一章
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七海学園。オーナーは海運業の王様・七海財閥。
グループ総資産は200兆円。始まりは江戸時代の回船問屋だったとされる。
史料編纂所の教授曰く、その江戸時代の回船問屋の時の文献が必要になるため、七海学園で所蔵している分を見せてもらうことになった。
歴史が長いだけあって所蔵されている記録は数え切れない。
まあ、個人所蔵の文献は多々見たことがあるが、やはり保管環境が整えられずに、文献として判別できる史料は少ないことが多い。
しかし、七海学園所蔵の文献の保管状態は最高設備と言っていいほどだ。むしろ、国からの予算が僅かな博物館にその設備を与えて欲しいほどだ。
多少の虫食いはあるが、特段状態の悪い史料はない。しかもいくつかの史料に関しては活字化もされている。なんと至れり尽せりだ。
海運系の学校であるから研究史料としても使用しているにしては整い方が段違いだ。大財閥がここまでして保管環境に金を出せるとは中々な知見。もしや関係者に資料保管の知識を持っている人がいたのかもしれない。
「ここまで整っているのは……財閥――学園所蔵でも中々ありませんよね?」
保管庫まで案内してくれた七海学園職員(と思われる人)に尋ねる。
「ええ。保管環境に関してはかねてよりその当時最新技術を採用し、環境を整えて参りました。史料の活字化はさる御方たっての強い希望でして」
「さる御方……?」
古文書を解読出来る人はなかなかいない。研究者を始めその道の人であれば最低知識は持っているけれど。
大学――特に学部生程度では史料1つの活字化も難しい。その「さる御方」はもしや同業者?
「古文書研究者に必要な分を活字化して頂きました」
「はへぇ」
さる御方は古文書を読める訳では無いらしい。
必要な分を活字化させた。ということはその史料が余程読みたかったということ。
気になって保管庫の片隅の本棚を見る。
「七海家資料」とあるハードカバーの史料集を手に取った。
内容は――帆船。
流石江戸時代の廻船問屋。当時のあらゆる船について事細かに記録が残っている。記録の残し方がかなり詳細。後世の人が見ることを想定したかのような記述。七海家先見の明ありすぎだ。
「帆船……」
史料集から目を離してもう一度本棚を見た。
――ああ、そうか。この本棚がさる御方の欲しいもの。
機帆船の資料。
「その人って機帆船を作りたいんですか?」
「左様でございます」
縦ロール髪の職員さんが頷いた。
機帆船――内熱機関が主流の現代では殆ど廃れてしまった船だ。けど一次エネルギーの価格が高騰してる今はコンピュータで帆を操作することで運用がされている。
確か生半可な技術ではそう簡単に乗りこなせる代物ではない筈だ。
「とんでもない欲しがりだ」
でも何となくわかる。この手で作りたい。そんな想い。
実際甥の千空が月に行くと宣言して数年でロケットを作っている。
「会ってみたいです。そのさる御方」
現代的な船と伝統的な帆船。文化を研究する者として少し話を聞きたい。
グループ総資産は200兆円。始まりは江戸時代の回船問屋だったとされる。
史料編纂所の教授曰く、その江戸時代の回船問屋の時の文献が必要になるため、七海学園で所蔵している分を見せてもらうことになった。
歴史が長いだけあって所蔵されている記録は数え切れない。
まあ、個人所蔵の文献は多々見たことがあるが、やはり保管環境が整えられずに、文献として判別できる史料は少ないことが多い。
しかし、七海学園所蔵の文献の保管状態は最高設備と言っていいほどだ。むしろ、国からの予算が僅かな博物館にその設備を与えて欲しいほどだ。
多少の虫食いはあるが、特段状態の悪い史料はない。しかもいくつかの史料に関しては活字化もされている。なんと至れり尽せりだ。
海運系の学校であるから研究史料としても使用しているにしては整い方が段違いだ。大財閥がここまでして保管環境に金を出せるとは中々な知見。もしや関係者に資料保管の知識を持っている人がいたのかもしれない。
「ここまで整っているのは……財閥――学園所蔵でも中々ありませんよね?」
保管庫まで案内してくれた七海学園職員(と思われる人)に尋ねる。
「ええ。保管環境に関してはかねてよりその当時最新技術を採用し、環境を整えて参りました。史料の活字化はさる御方たっての強い希望でして」
「さる御方……?」
古文書を解読出来る人はなかなかいない。研究者を始めその道の人であれば最低知識は持っているけれど。
大学――特に学部生程度では史料1つの活字化も難しい。その「さる御方」はもしや同業者?
「古文書研究者に必要な分を活字化して頂きました」
「はへぇ」
さる御方は古文書を読める訳では無いらしい。
必要な分を活字化させた。ということはその史料が余程読みたかったということ。
気になって保管庫の片隅の本棚を見る。
「七海家資料」とあるハードカバーの史料集を手に取った。
内容は――帆船。
流石江戸時代の廻船問屋。当時のあらゆる船について事細かに記録が残っている。記録の残し方がかなり詳細。後世の人が見ることを想定したかのような記述。七海家先見の明ありすぎだ。
「帆船……」
史料集から目を離してもう一度本棚を見た。
――ああ、そうか。この本棚がさる御方の欲しいもの。
機帆船の資料。
「その人って機帆船を作りたいんですか?」
「左様でございます」
縦ロール髪の職員さんが頷いた。
機帆船――内熱機関が主流の現代では殆ど廃れてしまった船だ。けど一次エネルギーの価格が高騰してる今はコンピュータで帆を操作することで運用がされている。
確か生半可な技術ではそう簡単に乗りこなせる代物ではない筈だ。
「とんでもない欲しがりだ」
でも何となくわかる。この手で作りたい。そんな想い。
実際甥の千空が月に行くと宣言して数年でロケットを作っている。
「会ってみたいです。そのさる御方」
現代的な船と伝統的な帆船。文化を研究する者として少し話を聞きたい。