【RKRN】梅に鶯
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「これが苦が無くあの世に逝ける……!!」
甘酒屋が苦無を振りかざす。学園長先生が竹筒で防ぐ。
「何すんのよ!!!」
ユキちゃんが一番に向かっていく。私は懐に入れていた愛刀を出した。
少しばかり胡散臭いと思っていたが、学園長先生を狙っていた暗殺者だったか!
「小娘、どけ」
ユキちゃんが返り討ちにあう。それだけで戦意を喪失する後輩ではない。
「ちょっと!小娘ですって!?さっきはお嬢様って言ったくせに!!」
太刀筋を見ていてわかる、この男は優秀な暗殺者だ。今まで相手をしてきた中でもかなり強い位置にいる。
「ユキちゃん!下がりなさい!!」
短刀を構えて甘酒屋―――いや、暗殺者の前に立つ。
「いい?私が隙を作るからその間に学園長先生をお連れして逃げるの。絶対に迷っちゃダメだからね」
身体を低くして暗殺者への距離を縮める。他の六年生でもきっと圧倒されるような強さだ。私一人でもこいつを足止めしなくてはいけない。
「鬱陶しい!!」
右手の苦無が私の右頬をかすめる。上手く避けられる余裕がない。
競り合った苦無がとてつもなく重い。力の弱い私では簡単に押し負けてしまう。
「このっ!」
暗殺者の蹴りが私の鳩尾に入る。とてつもない痛みに私はその場に蹲ってしまった。
「小春先輩!!」
「大川平次渦正!!覚悟!!」
暗殺者の刃が学園長へ向けられた。
「えいっ!!」
ユキちゃんがもっぱんを投げて暗殺者の目を眩ました。
「小春…!」
学園長先生がこちらに手を貸す。
「私は、大丈夫、です…早く…ここから離れましょう」
二人を先に洞窟へ向かわせて殿を守る。ユキちゃんの目くらましは効いているようだった。
洞窟の中から覚えのある気配がした。
「食満先輩…!」
険しい表情だ。何かが起きたことを察知してぴよこちゃんチームから抜けてきたんだろう。
「留三郎……」
「無事でいて」とは言えない。向こうは私たちとは全く力量が違う。六年生が束になってかかってやっと足止めが出来る状態だろう。
未だに痛む腹を抑えていると、留三郎が私の肩に手を置いた。
すぐにわかった。
心配するなって顔。私は学園長先生を守ることを、後輩を守ることを第一に考えなくては。
私たちは言葉を交わすことはなく、私は洞窟の奥へ、留三郎は暗殺者へ向かっていった。
遠くで彼のいつもの言葉が聞こえた。
「勝負だ」
キノコ岳に到着した。留三郎が暗殺者を足止めしてくれたおかげで無事に学園長先生をお守りすることが出来た。ユキちゃんにもケガはない。
暗殺者に追われる中、山田先生が合流した。私一人では守り切れなかった。
「山田先生、鞘はどうされたのですか?」
伊作ももう一人の暗殺者と遭遇して深手を負ったそうだ。無事にここまで来て欲しい。
「小春、よく、守り抜いた」
「…ありがとう、ございます…」
山田先生に深々と頭を下げた。ユキちゃんがもっぱんを投げてくれなかったから学園長先生はやられていただろうし、留三郎が足止めをしていてくれなければ、足腰の弱い学園長先生を連れていた私たちは暗殺者に追いつかれていた。
まだ、到底力になれていないのに、山田先生は褒めてくださった。
「小春先輩、大丈夫ですか!?」
安心して力なく膝をついた私にユキちゃんが声をかける。
「大丈夫よ。ユキちゃんのあれがなかったら危なかった。ありがとう」
「でも、先輩…」
いつも明るいユキちゃんの声がワントーン落ちた。
「後輩を守るのは先輩として当然。暗殺者に攻撃を入れられたのも私の力が足りなかったから。そういうことなんだから、気にしないで」
まだ11歳なのにこんな恐ろしい場面に遭遇させてしまったのがとても辛いよ、私は。
すると続々と他のチームがゴールしてきた。
一番に着いたのが、どんぐり。少し高いところでぶんぶんと手を振っている。
小平太が底抜けに笑うのを見て、いつもの雰囲気が戻ってきたのを実感した。二番目はぽぽたん。きり丸君が酷いけがをしていて長次が負ぶってここまで連れてきたようだった。暗殺者は学園長先生から山田先生を引き離すためにきり丸君に怪我をさせたようだ。
三番目に五年生。
ヘロヘロになって戻ってきた。
「よく頑張ったなぁ、八左ヱ門」
ゴールで座り込んだ八左ヱ門に声をかける。
「え、小春ちゃん、顔、切れてる、え、なんで!!??」
