17 メガネハカオノイチブデス
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メガネは顔の一部です
新年の初登校日。
登校するなり友紀は庄子に絡まれていた。
「友紀、茶髪!かっわいい!のに!なんでそのメガネ!」
けらけらと笑う庄子を前に友紀は恥ずかしそうにうつむく。
「うん、冬休み中はコンタクトにしてたんだけど……」
「え?二口にコンタクト止められたの?」
遠慮なくブッ込む庄子に椅子からずり落ちそうになる。
そんなコト言ってねぇけど!?俺の本心突いてくるんじゃねーよ!
友紀は首を横に振った。
「ううん。私ドライアイで、暖房の風で目が乾いちゃうんだよね」
俺への誤解を解こうと生真面目に友紀は返す。……ありがとう友紀。
「ふーん。それも友紀っぽくって嫌いじゃないけど。もうちょっと似合うのに変えたら?」
「うん。次の連休に二口くんに選んでもらう予定」
まさかここで友紀にブッ込まれると思わなくて、今度こそ椅子から転げそうになった。
「あらあら……」
そう言いながら庄子がくるっとこちらを振り返る。体勢を崩したところをうっかり見られた。にたぁと笑いながらつかつかと歩みよってくる。
「……何だよ」
「ふーん」
いやな感じに笑う庄子。超居心地悪い。言いたいことがあるならさっさと言えや。
「二口、ちゃんと可愛いの選んであげなよ!」
「わーってるよ!」
「友紀が可愛くみえるやつだよ」
「わかってるって!うるせぇわ!」
言い合いをする俺と庄子を見て友紀は困ったように笑っていた。
◇◇◇
目的地はショッピングモール内のメガネ屋。結城家行きつけのメガネ屋も別にあるみたいだけど、そこだとどうしても大人用になってしまうようで。今回は若者向けの、よく言えばオシャレなやつ、ぶっちゃければ安いのを買ってこいみたいな感じだ。
「今日メガネなんだ?」
「うん。度を合わせる時、コンタクトだと外さないといけないから」
そこまで言って急に何かにピンときた様子で蒼ざめた。
「や、やっぱり服と合わない?できるだけメガネが影響しない格好にしてみたつもりなんだけど……」
今日は友紀には珍しいパンツスタイルだ。パンツは作業着かジャージでしか見たことがないので新鮮だ。真面目臭いメガネがハズシみたいな感じで意外と合ってると思う。ちょいスポーツ系の俺の格好にも近くて、お似合いのカップルっぽくね?って感じ。
教室で庄子に言われたのが結構ショックだったんだろうな、と苦笑する。
「いや、別にそんなこと思ってねーよ。大丈夫、可愛い」
そう言って笑いかけるとピタッと硬直したように友紀が落ち着く。俺の言葉でほっとしちゃうのカワイイ。
それは置いといて。
「そうじゃなくてさ。それだと友紀、自分でメガネ選べなくね?」
「あ!」
そこは全く頭になかったらしい。本気で俺に任せるつもりだったのかと驚いたけど……。そこまで信頼してもらえてることが少し嬉しい。いや、だいぶ嬉しい。
「そっか。そうだよね。でも近くで見ればいけるかも」
「いーよ、俺が見るから」
「うん。お願い」
そう言いながら俺に笑顔を見せ彼女はメガネを外しケースにしまった。ホント、キレイな顔立ちしてるよな……。なんでこれがメガネ一つで隠れるんだろう?
