First grade of Highschool
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好きだと言ったのは君だったのにね
「あれ?結城も呼び出し?」
「うん、二口くんも?」
伊達工は女子が少ないからその辺注意しろとは言われてたんだ。中学で、そういう色恋沙汰とは無縁だった私には関係ないと思ってたんけど…… 甘かった。
入学してからわずか1か月で5人目からの呼び出しだ。
でもすごいのは二口くんだ。圧倒的に少ないはずの女子の先輩から、何度も呼び出され告白を受けている。男子の多い工業高校で、この現象はかなり珍しいみたいだ。
初めて会った時から思ってたけど、こんなキレイな男の人見たことないってぐらい整っている。背も高くて運動部仕込みの筋肉もついているからスタイルもいい。一目惚れしちゃうのはわかる気がする。
と、なると。私が仲良くしてもらってるのって大丈夫なんだろうか。……どうなんだろう?私も今だけは少し彼の気持ちはわかるけど、勘違いしないようにしなくちゃなー。
呼び出される場所はだいたい中庭だ。校舎にコの字で囲まれた空間に自動販売機とベンチがあって、程よく人目につかない。
私と二口くんは連れだってそこに向かう。
「正直言うと怖いんだよね。私のことなんか何にも知らないのに『好き』とか言われても」
「同感。話したことすらなくても平気で告ってくるもんな」
心底うんざりした顔で「俺、そんな上級生にはならないでおこう」とつぶやく二口くんに「お互いそこまでに彼氏彼女できるといいね」と笑って返す。
すると二口くんはじっと私を見た。さらっとした前髪がかかる色素の薄い瞳に見つめられると、それこそ勘違いしてしまいそうになる。
「あのさ、」
歯切れの悪い様子に首をかしげる。そうすると二口くんは考えながらという風にゆっくりと話しはじめた。
「もうさ、めんどくせーから、俺たち付き合ってることにしねぇ?そしたらお互い断るのも楽になるし、呼び出されることも減るだろ?」
「………」
ちょっといいかもしれない、と思った。その場で『クラスメイトの二口くんと付き合ってます』って言えば、その後の追及も、もしかしたら彼の方への告白も減るかもしれない。
でも直後に思い至る。……どう考えても告白の面倒臭さより、こんなモテる人と付き合ってることにした方が大変なことになりそうだ。
「……でも、それだと嘘をついてることになるし、同じ学校だと色々ごまかせないんじゃないかなー?」
二口くんも「うーん」と宙を睨んで色々パターンを想定したらしい。
「そうだなー。結城、体育館裏でボコボコかもな」
自分で提案したくせにこの言い草だ!否定も謙遜もしないあたりが彼らしいが、ホントその通りだと思う。
嘘を重ねることもなく上手い具合に牽制できる方法がないものだろうか……と思案する。
私が一番困ってるのは『付き合っている人がいないならいいだろ』と、断った後に食い下がられることだ。そこを逃れられさえすれば……。
「そうだ!」
名案が閃いた。
「ん?何だよ」
「私、これから『好きな人がいる』って断ろう。で、その好きな人には二口くんを思い浮かべるようにするよ」
食い下がられる時に明確な理由がないから押し切られそうになるんだ。彼を想定していれば具体的に断れる。こんなモテる人が相手なら片想いにも説得力もあるだろうし、『アイツ好きな人いるってよ』っていう牽制にならないだろうか。
「……」
二口くんが複雑そうな顔をしている。
あ……。こんなので思い浮かべられても気分悪いかな。
一人で舞い上がっていたのが急に恥ずかしくなって焦ってくる。
「ごっ、ごめん」
「……いーよ、使えって。じゃ、俺もそうしようかな。結城にしておく」
「え……」
「何だよ、ダメか?」
「う、ううん、私でよければ使っていいんだけど……」
自分で言いだした案のくせに二口くんに想定されることを考えると恥ずかしくなってくる。『二口くんが私を好き』って、ウソでも考えるだけで顏が赤くなっているのがわかる。
「あれ?でも大丈夫か?俺にしなくちゃいけないほど、お前好きな人いないの?」
……確かに。悲しいことに、恋愛的な意味で好きな人が今いない。けど、
「大丈夫、私、伊達工で一番二口くんが好きだもん」
「……」
二口くんが、目を丸くしてぱちくりと瞬きをする。
あ……。引かれた!私ったらなんてことを!これ、言葉だけ見たら告白じゃん!
