【RKRN】梅に鶯
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六年生に出された課題。それは、くの一教室のとある生徒から巻物を奪うべし。
実戦でくの一と対決した際を想定したものらしい。あとは単純に女性への耐性付けだったりする。
そして、この課題に付き合わされるくの一教室のとある生徒は…私ーー清水小春だ。
今回、忍たま六年生の方には成績がつくらしいが、私の方は巻物を奪われても守り抜いても評価は変わらないそうだ。
だが、やるからには。
そう簡単に奪われてたまるかと策を巡らしている。
正直、直接対決は無理だ。勝ち目がない。だが搦手ならば。手の出しにくい場所なら案外勝ち筋がありそうだと踏んでいる。
そう、手の出しにくい場所ーー入浴中という状況に私は彼らを誘い込んだのだ。
カポーンと温かな空気が漂ってくる。
くの一教室の風呂に六年生が六人。情けなくも肩を寄せていた。
脱衣所には1人分の着替え。
引き戸を隔てた浴室からは小春の鼻歌が聞こえてくる。
清水小春から巻物を奪うべし。
その課題で俺ーー食満留三郎をはじめとした六年生六人はまんまと小春の術中に嵌っていた。
日暮れ前に小春が風呂場へ向かった時、一番無防備になる状況を作り出したぞ!と喜んだのは一体誰だったか。
着替えと一緒に脱衣所に巻物を置いて入浴するから勝ったも同然と言ったのは誰だったか。
六年間の付き合いは伊達では無い。小春は俺たちのその思考を読んだ上で入浴という選択肢を取っていた。
見事に脱衣所に置かれた着替えの中に巻物は混ざっていない。
俺たちが奪うべき巻物は今、まさに一糸纏わぬ小春と一緒に浴室にあるのである。
一糸纏わぬ小春、かぁ。
「……おまえら、まさか入浴中の小春の姿を想像したりしてないよな?」
「そ、そういう留三郎こそ想像してんじゃねぇだろうな!?」
俺の言葉に文次郎は明らかに目を逸らした。
普段三禁だなんだと言っているのによっぽど耐性がないらしい。
「俺はいいんだよ!小春の恋人だからな!」
何なら入浴中以上の事も想像どころか見せてもらったことはあるが。決してこいつらには言うまい。
「じゃあ留三郎。中に入って来いよ」
ちゃぷん。
浴室の方で湯船の揺れる音がした。
「恋人なら問題ないだろう?小春も気兼ねなく巻物を守るだろう」
仙蔵の言葉が靄がかったように聞こえる。俺の耳には引き戸を隔てた先にある水音の方が鮮明に聞こえてしまっている。
小春の細く柔らかな身体が湯に浸かっている姿を想像する。彼女の豊かな黒髪は、恐らく湯に濡れないようにと結い上げられているはずだ。そして、結い上げられなかった後れ毛は小春の白いうなじに引っ付いてしまっていることだろう。
数日前に彼女の首筋に跡を残したはずだが、もう消えてしまっただろうか。
そういえば、胸が小さいことを気にする小春は、入浴中に胸を大きくするための按摩を日課としているとか話していなかっただろうか。
もしや今それをしているのでは、と俺しか知らないであろう情報にカッと顔が熱くなる。
「留三郎、鼻血」
伊作が俺の鼻にちり紙を押し付けた。
「留三郎スケベ〜」
小平太が茶化すように笑う。否定できないのが悔しい。
「貴様ら一体何年の付き合いなのだ。そんな初心な関係でもなかろうに」
呆れたように仙蔵がため息を吐き出す。
そしてニッコリと笑うと俺を浴室の方へ押す。鼻血が止まっていることを確認すると、勢いよく引き戸を開け放った。
「留三郎、貴様にかかっているぞ」
「なぁっ!?」
振り返り、勢いよく閉じられる引き戸の隙間から健闘を祈るかのような長次が見えた。
俺の身体は気付かぬうちにくの一教室の浴室に入っていた。
「留三郎?うわ、ほんとにアンタだけなのね」
風呂桶のある方向から小春の声がした。呆れたようなその声音は先程までの俺たちの会話が聞こえていたことを示していた。
反射的に声の方を向きかけた。が、何とか理性が働いてくれたお陰で風呂桶とは反対の方を向く。
