一章
夢小説設定
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気が付くと龍水は毎日私の詰めている保管庫にやってきた。
彼もこの保管庫には何度も通い詰めていたらしく、私が欲している年代を言えばすぐに目星をつけてくれた。
「すごいよ、龍水。めちゃくちゃ助かる!この保管庫の環境がいいのも龍水の案?私蔵でこんなに状態がいいのなんてなかなか見れないから」
特定の年代の帳簿を見つけてくれた龍水との会話は何度も終わりが見えないくらいに続いた。
「ああ、学芸員を一人雇ったんでな。経費も基本的に惜しまずつぎ込んだ」
その経費の出処は、と聞きたくなったがやめた。彼のおこずかいは億単位。しかもそれを株やら為替やらで倍額以上にする腕の持ち主だ。聞くだけ無駄という話だ。
「初めてここに来た時に感動したよ。龍水のおかげだったんだね、ありがとう」
「ふぅん……いや、感謝されるほどでも、ないだろう」
基本的にまっすぐ見つめ返す龍水が目を泳がせる。珍しいなと思い、彼の顔を覗き込むが、顔を逸らされた。
「――して、この大量の史料をどうして行くんだ?」
軽く咳払いをした龍水が話を変える。何だかわざとらしくも感じたが、追求せずにしておく。
「この内容を全部解読。そのデータをこの仕事依頼してきた教授に送っていくのが主な仕事。ものによっちゃ内容の吟味もするよ」
「随分ハードじゃないか」
机の上に積みあがっている大量の未解読史料を見て龍水が汗をかく。確かにそうだ。
「そのために何日も滞在させていただいているから。それに、基本的に院生は教授の研究の使い走りよ」
「そんなものか?」
まあ他分野の院生を使い走りにする教授はなかなかいないのだろうけど。
「そんなもんそんなもん。まあ、今のペースなら余裕あるかな。帳簿の解読はそれほど難しくないし」
帳簿自体パターン化しているものがほとんどだ。史料固有の単語が出てきたりすると面倒ではあるが、仕方がない。
「五百里、忙しいかもしれないが、機帆船関係で解読の終わっていない史料がいくつかあるんだが……」
「もちろん。この仕事終わったらになるし、もしかしたら滞在期間の後になっちゃうかもだけど」
「いや、いつでも構わない。報酬は弾むぞ」
報酬と言われてああ、となる。確かにこれは教授の研究の使い走りじゃないから、利益が発生するわけだ。私自身は無償でも構わないところだけれど。
「学生のバイト程度でいいよ」
「相場がわからん」
学生バイトの相場かぁ……私自身バイトはあまりしていない。古文書解析のバイトの給料はなおのことだ。
「相場は……うん、ほかの人に聞いてみるよ」
じゃあ約束ね。と小指を差し出した。
「ゆーびきりげーんまん。嘘ついたら針千本のーます」
「よくよく聞くと恐ろしい歌詞だな、それは」
「あはは、これは昔ね――」
彼もこの保管庫には何度も通い詰めていたらしく、私が欲している年代を言えばすぐに目星をつけてくれた。
「すごいよ、龍水。めちゃくちゃ助かる!この保管庫の環境がいいのも龍水の案?私蔵でこんなに状態がいいのなんてなかなか見れないから」
特定の年代の帳簿を見つけてくれた龍水との会話は何度も終わりが見えないくらいに続いた。
「ああ、学芸員を一人雇ったんでな。経費も基本的に惜しまずつぎ込んだ」
その経費の出処は、と聞きたくなったがやめた。彼のおこずかいは億単位。しかもそれを株やら為替やらで倍額以上にする腕の持ち主だ。聞くだけ無駄という話だ。
「初めてここに来た時に感動したよ。龍水のおかげだったんだね、ありがとう」
「ふぅん……いや、感謝されるほどでも、ないだろう」
基本的にまっすぐ見つめ返す龍水が目を泳がせる。珍しいなと思い、彼の顔を覗き込むが、顔を逸らされた。
「――して、この大量の史料をどうして行くんだ?」
軽く咳払いをした龍水が話を変える。何だかわざとらしくも感じたが、追求せずにしておく。
「この内容を全部解読。そのデータをこの仕事依頼してきた教授に送っていくのが主な仕事。ものによっちゃ内容の吟味もするよ」
「随分ハードじゃないか」
机の上に積みあがっている大量の未解読史料を見て龍水が汗をかく。確かにそうだ。
「そのために何日も滞在させていただいているから。それに、基本的に院生は教授の研究の使い走りよ」
「そんなものか?」
まあ他分野の院生を使い走りにする教授はなかなかいないのだろうけど。
「そんなもんそんなもん。まあ、今のペースなら余裕あるかな。帳簿の解読はそれほど難しくないし」
帳簿自体パターン化しているものがほとんどだ。史料固有の単語が出てきたりすると面倒ではあるが、仕方がない。
「五百里、忙しいかもしれないが、機帆船関係で解読の終わっていない史料がいくつかあるんだが……」
「もちろん。この仕事終わったらになるし、もしかしたら滞在期間の後になっちゃうかもだけど」
「いや、いつでも構わない。報酬は弾むぞ」
報酬と言われてああ、となる。確かにこれは教授の研究の使い走りじゃないから、利益が発生するわけだ。私自身は無償でも構わないところだけれど。
「学生のバイト程度でいいよ」
「相場がわからん」
学生バイトの相場かぁ……私自身バイトはあまりしていない。古文書解析のバイトの給料はなおのことだ。
「相場は……うん、ほかの人に聞いてみるよ」
じゃあ約束ね。と小指を差し出した。
「ゆーびきりげーんまん。嘘ついたら針千本のーます」
「よくよく聞くと恐ろしい歌詞だな、それは」
「あはは、これは昔ね――」