番外編
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兄はそれを「正当な自我」と言った。
9歳の冬。兄の親友の息子だという千空が我が家にやってきた。両親がいなくなった2歳の子供。私はずっと兄さんの妹だったから弟が出来たみたいに喜んだのを覚えてる。
千空はとても頭がよかった。
とても聡い子だった。
だからなのか、血の繋がらない兄に引き取られたのを疑問に思ったらしい。
「まあ、普通に俺らと暮らしていればいつかは出てくる疑問だったろうしなぁ」
千空の純粋な疑問をぶつけられた私に兄はそう言った。ちょっと早すぎる。なんて泣き言は言っていたけれど。
千空と暮らし始めてまだ一年が経っていない。確かに今考えると早いかもしれない。
親とは子供に無条件に愛情をくれる存在。親ではない兄さんと私に愛情もって接せられているのは3歳目前の千空にとっては、確かに不思議な存在なのだろう。
千空がその正当な自我に基づいた疑問による試し行動は、その後何度か起きた。でもその度に兄さんは千空に向き合って愛情をたくさん注いだ。
数ヶ月もしないうちに、千空の試し行動はパタリとなくなったのをよく覚えている。
――ただ、少ししこりは残っていたようだった。
私と千空は年が近い。
と言っても7歳差。でも私と兄さんが18歳差だから千空といる時の方が姉弟に思われることが多かった。
「可愛らしい姉弟だこと!」
「二人でおつかいなんて、仲がいいのねぇ」
そんなことはよく言われる。でもいつも後にはこの一言が続く。
「あんまり、似てないのね」
目元は似ている自信があった。でも相対的に見ると私と千空は似ていないらしい。
実際問題私と千空には血の繋がりがないのだから当たり前で、なんて事のない一言ではある。
けど、幼い千空にはかなり重い一言だったらしい。
明らかに顔はしょげているし、手を繋いでいるときに言われた時には私の手を握る力が明らかに強くなる。
だから、千空がいない時に近所のおばさんに聞いた。
「私と千空ってどこが似てない?」
「変なこと聞くのねぇ五百里ちゃん」
普通ならどこが似てる?って聞かない?と疑問に思うおばさんに詰め寄って聞き出す。
「おばさんは雰囲気とか似てると思うけどねぇ。そうねぇ、五百里ちゃんは髪が黄色いじゃない?でも千空くんは白と緑色っぽい髪色してるから印象が違って見えるのよねぇ」
あとは髪型かな、千空くんは特徴的だから。
困ったように話したおばさんの言葉を何度も反芻して、軽くお礼を言って家に戻った。
洗面台の前に立ち、櫛を握る。近くにあった髪ゴムで髪の毛を一括りにした。
もともと横に流していた長い前髪だったが、後ろの髪と一緒にはくくれずに二房ほど顔の前に垂れた。
「うおっどーした!?五百里!?」
洗面所に入ってきた兄が仰天する。普段しない髪型の私に目を丸くしていた。
「……こうすれば千空に似るかな……って」
千空みたいに髪の毛逆立ってる訳では無いからそれほどでもないけど、印象は似てるはずだ。
「そうか。――いやぁー本当に姉弟みたいになってきたじゃねーか!お兄ちゃんちょっと寂しいな」
「もう、兄さんってば」
髪型を変えた私に千空は「似合ってんじゃねーか」とクールに褒めた。
でもそのすぐ後に2人で出かけた時、会う人に言われた言葉を聞いた時の千空の顔は忘れられない。
「そっくりな姉弟だなぁ!」
年相応に嬉しそうに顔を緩めたあの顔は。
9歳の冬。兄の親友の息子だという千空が我が家にやってきた。両親がいなくなった2歳の子供。私はずっと兄さんの妹だったから弟が出来たみたいに喜んだのを覚えてる。
千空はとても頭がよかった。
とても聡い子だった。
だからなのか、血の繋がらない兄に引き取られたのを疑問に思ったらしい。
「まあ、普通に俺らと暮らしていればいつかは出てくる疑問だったろうしなぁ」
千空の純粋な疑問をぶつけられた私に兄はそう言った。ちょっと早すぎる。なんて泣き言は言っていたけれど。
千空と暮らし始めてまだ一年が経っていない。確かに今考えると早いかもしれない。
親とは子供に無条件に愛情をくれる存在。親ではない兄さんと私に愛情もって接せられているのは3歳目前の千空にとっては、確かに不思議な存在なのだろう。
千空がその正当な自我に基づいた疑問による試し行動は、その後何度か起きた。でもその度に兄さんは千空に向き合って愛情をたくさん注いだ。
数ヶ月もしないうちに、千空の試し行動はパタリとなくなったのをよく覚えている。
――ただ、少ししこりは残っていたようだった。
私と千空は年が近い。
と言っても7歳差。でも私と兄さんが18歳差だから千空といる時の方が姉弟に思われることが多かった。
「可愛らしい姉弟だこと!」
「二人でおつかいなんて、仲がいいのねぇ」
そんなことはよく言われる。でもいつも後にはこの一言が続く。
「あんまり、似てないのね」
目元は似ている自信があった。でも相対的に見ると私と千空は似ていないらしい。
実際問題私と千空には血の繋がりがないのだから当たり前で、なんて事のない一言ではある。
けど、幼い千空にはかなり重い一言だったらしい。
明らかに顔はしょげているし、手を繋いでいるときに言われた時には私の手を握る力が明らかに強くなる。
だから、千空がいない時に近所のおばさんに聞いた。
「私と千空ってどこが似てない?」
「変なこと聞くのねぇ五百里ちゃん」
普通ならどこが似てる?って聞かない?と疑問に思うおばさんに詰め寄って聞き出す。
「おばさんは雰囲気とか似てると思うけどねぇ。そうねぇ、五百里ちゃんは髪が黄色いじゃない?でも千空くんは白と緑色っぽい髪色してるから印象が違って見えるのよねぇ」
あとは髪型かな、千空くんは特徴的だから。
困ったように話したおばさんの言葉を何度も反芻して、軽くお礼を言って家に戻った。
洗面台の前に立ち、櫛を握る。近くにあった髪ゴムで髪の毛を一括りにした。
もともと横に流していた長い前髪だったが、後ろの髪と一緒にはくくれずに二房ほど顔の前に垂れた。
「うおっどーした!?五百里!?」
洗面所に入ってきた兄が仰天する。普段しない髪型の私に目を丸くしていた。
「……こうすれば千空に似るかな……って」
千空みたいに髪の毛逆立ってる訳では無いからそれほどでもないけど、印象は似てるはずだ。
「そうか。――いやぁー本当に姉弟みたいになってきたじゃねーか!お兄ちゃんちょっと寂しいな」
「もう、兄さんってば」
髪型を変えた私に千空は「似合ってんじゃねーか」とクールに褒めた。
でもそのすぐ後に2人で出かけた時、会う人に言われた言葉を聞いた時の千空の顔は忘れられない。
「そっくりな姉弟だなぁ!」
年相応に嬉しそうに顔を緩めたあの顔は。