売り場にずらっと並ぶメガネを見る。大きさで男性用、女性用、子供用が分かれているようだ。女性用だけでも相当な数だ。
まずは無難な銀色のメタルフレームからいってみる。見本のフレームに入っているのはダミーのプラスチックだから本当に見えないらしい。なので、かけた後は俺を見上げる。
「あ、ヤバい……」
「え?そんなにダメ?」
「いや、似合ってるんだけど……」
俺は無意識に口元を隠す。なんつーか……。堅物そうな女教師感があるんだけど。……すっげーエロイ。それかけて心配そうにこっちを見上げてるの、イケナイ感がある。
初っ端からすげーの引き当てちゃったな……と俺は動揺する。
「……ちょっと大人っぽすぎるって感じかな、次行こ。あ、じゃあコレ」
動揺を隠しながら無難な言い訳をひねり出し、次は正反対のイメージっぽいセルフレームにいってみる。色はとりあえず赤系から。
友紀は目を閉じてかけてから、律儀に俺の方を見る。
「あ、カワイイ。幼くなる。メガネっ子って感じ」
コレはいい。カワイイけどその中に高校生らしい真面目っぽさがあって、俺の心臓にも安心だ。
「色、変えていい?友紀何色好き?」
調子に乗った俺は色変を提案する。赤の他に黒、青紫、赤紫、薄青、深緑、ピンク、茶色、ベージュ……フレームにこんな色もあるのかって感じだ。
友紀は「うーん」と悩む様子で黒と紫の間で手を迷わせる。
「私、こういう時強い色選びがちなんだよね……わかりやすいから」
「ふーん」
彼女は言いながら黒フレームを手に取ってかけた。
「あー。いかにもって感じ。コレは存在感強いな」
「そっかー、負けちゃうかな?堅治くんがいいなって思うのはどれ?」
「そうだな……」
もう少しメガネの存在感は薄くてもいい。俺はまず紫系のを濃い方を渡してみる。
「へー。そうなるかー」
色を薄めるとメガネの印象も和らぐ。同じ紫系でもその後かけた赤味が強い方が友紀の顔色も良くなる気がする。
じゃあ、と次はベージュを選んでみる。
「お、これは溶け込むなー」
「ホントだ、遠目からだとほぼ見えない」
マジか。ついでにと隣のブロックのリムレスのものを一回挟んでみる。なるほど。ここまでいくと似合う似合わないの問題じゃない。ほぼ素顔を晒している。
「コレすごいね。でも……何か恥ずかしいな」
「ふーん。メガネの存在感はそこそこあった方がいいのか……」
その点に関しては俺的には同意だ。友紀は素顔を晒すより少しメガネで隠してもらった方がいい。今のより可愛くなって欲しいというのはもちろんある。けど友紀が可愛いことは見つかってほしくない。彼氏のジレンマだ。
だから、適度なメガネ感のあるもので友紀の素顔を隠しつつも可愛く見えるやつを……。いや、待てよ、素顔より可愛くなってしまうこともありうるのか?……友紀のポテンシャルだとありえるな。つーか今かけてるのが一番似合ってないってどういうことだよ。
「どうしたの?堅治くん?」
内心で葛藤している俺を心配そうに友紀が見上げる。
「いや、大丈夫。あと試してないのはこの色か?」
平静を装い色をコンプリートする勢いでかけさせてみる。ピンクは可愛すぎるな……。でも寒色系より暖色か?とだいたいの方向性を出す。
「よし、セルフレームは一通り見たか。次、メタルフレームにしてみよーぜ」
「うん」
メタルフレームでもいろんな色と形がある。色よりも形の違いがセルフレームよりもわかりやすいなと思った。四角いの、丸みがあるの、横長、縦に長め等々。
「こういうのは……今のとあんまり変わらないよね」
横長めのヤツを友紀は手に取ったが、かけずにそのまま戻した。年明けから散々な言われようで相当なトラウマになっているらしい。
「じゃあ、形変えてみるか。こういうのは?」
ちょっとふざけて丸メガネにしてみる。友紀はしげしげとその形を見て「これは……無理だよ」と苦笑する。
「あれ……?」
驚いた。何だよ!意外にこなすじゃん!非日常だけど、カワイイ!
「え?かわいくね?」
「またまた……。堅治くん、何でも可愛いって言う」
「いや、俺、友紀の可愛さに関してはウソ言ったことねぇよ」
「……何言ってんの」
何か今ので俺の中の方向性が決まった気がする。
「このセンだ」
「え?何?」
形だ。今のメガネは結構四角い。
友紀の顔はどちらかといえば優しい顔立ちだ。だから直線というよりは曲線が似合う。でも、さっきの丸は極端すぎる。なるべく丸。やや丸。それを心がけて俺は次から次へと友紀にメガネをかけていく。
「……」
友紀も文句一つ言わず、俺のするがままにされている。
「可愛い」
「……」
「けど、こっちのがもっと可愛い」
「…………」
「ん?顔赤いぞ?どした?」
「………堅治くん、顔近い」
「悪ぃ、レンズの中心に目ん玉が来た方が……いいと思うから、ちょっと我慢して」
「……」
「やっぱこっちだな」
デバッグ&エラー。かけて見とれて外して見とれての繰り返し。公然とこんな至近距離で顔を見ていられるなんて。……このデート考えた俺、天才じゃね?
