First grade of Highschool
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隙あらば好き
合宿最終日。
マネージャーさんたちから「今回の合宿の食事の手伝いをしてくれた結城友紀さんですー」と紹介され、拍手と口笛に囲まれ赤い顔でお辞儀した。口々にねぎらいの言葉をかけてくれる部員さんたちに「い、いや、私がやったことなんて、材料切っただけです……」と返すのが精一杯だった。
「よかったー!友紀ちゃん来てくれて!」
「はい。今日はバイトなしなので一日お手伝いします」
「ありがとー!超助かるー!」
滑津さんと先輩マネさんに囲まれて、ごはんとお味噌汁の配膳を手伝う。
「このまま本当にマネージャーになってくれると、嬉しいんだけどなー」
私もそうしたいんだけどな、と心の中で思っていると、
「せんぱーい、結城のスカウトは俺を通してくださいー」
と、トレイを持った二口くんがやってきた。
「ちょっと!なんでそこで二口が出てくるのよ!」
「結城、俺んとこの所属なんで」
「え……?」
「はぁ?!どういうこと?」
私がびっくりしている間に滑津さんが突っ込むと、二口くんはニヤリと笑った。
「冗談だって。ま、結城はやることあるからな」
「え、そうなの?」
先輩マネさんがこちらを見る。
「あ、はい。これからの学費稼ぎのためにバイトしてまして……」
そう言うと「そっかぁ。じゃ、難しいよねー」と先輩マネさんが納得したように言う横で滑津さんが叫ぶ。
「待って待って。なんで二口が友紀ちゃんの横の席座るのよ!」
「はぁ?別にいーだろ、席なんていつも決められてねーじゃん」
「青根!連れてって」
滑津さんのその声にどこからともなく音もなく青根くんがやってきた。
「……二口、こっちだ」
「ちょ、青根!」
青根くんに引きずられながらも、トレイは水平を死守する二口くんのバランス感覚に感心しつつ笑ってしまった。
◇◇◇
マネさん達と私は食堂の端にある4人掛けのテーブルを陣取った。炊飯器や鍋から一番遠い席。『おかわりぐらい自分でやれ!』の意思表明ってことでそこをマネージャーさん達の席にしているそうだ。おつよい。
正面に先輩マネさん、その隣に滑津さん。
「で、二口と付き合ってんの?」
「そーそー!私も気になってた!」
いきなりの滑津さんの切り出しに先輩マネさんの追撃。私は慌てて首を横に振る。
「いえ!付き合ってないです。クラスで女子一人なので、それでいつも助けられてます」
「え?二口が?」
目をぱちくりとする滑津さん。
「……ふーん」
ニヤニヤと微笑む先輩マネさん。
「これまでのことはいいのよ。それで、友紀ちゃんはどう思ってるの?」
目的語のない質問。この話の流れだとどう考えても二口くんの事だ。
「どうって、良いクラスメイトで……」
「そんなことを聞いてるんじゃないのよ!」
「そーよ。二口があんなにデレてんの、友紀ちゃんの前だけなんだからね!」
「そ、そうなんですか……?」
その滑津さんの言葉で、一昨日茂庭さんが言ってたことの意味が分かった気がした。
ちらっと二口くんの方を見る。二口くんはここで噂になっているとも知らずに、青根くんや茂庭さんや小原くん、女川くんに囲まれて元気に朝食を食べている。
「……大切な、友達です」
どうにか嘘にならないよう答えると、二人は「「はーーーー!」」とうつむいたりのけぞったりして大きなため息をつく。
「もう、もうもう、まだ目覚めてないのね」
「これから、これからよ!あーーーー甘酸っぱい!」
お互いをポカポカ叩き合いながら仲良く悶え合う二人を見て、女子同士の会話ってこんな感じだったな、と懐かしく思ってくすりと笑ってしまう。
「なーに笑ってんのよ!」
「すみません。私のクラス女子いなくて……。この感じ久しぶりで。本当にここに来れてよかったと思います」
そう言うと「「わかるー」」と声を揃えて同意される。
「……ここもほぼ男だけどね……」
「こんな感じで良ければ、また、おしゃべりしようね」
「ありがとうございます、先輩マネさん、滑津さん」
「舞でいーよ」
「じゃあ、あの、……舞ちゃん」
「キャー!聞きました?舞ちゃんだってー」
恐る恐る口に出してみると、舞ちゃんは満面の笑みで隣の先輩マネさんの肩を叩く。
「痛いって舞!友紀ちゃん、また手伝いにきてね」
「はい。もちろんです」
「手伝いに来なくても、進展あったら教えてね」
「え?」
「心境の変化とかでもいいから!」
「あ、はい……」
それは……。だいぶ恥ずかしいなと思っていると、
「あっ……!」
