5 メノドク
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目の毒
授業の間の休み時間、視界がぼやけているのに気づいた。さっきレンズを触ってしまったからかな。
通学バッグの中のメガネケースからクロスを取り出す。そしてメガネを外そうとした時、
「結城、ちょっと待て」
二口くんが血相を変えて私の前に立ちはだかる。
「お前ら、絶対見るなよ」
私を隠すように両手を広げてわめく二口くんのおかげで、かえって注目を集めてしまう。
「なんだよ、別に着替えてるワケじゃねーじゃん」
「見られて困るってもんでもねぇだろ?な、結城」
「困るんだよ! 近寄ってんじゃねーよ」
さすがに、これは……。私の前で大騒ぎする二口くんをついに呼び止める。
「二口くん……」
思ったより低い声が出てしまった。ビクッと肩を震わせた後、ぐぎぎと音がしそうなほどゆっくりと二口くんが振り返った。
「……あの、私、ここにもう二年通っています」
「ハイ……」
神妙にうなずく二口くん。叱られた犬みたいでかわいくはあるんだけど……。
「メガネを拭くなんて何度もやってるから、そういうことされた方が困る……」
「いや、なんでメガネ外すんだよ」
「そのままだと拭けないじゃない……」
「……でもよー」
口を尖らせる二口くん。
「レンズ汚れて、黒板見にくいので、拭かせてください」
まだ何かを言いたげな彼に、イヤがるとわかっていても敬語が出てしまった。
「ここで?」
「ここで」
うなずいて二口くんをじっと見つめると、彼はしぶしぶ「わかった」と言い私の机に肘を置いてしゃがみこんだ。真正面から見張るように私を見据えている。
「二口くん」
「なんだよ」
「やりづらい」
「見てるだけなんだから、別にいーだろ」
私達の一連のやり取りを見ているクラスメイトがニヤニヤしながら言う。
「二口怒られてら」
「結城に愛想つかされるな」
「別れんのも秒読みじゃね?」
くわっ! とクラスメイトを威嚇する二口くんを怒るのも違う気がする。私は一息ついてメガネに手をかける。目の前の彼の視線を感じながら、メガネを外す。レンズに汚れがべったり。クロスでそっと拭いてから、メガネを蛍光灯の光にかざし、曇りがないか確認する。うん、よし。
ふと前を見ると、ぼやけてるけど二口くんの顔がある。机に腕を組んで、そこにふてくされたように顔を載せてるシルエットが、犬が拗ねてるみたいに見えてちょっとかわいくて思わず笑ってしまう。
「!? ……っ、ちょっと、結城」
いきなり目頭を押さえてうつむく二口くんにびっくりする、けど、そのすきにメガネをかけてしまう。
「ど、どうしたの?」
「……予告なしで笑顔になるの、反則」
「えー……」
頭を抱えて身悶えする二口くんに、申し訳ないけどちょっと引いた。
授業の間の休み時間、視界がぼやけているのに気づいた。さっきレンズを触ってしまったからかな。
通学バッグの中のメガネケースからクロスを取り出す。そしてメガネを外そうとした時、
「結城、ちょっと待て」
二口くんが血相を変えて私の前に立ちはだかる。
「お前ら、絶対見るなよ」
私を隠すように両手を広げてわめく二口くんのおかげで、かえって注目を集めてしまう。
「なんだよ、別に着替えてるワケじゃねーじゃん」
「見られて困るってもんでもねぇだろ?な、結城」
「困るんだよ! 近寄ってんじゃねーよ」
さすがに、これは……。私の前で大騒ぎする二口くんをついに呼び止める。
「二口くん……」
思ったより低い声が出てしまった。ビクッと肩を震わせた後、ぐぎぎと音がしそうなほどゆっくりと二口くんが振り返った。
「……あの、私、ここにもう二年通っています」
「ハイ……」
神妙にうなずく二口くん。叱られた犬みたいでかわいくはあるんだけど……。
「メガネを拭くなんて何度もやってるから、そういうことされた方が困る……」
「いや、なんでメガネ外すんだよ」
「そのままだと拭けないじゃない……」
「……でもよー」
口を尖らせる二口くん。
「レンズ汚れて、黒板見にくいので、拭かせてください」
まだ何かを言いたげな彼に、イヤがるとわかっていても敬語が出てしまった。
「ここで?」
「ここで」
うなずいて二口くんをじっと見つめると、彼はしぶしぶ「わかった」と言い私の机に肘を置いてしゃがみこんだ。真正面から見張るように私を見据えている。
「二口くん」
「なんだよ」
「やりづらい」
「見てるだけなんだから、別にいーだろ」
私達の一連のやり取りを見ているクラスメイトがニヤニヤしながら言う。
「二口怒られてら」
「結城に愛想つかされるな」
「別れんのも秒読みじゃね?」
くわっ! とクラスメイトを威嚇する二口くんを怒るのも違う気がする。私は一息ついてメガネに手をかける。目の前の彼の視線を感じながら、メガネを外す。レンズに汚れがべったり。クロスでそっと拭いてから、メガネを蛍光灯の光にかざし、曇りがないか確認する。うん、よし。
ふと前を見ると、ぼやけてるけど二口くんの顔がある。机に腕を組んで、そこにふてくされたように顔を載せてるシルエットが、犬が拗ねてるみたいに見えてちょっとかわいくて思わず笑ってしまう。
「!? ……っ、ちょっと、結城」
いきなり目頭を押さえてうつむく二口くんにびっくりする、けど、そのすきにメガネをかけてしまう。
「ど、どうしたの?」
「……予告なしで笑顔になるの、反則」
「えー……」
頭を抱えて身悶えする二口くんに、申し訳ないけどちょっと引いた。