めぼしいものは片っ端からかけた。ついに俺の中での結論が出る。
「俺、これかけた友紀が一番好き」
「ホントに?」
「うん。おすすめ」
友紀はそれをかけたままめいっぱい鏡に近づいて、正面、両サイド、上目遣い、下目遣いと確認する。そうしてにっこりと俺に笑いかけた。
「……うん。じゃあ、コレにする」
◇◇◇
友紀は併設の眼科に行った。視力とか眼底?眼圧?とかの検査とか、中に入れるレンズを決めるために行うらしい。
手持無沙汰な俺は店内をぶらぶらしてたらメガネの店員が話しかけてきた。というか、店員全員メガネだ。メガネ屋ってそういうものなのか?
「よろしければ、お待ちの間お試しになってみては?」
「え?俺?」
メガネには縁のない生活を送って来たんだよな……と独りごちると店員は「お連れ様に選んだフレームの男性版はこちらですね」と友紀に選んだものより一回り大きいフレームを渡してくれる。
ペアのメガネか……。そんなのもあるんだな、と思ってかけてみる。
「……全っ然、似合わねー」
なんだこれ。友紀に見られなくてよかった。超笑える。
「お客様はお顔立ちがシャープなので、そうですね……。こういう方がお似合いになると思います」
そう言って次に勧めてくれたのはシルバーフレームの。……これ、友紀に最初かけさせたやつに似てる。かけてみる。結構いいじゃん。友紀は変な色気が出てしまったけど、俺がかけると頭良さ気に見える。変装とかに使えるかも。
「堅治くん、お待たせ。んっ!?」
「お。友紀終わった?」
「堅治くんそれ……」
メガネをかけたままの俺を見た友紀が息を飲む。みるみるうちに真っ赤になって手で口を抑えて固まっていた。何事かと首をかしげると、ごにょごにょと口ごもりながら言う。
「ちょっと、待って……。カッコ良すぎて、どうしたらいいかわからない」
それを聞いた瞬間、俺は即決した。
「これ、伊達でください」
「かしこまりました」
◇◇◇
「すげーな、その場でできるんだ」
「うん。あとレンズ薄くするのオプションなんだけど、おまけしてくれた」
「そういや、俺のも何か引いてくれた」
「度合わせる時に聞いたんだけど、私たちにつられて恋人のメガネを選ぶカップルが結構いたんだって」
「そうなの?」
友紀のメガネを選ぶのに夢中で周りには全然気を配ってなかった。
「売り上げに貢献したお礼ってことか?」
「そうみたい」
二人で新しいメガネをかけて帰る。メガネカップル。友紀がちらりとこちらを見るので笑いかけると、友紀の顔が真っ赤になった。
「ん、どうした?」
「え?!あ、……うん」
「……ツボった?」
「うん……」
顔が真っ赤なまま素直に首を縦に振る。
「そろそろ、慣れろよ」
「う、ううん。でも……だめだー!!!」
「なんでだよ」
「何か、改めて、かっこいいな、好きだなって思っちゃって……」
彼女が赤くなりながら、ハジメテの告白みたいな調子で言う。
余裕ぶっこいてたはずの俺も恥ずかしくなっちゃって、何も言えずに突っ立ってると追い打ちをかけるように友紀が続ける。
「それにね、すごく親身になってメガネ選んでくれるから、やっぱり優しいな、好きだな、って思って」
「……」
ヤバい。こっちまで顔熱くなってきた。
本当、不意打ちでどえらい爆弾を落としてくるのは勘弁してほしい。
あーーーーーーもう!
