DRCR2025 チョコにまつわるエトセトラ
「南蛮にはバレンタインというものがあって」
「好きな人にちょこれいとをあげるんだって」
くノ一教室は2月になるとそんな話題で持ちきりになった。
「小春、アンタは食満くんにバレンタインあげるの?」
級友はバレンタインの話題を一歩引いた態度で楽しんでいる。
「ちょこれいとの作り方がわかんない」
そう答えると級友はそれもそうだと笑いだす。
くノ一教室で料理教室をやるからその時に一緒に作ろう。と級友は提案する。留三郎が喜ぶ顔を思い浮かべながら私は笑みをこぼした。
「はっぴーばれんたいん」
鶯色の包みに淡い黄色の布で花結びにしたものを留三郎に手渡す。
「バレンタインのちょこれいと」
「ああ、噂の」
バレンタインのことは忍たまの方でも話題になっていたらしい。なんでもくノ一たちが怪しげな食べ物を作っているのではないかと恐れていたそうだ。
「好きな人にはちょこれいとをあげる日なんだって。まあ、くノ一教室にもバレンタインを使って悪巧みを考えてる子はいるみたい」
「なるほどなぁ。小春のこれはどっちだ?」
留三郎の少し意地悪な物言いにムッとする。なんでこの人はわかりきったことを言うんだろう。
私は今まで彼に「くノ一教室の悪巧み」をやったことなんてないのに。
「好きな人のために作ったちょこに決まってるでしょ?なんでそんなこと聞くの」
私があからさまに不機嫌になったのを見て留三郎がわざとらしく笑って頭を撫でる。
「ちゃんと好きな人のためって聞きたかったからな。小春はあんまそういうの言わないから」
頭を撫でていた手が降りていって髪を撫で、頬を撫でる。骨ばった彼の手の感触はとても心地がいい。
「そう、かもだけど……」
私が留三郎への気持ちを自覚したのはそれこそ数ヶ月前で、「好き」という感情を口にする回数は、きっと留三郎より遥かに少ない。
だから優しい彼は私の気持ちを引き出すことが上手い。
今回もこうやって私の気持ちを口にさせてくれる。
「……大切な……だ、大好きな留三郎のために作ったちょこれいとだから味わって食べてね」
私の意思でちゃんと「好き」を伝えると留三郎は顔を真っ赤にした。
彼のそういう顔を見るのは珍しいんだけれど、私にしか見せてくれない顔だから大好きだ。
「それとね、男の人は一月後にお返しをしなくちゃいけないからよろしくね」
三倍返しが相場だと続けると力のない「心得た」が返ってきた。
このちょこの三倍は多いよなぁと考えていると、クイと顎を掬い上げられる。
目の前が留三郎でいっぱいになって、少しして留三郎が離れる。
「……」
「……なんか言ってくれ」
「今さっきお返しは一月後って話したばかりなのに」
格好よく口吸いをした彼が見る見る顔を赤くするのを黙って眺めていたら文句を言われたので、ふと思いついたことを口にする。
留三郎は力が抜けたように肩を落とした。
「……お返しはこれの三倍だ!今から覚悟しろよ、小春」
「え、あ、うん」
耳から入った言葉に反射的に返事をし、後から意味を咀嚼する。
コレ の三倍……?
「……っあ」
飲み込んだ途端、顔が赤くなったのがわかった。
「……」
「……」
お互い顔を真っ赤にさせて見つめ合う。
「え……えっと……」
なんとか声を絞り出して、言葉を続けた。
先ほど触れられた唇を指で触ると、熱でも出ているんじゃないかと思うほど熱をもっていた。
「楽しみに……してるね?」
「……おう」
「好きな人にちょこれいとをあげるんだって」
くノ一教室は2月になるとそんな話題で持ちきりになった。
「小春、アンタは食満くんにバレンタインあげるの?」
級友はバレンタインの話題を一歩引いた態度で楽しんでいる。
「ちょこれいとの作り方がわかんない」
そう答えると級友はそれもそうだと笑いだす。
くノ一教室で料理教室をやるからその時に一緒に作ろう。と級友は提案する。留三郎が喜ぶ顔を思い浮かべながら私は笑みをこぼした。
「はっぴーばれんたいん」
鶯色の包みに淡い黄色の布で花結びにしたものを留三郎に手渡す。
「バレンタインのちょこれいと」
「ああ、噂の」
バレンタインのことは忍たまの方でも話題になっていたらしい。なんでもくノ一たちが怪しげな食べ物を作っているのではないかと恐れていたそうだ。
「好きな人にはちょこれいとをあげる日なんだって。まあ、くノ一教室にもバレンタインを使って悪巧みを考えてる子はいるみたい」
「なるほどなぁ。小春のこれはどっちだ?」
留三郎の少し意地悪な物言いにムッとする。なんでこの人はわかりきったことを言うんだろう。
私は今まで彼に「くノ一教室の悪巧み」をやったことなんてないのに。
「好きな人のために作ったちょこに決まってるでしょ?なんでそんなこと聞くの」
私があからさまに不機嫌になったのを見て留三郎がわざとらしく笑って頭を撫でる。
「ちゃんと好きな人のためって聞きたかったからな。小春はあんまそういうの言わないから」
頭を撫でていた手が降りていって髪を撫で、頬を撫でる。骨ばった彼の手の感触はとても心地がいい。
「そう、かもだけど……」
私が留三郎への気持ちを自覚したのはそれこそ数ヶ月前で、「好き」という感情を口にする回数は、きっと留三郎より遥かに少ない。
だから優しい彼は私の気持ちを引き出すことが上手い。
今回もこうやって私の気持ちを口にさせてくれる。
「……大切な……だ、大好きな留三郎のために作ったちょこれいとだから味わって食べてね」
私の意思でちゃんと「好き」を伝えると留三郎は顔を真っ赤にした。
彼のそういう顔を見るのは珍しいんだけれど、私にしか見せてくれない顔だから大好きだ。
「それとね、男の人は一月後にお返しをしなくちゃいけないからよろしくね」
三倍返しが相場だと続けると力のない「心得た」が返ってきた。
このちょこの三倍は多いよなぁと考えていると、クイと顎を掬い上げられる。
目の前が留三郎でいっぱいになって、少しして留三郎が離れる。
「……」
「……なんか言ってくれ」
「今さっきお返しは一月後って話したばかりなのに」
格好よく口吸いをした彼が見る見る顔を赤くするのを黙って眺めていたら文句を言われたので、ふと思いついたことを口にする。
留三郎は力が抜けたように肩を落とした。
「……お返しはこれの三倍だ!今から覚悟しろよ、小春」
「え、あ、うん」
耳から入った言葉に反射的に返事をし、後から意味を咀嚼する。
「……っあ」
飲み込んだ途端、顔が赤くなったのがわかった。
「……」
「……」
お互い顔を真っ赤にさせて見つめ合う。
「え……えっと……」
なんとか声を絞り出して、言葉を続けた。
先ほど触れられた唇を指で触ると、熱でも出ているんじゃないかと思うほど熱をもっていた。
「楽しみに……してるね?」
「……おう」