「ま、巻物はどこだ?」
「ん?ーーんふふ、ここ」
悪戯っぽく小春が笑うとざばぁっと大きな水音がした。
「おまっ!まさか!!」
躊躇わずに振り返ったのを俺は後悔した。
小春の左手には課題の巻物。目の前には一糸纏わぬ小春の姿。かろうじて手ぬぐいで前面を隠してくれているのは正直助かった。が、手ぬぐいは既に濡れていてぴったりと小春の体のラインにくっついている。
小さな胸の膨らみも、その中心にある尖りも、しなやかな腰の曲線も何もかもがハッキリと目に映った。
「留三郎のスケベ」
婀娜っぽく笑った小春に頭がクラクラする。
いかん、だめだ。このままでは完全に飲まれる。さっき仙蔵も言っていたではないか、「俺にかかっている」と。
頭を振って新たに思い直す。
さあ、小春よ、どこからでもかかって来い。
意を決して小春に向き直るとそこに小春はいない。まさかーー武器を手に取ったその瞬間にはあまりにも遅かった。
脇腹に重たい蹴りが入り、湯船へと落ちる。
「がはっ!」
慌てて体勢を整える。忍装束はお湯を吸って重たい。恐らく持ち込まれるだろう肉弾戦を想定すると、この状況は不利になる。
頭巾と上衣を脱ぎ捨てる。べしゃりと重たい音を立てて浴室に落ちた。
「まさか小春が肉弾戦に持ち込むなんてな」
「他の六年生相手だったらこの作戦はやってないわよ」
向き直る小春は身体に手ぬぐいを巻き付けている。先程に比べれば幾分か冷静に見れる姿だ。
未だに彼女の白い肌は目に毒だし、下半身は辛うじて隠れている程度で、太ももに伝う水滴が扇情的だ。
馬鹿になった鼻がムズムズする。
擦ると血がついていた。また鼻血を出してしまっていたのだろう。
「鼻血?大丈夫?」
「ああ、じきに止まる」
少し心配の色を示した小春はすぐに拳を構えた。
ぴちょん
一粒の水音が合図となり、俺は一気に距離を詰めた。肉弾戦に持ち込んでしまえば小春は圧倒的に不利だ。
ーー不利のはずだが。
俺は飛んでくる湯桶や石鹸に避けるのに必死だ。伊作顔負けの乱定剣が繰り出される。
「くっそぉ……!」
何とか距離を詰めなくてはと飛んできた湯桶を弾き返して動き出す。
踏み出した右足が何かを踏んだような気がした。
つるり。
「のわっ!?」
「ひゃあっ!?」
俺と小春の悲鳴と共に視界が暗転した。
「いたた……小春!大丈夫か!?」
「う、うん……大丈夫……ごめん投げた石鹸で転ばせちゃったみたい……」
俺が立っていた位置を見ると石鹸が鎮座していた。少し泡立っているからアレで間違いないだろう。
己の不注意さを呪った。
そしてやっと現状を把握する。石鹸により足を滑らせた俺は目の前の小春を巻き込んで転倒した。
まるで俺が小春を押し倒すような形で。
「っ、すまん」
慌てて身体を離そうとするが、俺の腕が小春に掴まれる。
「待って」
艶のある声で囁かれ、頭がぐらりとする。小春が俺を見上げていて、濡れた髪が色っぽい。
俺の身体の中心が熱を持ち始めた。
まずい、と頭では思うものの身体は正直だ。
小春はそんな俺の様子に気付くと艶っぽく笑う。
しゅるりと彼女の最後の砦の手ぬぐいが解かれた。
視界の端に彼女の胸が小さく揺れ、手ぬぐいは重力に逆らうことも無く床に広がる。
俺の身体の下にいる小春は正真正銘何も身につけていない。
少しでも視線を動かせば、白く柔い肌が目に入るだろう。
「ね、留三郎……」
小春が俺の手を取り、掌に吸い付く。その挑戦的な目付きに俺はーー
ゴーン
遠くで鐘楼の鐘が鳴った。
「課題終了」
どこからともなく先生の声がする。
「くの一教室、清水小春。合格」
「六年生。不合格。あとでレポートにまとめるように」
手短に伝えられると先生方の気配が消える。
すぐに脱衣所の戸が乱暴に開かれた。
「留三郎!貴様ーー!!」
荒々しい文次郎の声に俺は慌てて脱ぎ捨てた上衣を小春に被せた。
「まったく。留三郎ならば小春のなけなしの色香にも耐えられると思ったのだがな」