次二人っきりになったらどうしてくれよう……。
新年の初登校日。
登校するなり友紀は庄子に絡まれていた。
「友紀、茶髪!かっわいい!のに!なんでそのメガネ!」
けらけらと笑う庄子を前に友紀は恥ずかしそうにうつむく。
「うん、冬休み中はコンタクトにしてたんだけど……」
「え?二口にコンタクト止められたの?」
遠慮なくブッ込む庄子に椅子からずり落ちそうになる。
そんなコト言ってねぇけど!?俺の本心突いてくるんじゃねーよ!
友紀は首を横に振った。
「ううん。私ドライアイで、暖房の風で目が乾いちゃうんだよね」
俺への誤解を解こうと生真面目に友紀は返す。……ありがとう友紀。
「ふーん。それも友紀っぽくって嫌いじゃないけど。もうちょっと似合うのに変えたら?」
「うん。次の連休に二口くんに選んでもらう予定」
まさかここで友紀にブッ込まれると思わなくて、今度こそ椅子から転げそうになった。
「あらあら……」
そう言いながら庄子がくるっとこちらを振り返る。体勢を崩したところをうっかり見られた。にたぁと笑いながらつかつかと歩みよってくる。
「……何だよ」
「ふーん」
いやな感じに笑う庄子。超居心地悪い。言いたいことがあるならさっさと言えや。
「二口、ちゃんと可愛いの選んであげなよ!」
「わーってるよ!」
「友紀が可愛くみえるやつだよ」
「わかってるって!うるせぇわ!」
言い合いをする俺と庄子を見て友紀は困ったように笑っていた。
◇◇◇
目的地はショッピングモール内のメガネ屋。結城家行きつけのメガネ屋も別にあるみたいだけど、そこだとどうしても大人用になってしまうようで。今回は若者向けの、よく言えばオシャレなやつ、ぶっちゃければ安いのを買ってこいみたいな感じだ。
「今日メガネなんだ?」
「うん。度を合わせる時、コンタクトだと外さないといけないから」
そこまで言って急に何かにピンときた様子で蒼ざめた。
「や、やっぱり服と合わない?できるだけメガネが影響しない格好にしてみたつもりなんだけど……」
今日は友紀には珍しいパンツスタイルだ。パンツは作業着かジャージでしか見たことがないので新鮮だ。真面目臭いメガネがハズシみたいな感じで意外と合ってると思う。ちょいスポーツ系の俺の格好にも近くて、お似合いのカップルっぽくね?って感じ。
教室で庄子に言われたのが結構ショックだったんだろうな、と苦笑する。
「いや、別にそんなこと思ってねーよ。大丈夫、可愛い」
そう言って笑いかけるとピタッと硬直したように友紀が落ち着く。俺の言葉でほっとしちゃうのカワイイ。
それは置いといて。
「そうじゃなくてさ。それだと友紀、自分でメガネ選べなくね?」
「あ!」
そこは全く頭になかったらしい。本気で俺に任せるつもりだったのかと驚いたけど……。そこまで信頼してもらえてることが少し嬉しい。いや、だいぶ嬉しい。
「そっか。そうだよね。でも近くで見ればいけるかも」
「いーよ、俺が見るから」
「うん。お願い」
そう言いながら俺に笑顔を見せ彼女はメガネを外しケースにしまった。ホント、キレイな顔立ちしてるよな……。なんでこれがメガネ一つで隠れるんだろう?