マネ先輩が何かを思い出したように声を上げる。
「どうしたんですか?」
首をかしげて舞ちゃんが聞くとマネ先輩は真剣な顔で私に向き直った。
「あのね、取り越し苦労だといいけど……ちょっと、注意した方がいいかも」
「え?」
「何をですか?先輩」
舞ちゃんの疑問にマネ先輩は一つ頷くと、声をひそめる。
「3年生の権田静香さん知ってる?」
「あー、あのキレイな、いつも取り巻き連れてる先輩ですか?」
と舞ちゃんが眉をひそめながら言う。よくは知らないけれど、私もその先輩は見たことがあるような気がする。
「うん。その権田先輩が二口くん狙ってるっていうの、結構なウワサなんだよね」
ドキッと胸に痛みが走る。
「えー!あんなに周りに男の人いるのに?」
「うん。まあ、二口くん、イケメンが入学してきた!って、上級生の間で騒がれてたからねぇ」
「あー……。まあ、口を開かなければ、性格はわからないですからねー」
舞ちゃんはなかなかに辛辣だ。
「権田先輩も告りに行ったけどダメだったって話もあったし。それでまあ、取り巻きの男が二口くんに抗議に行ったらしくて」
「ええっ?フリやがってって?うわー、意味わかんない」
ドン引きした顔で舞ちゃんが続ける。
「なんなんだろ?彼女がふられたなら、自分が行けばいいのに。チャンスじゃん」
心臓が嫌な感じにドキドキする。二口くんは大丈夫だったんだろうか。でも、今まで変わった様子はなかったから……多分大丈夫なはずだけど……。
「そう。それで二口くん『3年のマドンナに手を出せるワケないでしょ』とか言ってかわして、まあそれで『アイツいいやつ!』って株を上げたらしいんだけど、当の権田先輩本人は納得してないみたいで……」
「あー。美人だからプライド傷つけられたとかですか?」
「うん、多分そーいうの?で、二口くんと友紀ちゃんは同じクラスだし、仲いいでしょ?それ知った権田先輩が、何かしてこないといいけど……」
心配そうに言うマネ先輩に、私は複雑な気持ちになる。二口くんが男性の先輩に恨まれるとかはなかったみたいで良かったけど……。
「……一応、覚えておきます」
「何かあったら言ってね」
「私も……、何かできるかわからないけど、3年生に知り合いもいるし、助けられるかもしれないから」
「ありがとうございます」
権田先輩のことは怖いなと思ったけど、私には頼もしい味方が二人もいてくれると思うと、とても心強かった。
合宿最終日。
マネージャーさんたちから「今回の合宿の食事の手伝いをしてくれた結城友紀さんですー」と紹介され、拍手と口笛に囲まれ赤い顔でお辞儀した。口々にねぎらいの言葉をかけてくれる部員さんたちに「い、いや、私がやったことなんて、材料切っただけです……」と返すのが精一杯だった。
「よかったー!友紀ちゃん来てくれて!」
「はい。今日はバイトなしなので一日お手伝いします」
「ありがとー!超助かるー!」
滑津さんと先輩マネさんに囲まれて、ごはんとお味噌汁の配膳を手伝う。
「このまま本当にマネージャーになってくれると、嬉しいんだけどなー」
私もそうしたいんだけどな、と心の中で思っていると、
「せんぱーい、結城のスカウトは俺を通してくださいー」
と、トレイを持った二口くんがやってきた。
「ちょっと!なんでそこで二口が出てくるのよ!」
「結城、俺んとこの所属なんで」
「え……?」
「はぁ?!どういうこと?」
私がびっくりしている間に滑津さんが突っ込むと、二口くんはニヤリと笑った。
「冗談だって。ま、結城はやることあるからな」
「え、そうなの?」
先輩マネさんがこちらを見る。
「あ、はい。これからの学費稼ぎのためにバイトしてまして……」
そう言うと「そっかぁ。じゃ、難しいよねー」と先輩マネさんが納得したように言う横で滑津さんが叫ぶ。
「待って待って。なんで二口が友紀ちゃんの横の席座るのよ!」
「はぁ?別にいーだろ、席なんていつも決められてねーじゃん」
「青根!連れてって」
滑津さんのその声にどこからともなく音もなく青根くんがやってきた。
「……二口、こっちだ」
「ちょ、青根!」
青根くんに引きずられながらも、トレイは水平を死守する二口くんのバランス感覚に感心しつつ笑ってしまった。
◇◇◇
マネさん達と私は食堂の端にある4人掛けのテーブルを陣取った。炊飯器や鍋から一番遠い席。『おかわりぐらい自分でやれ!』の意思表明ってことでそこをマネージャーさん達の席にしているそうだ。おつよい。
正面に先輩マネさん、その隣に滑津さん。
「で、二口と付き合ってんの?」
「そーそー!私も気になってた!」
いきなりの滑津さんの切り出しに先輩マネさんの追撃。私は慌てて首を横に振る。