「ちょっと仙蔵。なけなしってのは失礼でしょ」
小春は不服そうに唇を尖らせる。俺はと言えば、先程の色気たっぷりの小春が脳裏にこびり付いて離れず、まだ心臓がバクバクと煩い。
あんな色っぽい小春は初めて見た。それが課題中とは言えど自分に向けられたものだったと思うと顔が熱くなる。
そして、あの色香に反応しそうになった自分が恥ずかしい。
男としては情けない限りだ。
「……留三郎、私以外のくの一に誘惑されても負けないでね?ちょっと計画通りすぎて不安よ」
「うっ……あれは小春だからそうなっただけであって」
「本当に?……うれしい」
「おい、お前ら。いちゃつくならよそでやれ」
文次郎の苛立った声が飛んでくる。
「提出のレポートは留三郎が八割で頼んだ」
小平太はそう言うとさっさと脱衣所から出ていった。
長次もそれに続き、仙蔵も去る。文次郎は悪態を吐きながら出ていった。
「じゃあ僕も出るけど、小春身体冷えてるだろうから湯に浸かっておくんだよ」
「ハイハイ。伊作、悪いけど留三郎の着替え持ってきてあげて。私が湯船に叩き込んじゃったし」
「ああ、いいよ」
「あとーー……外の札、使用禁止にしといてくれない?」
「……ほどほどにね?」
外の札?と俺が一人首を傾げているうちに伊作は脱衣所を去って戸を閉めた。
再び浴室に二人きりとなった。
「さてと」
隣に座り込んでいた小春が立ち上がる。ばさりと音を立てて俺が被せた上衣を落とした。
目の前に全裸の小春が見下ろしてきた。
「さ、留三郎も脱いで脱いで」
「わっちょ!」
肌着から袴、脚絆に褌まで流れるようにひん剥かれてしまった。
「よいしょと」
後ろに立った小春が身体を密着させる。剥き出しの背中に小春の小さく柔らかなものが押し付けられる。
柔らかさに浸っていると気が付かないうちに髪紐が解かれていた。
はらりと髪が肩にかかる。
正面に戻って来た彼女は愛らしく俺の手を引く。
「一緒にお風呂入ろ?」
ーーもちろん、さっきの続きもしよーね。
なんて囁かれたら、俺は鼻血を出すしか無かったのである。
実戦でくの一と対決した際を想定したものらしい。あとは単純に女性への耐性付けだったりする。
そして、この課題に付き合わされるくの一教室のとある生徒は…私ーー清水小春だ。
今回、忍たま六年生の方には成績がつくらしいが、私の方は巻物を奪われても守り抜いても評価は変わらないそうだ。
だが、やるからには。
そう簡単に奪われてたまるかと策を巡らしている。
正直、直接対決は無理だ。勝ち目がない。だが搦手ならば。手の出しにくい場所なら案外勝ち筋がありそうだと踏んでいる。
そう、手の出しにくい場所ーー入浴中という状況に私は彼らを誘い込んだのだ。
カポーンと温かな空気が漂ってくる。
くの一教室の風呂に六年生が六人。情けなくも肩を寄せていた。
脱衣所には1人分の着替え。
引き戸を隔てた浴室からは小春の鼻歌が聞こえてくる。
清水小春から巻物を奪うべし。
その課題で俺ーー食満留三郎をはじめとした六年生六人はまんまと小春の術中に嵌っていた。
日暮れ前に小春が風呂場へ向かった時、一番無防備になる状況を作り出したぞ!と喜んだのは一体誰だったか。
着替えと一緒に脱衣所に巻物を置いて入浴するから勝ったも同然と言ったのは誰だったか。
六年間の付き合いは伊達では無い。小春は俺たちのその思考を読んだ上で入浴という選択肢を取っていた。
見事に脱衣所に置かれた着替えの中に巻物は混ざっていない。
俺たちが奪うべき巻物は今、まさに一糸纏わぬ小春と一緒に浴室にあるのである。
一糸纏わぬ小春、かぁ。
「……おまえら、まさか入浴中の小春の姿を想像したりしてないよな?」
「そ、そういう留三郎こそ想像してんじゃねぇだろうな!?」
俺の言葉に文次郎は明らかに目を逸らした。
普段三禁だなんだと言っているのによっぽど耐性がないらしい。
「俺はいいんだよ!小春の恋人だからな!」
何なら入浴中以上の事も想像どころか見せてもらったことはあるが。決してこいつらには言うまい。