売り場にずらっと並ぶメガネを見る。大きさで男性用、女性用、子供用が分かれているようだ。女性用だけでも相当な数だ。
まずは無難な銀色のメタルフレームからいってみる。見本のフレームに入っているのはダミーのプラスチックだから本当に見えないらしい。なので、かけた後は俺を見上げる。
「あ、ヤバい……」
「え?そんなにダメ?」
「いや、似合ってるんだけど……」
俺は無意識に口元を隠す。なんつーか……。堅物そうな女教師感があるんだけど。……すっげーエロイ。それかけて心配そうにこっちを見上げてるの、イケナイ感がある。
初っ端からすげーの引き当てちゃったな……と俺は動揺する。
「……ちょっと大人っぽすぎるって感じかな、次行こ。あ、じゃあコレ」
動揺を隠しながら無難な言い訳をひねり出し、次は正反対のイメージっぽいセルフレームにいってみる。色はとりあえず赤系から。
友紀は目を閉じてかけてから、律儀に俺の方を見る。
「あ、カワイイ。幼くなる。メガネっ子って感じ」
コレはいい。カワイイけどその中に高校生らしい真面目っぽさがあって、俺の心臓にも安心だ。
「色、変えていい?友紀何色好き?」
調子に乗った俺は色変を提案する。赤の他に黒、青紫、赤紫、薄青、深緑、ピンク、茶色、ベージュ……フレームにこんな色もあるのかって感じだ。
友紀は「うーん」と悩む様子で黒と紫の間で手を迷わせる。
「私、こういう時強い色選びがちなんだよね……わかりやすいから」
「ふーん」
彼女は言いながら黒フレームを手に取ってかけた。
「あー。いかにもって感じ。コレは存在感強いな」
「そっかー、負けちゃうかな?堅治くんがいいなって思うのはどれ?」
「そうだな……」
もう少しメガネの存在感は薄くてもいい。俺はまず紫系のを濃い方を渡してみる。
「へー。そうなるかー」
色を薄めるとメガネの印象も和らぐ。同じ紫系でもその後かけた赤味が強い方が友紀の顔色も良くなる気がする。
じゃあ、と次はベージュを選んでみる。
「お、これは溶け込むなー」
「ホントだ、遠目からだとほぼ見えない」
マジか。ついでにと隣のブロックのリムレスのものを一回挟んでみる。なるほど。ここまでいくと似合う似合わないの問題じゃない。ほぼ素顔を晒している。
「コレすごいね。でも……何か恥ずかしいな」
「ふーん。メガネの存在感はそこそこあった方がいいのか……」
その点に関しては俺的には同意だ。友紀は素顔を晒すより少しメガネで隠してもらった方がいい。今のより可愛くなって欲しいというのはもちろんある。けど友紀が可愛いことは見つかってほしくない。彼氏のジレンマだ。
だから、適度なメガネ感のあるもので友紀の素顔を隠しつつも可愛く見えるやつを……。いや、待てよ、素顔より可愛くなってしまうこともありうるのか?……友紀のポテンシャルだとありえるな。つーか今かけてるのが一番似合ってないってどういうことだよ。
「どうしたの?堅治くん?」
内心で葛藤している俺を心配そうに友紀が見上げる。
「いや、大丈夫。あと試してないのはこの色か?」
平静を装い色をコンプリートする勢いでかけさせてみる。ピンクは可愛すぎるな……。でも寒色系より暖色か?とだいたいの方向性を出す。
「よし、セルフレームは一通り見たか。次、メタルフレームにしてみよーぜ」
「うん」
メタルフレームでもいろんな色と形がある。色よりも形の違いがセルフレームよりもわかりやすいなと思った。四角いの、丸みがあるの、横長、縦に長め等々。
「こういうのは……今のとあんまり変わらないよね」
横長めのヤツを友紀は手に取ったが、かけずにそのまま戻した。年明けから散々な言われようで相当なトラウマになっているらしい。
「じゃあ、形変えてみるか。こういうのは?」
ちょっとふざけて丸メガネにしてみる。友紀はしげしげとその形を見て「これは……無理だよ」と苦笑する。
「あれ……?」
驚いた。何だよ!意外にこなすじゃん!非日常だけど、カワイイ!
「え?かわいくね?」
「またまた……。堅治くん、何でも可愛いって言う」
「いや、俺、友紀の可愛さに関してはウソ言ったことねぇよ」
「……何言ってんの」
何か今ので俺の中の方向性が決まった気がする。
「このセンだ」
「え?何?」
形だ。今のメガネは結構四角い。
友紀の顔はどちらかといえば優しい顔立ちだ。だから直線というよりは曲線が似合う。でも、さっきの丸は極端すぎる。なるべく丸。やや丸。それを心がけて俺は次から次へと友紀にメガネをかけていく。
「……」
友紀も文句一つ言わず、俺のするがままにされている。
「可愛い」
「……」
「けど、こっちのがもっと可愛い」
「…………」
「ん?顔赤いぞ?どした?」
「………堅治くん、顔近い」
「悪ぃ、レンズの中心に目ん玉が来た方が……いいと思うから、ちょっと我慢して」
「……」
「やっぱこっちだな」
デバッグ&エラー。かけて見とれて外して見とれての繰り返し。公然とこんな至近距離で顔を見ていられるなんて。……このデート考えた俺、天才じゃね?