「いえ!付き合ってないです。クラスで女子一人なので、それでいつも助けられてます」
「え?二口が?」
目をぱちくりとする滑津さん。
「……ふーん」
ニヤニヤと微笑む先輩マネさん。
「これまでのことはいいのよ。それで、友紀ちゃんはどう思ってるの?」
目的語のない質問。この話の流れだとどう考えても二口くんの事だ。
「どうって、良いクラスメイトで……」
「そんなことを聞いてるんじゃないのよ!」
「そーよ。二口があんなにデレてんの、友紀ちゃんの前だけなんだからね!」
「そ、そうなんですか……?」
その滑津さんの言葉で、一昨日茂庭さんが言ってたことの意味が分かった気がした。
ちらっと二口くんの方を見る。二口くんはここで噂になっているとも知らずに、青根くんや茂庭さんや小原くん、女川くんに囲まれて元気に朝食を食べている。
「……大切な、友達です」
どうにか嘘にならないよう答えると、二人は「「はーーーー!」」とうつむいたりのけぞったりして大きなため息をつく。
「もう、もうもう、まだ目覚めてないのね」
「これから、これからよ!あーーーー甘酸っぱい!」
お互いをポカポカ叩き合いながら仲良く悶え合う二人を見て、女子同士の会話ってこんな感じだったな、と懐かしく思ってくすりと笑ってしまう。
「なーに笑ってんのよ!」
「すみません。私のクラス女子いなくて……。この感じ久しぶりで。本当にここに来れてよかったと思います」
そう言うと「「わかるー」」と声を揃えて同意される。
「……ここもほぼ男だけどね……」
「こんな感じで良ければ、また、おしゃべりしようね」
「ありがとうございます、先輩マネさん、滑津さん」
「舞でいーよ」
「じゃあ、あの、……舞ちゃん」
「キャー!聞きました?舞ちゃんだってー」
恐る恐る口に出してみると、舞ちゃんは満面の笑みで隣の先輩マネさんの肩を叩く。
「痛いって舞!友紀ちゃん、また手伝いにきてね」
「はい。もちろんです」
「手伝いに来なくても、進展あったら教えてね」
「え?」
「心境の変化とかでもいいから!」
「あ、はい……」
それは……。だいぶ恥ずかしいなと思っていると、
「あっ……!」
マネ先輩が何かを思い出したように声を上げる。
「どうしたんですか?」
首をかしげて舞ちゃんが聞くとマネ先輩は真剣な顔で私に向き直った。
「あのね、取り越し苦労だといいけど……ちょっと、注意した方がいいかも」
「え?」
「何をですか?先輩」
舞ちゃんの疑問にマネ先輩は一つ頷くと、声をひそめる。
「3年生の権田静香さん知ってる?」
「あー、あのキレイな、いつも取り巻き連れてる先輩ですか?」
と舞ちゃんが眉をひそめながら言う。よくは知らないけれど、私もその先輩は見たことがあるような気がする。
「うん。その権田先輩が二口くん狙ってるっていうの、結構なウワサなんだよね」
ドキッと胸に痛みが走る。
「えー!あんなに周りに男の人いるのに?」
「うん。まあ、二口くん、イケメンが入学してきた!って、上級生の間で騒がれてたからねぇ」
「あー……。まあ、口を開かなければ、性格はわからないですからねー」
舞ちゃんはなかなかに辛辣だ。
「権田先輩も告りに行ったけどダメだったって話もあったし。それでまあ、取り巻きの男が二口くんに抗議に行ったらしくて」
「ええっ?フリやがってって?うわー、意味わかんない」
ドン引きした顔で舞ちゃんが続ける。
「なんなんだろ?彼女がふられたなら、自分が行けばいいのに。チャンスじゃん」
心臓が嫌な感じにドキドキする。二口くんは大丈夫だったんだろうか。でも、今まで変わった様子はなかったから……多分大丈夫なはずだけど……。
「そう。それで二口くん『3年のマドンナに手を出せるワケないでしょ』とか言ってかわして、まあそれで『アイツいいやつ!』って株を上げたらしいんだけど、当の権田先輩本人は納得してないみたいで……」
「あー。美人だからプライド傷つけられたとかですか?」
「うん、多分そーいうの?で、二口くんと友紀ちゃんは同じクラスだし、仲いいでしょ?それ知った権田先輩が、何かしてこないといいけど……」
心配そうに言うマネ先輩に、私は複雑な気持ちになる。二口くんが男性の先輩に恨まれるとかはなかったみたいで良かったけど……。
「……一応、覚えておきます」
「何かあったら言ってね」
「私も……、何かできるかわからないけど、3年生に知り合いもいるし、助けられるかもしれないから」
「ありがとうございます」
権田先輩のことは怖いなと思ったけど、私には頼もしい味方が二人もいてくれると思うと、とても心強かった。