「じゃあ留三郎。中に入って来いよ」
ちゃぷん。
浴室の方で湯船の揺れる音がした。
「恋人なら問題ないだろう?小春も気兼ねなく巻物を守るだろう」
仙蔵の言葉が靄がかったように聞こえる。俺の耳には引き戸を隔てた先にある水音の方が鮮明に聞こえてしまっている。
小春の細く柔らかな身体が湯に浸かっている姿を想像する。彼女の豊かな黒髪は、恐らく湯に濡れないようにと結い上げられているはずだ。そして、結い上げられなかった後れ毛は小春の白いうなじに引っ付いてしまっていることだろう。
数日前に彼女の首筋に跡を残したはずだが、もう消えてしまっただろうか。
そういえば、胸が小さいことを気にする小春は、入浴中に胸を大きくするための按摩を日課としているとか話していなかっただろうか。
もしや今それをしているのでは、と俺しか知らないであろう情報にカッと顔が熱くなる。
「留三郎、鼻血」
伊作が俺の鼻にちり紙を押し付けた。
「留三郎スケベ〜」
小平太が茶化すように笑う。否定できないのが悔しい。
「貴様ら一体何年の付き合いなのだ。そんな初心な関係でもなかろうに」
呆れたように仙蔵がため息を吐き出す。
そしてニッコリと笑うと俺を浴室の方へ押す。鼻血が止まっていることを確認すると、勢いよく引き戸を開け放った。
「留三郎、貴様にかかっているぞ」
「なぁっ!?」
振り返り、勢いよく閉じられる引き戸の隙間から健闘を祈るかのような長次が見えた。
俺の身体は気付かぬうちにくの一教室の浴室に入っていた。
「留三郎?うわ、ほんとにアンタだけなのね」
風呂桶のある方向から小春の声がした。呆れたようなその声音は先程までの俺たちの会話が聞こえていたことを示していた。
反射的に声の方を向きかけた。が、何とか理性が働いてくれたお陰で風呂桶とは反対の方を向く。
「ま、巻物はどこだ?」
「ん?ーーんふふ、ここ」
悪戯っぽく小春が笑うとざばぁっと大きな水音がした。
「おまっ!まさか!!」
躊躇わずに振り返ったのを俺は後悔した。
小春の左手には課題の巻物。目の前には一糸纏わぬ小春の姿。かろうじて手ぬぐいで前面を隠してくれているのは正直助かった。が、手ぬぐいは既に濡れていてぴったりと小春の体のラインにくっついている。
小さな胸の膨らみも、その中心にある尖りも、しなやかな腰の曲線も何もかもがハッキリと目に映った。
「留三郎のスケベ」
婀娜っぽく笑った小春に頭がクラクラする。
いかん、だめだ。このままでは完全に飲まれる。さっき仙蔵も言っていたではないか、「俺にかかっている」と。
頭を振って新たに思い直す。
さあ、小春よ、どこからでもかかって来い。
意を決して小春に向き直るとそこに小春はいない。まさかーー武器を手に取ったその瞬間にはあまりにも遅かった。
脇腹に重たい蹴りが入り、湯船へと落ちる。
「がはっ!」
慌てて体勢を整える。忍装束はお湯を吸って重たい。恐らく持ち込まれるだろう肉弾戦を想定すると、この状況は不利になる。
頭巾と上衣を脱ぎ捨てる。べしゃりと重たい音を立てて浴室に落ちた。
「まさか小春が肉弾戦に持ち込むなんてな」
「他の六年生相手だったらこの作戦はやってないわよ」
向き直る小春は身体に手ぬぐいを巻き付けている。先程に比べれば幾分か冷静に見れる姿だ。
未だに彼女の白い肌は目に毒だし、下半身は辛うじて隠れている程度で、太ももに伝う水滴が扇情的だ。
馬鹿になった鼻がムズムズする。
擦ると血がついていた。また鼻血を出してしまっていたのだろう。
「鼻血?大丈夫?」
「ああ、じきに止まる」
少し心配の色を示した小春はすぐに拳を構えた。
ぴちょん
一粒の水音が合図となり、俺は一気に距離を詰めた。肉弾戦に持ち込んでしまえば小春は圧倒的に不利だ。
ーー不利のはずだが。
俺は飛んでくる湯桶や石鹸に避けるのに必死だ。伊作顔負けの乱定剣が繰り出される。
「くっそぉ……!」
何とか距離を詰めなくてはと飛んできた湯桶を弾き返して動き出す。
