First grade of Highschool
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付かず離れず、離れられず
昼休みの保健委員の当番を終え、中途半端な時間に教室に戻ってきた。教室の中は、何人かいる気配がする。
「二口さー、なんで結城と付き合わねーの?」
中から乾くんの声がした。二口くんと私の名前が聞こえて、戸を開けようとした手を反射的に引っ込める。
「どう見てもお前ら両想いじゃん」
両想い。
その言葉に胸が痛くなる。
私が二口くんを好きなことは……。まあ、バレてるか。
でも傍から見ると、二口くんも私を好きなように見えるんだ。それは嬉しいけれど……。
聞き耳を立てるつもりはなかったけど、話の内容が気になって中に入れない。
「もうさー、『二口と取り持ってくれ』とか『結城と付き合いたい』とかゴロゴロしてるんだよ。もうお前らでまとまって、静かにさせてくんね?」
乾くんがうんざりした口調で言う。3年生にお兄さんがいてサッカー部の乾くんは上にも横にも顏が広い。1ーAの窓口的存在だ。
「俺のとこに直接来たのは断ってるから、それでよくね?」
「結城も全部断ってるし誰も先に進めねーじゃん」
「次行けよ、次」
「だから!お前らが二人フリーで残ってるから、次に行けねぇんだろーがよ」
「俺は今誰と付き合う気もないんだよ。放っとけよ」
「結城が断ってるのはお前待ちなんじゃないの?」
「それは結城の勝手だろ?俺がとやかく言うことじゃねーよ」
あきれた調子の二口くんの声。乾くんは食い下がる。
「何で結城と付き合わねーんだよ」
「俺、部活忙しくてかまえねぇもん」
「えー。結城なら分かってくれそうじゃん」
「付き合っても付き合わなくても変わらないんだから、今のままでいいんだって」
「じゃ、お前、結城に付き合ってって言われたらどうするんだよ」
ギクッとする。……やだな。乾くん、そんなの聞かないでよ……。
でも気になってしまう。知らず知らずのうちに息をひそめ二口くんの答えを待つ。沈黙が怖い。
「今は断るよ」
しばらくして紡がれた彼の声に、心臓にひゅっと穴を開けられた気がした。
今、私が告白しても断られる……。でも、しょうがない。だって二口くんは部活で忙しいから。即答じゃなくて、少し考えてくれたのは、希望を持っていいのかな……。
なんて、心の中で必死に可能性を探す私はバカみたいだ。
「お前そんなこと言って、結城に彼氏ができそうになったら全力で阻止するんだろ?」
「そこは結城さんを信じますー」
「はー!?お前、最低だな」
「最低だよ、俺は。俺は性格悪いんだよ。だから結城とは釣り合わねーよ」
二口くんの言葉が刺さる。私と釣り合わない、ってなんで?そんな風に思わせること何かあった?思いを巡らせて、気づいてしまった。
……そういえば、私、言われてる。
『大丈夫?俺に騙されてない?』
背筋が凍りついた。
その瞬間、がたっと椅子をひく音がした。足音がこっちに近づいてくる。はっとなってここから離れようとしたけど、心が受けた衝撃に体がついていかない。
立ち尽くしていると戸が開いてしまった。
「結城?」
びっくりした顔で二口くんが私を見つける。
……今来たコトにするしかない。少しだけ働いた頭で足を一歩進め無理やり笑顔を作る。
二口くんは何か言いたげに私を見ると、ぽんぽんっと私の頭を二度撫で、そのまま去って行ってしまった。
「……」
「ったく、何だよあれ」
続けて出て来た乾くんが二口くんの後ろ姿を見てため息をつく。
「アシストしてやるつもりだったんだけどな」
「……大丈夫」
余計なこと、しないでいいよ。
「アイツ、何をこじらせてるんだろうな」
「大丈夫だって」
そう言いながら、彼の背中を音が出るほどの勢いで叩く。
「っ、痛ってーな!」
顔をしかめて振り返る乾くんに思いっきり笑って見せる。さっきより上手く笑えた気がする。でも内心はざわついてしょうがない。
どうして、自分の事をそんな風に言うんだろうか。
付き合わない。私に告白されても断る。と言われたことよりも、自分のことを『最低』とまで言った上で、『私と釣り合わない』と言われたことがショックだった。何が彼にそう思わせているのかが全く分からない。
私は少なくとも嫌われてはいないのかな。二口くんを好きな気持ちはそのままでいいのかな。
それなら、今まで通り。このままでいよう。私の想いは外に出さないようにしよう。
