EX9:劇的インシデント
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※下品注意
「は?やだよ?」
「頼む。今年は芸術性高めで勝負したい」
私の足元で土下座する文化祭実行委員。
……彼の要求を箇条書きにするとこうだ。
・今年の文化祭のクラス出し物を演劇にしたい。
・脚本はオリジナルのラブストーリー。ラブシーンあり。
・その主役とヒロインを笹谷と私にしたいということ。
ふざけんな!
「お約束通り女装でやった方がいいじゃん!そのほうがウケ絶対いいでしょ。いまさら男女でラブシーンなんて、王道過ぎるし生々しいし白けるって」
「いや、今年は大賞を狙いに行きたい。王道がむしろ変化球、その方が賞ウケもいい」
真剣な目で頼まれても、イヤなものはイヤだ。本気の人に対して失礼だとは思うけど、たかが学校の文化祭で、何で私がプライベートを晒さないといけないのだ。こういうのって完成されたカップルではなく、付き合うか付き合わないかっていう微妙なカンケイの男女を見守る構図で行うのがベストなはずだ。私と笹谷にするなら半年は遅い。その辺の機微を伊達工男子に求めるのも酷か……。
よし。これは数多の伊達工男子の幻想を打ち砕いてきた、私の腕の見せ所だ。
「そんなのさー、今さらだよ。私と笹谷じゃプライベートAVにしかならないって」
第一撃。ヤツはわかりやすくひるんだ。
「ひええええ、何言ってんの、結城、サン!?!」
すごい勢いで後ずさりした。この童貞が。もう一押し。
「そうじゃない、俺はただ、純粋に、キレイなラブシーンを……」
「ムリムリ。そんなキレイなもんにならないって。よくてハメ撮り流出だね!」
「うぐっ」
続いて二撃目を放つ。自分でも何言ってるんだろうと思うけれど、こういうのは勢いだ。ほら見ろ。ヤツは顔を真っ赤に、目には涙さえ浮かべている。箱入り女子じゃあるまいし。
よし、もう畳んでしまえ。
「はい、この話はおしまい。他あたって」
そう強制終了しようとすると、ヤツは瀕死のくせにとんでもないことを言い放った。
「笹谷は!いいって言った!」
「はぁ?笹谷がそんなこと言うわけないじゃん」
「あー、わりい。俺言ったわー」
嘘でしょ。背後から出てきた笹谷に、文字通り後ろから撃たれるとは……。
殺意を込めて睨みつけると、慌てたように「違うって」と弁解をはじめる。
「だけど結城巻き込むとは聞いてねーぞ。ラブシーンありの役を俺がやるって言っただけ」
「アンタ、それよく引き受けたな……」
別の意味で感心する。相手誰だと思ったんだろう?それによってはシメないと。
「それによく考えてみろよ。クラスメイトのキスなんて、親の子作り見せられたレベルのいたたまれない雰囲気になるぞ」
「……」
ひどい例えの方が効果的なのは私も実行済みだから人のことは言えないけど、これにはさすがの私もひく。いやいや、親のキスですらクラスメイトのキスよりいたたまれないでしょ。子作りって何をするのかご存知ですよね笹谷さん?……と思いつつ文化祭委員を見ると、
「お前らのキスなら、結構舞台映えすると思うんだけどなー」
ほらみろ!
せっかく瀕死まで追い込んだのに息を吹き返しちゃったじゃないか!なんだその芸術家気取りのドヤ顔は!
拳を握りしめて笹谷を睨みつけるも、彼は至って涼しい顔だ。
「そんなら、見てみりゃいいわ」
笹谷が目くばせする。
えー……。
いやーだーーー!
笹谷が何を見せようとしてるのかはわかるけども。やり方によっては(特にこいつには)非常に効果的なのもわかるけども!マジか……。
でも、やるなら一切恥じらいを見せてはダメだ。私はわざとらしくため息をついて、心を決める。
「来なよ、笹谷」
「おうよ」
片目を細めて片方の口端を上げ、自分史上最高のゲスい笑みを浮かべる。笹谷の方に向き直ると両手を口の前で握りタコのような顔をするので吹き出しそうになる。
そして。まあ、えげつないのをやってやる……つもりだった。
「ひっ、ヒイ、わーーーーーっ!すいません、ごめんなさい、もう許してください!」
…………。両手で顔を隠し耳まで真っ赤にしてしゃがみこむとか今どき乙女でもやらないわ。根性ねぇな。
かくて私と笹谷の公開ラブシーンはお蔵入りになったのであった。
それはそうと……。
「アンタ、誰とラブシーンするつもりで引き受けたのよ」
「え?茂庭?」
一発殴っといた。
~後日談~
芸術性は女装のクオリティを上げることで高めることしたらしい。
そして茂庭くんがその流れ弾に当たりそうになったのは別の話。(意外と身長がでかくて筋肉質なところがヤツのお眼鏡にかなわなかったそうな)
そして私たちは『アイツらノリが洋モノなんだよ!』という風評被害を頂戴した。
「は?やだよ?」
「頼む。今年は芸術性高めで勝負したい」
私の足元で土下座する文化祭実行委員。
……彼の要求を箇条書きにするとこうだ。
・今年の文化祭のクラス出し物を演劇にしたい。
・脚本はオリジナルのラブストーリー。ラブシーンあり。
・その主役とヒロインを笹谷と私にしたいということ。
ふざけんな!
