づけない。
なんでこんなことになってしまったんだろう……。ため息をつきながら職員室の扉を閉める。渡されたクラス人数分のプリントの重さが気分にのしかかる。
階段を上がっていく。1年の教室がある階に来て、その手前にある空き教室の前まで来た時、中からガサガサっと物音が聞こえた。扉はほんの少しだけ開いている。
空き教室はこっそり使われているコトがあるのが生徒間の暗黙の了解だ。もしかするとデート中かもしれない。邪魔をしないように足早に進もうとすると、
『口にじゃなくてもいいっすか?』
びくっと体が反応して足を止める。……二口くんの声だ。
『フフッ、いいわよ……はじめはね』
この、声は、権田先輩?
中に……二人が一緒にいるの?
私は足音を潜めて扉に近づく。扉の隙間から中が見える。金縛りにかかったような体を必死で動かして隙間から中を覗く。
スチール棚の奥に人影が二つ。二口くんの後ろ姿。
その背中に絡みつく二つの腕。
何?なんで……。
次の瞬間、信じられないものを私は見た。
権田先輩の……、首筋に口づけをする二口くん。
数秒だったのかもしれない、けれど私には時が止まってしまったようだった。再度時間が動いたのは、二口くんの背中越しに、うっとりとした焦点の合っていない権田先輩の顔を見せられたことだった。
……何をしているの?
スイッチが切れたように力の入らない腕からプリントが落ちバサッと音を立てる。その音に背を向けていた二口くんが振り返った。立ち尽くした私と目が合う。
「……ご、ゴメン」
自分の身体にようやく電気が流れて動かせるようになった感じだ。私は一心不乱にプリントをかき集め、逃げるように走り出す。
1Aの教卓へプリントを置き、階段の最上階まで駆け上がる。屋上への扉は鍵がかかっていた。
「ハァ……、ハァ」
口の中に血の味がするほど心臓が脈打つ。
自然とボロボロとこぼれる涙。
二口、くんが権田先輩と……。
「ハァ……、ふっ、フフフ」
二人は付き合っているのかな?付き合っているんだよね……?
誰かに話を聞いて欲しいと思った。私の失恋話を一緒に笑い飛ばして欲しい。でも、その誰かが思い浮かばない。
そうか……。こういう時私は。すごくショックなことが起きた時に私は。
二口くんにそばにいて欲しいんだ。
でも、私の失恋話は、二口くんには、二口くんにだけは聞かせられない。
どうしてもそれは無理。そう思うと涙があふれてくる。
どうしよう。止まらない。次から次へと流れるそれを、子供のように両手でぬぐい取る。
あ、目元こすっちゃった。きっと、私は今、ひどい顔になっちゃってる。
始業のチャイムが鳴りはじめたけれど、私はそこから動くことができなかった。