EX8:アドバースリアクション
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※下品注意
夏休みが明けて、高校生活最後の2学期がやってきた。
松島にはアリバイのお礼として、かねてからの約束だった季節のパフェを献上した。
「無事、行って参りました。こちらお約束の品です。お納めください」
「うむ。わざわざありがと」
「これも全て松島様のご尽力のおかげです」
「……ま、私何もしてないけどね。では!いっただっきまーす!」
早速、上の桃からかぶりついている。いい食べっぷりだ。奢りがいがある。
口元のクリームをぺろっと舐めとると、彼女は私を正面から見据える。
「で、どうだった?」
「楽しかったよ。鈍行しかないから移動時間長かったけど。早く免許取ろうって思った」
「そーいうことじゃない。……で、どうだった?」
長いスプーンで私を指しながら、にやにやと主語のない質問を繰り返す。
高校最後の夏休み。
カレシとの旅行。
初めてのお泊り。
じゃあ、ここで話すことは一つでしょ?と言わんばかりの顔だ。
「……そんなこと聞く?」
「これをじっくり聞くために学校では何も言わなかったんだから、感謝なさい」
「……」
「率直に感想は?」
そんなこと言われても、正直に『気持ちよかった』なんて言ったらからかわれるに決まってるから絶対言えない。だから私は、自分のボキャブラリーの中の無難な言葉をひねり出す。
「……すごかった」
「ぶっ」
「何で笑うの!?」
「いや、あんまり初体験の感想で聞かないな、って」
ひねり出した言葉が裏目に出てしまった!
「そうなの!?ふ、普通は何て言うの!?」
「そうだなー。痛かったとか、怖かったとか?まれに気持ち良かったとか、聞くかな?」
「まれなの!?」
「まれよー!初めてから気持ちいいとかいきまくりなんてほぼ聞かないわ。よっぽど素質ありか自己鍛練に励んでたとか、」
松島は私と目を合わせると意味ありげに口角を上げる。
「彼氏がテクニシャンか……」
私はドキリとして不自然に目を逸らしてしまった。
「ちょっと、アンタまさか……」
「い、言わない」
そっぽを向いた私を、松島は疑いの眼差しで見つめる。
「……さっすが、笹谷だわ。友紀に『すごかった』って言わせるなんて。私一回、お願いしてみようかなー?」
「ダメ!絶対ダメ!」
思わず立ち上がったらテーブルに膝も腕も打ち付けて、ものすごい音が立ってしまった。周りのお客さんがびっくりしたようにこちらを見る。
でも……。あんなの他の子とするなんて、例え松島でも許せない。
「冗談だって……」
私の剣幕に驚いた松島は一旦おちょくりモードを解き、周囲と私が落ち着くのを待って真剣な声音で言った。
「……ちゃんと避妊はしたの?」
「うん」
「ホテルの足りなくなったりしなかった?」
「大丈夫。ちゃんと箱で用意してたから」
ブッと松島は吹き出す。
私、また変なこと言った!?
「……箱って……何回やるつもりだったの」
「え?そんなの、私が用意したわけじゃないから、知らないよ……」
「ちゃんとしてるんだか、絶倫なんだか……」
松島が可笑しそうに笑う。
もう何言ってもダメな気がする……。『2個しか使ってない!』って言うのも火に油なだけだろうし。実際あそこで止めなかったら何回されてたかわからなかったし……。でも!笹谷はちゃんと考えてくれて用意もしてくれたっていうのをわかって欲しいんだけど……。
そんな願いも虚しく続いた松島の質問は最低だった。
「そーいや、デカイの?」
「はぁ!?そんなの知らない!ちゃんと見てないし」
「え?見てないの?」
「見るの!?」
「目の前に来たら見るでしょ?」
「目の前になんか来ないよ!」
「……笹谷、紳士だわ……」
「紳士じゃないよ!私、死にかけたんだから!」
「何で?」
「え……」
「何で死にかけたの?」
墓穴を掘った……!そろりと宙に目を泳がせると松島に両手で顔を挟まれ無理矢理目を合わせられる。
手と目力の圧が強すぎて考えが回らない。それでも、気持ちよさのあまり意識が飛んだなんてとても言えないのはわかってる……。
「2回目は……のぼせて……」
「2回目?何で2回目?」
「……」
あああ、また余計なことを口走ってしまった。
ナニコレ?尋問?それとも拷問?