踏み出した右足が何かを踏んだような気がした。
つるり。
「のわっ!?」
「ひゃあっ!?」
俺と小春の悲鳴と共に視界が暗転した。
「いたた……小春!大丈夫か!?」
「う、うん……大丈夫……ごめん投げた石鹸で転ばせちゃったみたい……」
俺が立っていた位置を見ると石鹸が鎮座していた。少し泡立っているからアレで間違いないだろう。
己の不注意さを呪った。
そしてやっと現状を把握する。石鹸により足を滑らせた俺は目の前の小春を巻き込んで転倒した。
まるで俺が小春を押し倒すような形で。
「っ、すまん」
慌てて身体を離そうとするが、俺の腕が小春に掴まれる。
「待って」
艶のある声で囁かれ、頭がぐらりとする。小春が俺を見上げていて、濡れた髪が色っぽい。
俺の身体の中心が熱を持ち始めた。
まずい、と頭では思うものの身体は正直だ。
小春はそんな俺の様子に気付くと艶っぽく笑う。
しゅるりと彼女の最後の砦の手ぬぐいが解かれた。
視界の端に彼女の胸が小さく揺れ、手ぬぐいは重力に逆らうことも無く床に広がる。
俺の身体の下にいる小春は正真正銘何も身につけていない。
少しでも視線を動かせば、白く柔い肌が目に入るだろう。
「ね、留三郎……」
小春が俺の手を取り、掌に吸い付く。その挑戦的な目付きに俺はーー
ゴーン
遠くで鐘楼の鐘が鳴った。
「課題終了」
どこからともなく先生の声がする。
「くの一教室、清水小春。合格」
「六年生。不合格。あとでレポートにまとめるように」
手短に伝えられると先生方の気配が消える。
すぐに脱衣所の戸が乱暴に開かれた。
「留三郎!貴様ーー!!」
荒々しい文次郎の声に俺は慌てて脱ぎ捨てた上衣を小春に被せた。
「まったく。留三郎ならば小春のなけなしの色香にも耐えられると思ったのだがな」
「ちょっと仙蔵。なけなしってのは失礼でしょ」
小春は不服そうに唇を尖らせる。俺はと言えば、先程の色気たっぷりの小春が脳裏にこびり付いて離れず、まだ心臓がバクバクと煩い。
あんな色っぽい小春は初めて見た。それが課題中とは言えど自分に向けられたものだったと思うと顔が熱くなる。
そして、あの色香に反応しそうになった自分が恥ずかしい。
男としては情けない限りだ。
「……留三郎、私以外のくの一に誘惑されても負けないでね?ちょっと計画通りすぎて不安よ」
「うっ……あれは小春だからそうなっただけであって」
「本当に?……うれしい」
「おい、お前ら。いちゃつくならよそでやれ」
文次郎の苛立った声が飛んでくる。
「提出のレポートは留三郎が八割で頼んだ」
小平太はそう言うとさっさと脱衣所から出ていった。
長次もそれに続き、仙蔵も去る。文次郎は悪態を吐きながら出ていった。
「じゃあ僕も出るけど、小春身体冷えてるだろうから湯に浸かっておくんだよ」
「ハイハイ。伊作、悪いけど留三郎の着替え持ってきてあげて。私が湯船に叩き込んじゃったし」
「ああ、いいよ」
「あとーー……外の札、使用禁止にしといてくれない?」
「……ほどほどにね?」
外の札?と俺が一人首を傾げているうちに伊作は脱衣所を去って戸を閉めた。
再び浴室に二人きりとなった。
「さてと」
隣に座り込んでいた小春が立ち上がる。ばさりと音を立てて俺が被せた上衣を落とした。
目の前に全裸の小春が見下ろしてきた。
「さ、留三郎も脱いで脱いで」
「わっちょ!」
肌着から袴、脚絆に褌まで流れるようにひん剥かれてしまった。
「よいしょと」
後ろに立った小春が身体を密着させる。剥き出しの背中に小春の小さく柔らかなものが押し付けられる。
柔らかさに浸っていると気が付かないうちに髪紐が解かれていた。
はらりと髪が肩にかかる。
正面に戻って来た彼女は愛らしく俺の手を引く。
「一緒にお風呂入ろ?」
ーーもちろん、さっきの続きもしよーね。
なんて囁かれたら、俺は鼻血を出すしか無かったのである。
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