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――忘れていた。
そういう訳では無いが、1人の科学者――石神千空はあの日、もう1人の身内がどこに居たのかすっかり頭から抜け落ちていた。
「いい?千空。私はこれから1週間……長くても2週間は家を空けるからね!」
研究室で自分の担当している教授の研究の手伝い――もとい、面倒事で彼女は家を空けると宣言していた。
おかずはいくらか作り置したけど、足りなくなるかもしれないから、その時はスーパーでお惣菜を買いなさいやら、エナドリだけで済ますんじゃないわよ、やら色々と言われていたはずだ。
それは彼女が長期間家を空ける時は必ずと言っていい程言いつけてきたものだから、いつもの如く生返事で返したのを覚えている。
「んで?今回はどこ行ってくんだ」
「七海学園!あそこが所蔵している江戸時代の海運業の文献が欲しいらしくて。――史料編纂所が」
最後に言い淀んだ言葉に呆れて息をつく。
「史料編纂所って分野違いだろーが。おまえ文化学研究してんだろ」
「んな事言ったって編纂所の院生で手が空いてる人いないから古文書の分析できる私にお鉢が回ってきたんだってば〜!じゃ、行ってくるから!」
実験はくれぐれもご近所さんの迷惑にならないように!!
そう言い残して出て行った。
――そう、彼女はあの日、人類が石化した3700年前は
「石神五百里。俺の、身内だ」
七海学園にいた。
「五百里さん!五百里さんじゃあないか!!」
「うるせぇよデカブツ。言わなくてもわかるわ」
これから地球の裏側を目指す船の船長を起こしに来ると、ピッタリの凄腕船長を見つけた。
そして、偶然にも身内を見つけた。
「なんだ貴様ら五百里を知っているのか」
「知ってるも何も千空のお姉さんだ!」
「厳密には叔母だがな、戸籍上の」
凄腕船長――七海龍水は「フゥン」と俺を見た。
「そうか、お前が五百里の話していた……」
龍水は動かない五百里に先程手に入れたばかりの服をかけた。
「貴様も身内の肌を晒したくは無いだろう?」
「あ゙あ、おありがてぇこった」
「千空!五百里さんを起こさなくていいのか!?」
「……いや、復活液の在庫がジリ貧だ。船造りに五百里は必要ない。体力なんざ俺とどっこいだ」
五百里の知識が役に立つのは今では無い。ほむらによって奇跡の水の洞窟が破壊された今、復活液を使って復活させる人間は厳密選ばなくてはならない。
人手が何より欲しい今、体力は平凡、手先も平凡な五百里メリットは無い。
「しかし、千空!この五百里という女性は君の唯一の身内なんだろう!?」
「関係ねぇ。合理的ってやつだ。――まぁ、文化発展にはめちゃくちゃ役立つから壊れねぇように持ち帰って保管でも――」
「千空。俺は五百里が欲しい」
「あ゙あ゙?」
記者の言い様から何となく察しはついていたが、七海龍水という男は随分と五百里に馴れ馴れしい。
3700年前に七海学園にいて文献調査をしていた五百里なら七海財閥御曹司である龍水と交流していてもおかしくはない。
おかしくはない――が。
「3700年、だったか?俺は五百里から聞きそびれていたことがあるんでな。それを俺は一刻も早く聞きたい 」
「……ったく!てめーには2人分働いてもらっからな」
大樹が満面の笑みで差し出した在庫の少ない復活液。遠く彼方を見つめた五百里にたらりとかける。
見慣れた石化復活の現象を見つめた。
金色の髪と赤い眼。髪色以外は俺にそっくりで、血の繋がりなんざないのによく姉弟に間違われた。
ゆっくりと目を開き、辺りを二度、三度と見渡す。
「……さん、千空……」
ふらりと身体が傾いた瞬間に腕が伸びる。
龍水が抱きとめていた。
「3700年ぶりだ、五百里」
「……りゅう、すい……?――!千空!!千空は!?」
「案ずるな、貴様を起こしたのが千空だ」
覚醒した五百里の目が龍水の視線を追う。
やっと俺を捉えた。
「千空!怪我は!?怪我はない!?」
一度司に殺されたなんて言うととんでもない事になりそうだからと口を噤む。
今は怪我は無い。
「何ともねぇよ、五百里」
そういう訳では無いが、1人の科学者――石神千空はあの日、もう1人の身内がどこに居たのかすっかり頭から抜け落ちていた。
「いい?千空。私はこれから1週間……長くても2週間は家を空けるからね!」
研究室で自分の担当している教授の研究の手伝い――もとい、面倒事で彼女は家を空けると宣言していた。
おかずはいくらか作り置したけど、足りなくなるかもしれないから、その時はスーパーでお惣菜を買いなさいやら、エナドリだけで済ますんじゃないわよ、やら色々と言われていたはずだ。
それは彼女が長期間家を空ける時は必ずと言っていい程言いつけてきたものだから、いつもの如く生返事で返したのを覚えている。
「んで?今回はどこ行ってくんだ」
「七海学園!あそこが所蔵している江戸時代の海運業の文献が欲しいらしくて。――史料編纂所が」
最後に言い淀んだ言葉に呆れて息をつく。
「史料編纂所って分野違いだろーが。おまえ文化学研究してんだろ」
「んな事言ったって編纂所の院生で手が空いてる人いないから古文書の分析できる私にお鉢が回ってきたんだってば〜!じゃ、行ってくるから!」
実験はくれぐれもご近所さんの迷惑にならないように!!