「まあそれは置いといて。1回目は?」
「お、覚えてません」
「覚えてないって……。あんた、首でも絞められたの?」
「そんなこと笹谷がするわけないじゃん!」
さすがにそんなサディスト扱いされるのは阻止しないと!と私は必死に否定する。
「じゃ、気絶でもしたの?」
「ほ、ほんの5分だって!」
「え?マジで!?気絶するまでやられたってこと!?」
「松島、声大きい!」
まだ昼間!場所はファミレス!もっと声を潜めてよ!
「……こんなのガールズトークの恋バナじゃない!下世話な猥談って言うんだよ!」
「いつからガールズトークと勘違いしていた?」
「う……。ちょっと顔を赤らめながらの、ひそひそキャッキャがしたいのに」
「それは、ないわー」
「……」
言ってるそばから私も「ないわー」と思ってしまったんだから大概だ。
松島は目を見開いて、うるうると目を潤ませているていの仕草をする。
「ごめんねぇ、可愛げも恥じらいもなくなっちゃってぇ」
「もういいよ……」
もうすでに私たち女子としては手遅れなのかも、と天を仰いで母校を呪う。
お店のBGMに混じってピロピローンと来客を知らせるチャイムが鳴る。諸悪の根源であるうちの高校の制服を着た男子グループが入ってきた。見たことがあるような一団。何故かみんな一様に髪が濡れている。
「あれ?バレー部じゃない?茂庭と鎌先がいる」
「ホントだ」
そういえば二学期も始まったことだしと、今日は茂庭くん達と現役の部活の冷やかしに行くって言ってた。
茂庭くんを見つけた。横にいる茶髪の子と金髪のトサカみたいな頭の子は知ってる。二口くんと……コガって言われてた子だ。
でも笹谷は見当たらない。
茂庭くんがこちらに気づいたようだった。松島が手を振る。
「あ、松島と結城だ。女子会?」
にこやかにこちらにやってくる茂庭くんに、頬杖をついた松島が意味深な感じに微笑む。
「そーよー。ヒト夏の体験、報・告・会」
「松島っ!」
「……」
茂庭くんは絶句して顔を赤らめた。ちょっとさ、男子の方が恥じらいがあるってどういうことよ。
私は変な空気を払うように彼らに水を向ける。
「どうしたの?みんなずぶぬれじゃん」
「部活覗きに行ったらこいつらに水かけられて。制服なのに容赦ねーんだよ」
「どーもー」「ちわっす」と後輩くんたちが律儀に挨拶してくれる。
髪の毛は水を含んで下りているけど、制服の方はお店に入るのに支障がないくらいに乾いている。残暑とはいえ夏の日差しは偉大だ。
「茂庭、水に濡れるとクセ落ちんのね。長いと根暗っぽい」
「ほっといて!」
松島が茂庭くんをからかっている。
「……笹谷は一緒じゃないの?」
この面子の中に笹谷が見当たらないのが気になってつい口に出してしまった。
制服のズボンの上に学校名が入った黒いTシャツを着た鎌先くんが言う。
「アイツが一番ずぶぬれなんだよ。着替えも持ってねぇし。もう少ししたら来ると思う」
そう言うなり、またピロピローンとチャイムが鳴り、誰かが入って来た。
「いやー。やられたやられた……」
そう言いながら制服が着崩れた笹谷がこちらにやってきた、けど、その笹谷の姿を見て、心臓が止まりそうになった。
笹谷の髪が下りている……。
その瞬間、私の脳裏に、フラッシュバックする
髪の隙間から見えた
ギラリと光る雄の目
私を気絶するまで追い詰めて
のぼせるまで離さなかった笹谷を
「あれ、友紀?」
「結城先輩、どうしたんすか?顔真っ赤ですよ」
「え?え?」
松島と黄金川くんのその声に、そこにいたみんなの視線が私に集まる。