「ああ!あの、『人として』って意味です!」
手を横に振りながら弁解する。もう顔が熱くてたまらない。
「ふーん、俺が『伊達工』で『人として』一番好き」
そう二口くんが意地悪そうに笑いながら言う。……なんか『人として』ってつけると妙にひどい感じになる。
「ちょ、ちょっと、ゴメン、『人として』って外して!」
「俺が一番好き」
「ぐっ……!」
今度はすっごく恥ずかしい感じになってしまった。顔を赤くしてうなだれる私を見て心底可笑しそうに笑う。
「大丈夫、俺も結城が『伊達工で』『人として』一番好きだよ」
「かーっ!!!!」
両手で顔を覆った。顏が熱くて爆発しそう。うう……。改めて言われると破壊力がすごい。
「すみません、恥ずかしいので、もう、やめてください」
息も絶え絶えにそういうと、二口くんは声を上げて笑った。
散々からかって気が済んだのか「あーおもしれー」と言って彼はふっと息をついた。
「大丈夫?俺に騙されてない?」
「え?」
すっと顔から熱が引いていく。
二口くん、何を言っているの?
ぽかん、と彼の顔を見つめると、二口くんは静かにほほ笑んだ。
「俺、とんでもなくひどい奴かもしれないよ?」
「そんな………」
口角はキレイに上がっているのに、細められた目が寂しそうに私を見る。
そんな二口くんの表情を見ていたら、そんなことない!って答えようとした私の言葉は軽すぎる気がして、何も言えなかった。
「あれ?結城も呼び出し?」
「うん、二口くんも?」
伊達工は女子が少ないからその辺注意しろとは言われてたんだ。中学で、そういう色恋沙汰とは無縁だった私には関係ないと思ってたんけど…… 甘かった。
入学してからわずか1か月で5人目からの呼び出しだ。
でもすごいのは二口くんだ。圧倒的に少ないはずの女子の先輩から、何度も呼び出され告白を受けている。男子の多い工業高校で、この現象はかなり珍しいみたいだ。
初めて会った時から思ってたけど、こんなキレイな男の人見たことないってぐらい整っている。背も高くて運動部仕込みの筋肉もついているからスタイルもいい。一目惚れしちゃうのはわかる気がする。
と、なると。私が仲良くしてもらってるのって大丈夫なんだろうか。……どうなんだろう?私も今だけは少し彼の気持ちはわかるけど、勘違いしないようにしなくちゃなー。
呼び出される場所はだいたい中庭だ。校舎にコの字で囲まれた空間に自動販売機とベンチがあって、程よく人目につかない。
私と二口くんは連れだってそこに向かう。
「正直言うと怖いんだよね。私のことなんか何にも知らないのに『好き』とか言われても」
「同感。話したことすらなくても平気で告ってくるもんな」
心底うんざりした顔で「俺、そんな上級生にはならないでおこう」とつぶやく二口くんに「お互いそこまでに彼氏彼女できるといいね」と笑って返す。
すると二口くんはじっと私を見た。さらっとした前髪がかかる色素の薄い瞳に見つめられると、それこそ勘違いしてしまいそうになる。
「あのさ、」
歯切れの悪い様子に首をかしげる。そうすると二口くんは考えながらという風にゆっくりと話しはじめた。
「もうさ、めんどくせーから、俺たち付き合ってることにしねぇ?そしたらお互い断るのも楽になるし、呼び出されることも減るだろ?」
「………」
ちょっといいかもしれない、と思った。その場で『クラスメイトの二口くんと付き合ってます』って言えば、その後の追及も、もしかしたら彼の方への告白も減るかもしれない。
