一章
夢小説設定
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職員さん――と思っていた人はさる御方の執事なようで、すぐにでもその人と都合してくれると言ってくれた。
私はしばらく七海学園に滞在することと保管庫に篭らせてもらうことを伝えた。
「会えるのは楽しみだけど……まずは私の仕事をしなくちゃね」
思いがけない出会いがありそうだが、私の本来の目的は古文書の分析だ。
毎日この仕事を頼んできた教授に報告しなくてはならないから早速取り掛からないとだ。
「さて……」
――三時間ほどが経っただろうか。一日目の作業開始としては順調な滑り出しだ。
目を通し切れていない部分があるけど、この年代の記録を重点的に見ていけば、教授の欲しがる情報が見つけられる可能性が高い。
今夜の報告会はとりあえずこのことを先ず言って……それからあっちの年代の記録についても話しておかなくちゃだ。
「……さま、――さま。――五百里様」
「は、はい!!」
目を通してきた文献の山を眺めていると、執事さん――フランソワさんに声を掛けられているのに気が付かなった。
これは私の悪癖だ。集中するとすぐに周りのことを気にしなくなる。
これで何度千空とご飯時を逃してきたことか。
「作業は順調でしょうか」
「はい!大収穫ですよ、さすが七海財閥と言ったところです」
「ありがとうございます。――五百里様、お疲れでしょうから、お茶でも飲んで休憩はいかがでしょう」
古文書文献資料の調査中は基本的に水分厳禁だ。のどが乾いたら分析している部屋から出て取るのが絶対だ。
もちろん私は三時間ぶっ通しでこの仕事をこなしていたから、一切水分を摂っていない。
同じようなことを何度かやってしまっているから夏場の一人での文献調査は禁止されているくらいだ。
「ありがとうございます、ぜひ」
「それではこちらへ。先ほど話しておりました御方の都合がよいので同席しますがよろしいでしょうか」
「ま、まさかこんなに早く会えるなんて……」
都合をつけると言ってからまだ三時間だ。仕事が早いなんてものじゃない。
フランソワさんの仕事の速さに驚きながらもそのさる御方に会えるのが楽しみで心が躍る。
机の上を軽く整頓して、席を立つ。この保管庫は私が滞在する間はかなり自由に都合させてもらえるらしいので、本当に簡単に。
メモ帳とペン。それに携帯と貴重品をカバンに入れて保管庫を出た。
フランソワさんに通された部屋には1人の青年がいた。
千空は勿論のこと、兄さんよりも背が高い。
髪色は私と似ている、明るい金髪。
「龍水様」
フランソワさんの声に龍水、と呼ばれたその人が振り返る。
力強い瞳が私を捉える。
「貴様が文献調査の院生か?」
はっきりとした物言い。初対面の人間相手に物怖じすることもなく――というか敬語を一切使わないスタイル。
だが、不快感を与えることのない態度。
少しびっくりしたが、第一印象は悪くなかった。
「ええ。初めまして、石神五百里です」
四月に院生として教授の下についたことにより、名刺をもらっていた。
大して出番がなかったが、今回久しぶりにこの名刺を使った。
「七海龍水だ。生憎名刺は持ち合わせなくてな、挨拶だけで許してくれ」
「こちらこそ。よろしく」
龍水が手を差し出す。すぐに答えるように私の手を差し出した。
兄さんとは違う大きな手に少しばかりドキッとしたのは、あの時だけの秘密だ。
私はしばらく七海学園に滞在することと保管庫に篭らせてもらうことを伝えた。
「会えるのは楽しみだけど……まずは私の仕事をしなくちゃね」
思いがけない出会いがありそうだが、私の本来の目的は古文書の分析だ。
毎日この仕事を頼んできた教授に報告しなくてはならないから早速取り掛からないとだ。
「さて……」
――三時間ほどが経っただろうか。一日目の作業開始としては順調な滑り出しだ。
目を通し切れていない部分があるけど、この年代の記録を重点的に見ていけば、教授の欲しがる情報が見つけられる可能性が高い。
今夜の報告会はとりあえずこのことを先ず言って……それからあっちの年代の記録についても話しておかなくちゃだ。
「……さま、――さま。――五百里様」
「は、はい!!」
目を通してきた文献の山を眺めていると、執事さん――フランソワさんに声を掛けられているのに気が付かなった。
これは私の悪癖だ。集中するとすぐに周りのことを気にしなくなる。
これで何度千空とご飯時を逃してきたことか。
「作業は順調でしょうか」
「はい!大収穫ですよ、さすが七海財閥と言ったところです」
「ありがとうございます。――五百里様、お疲れでしょうから、お茶でも飲んで休憩はいかがでしょう」
古文書文献資料の調査中は基本的に水分厳禁だ。のどが乾いたら分析している部屋から出て取るのが絶対だ。
もちろん私は三時間ぶっ通しでこの仕事をこなしていたから、一切水分を摂っていない。
同じようなことを何度かやってしまっているから夏場の一人での文献調査は禁止されているくらいだ。
「ありがとうございます、ぜひ」
「それではこちらへ。先ほど話しておりました御方の都合がよいので同席しますがよろしいでしょうか」
「ま、まさかこんなに早く会えるなんて……」
都合をつけると言ってからまだ三時間だ。仕事が早いなんてものじゃない。
フランソワさんの仕事の速さに驚きながらもそのさる御方に会えるのが楽しみで心が躍る。
机の上を軽く整頓して、席を立つ。この保管庫は私が滞在する間はかなり自由に都合させてもらえるらしいので、本当に簡単に。
メモ帳とペン。それに携帯と貴重品をカバンに入れて保管庫を出た。
フランソワさんに通された部屋には1人の青年がいた。
千空は勿論のこと、兄さんよりも背が高い。
髪色は私と似ている、明るい金髪。
「龍水様」
フランソワさんの声に龍水、と呼ばれたその人が振り返る。
力強い瞳が私を捉える。
「貴様が文献調査の院生か?」
はっきりとした物言い。初対面の人間相手に物怖じすることもなく――というか敬語を一切使わないスタイル。
だが、不快感を与えることのない態度。
少しびっくりしたが、第一印象は悪くなかった。
「ええ。初めまして、石神五百里です」
四月に院生として教授の下についたことにより、名刺をもらっていた。
大して出番がなかったが、今回久しぶりにこの名刺を使った。
「七海龍水だ。生憎名刺は持ち合わせなくてな、挨拶だけで許してくれ」
「こちらこそ。よろしく」
龍水が手を差し出す。すぐに答えるように私の手を差し出した。
兄さんとは違う大きな手に少しばかりドキッとしたのは、あの時だけの秘密だ。