First grade of Highschool
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気付かないでいてくれたらいいよ
「いったたた……」
月曜の5、6限は体力テストだった。
50メートル走のタイム計測。一緒に走るのが男子だから、つられて好成績でるかも、と全力で走った。
はじめは良かった。これは自己記録更新ペース、なんて思ってたら足がもつれた。己れの身体能力を超えたことをやってしまったらしい。結構吹っ飛んだな……。
「結城大丈夫か?」
一緒に走っていた酒井くんが戻ってきてくれた。
「大丈夫……なんだけど、もうちょっと、そっとしといて……」
「わかった。先生から伝言。今の結城の記録ノーカンにしておくから、また測りに来いって。あと、ちょっとコースから外れろって」
「おーけい」
とは言ったものの転ぶなんて小学生以来。この痛みを和らげるの何かいい方法なかったかな……。
なんとかごろごろと転がりながらコースを外れる。上半身を起こして体育座りになる。急に暗くなったので雲で陰ったのかと思ったら二口くんの長身の影だった。
「お前、どうした?」
「! 二口くん」
彼は砂だらけの私の脚にちらりと目をやる
「あー。これまた派手にやったな」
「ちょっと、ムキになってしまいまして……」
「アホか。男子に勝てるかよ」
呆れたようにため息をつくと、私の横にしゃがんで顔をしかめる。
「どこが痛い?」
「膝と……手です」
「顏は……大丈夫そうだな。他は?」
「手、ついたから大丈夫。もうちょっとで動けそうだから待ってって……って?ふ、二口くん!?」
私の首と膝の下に彼の手が入った。これはもしかして……いや、ホント、まって。
「よ、こらしょ」
軽い掛け声とともにふわっと私の身体は宙に浮く。いや、いやいやいや。
「ちょ、二口くん?!」
「そんなところでいつまでも転がってらんねーだろ、行くぞ。センセー!保健委員が怪我したので、運びまーす!」
担当の体育教師に怒鳴る二口くん。
「おいおい、どーした、筋肉系かー!!!」
怒鳴り返す先生に慌てて返す。
「かすり傷でーす……」
張ったつもりの声はとても弱々しく、二口くんが笑う。
「ふたくちーーーーーー!!!!」
遠くで先生は怒っているけど、二口くんは聞こえないふりでさっさと私を運んで行く。
「じっ、自分で歩けるってば!」
「いーいって。まだ立てねぇんだろ?」
二口くんは私が保健委員になった時の約束を律儀に実行してくれているようだ。でも……。
コレ『お姫様抱っこ』ってやつだよね?となると心配なのは……
「重くない?」
「クソ重い」
真顔で間髪入れず放たれた言葉に私は蒼ざめる。
「おーろーしーてー!!!」
手足をばたつかせて抵抗すると、がしっと彼の身体と腕に力強く抱え込まれてしまった。私の太ももに彼の手がしっかりと食い込んでるのに気づいてドキっとする。
「嘘!そんなに、重くねぇって」
「あー、ウソついてる!」
「ったく……。重さ、気にしてンならさ」
「やっぱ重いんだ!」
「うるせー。俺の首に手回せって」
「え?」
「その方が安定して軽くなる」
戸惑っていると「早くしろよ」と急かされ、半信半疑で両手を二口くんの首に回す。
上体が起きて、目の前に二口くんの横顔。
確かに、体がくっつくので安定するんだけど。
近すぎでもう、困る。息すらうまく吸い吐きできない。
ちらっと横目で私を見た二口くんは、そのままにぃっと口の端をつり上げる。
「すげー軽ぃ」
「棒読みじゃん!」
至近距離の笑顔に心臓が変な鼓動を発し顏に熱が集まる。
二口くんに触れている箇所も熱い。
そのまま何も言えず、心臓だけがうるさい私はおとなしく運ばれて行った。
◇◇◇
とりあえず傷口を洗うため保健室近くの水道でおろしてもらう。
腕は汚れていたけど傷はない。問題はこの膝だ。
「……っ!いったたたた……」
「こりゃまたずいぶんと派手にやったな」
二口くんはしゃがんで、血がにじむ傷口をじっと見る。
「もう、歩けるから大丈夫だよ」
「……」
二口くんの目が、私の傷口を見つめている。
彼の薄い唇が弧を描く。
「二口、くん?」
ただならぬその様子に思わず呼びかける。
「お、あっ」
我に返ったような慌てた様子。
「わりぃわりぃ……」
と、顔をしかめる様子はいつもの二口くんだ。
でも、さっきまでの二口くんは……瞳孔が開いちゃってる感じだったからちょっと驚いた。
「……俺、血、ニガテみたいだわ、ちょっと後ろ向いとく」
「う、うん」
そっか、血がダメだったんだ。
あれは……嫌なものを見るときの表情なんだ。確かにこれはなかなかのグロさだ。ダメなものをなぜか凝視しちゃうのは私にもあるからわかる。
「保健室で手当してくるから、もう戻ってていいよ」
もう血は見たくないんだろうな、と思ってそう声をかける。
「大丈夫か」
「うん、大丈夫。二口くんは、貧血とか立ちくらみとかない?」
「は?なんで俺が?なんもねーよ」
血がダメな人って見ちゃうとフラ―ってなる人が多いイメージだったけど、二口くんは大丈夫みたいだ。
「運んでくれて、ありがとうね」
そう彼の背中に向かって言うと、
「ちゃんと手当して、気をつけて帰ってこいよー」