一斉に視線を浴びて、余計に顔が熱くなった私はしどろもどろに言い訳をする。
「あ、あの……。笹谷の髪が下りてるの、あんまり見たことがなくて……」
「?」
「ちょっと、別人みたいで、なんか、恥ずかしくなっちゃって……」
「へー、結城先輩、初々しい~!」
二口くんがニヤッと笑って私をからかい、鎌先くんが肘で笹谷をつつく。
笹谷は悪びれもせずに「いや~それほどでもー」とすっとぼける。
松島が正面からジト目で私を見ていた。
「初々しい、ねぇ……」
ぽつりと、含みをもたせてつぶやいた言葉に、冷や汗が出てくる。
バレー部員10人弱が収容できる席は私たちの席とは離れたところにしかないので、ここで別れる。
笹谷は一言「じゃあ、また後で」と私に手を振って、そちらに合流していった。
「あんた……何、思い出してんの?」
バレー部が席に落ち着いたところを見計らってから松島が口を開いた。目が怖い。
「べ、別に、何も……」
「ふーん。それじゃ、ちょっと『すごかった』について詳しく話してもらおうかしら」
「え……そんなの、ファミレスじゃ話せない」
もじもじと顔を赤らめる私を、気色悪いものを見た感じで見下ろしてくる。女子会とは。
「あんたさ……。ずぶずぶにハマった挙句のできちゃった退学だけは勘弁してよ」
「そんなことにならないよ!!!」
からかわれていると思って反射的に返したけど、思いのほか彼女の顔は真剣だった。
「私、真面目に言ってるからね」
「……キヲツケマス」
「うむ。わかればよろしい」
殊勝に応じた私に、彼女は深くうなずくと思い出したようにクリームをすくう。
「あーあ。私も彼氏欲しいなー」
「え?ちょっと待って。いつの間に別れたの!?」
松島まさかの発言で、女子会は第2ラウンド突入の様相を呈した。
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an adverse reaction
(副反応)
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夏休みが明けて、高校生活最後の2学期がやってきた。
松島にはアリバイのお礼として、かねてからの約束だった季節のパフェを献上した。
「無事、行って参りました。こちらお約束の品です。お納めください」
「うむ。わざわざありがと」
「これも全て松島様のご尽力のおかげです」
「……ま、私何もしてないけどね。では!いっただっきまーす!」
早速、上の桃からかぶりついている。いい食べっぷりだ。奢りがいがある。
口元のクリームをぺろっと舐めとると、彼女は私を正面から見据える。
「で、どうだった?」
「楽しかったよ。鈍行しかないから移動時間長かったけど。早く免許取ろうって思った」
「そーいうことじゃない。……で、どうだった?」
長いスプーンで私を指しながら、にやにやと主語のない質問を繰り返す。
高校最後の夏休み。
カレシとの旅行。
初めてのお泊り。
じゃあ、ここで話すことは一つでしょ?と言わんばかりの顔だ。
「……そんなこと聞く?」
「これをじっくり聞くために学校では何も言わなかったんだから、感謝なさい」
「……」
「率直に感想は?」
そんなこと言われても、正直に『気持ちよかった』なんて言ったらからかわれるに決まってるから絶対言えない。だから私は、自分のボキャブラリーの中の無難な言葉をひねり出す。
「……すごかった」
「ぶっ」
「何で笑うの!?」
「いや、あんまり初体験の感想で聞かないな、って」
ひねり出した言葉が裏目に出てしまった!
