仮面舞踏会
「そろそろ、広間に戻りましょう。
せっかく衣装まで用意して貰って
礼を欠くわけにはいかない。
後で、女主人に叱られてしまう。
まだ、お開きまでには
ずいぶんと時間があるようだし」
と藩王が言うと
「でも・・・どうか、もう少しだけ
ここに居てくださいませんか?
この月明かりの下で、ひと目
あなたのお顔を拝見したい」
と回教徒の貴婦人が言った。
はにかんだように藩王は笑って
「わたしも、そのベールの下の
麗しいお顔を拝見してみたい・・・
でも、やめておきましょう。
お互い、知らない方が良いのでしょう
あなたとここで
こうしてお話し出来て、楽しかった。
今夜のことは、きっと忘れられない
素敵な思い出になりそうです・・・
・・・何か聞こえませんでしたか?」
「えっ」
「物音がする・・・
嘶きが聞こえた気がする。
・・・馬が騒いでいるような・・・
馬盗人かもしれない。
厩舎は建物の裏だったな。
たしかに
使用人の棟も空になる、このような夜は
馬盗人にとっては、おあつらえ向きだな」
彼女は呟きながらピストルを取り出すと
建物に沿って静かに走り出した。
彼も長い衣装の裾を掴んで、たくし上げながら
後を追った。
建物の角を曲がった途端、彼女が叫んだ。
「火事だ!!厩舎が燃えている。
わたしは、使用人の棟に
残っている者がいないか見に行く。
母屋にいる連中は
まだ、気づいていないかも知れない。
あなたは、ひとりでいては、いけない。
あそこの勝手口から厨房に入って
すぐ人に知らせて、消火と馬を逃がす為の
男手を集めさせてくれ。
ああ、それから、くれぐれも表の警備にも
隙ができないようにと言って!!」
早口で言いながら、あっという間に
ターバンと仮面をむしりとり
ケープを脱ぎ捨て
彼女はもう駆け出していた。
その白い後姿を
回教徒の貴婦人は、呆然と見送った。
せっかく衣装まで用意して貰って
礼を欠くわけにはいかない。
後で、女主人に叱られてしまう。
まだ、お開きまでには
ずいぶんと時間があるようだし」
と藩王が言うと
「でも・・・どうか、もう少しだけ
ここに居てくださいませんか?
この月明かりの下で、ひと目
あなたのお顔を拝見したい」
と回教徒の貴婦人が言った。
はにかんだように藩王は笑って
「わたしも、そのベールの下の
麗しいお顔を拝見してみたい・・・
でも、やめておきましょう。
お互い、知らない方が良いのでしょう
あなたとここで
こうしてお話し出来て、楽しかった。
今夜のことは、きっと忘れられない
素敵な思い出になりそうです・・・
・・・何か聞こえませんでしたか?」
「えっ」
「物音がする・・・
嘶きが聞こえた気がする。
・・・馬が騒いでいるような・・・
馬盗人かもしれない。
厩舎は建物の裏だったな。
たしかに
使用人の棟も空になる、このような夜は
馬盗人にとっては、おあつらえ向きだな」
彼女は呟きながらピストルを取り出すと
建物に沿って静かに走り出した。
彼も長い衣装の裾を掴んで、たくし上げながら
後を追った。
建物の角を曲がった途端、彼女が叫んだ。
「火事だ!!厩舎が燃えている。
わたしは、使用人の棟に
残っている者がいないか見に行く。
母屋にいる連中は
まだ、気づいていないかも知れない。
あなたは、ひとりでいては、いけない。
あそこの勝手口から厨房に入って
すぐ人に知らせて、消火と馬を逃がす為の
男手を集めさせてくれ。
ああ、それから、くれぐれも表の警備にも
隙ができないようにと言って!!」
早口で言いながら、あっという間に
ターバンと仮面をむしりとり
ケープを脱ぎ捨て
彼女はもう駆け出していた。
その白い後姿を
回教徒の貴婦人は、呆然と見送った。