でも直後に思い至る。……どう考えても告白の面倒臭さより、こんなモテる人と付き合ってることにした方が大変なことになりそうだ。
「……でも、それだと嘘をついてることになるし、同じ学校だと色々ごまかせないんじゃないかなー?」
二口くんも「うーん」と宙を睨んで色々パターンを想定したらしい。
「そうだなー。結城、体育館裏でボコボコかもな」
自分で提案したくせにこの言い草だ!否定も謙遜もしないあたりが彼らしいが、ホントその通りだと思う。
嘘を重ねることもなく上手い具合に牽制できる方法がないものだろうか……と思案する。
私が一番困ってるのは『付き合っている人がいないならいいだろ』と、断った後に食い下がられることだ。そこを逃れられさえすれば……。
「そうだ!」
名案が閃いた。
「ん?何だよ」
「私、これから『好きな人がいる』って断ろう。で、その好きな人には二口くんを思い浮かべるようにするよ」
食い下がられる時に明確な理由がないから押し切られそうになるんだ。彼を想定していれば具体的に断れる。こんなモテる人が相手なら片想いにも説得力もあるだろうし、『アイツ好きな人いるってよ』っていう牽制にならないだろうか。
「……」
二口くんが複雑そうな顔をしている。
あ……。こんなので思い浮かべられても気分悪いかな。
一人で舞い上がっていたのが急に恥ずかしくなって焦ってくる。
「ごっ、ごめん」
「……いーよ、使えって。じゃ、俺もそうしようかな。結城にしておく」
「え……」
「何だよ、ダメか?」
「う、ううん、私でよければ使っていいんだけど……」
自分で言いだした案のくせに二口くんに想定されることを考えると恥ずかしくなってくる。『二口くんが私を好き』って、ウソでも考えるだけで顏が赤くなっているのがわかる。
「あれ?でも大丈夫か?俺にしなくちゃいけないほど、お前好きな人いないの?」
……確かに。悲しいことに、恋愛的な意味で好きな人が今いない。けど、
「大丈夫、私、伊達工で一番二口くんが好きだもん」
「……」
二口くんが、目を丸くしてぱちくりと瞬きをする。
あ……。引かれた!私ったらなんてことを!これ、言葉だけ見たら告白じゃん!
「ああ!あの、『人として』って意味です!」
手を横に振りながら弁解する。もう顔が熱くてたまらない。
「ふーん、俺が『伊達工』で『人として』一番好き」
そう二口くんが意地悪そうに笑いながら言う。……なんか『人として』ってつけると妙にひどい感じになる。
「ちょ、ちょっと、ゴメン、『人として』って外して!」
「俺が一番好き」
「ぐっ……!」
今度はすっごく恥ずかしい感じになってしまった。顔を赤くしてうなだれる私を見て心底可笑しそうに笑う。
「大丈夫、俺も結城が『伊達工で』『人として』一番好きだよ」
「かーっ!!!!」
両手で顔を覆った。顏が熱くて爆発しそう。うう……。改めて言われると破壊力がすごい。
「すみません、恥ずかしいので、もう、やめてください」
息も絶え絶えにそういうと、二口くんは声を上げて笑った。
散々からかって気が済んだのか「あーおもしれー」と言って彼はふっと息をついた。
「大丈夫?俺に騙されてない?」
「え?」
すっと顔から熱が引いていく。
二口くん、何を言っているの?
ぽかん、と彼の顔を見つめると、二口くんは静かにほほ笑んだ。
「俺、とんでもなくひどい奴かもしれないよ?」
「そんな………」
口角はキレイに上がっているのに、細められた目が寂しそうに私を見る。
そんな二口くんの表情を見ていたら、そんなことない!って答えようとした私の言葉は軽すぎる気がして、何も言えなかった。