と、こちらを振り返らずに言うので、ホントにダメなんだ、と思わず笑ってしまった。
「いったたた……」
月曜の5、6限は体力テストだった。
50メートル走のタイム計測。一緒に走るのが男子だから、つられて好成績でるかも、と全力で走った。
はじめは良かった。これは自己記録更新ペース、なんて思ってたら足がもつれた。己れの身体能力を超えたことをやってしまったらしい。結構吹っ飛んだな……。
「結城大丈夫か?」
一緒に走っていた酒井くんが戻ってきてくれた。
「大丈夫……なんだけど、もうちょっと、そっとしといて……」
「わかった。先生から伝言。今の結城の記録ノーカンにしておくから、また測りに来いって。あと、ちょっとコースから外れろって」
「おーけい」
とは言ったものの転ぶなんて小学生以来。この痛みを和らげるの何かいい方法なかったかな……。
なんとかごろごろと転がりながらコースを外れる。上半身を起こして体育座りになる。急に暗くなったので雲で陰ったのかと思ったら二口くんの長身の影だった。
「お前、どうした?」
「! 二口くん」
彼は砂だらけの私の脚にちらりと目をやる
「あー。これまた派手にやったな」
「ちょっと、ムキになってしまいまして……」
「アホか。男子に勝てるかよ」
呆れたようにため息をつくと、私の横にしゃがんで顔をしかめる。
「どこが痛い?」
「膝と……手です」
「顏は……大丈夫そうだな。他は?」
「手、ついたから大丈夫。もうちょっとで動けそうだから待ってって……って?ふ、二口くん!?」
私の首と膝の下に彼の手が入った。これはもしかして……いや、ホント、まって。
「よ、こらしょ」
軽い掛け声とともにふわっと私の身体は宙に浮く。いや、いやいやいや。
「ちょ、二口くん?!」
「そんなところでいつまでも転がってらんねーだろ、行くぞ。センセー!保健委員が怪我したので、運びまーす!」
担当の体育教師に怒鳴る二口くん。
「おいおい、どーした、筋肉系かー!!!」
怒鳴り返す先生に慌てて返す。
「かすり傷でーす……」
張ったつもりの声はとても弱々しく、二口くんが笑う。
「ふたくちーーーーーー!!!!」
遠くで先生は怒っているけど、二口くんは聞こえないふりでさっさと私を運んで行く。
「じっ、自分で歩けるってば!」
「いーいって。まだ立てねぇんだろ?」
二口くんは私が保健委員になった時の約束を律儀に実行してくれているようだ。でも……。
コレ『お姫様抱っこ』ってやつだよね?となると心配なのは……
「重くない?」
「クソ重い」
真顔で間髪入れず放たれた言葉に私は蒼ざめる。
「おーろーしーてー!!!」
手足をばたつかせて抵抗すると、がしっと彼の身体と腕に力強く抱え込まれてしまった。私の太ももに彼の手がしっかりと食い込んでるのに気づいてドキっとする。
「嘘!そんなに、重くねぇって」
「あー、ウソついてる!」
「ったく……。重さ、気にしてンならさ」
「やっぱ重いんだ!」
「うるせー。俺の首に手回せって」
「え?」
「その方が安定して軽くなる」
戸惑っていると「早くしろよ」と急かされ、半信半疑で両手を二口くんの首に回す。
上体が起きて、目の前に二口くんの横顔。
確かに、体がくっつくので安定するんだけど。
近すぎでもう、困る。息すらうまく吸い吐きできない。
ちらっと横目で私を見た二口くんは、そのままにぃっと口の端をつり上げる。
「すげー軽ぃ」
「棒読みじゃん!」
至近距離の笑顔に心臓が変な鼓動を発し顏に熱が集まる。
二口くんに触れている箇所も熱い。
そのまま何も言えず、心臓だけがうるさい私はおとなしく運ばれて行った。
◇◇◇
とりあえず傷口を洗うため保健室近くの水道でおろしてもらう。
腕は汚れていたけど傷はない。問題はこの膝だ。
「……っ!いったたたた……」
「こりゃまたずいぶんと派手にやったな」
二口くんはしゃがんで、血がにじむ傷口をじっと見る。
「もう、歩けるから大丈夫だよ」
「……」
二口くんの目が、私の傷口を見つめている。
彼の薄い唇が弧を描く。
「二口、くん?」
ただならぬその様子に思わず呼びかける。
「お、あっ」
我に返ったような慌てた様子。
「わりぃわりぃ……」
と、顔をしかめる様子はいつもの二口くんだ。
でも、さっきまでの二口くんは……瞳孔が開いちゃってる感じだったからちょっと驚いた。
「……俺、血、ニガテみたいだわ、ちょっと後ろ向いとく」
「う、うん」
そっか、血がダメだったんだ。
あれは……嫌なものを見るときの表情なんだ。確かにこれはなかなかのグロさだ。ダメなものをなぜか凝視しちゃうのは私にもあるからわかる。
「保健室で手当してくるから、もう戻ってていいよ」
もう血は見たくないんだろうな、と思ってそう声をかける。
「大丈夫か」
「うん、大丈夫。二口くんは、貧血とか立ちくらみとかない?」
「は?なんで俺が?なんもねーよ」
血がダメな人って見ちゃうとフラ―ってなる人が多いイメージだったけど、二口くんは大丈夫みたいだ。
「運んでくれて、ありがとうね」
そう彼の背中に向かって言うと、
「ちゃんと手当して、気をつけて帰ってこいよー」
と、こちらを振り返らずに言うので、ホントにダメなんだ、と思わず笑ってしまった。