そう言い残して出て行った。
――そう、彼女はあの日、人類が石化した3700年前は
「石神五百里。俺の、身内だ」
七海学園にいた。
「五百里さん!五百里さんじゃあないか!!」
「うるせぇよデカブツ。言わなくてもわかるわ」
これから地球の裏側を目指す船の船長を起こしに来ると、ピッタリの凄腕船長を見つけた。
そして、偶然にも身内を見つけた。
「なんだ貴様ら五百里を知っているのか」
「知ってるも何も千空のお姉さんだ!」
「厳密には叔母だがな、戸籍上の」
凄腕船長――七海龍水は「フゥン」と俺を見た。
「そうか、お前が五百里の話していた……」
龍水は動かない五百里に先程手に入れたばかりの服をかけた。
「貴様も身内の肌を晒したくは無いだろう?」
「あ゙あ、おありがてぇこった」
「千空!五百里さんを起こさなくていいのか!?」
「……いや、復活液の在庫がジリ貧だ。船造りに五百里は必要ない。体力なんざ俺とどっこいだ」
五百里の知識が役に立つのは今では無い。ほむらによって奇跡の水の洞窟が破壊された今、復活液を使って復活させる人間は厳密選ばなくてはならない。
人手が何より欲しい今、体力は平凡、手先も平凡な五百里メリットは無い。
「しかし、千空!この五百里という女性は君の唯一の身内なんだろう!?」
「関係ねぇ。合理的ってやつだ。――まぁ、文化発展にはめちゃくちゃ役立つから壊れねぇように持ち帰って保管でも――」
「千空。俺は五百里が欲しい」
「あ゙あ゙?」
記者の言い様から何となく察しはついていたが、七海龍水という男は随分と五百里に馴れ馴れしい。
3700年前に七海学園にいて文献調査をしていた五百里なら七海財閥御曹司である龍水と交流していてもおかしくはない。
おかしくはない――が。
「3700年、だったか?俺は五百里から聞きそびれていたことがあるんでな。それを俺は一刻も早く
「……ったく!てめーには2人分働いてもらっからな」
大樹が満面の笑みで差し出した在庫の少ない復活液。遠く彼方を見つめた五百里にたらりとかける。
見慣れた石化復活の現象を見つめた。
金色の髪と赤い眼。髪色以外は俺にそっくりで、血の繋がりなんざないのによく姉弟に間違われた。
ゆっくりと目を開き、辺りを二度、三度と見渡す。
「……さん、千空……」
ふらりと身体が傾いた瞬間に腕が伸びる。
龍水が抱きとめていた。
「3700年ぶりだ、五百里」
「……りゅう、すい……?――!千空!!千空は!?」
「案ずるな、貴様を起こしたのが千空だ」
覚醒した五百里の目が龍水の視線を追う。
やっと俺を捉えた。
「千空!怪我は!?怪我はない!?」
一度司に殺されたなんて言うととんでもない事になりそうだからと口を噤む。
今は怪我は無い。
「何ともねぇよ、五百里」