そう決意はしたものの、どうしようもなく心は動揺していた。
昼休みの保健委員の当番を終え、中途半端な時間に教室に戻ってきた。教室の中は、何人かいる気配がする。
「二口さー、なんで結城と付き合わねーの?」
中から乾くんの声がした。二口くんと私の名前が聞こえて、戸を開けようとした手を反射的に引っ込める。
「どう見てもお前ら両想いじゃん」
両想い。
その言葉に胸が痛くなる。
私が二口くんを好きなことは……。まあ、バレてるか。
でも傍から見ると、二口くんも私を好きなように見えるんだ。それは嬉しいけれど……。
聞き耳を立てるつもりはなかったけど、話の内容が気になって中に入れない。
「もうさー、『二口と取り持ってくれ』とか『結城と付き合いたい』とかゴロゴロしてるんだよ。もうお前らでまとまって、静かにさせてくんね?」
乾くんがうんざりした口調で言う。3年生にお兄さんがいてサッカー部の乾くんは上にも横にも顏が広い。1ーAの窓口的存在だ。
「俺のとこに直接来たのは断ってるから、それでよくね?」
「結城も全部断ってるし誰も先に進めねーじゃん」
「次行けよ、次」
「だから!お前らが二人フリーで残ってるから、次に行けねぇんだろーがよ」
「俺は今誰と付き合う気もないんだよ。放っとけよ」
「結城が断ってるのはお前待ちなんじゃないの?」
「それは結城の勝手だろ?俺がとやかく言うことじゃねーよ」
あきれた調子の二口くんの声。乾くんは食い下がる。
「何で結城と付き合わねーんだよ」
「俺、部活忙しくてかまえねぇもん」
「えー。結城なら分かってくれそうじゃん」
「付き合っても付き合わなくても変わらないんだから、今のままでいいんだって」
「じゃ、お前、結城に付き合ってって言われたらどうするんだよ」
ギクッとする。……やだな。乾くん、そんなの聞かないでよ……。
でも気になってしまう。知らず知らずのうちに息をひそめ二口くんの答えを待つ。沈黙が怖い。
「今は断るよ」
しばらくして紡がれた彼の声に、心臓にひゅっと穴を開けられた気がした。
今、私が告白しても断られる……。でも、しょうがない。だって二口くんは部活で忙しいから。即答じゃなくて、少し考えてくれたのは、希望を持っていいのかな……。
なんて、心の中で必死に可能性を探す私はバカみたいだ。
「お前そんなこと言って、結城に彼氏ができそうになったら全力で阻止するんだろ?」
「そこは結城さんを信じますー」
「はー!?お前、最低だな」
「最低だよ、俺は。俺は性格悪いんだよ。だから結城とは釣り合わねーよ」
二口くんの言葉が刺さる。私と釣り合わない、ってなんで?そんな風に思わせること何かあった?思いを巡らせて、気づいてしまった。
……そういえば、私、言われてる。
『大丈夫?俺に騙されてない?』
背筋が凍りついた。
その瞬間、がたっと椅子をひく音がした。足音がこっちに近づいてくる。はっとなってここから離れようとしたけど、心が受けた衝撃に体がついていかない。
立ち尽くしていると戸が開いてしまった。
「結城?」
びっくりした顔で二口くんが私を見つける。
……今来たコトにするしかない。少しだけ働いた頭で足を一歩進め無理やり笑顔を作る。
二口くんは何か言いたげに私を見ると、ぽんぽんっと私の頭を二度撫で、そのまま去って行ってしまった。
「……」
「ったく、何だよあれ」
続けて出て来た乾くんが二口くんの後ろ姿を見てため息をつく。
「アシストしてやるつもりだったんだけどな」
「……大丈夫」
余計なこと、しないでいいよ。
「アイツ、何をこじらせてるんだろうな」
「大丈夫だって」
そう言いながら、彼の背中を音が出るほどの勢いで叩く。
「っ、痛ってーな!」
顔をしかめて振り返る乾くんに思いっきり笑って見せる。さっきより上手く笑えた気がする。でも内心はざわついてしょうがない。
どうして、自分の事をそんな風に言うんだろうか。
付き合わない。私に告白されても断る。と言われたことよりも、自分のことを『最低』とまで言った上で、『私と釣り合わない』と言われたことがショックだった。何が彼にそう思わせているのかが全く分からない。
私は少なくとも嫌われてはいないのかな。二口くんを好きな気持ちはそのままでいいのかな。
それなら、今まで通り。このままでいよう。私の想いは外に出さないようにしよう。
そう決意はしたものの、どうしようもなく心は動揺していた。