「そうなの!?ふ、普通は何て言うの!?」
「そうだなー。痛かったとか、怖かったとか?まれに気持ち良かったとか、聞くかな?」
「まれなの!?」
「まれよー!初めてから気持ちいいとかいきまくりなんてほぼ聞かないわ。よっぽど素質ありか自己鍛練に励んでたとか、」
松島は私と目を合わせると意味ありげに口角を上げる。
「彼氏がテクニシャンか……」
私はドキリとして不自然に目を逸らしてしまった。
「ちょっと、アンタまさか……」
「い、言わない」
そっぽを向いた私を、松島は疑いの眼差しで見つめる。
「……さっすが、笹谷だわ。友紀に『すごかった』って言わせるなんて。私一回、お願いしてみようかなー?」
「ダメ!絶対ダメ!」
思わず立ち上がったらテーブルに膝も腕も打ち付けて、ものすごい音が立ってしまった。周りのお客さんがびっくりしたようにこちらを見る。
でも……。あんなの他の子とするなんて、例え松島でも許せない。
「冗談だって……」
私の剣幕に驚いた松島は一旦おちょくりモードを解き、周囲と私が落ち着くのを待って真剣な声音で言った。
「……ちゃんと避妊はしたの?」
「うん」
「ホテルの足りなくなったりしなかった?」
「大丈夫。ちゃんと箱で用意してたから」
ブッと松島は吹き出す。
私、また変なこと言った!?
「……箱って……何回やるつもりだったの」
「え?そんなの、私が用意したわけじゃないから、知らないよ……」
「ちゃんとしてるんだか、絶倫なんだか……」
松島が可笑しそうに笑う。
もう何言ってもダメな気がする……。『2個しか使ってない!』って言うのも火に油なだけだろうし。実際あそこで止めなかったら何回されてたかわからなかったし……。でも!笹谷はちゃんと考えてくれて用意もしてくれたっていうのをわかって欲しいんだけど……。
そんな願いも虚しく続いた松島の質問は最低だった。
「そーいや、デカイの?」
「はぁ!?そんなの知らない!ちゃんと見てないし」
「え?見てないの?」
「見るの!?」
「目の前に来たら見るでしょ?」
「目の前になんか来ないよ!」
「……笹谷、紳士だわ……」
「紳士じゃないよ!私、死にかけたんだから!」
「何で?」
「え……」
「何で死にかけたの?」
墓穴を掘った……!そろりと宙に目を泳がせると松島に両手で顔を挟まれ無理矢理目を合わせられる。
手と目力の圧が強すぎて考えが回らない。それでも、気持ちよさのあまり意識が飛んだなんてとても言えないのはわかってる……。
「2回目は……のぼせて……」
「2回目?何で2回目?」
「……」
あああ、また余計なことを口走ってしまった。
ナニコレ?尋問?それとも拷問?
「まあそれは置いといて。1回目は?」
「お、覚えてません」
「覚えてないって……。あんた、首でも絞められたの?」
「そんなこと笹谷がするわけないじゃん!」
さすがにそんなサディスト扱いされるのは阻止しないと!と私は必死に否定する。
「じゃ、気絶でもしたの?」
「ほ、ほんの5分だって!」
「え?マジで!?気絶するまでやられたってこと!?」
「松島、声大きい!」
まだ昼間!場所はファミレス!もっと声を潜めてよ!