めぼしいものは片っ端からかけた。ついに俺の中での結論が出る。
「俺、これかけた友紀が一番好き」
「ホントに?」
「うん。おすすめ」
友紀はそれをかけたままめいっぱい鏡に近づいて、正面、両サイド、上目遣い、下目遣いと確認する。そうしてにっこりと俺に笑いかけた。
「……うん。じゃあ、コレにする」
◇◇◇
友紀は併設の眼科に行った。視力とか眼底?眼圧?とかの検査とか、中に入れるレンズを決めるために行うらしい。
手持無沙汰な俺は店内をぶらぶらしてたらメガネの店員が話しかけてきた。というか、店員全員メガネだ。メガネ屋ってそういうものなのか?
「よろしければ、お待ちの間お試しになってみては?」
「え?俺?」
メガネには縁のない生活を送って来たんだよな……と独りごちると店員は「お連れ様に選んだフレームの男性版はこちらですね」と友紀に選んだものより一回り大きいフレームを渡してくれる。
ペアのメガネか……。そんなのもあるんだな、と思ってかけてみる。
「……全っ然、似合わねー」
なんだこれ。友紀に見られなくてよかった。超笑える。
「お客様はお顔立ちがシャープなので、そうですね……。こういう方がお似合いになると思います」
そう言って次に勧めてくれたのはシルバーフレームの。……これ、友紀に最初かけさせたやつに似てる。かけてみる。結構いいじゃん。友紀は変な色気が出てしまったけど、俺がかけると頭良さ気に見える。変装とかに使えるかも。
「堅治くん、お待たせ。んっ!?」
「お。友紀終わった?」
「堅治くんそれ……」
メガネをかけたままの俺を見た友紀が息を飲む。みるみるうちに真っ赤になって手で口を抑えて固まっていた。何事かと首をかしげると、ごにょごにょと口ごもりながら言う。
「ちょっと、待って……。カッコ良すぎて、どうしたらいいかわからない」
それを聞いた瞬間、俺は即決した。
「これ、伊達でください」
「かしこまりました」
◇◇◇
「すげーな、その場でできるんだ」
「うん。あとレンズ薄くするのオプションなんだけど、おまけしてくれた」
「そういや、俺のも何か引いてくれた」
「度合わせる時に聞いたんだけど、私たちにつられて恋人のメガネを選ぶカップルが結構いたんだって」
「そうなの?」
友紀のメガネを選ぶのに夢中で周りには全然気を配ってなかった。
「売り上げに貢献したお礼ってことか?」
「そうみたい」
二人で新しいメガネをかけて帰る。メガネカップル。友紀がちらりとこちらを見るので笑いかけると、友紀の顔が真っ赤になった。
「ん、どうした?」
「え?!あ、……うん」
「……ツボった?」
「うん……」
顔が真っ赤なまま素直に首を縦に振る。
「そろそろ、慣れろよ」
「う、ううん。でも……だめだー!!!」
「なんでだよ」
「何か、改めて、かっこいいな、好きだなって思っちゃって……」
彼女が赤くなりながら、ハジメテの告白みたいな調子で言う。
余裕ぶっこいてたはずの俺も恥ずかしくなっちゃって、何も言えずに突っ立ってると追い打ちをかけるように友紀が続ける。
「それにね、すごく親身になってメガネ選んでくれるから、やっぱり優しいな、好きだな、って思って」
「……」
ヤバい。こっちまで顔熱くなってきた。
本当、不意打ちでどえらい爆弾を落としてくるのは勘弁してほしい。
あーーーーーーもう!
次二人っきりになったらどうしてくれよう……。