「お約束通り女装でやった方がいいじゃん!そのほうがウケ絶対いいでしょ。いまさら男女でラブシーンなんて、王道過ぎるし生々しいし白けるって」
「いや、今年は大賞を狙いに行きたい。王道がむしろ変化球、その方が賞ウケもいい」
真剣な目で頼まれても、イヤなものはイヤだ。本気の人に対して失礼だとは思うけど、たかが学校の文化祭で、何で私がプライベートを晒さないといけないのだ。こういうのって完成されたカップルではなく、付き合うか付き合わないかっていう微妙なカンケイの男女を見守る構図で行うのがベストなはずだ。私と笹谷にするなら半年は遅い。その辺の機微を伊達工男子に求めるのも酷か……。
よし。これは数多の伊達工男子の幻想を打ち砕いてきた、私の腕の見せ所だ。
「そんなのさー、今さらだよ。私と笹谷じゃプライベートAVにしかならないって」
第一撃。ヤツはわかりやすくひるんだ。
「ひええええ、何言ってんの、結城、サン!?!」
すごい勢いで後ずさりした。この童貞が。もう一押し。
「そうじゃない、俺はただ、純粋に、キレイなラブシーンを……」
「ムリムリ。そんなキレイなもんにならないって。よくてハメ撮り流出だね!」
「うぐっ」
続いて二撃目を放つ。自分でも何言ってるんだろうと思うけれど、こういうのは勢いだ。ほら見ろ。ヤツは顔を真っ赤に、目には涙さえ浮かべている。箱入り女子じゃあるまいし。
よし、もう畳んでしまえ。
「はい、この話はおしまい。他あたって」
そう強制終了しようとすると、ヤツは瀕死のくせにとんでもないことを言い放った。
「笹谷は!いいって言った!」
「はぁ?笹谷がそんなこと言うわけないじゃん」
「あー、わりい。俺言ったわー」
嘘でしょ。背後から出てきた笹谷に、文字通り後ろから撃たれるとは……。
殺意を込めて睨みつけると、慌てたように「違うって」と弁解をはじめる。
「だけど結城巻き込むとは聞いてねーぞ。ラブシーンありの役を俺がやるって言っただけ」
「アンタ、それよく引き受けたな……」
別の意味で感心する。相手誰だと思ったんだろう?それによってはシメないと。
「それによく考えてみろよ。クラスメイトのキスなんて、親の子作り見せられたレベルのいたたまれない雰囲気になるぞ」
「……」
ひどい例えの方が効果的なのは私も実行済みだから人のことは言えないけど、これにはさすがの私もひく。いやいや、親のキスですらクラスメイトのキスよりいたたまれないでしょ。子作りって何をするのかご存知ですよね笹谷さん?……と思いつつ文化祭委員を見ると、
「お前らのキスなら、結構舞台映えすると思うんだけどなー」
ほらみろ!
せっかく瀕死まで追い込んだのに息を吹き返しちゃったじゃないか!なんだその芸術家気取りのドヤ顔は!
拳を握りしめて笹谷を睨みつけるも、彼は至って涼しい顔だ。
「そんなら、見てみりゃいいわ」
笹谷が目くばせする。
えー……。
いやーだーーー!
笹谷が何を見せようとしてるのかはわかるけども。やり方によっては(特にこいつには)非常に効果的なのもわかるけども!マジか……。
でも、やるなら一切恥じらいを見せてはダメだ。私はわざとらしくため息をついて、心を決める。
「来なよ、笹谷」
「おうよ」
片目を細めて片方の口端を上げ、自分史上最高のゲスい笑みを浮かべる。笹谷の方に向き直ると両手を口の前で握りタコのような顔をするので吹き出しそうになる。
そして。まあ、えげつないのをやってやる……つもりだった。
「ひっ、ヒイ、わーーーーーっ!すいません、ごめんなさい、もう許してください!」
…………。両手で顔を隠し耳まで真っ赤にしてしゃがみこむとか今どき乙女でもやらないわ。根性ねぇな。
かくて私と笹谷の公開ラブシーンはお蔵入りになったのであった。
それはそうと……。
「アンタ、誰とラブシーンするつもりで引き受けたのよ」
「え?茂庭?」
一発殴っといた。
~後日談~
芸術性は女装のクオリティを上げることで高めることしたらしい。
そして茂庭くんがその流れ弾に当たりそうになったのは別の話。(意外と身長がでかくて筋肉質なところがヤツのお眼鏡にかなわなかったそうな)
そして私たちは『アイツらノリが洋モノなんだよ!』という風評被害を頂戴した。
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