「……こんなのガールズトークの恋バナじゃない!下世話な猥談って言うんだよ!」
「いつからガールズトークと勘違いしていた?」
「う……。ちょっと顔を赤らめながらの、ひそひそキャッキャがしたいのに」
「それは、ないわー」
「……」
言ってるそばから私も「ないわー」と思ってしまったんだから大概だ。
松島は目を見開いて、うるうると目を潤ませているていの仕草をする。
「ごめんねぇ、可愛げも恥じらいもなくなっちゃってぇ」
「もういいよ……」
もうすでに私たち女子としては手遅れなのかも、と天を仰いで母校を呪う。
お店のBGMに混じってピロピローンと来客を知らせるチャイムが鳴る。諸悪の根源であるうちの高校の制服を着た男子グループが入ってきた。見たことがあるような一団。何故かみんな一様に髪が濡れている。
「あれ?バレー部じゃない?茂庭と鎌先がいる」
「ホントだ」
そういえば二学期も始まったことだしと、今日は茂庭くん達と現役の部活の冷やかしに行くって言ってた。
茂庭くんを見つけた。横にいる茶髪の子と金髪のトサカみたいな頭の子は知ってる。二口くんと……コガって言われてた子だ。
でも笹谷は見当たらない。
茂庭くんがこちらに気づいたようだった。松島が手を振る。
「あ、松島と結城だ。女子会?」
にこやかにこちらにやってくる茂庭くんに、頬杖をついた松島が意味深な感じに微笑む。
「そーよー。ヒト夏の体験、報・告・会」
「松島っ!」
「……」
茂庭くんは絶句して顔を赤らめた。ちょっとさ、男子の方が恥じらいがあるってどういうことよ。
私は変な空気を払うように彼らに水を向ける。
「どうしたの?みんなずぶぬれじゃん」
「部活覗きに行ったらこいつらに水かけられて。制服なのに容赦ねーんだよ」
「どーもー」「ちわっす」と後輩くんたちが律儀に挨拶してくれる。
髪の毛は水を含んで下りているけど、制服の方はお店に入るのに支障がないくらいに乾いている。残暑とはいえ夏の日差しは偉大だ。
「茂庭、水に濡れるとクセ落ちんのね。長いと根暗っぽい」
「ほっといて!」
松島が茂庭くんをからかっている。
「……笹谷は一緒じゃないの?」
この面子の中に笹谷が見当たらないのが気になってつい口に出してしまった。
制服のズボンの上に学校名が入った黒いTシャツを着た鎌先くんが言う。
「アイツが一番ずぶぬれなんだよ。着替えも持ってねぇし。もう少ししたら来ると思う」
そう言うなり、またピロピローンとチャイムが鳴り、誰かが入って来た。
「いやー。やられたやられた……」
そう言いながら制服が着崩れた笹谷がこちらにやってきた、けど、その笹谷の姿を見て、心臓が止まりそうになった。
笹谷の髪が下りている……。
その瞬間、私の脳裏に、フラッシュバックする
髪の隙間から見えた
ギラリと光る雄の目
私を気絶するまで追い詰めて
のぼせるまで離さなかった笹谷を
「あれ、友紀?」
「結城先輩、どうしたんすか?顔真っ赤ですよ」
「え?え?」
松島と黄金川くんのその声に、そこにいたみんなの視線が私に集まる。
一斉に視線を浴びて、余計に顔が熱くなった私はしどろもどろに言い訳をする。
「あ、あの……。笹谷の髪が下りてるの、あんまり見たことがなくて……」
「?」
「ちょっと、別人みたいで、なんか、恥ずかしくなっちゃって……」
「へー、結城先輩、初々しい~!」
二口くんがニヤッと笑って私をからかい、鎌先くんが肘で笹谷をつつく。
笹谷は悪びれもせずに「いや~それほどでもー」とすっとぼける。
松島が正面からジト目で私を見ていた。
「初々しい、ねぇ……」
ぽつりと、含みをもたせてつぶやいた言葉に、冷や汗が出てくる。
バレー部員10人弱が収容できる席は私たちの席とは離れたところにしかないので、ここで別れる。
笹谷は一言「じゃあ、また後で」と私に手を振って、そちらに合流していった。
「あんた……何、思い出してんの?」
バレー部が席に落ち着いたところを見計らってから松島が口を開いた。目が怖い。
「べ、別に、何も……」
「ふーん。それじゃ、ちょっと『すごかった』について詳しく話してもらおうかしら」
「え……そんなの、ファミレスじゃ話せない」
もじもじと顔を赤らめる私を、気色悪いものを見た感じで見下ろしてくる。女子会とは。
「あんたさ……。ずぶずぶにハマった挙句のできちゃった退学だけは勘弁してよ」
「そんなことにならないよ!!!」
からかわれていると思って反射的に返したけど、思いのほか彼女の顔は真剣だった。
「私、真面目に言ってるからね」
「……キヲツケマス」
「うむ。わかればよろしい」
殊勝に応じた私に、彼女は深くうなずくと思い出したようにクリームをすくう。
「あーあ。私も彼氏欲しいなー」
「え?ちょっと待って。いつの間に別れたの!?」
松島まさかの発言で、女子会は第2ラウンド突入の様相を呈した。
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