番外編
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「月が綺麗ですね」
その日は夜空の上の光は正円を描いていて、爛々と輝いていた。
「漱石か」
隣にいる男は私の呟きに即座に反応する。
額面通りの反応を返すかと思っていたが、こちらの意味も知っていたようで面食らう。
「俗っぽいの知らないと思ってた」
「何を言うか。有名どころだろう?」
「んーそれもそうか」
明治の文豪、夏目漱石は「ILoveYou」を「月が綺麗ですね」と訳した。まあ細かく言うと生徒たちが様々に訳したあと、「日本人はそんなに直接愛を伝えない。月が綺麗ですね。とでも訳しなさい」と言ったのが由来などあるが。
「――死んでもいいわ」
「あはは、二葉亭四迷!」
私の言葉に龍水はまた有名どころで返す。
「まあそっちはちょっと違うみたいだけどね」
「そうなのか?」
夏目漱石の「月が綺麗ですね」の返しとして二葉亭四迷の「死んでもいいわ」は有名だ。「ILoveYou(月が綺麗ですね)」と言われて「ILoveYou too(死んでもいいわ)」と返すのがある種のセオリーとなっている。
「実際はYoursをそう訳したみたい」
「直訳だと……「あなたのもの」か」
「そう。それが「意のままにしてください」に転じて、「死んでもいいわ」になったんだって」
3700年と少し前に文豪オタクの友人から聞いた蘊蓄をつらつらと話す。
「龍水ならなんて訳す?」
「ILoveYouをか?」
かつて文芸部の知人だったかが仲間内で恋バナの延長でやったそうだ。かつてはカードゲームでプロポーズの言葉を作るなんて遊びもあったらしい。
「「貴様が欲しい」」
私と龍水の声が重なった。
「だと思った」
「実際以前俺が言ったからな」
「あはは、言われた言われた」
心地よい指音と共に言われたのは忘れられない。3700年前に一度とこの世界で目が覚めてからは何度もになるか。
「ならば五百里。貴様はどう訳す?」
「うーん……」
数多の文学を読んできた者として、文化学を研究する者として生半可な内容は言えない。
愛を伝えるとして、私なら――
考えに考えて思い浮かんだのは、彼に伝えたことのある言葉だった。
「貴方は、私の一番」
私の言葉に龍水の目は輝いた。
この石世界になって続きが聞きたいと言った彼に私は「一番にできない」と告げた。
世界が復興するまでは、そう思っていたけど結局南米のあの時に私は負けを認めたのだ。
もうずっと前から龍水が一番だったことを。
「五百里、愛している」
「うん、私も」
その日は夜空の上の光は正円を描いていて、爛々と輝いていた。
「漱石か」
隣にいる男は私の呟きに即座に反応する。
額面通りの反応を返すかと思っていたが、こちらの意味も知っていたようで面食らう。
「俗っぽいの知らないと思ってた」
「何を言うか。有名どころだろう?」
「んーそれもそうか」
明治の文豪、夏目漱石は「ILoveYou」を「月が綺麗ですね」と訳した。まあ細かく言うと生徒たちが様々に訳したあと、「日本人はそんなに直接愛を伝えない。月が綺麗ですね。とでも訳しなさい」と言ったのが由来などあるが。
「――死んでもいいわ」
「あはは、二葉亭四迷!」
私の言葉に龍水はまた有名どころで返す。
「まあそっちはちょっと違うみたいだけどね」
「そうなのか?」
夏目漱石の「月が綺麗ですね」の返しとして二葉亭四迷の「死んでもいいわ」は有名だ。「ILoveYou(月が綺麗ですね)」と言われて「ILoveYou too(死んでもいいわ)」と返すのがある種のセオリーとなっている。
「実際はYoursをそう訳したみたい」
「直訳だと……「あなたのもの」か」
「そう。それが「意のままにしてください」に転じて、「死んでもいいわ」になったんだって」
3700年と少し前に文豪オタクの友人から聞いた蘊蓄をつらつらと話す。
「龍水ならなんて訳す?」
「ILoveYouをか?」
かつて文芸部の知人だったかが仲間内で恋バナの延長でやったそうだ。かつてはカードゲームでプロポーズの言葉を作るなんて遊びもあったらしい。
「「貴様が欲しい」」
私と龍水の声が重なった。
「だと思った」
「実際以前俺が言ったからな」
「あはは、言われた言われた」
心地よい指音と共に言われたのは忘れられない。3700年前に一度とこの世界で目が覚めてからは何度もになるか。
「ならば五百里。貴様はどう訳す?」
「うーん……」
数多の文学を読んできた者として、文化学を研究する者として生半可な内容は言えない。
愛を伝えるとして、私なら――
考えに考えて思い浮かんだのは、彼に伝えたことのある言葉だった。
「貴方は、私の一番」
私の言葉に龍水の目は輝いた。
この石世界になって続きが聞きたいと言った彼に私は「一番にできない」と告げた。
世界が復興するまでは、そう思っていたけど結局南米のあの時に私は負けを認めたのだ。
もうずっと前から龍水が一番だったことを。
「五百里、愛している」
「うん、私も」
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