「うるさい、慌てる体力あるんだったらもう一往復する?」
「いえ、大丈夫です…」
「もう血は止まってるし傷口も浅い。ドクタケと戦ったんだってな、よくやったよ。お前たち三人」
へにゃへにゃになった五年生を見る。三人して私を見上げてきた。
「清水先輩~~!!」
「豆腐食べますか」
久々知君が高野豆腐を出してくる。それはさすがに遠慮した。
遅れて浜君としんべヱ君が到着した。
「浜君、留三郎は?」
「食満先輩は…伊作先輩と乱太郎を待って…」
「…そう…伊作たちを…」
離れた場所に留三郎の背中が見えた。伊作を待っている。伊作は必ずゴールすると信じている背中だ。
「伊作先輩と乱太郎、ちゃんとゴールできるかなぁ…」
留三郎の見つめる方向を見ながらしんべヱ君が呟く。
「大丈夫、大丈夫だよ。きっと二人とも笑って戻ってくるから」
しんべヱ君に目線を合わせて言った。きっと、大丈夫だ。
結果発表が始まった。
「…最後にぴよこちゃんチームは……山田先生」
「この競技はチームが一緒にゴールするという決まりがあります。ぴよこちゃんチームは……」
「留三郎~~~~~~~~~!!!!!!」
伊作の声だ。
「お待たせ」
「おい、伊作!何やってたんだ!!遅かったぞ!!」
「ちょっと色々あってさ」
「間に合った…よかった…よかった、留三郎……」
運動会が始まる前に留三郎が言っていたのを思い出す。きっとこの運動会は私たちにとっては最後だから、絶対に勝ちたい、勝たせてやりたい。って。
「みんな、怪我はない?」
いつも通りの伊作の言葉に私たち全員の顔がほころぶ。一番重傷なのはお前だってのに。
「はーい」
声を揃えて伊作に応える。
ミツバチに刺されてしまった乱太郎君を抱えた留三郎がこっちに帰ってくる。伊作と一緒に山田先生へ鞘をお返しすると、最初の目的だったチームのタスキをたなびかせた。
ぴよこちゃんチームが今、ゴールした。
「!小春、どうしたその傷」
隣に立った私の右頬の傷に気が付く。優しく指が傷跡をなぞった。
「暗殺者と戦った時についただけだよ。もう血は止まってるし」
「そうか…」
「それよりも!おかえり、留三郎」
「おう、ただいま。小春」
一等明るい笑顔でこちらを見る。つられて私も笑う。
キノコ岳の桜が舞ってとてもきれいだ。よく、「小春は桜が似合うなぁ」なんて留三郎が言っていたけど、留三郎だって桜が似合うんだよ。
いや、私よりも似合うよ。私は、伊作を待つ留三郎の背中にずっと、ずっと、見惚れていたんだから。
これぞ忍者の大運動会だ!これにてめでたしめでたし。
甘酒屋が苦無を振りかざす。学園長先生が竹筒で防ぐ。
「何すんのよ!!!」
ユキちゃんが一番に向かっていく。私は懐に入れていた愛刀を出した。
少しばかり胡散臭いと思っていたが、学園長先生を狙っていた暗殺者だったか!
「小娘、どけ」
ユキちゃんが返り討ちにあう。それだけで戦意を喪失する後輩ではない。
「ちょっと!小娘ですって!?さっきはお嬢様って言ったくせに!!」
太刀筋を見ていてわかる、この男は優秀な暗殺者だ。今まで相手をしてきた中でもかなり強い位置にいる。
「ユキちゃん!下がりなさい!!」
短刀を構えて甘酒屋―――いや、暗殺者の前に立つ。
「いい?私が隙を作るからその間に学園長先生をお連れして逃げるの。絶対に迷っちゃダメだからね」
身体を低くして暗殺者への距離を縮める。他の六年生でもきっと圧倒されるような強さだ。私一人でもこいつを足止めしなくてはいけない。
「鬱陶しい!!」
右手の苦無が私の右頬をかすめる。上手く避けられる余裕がない。
競り合った苦無がとてつもなく重い。力の弱い私では簡単に押し負けてしまう。
「このっ!」
暗殺者の蹴りが私の鳩尾に入る。とてつもない痛みに私はその場に蹲ってしまった。
「小春先輩!!」
「大川平次渦正!!覚悟!!」
暗殺者の刃が学園長へ向けられた。
「えいっ!!」
ユキちゃんがもっぱんを投げて暗殺者の目を眩ました。
「小春…!」
学園長先生がこちらに手を貸す。
「私は、大丈夫、です…早く…ここから離れましょう」
二人を先に洞窟へ向かわせて殿を守る。ユキちゃんの目くらましは効いているようだった。
洞窟の中から覚えのある気配がした。
「食満先輩…!」
険しい表情だ。何かが起きたことを察知してぴよこちゃんチームから抜けてきたんだろう。
「留三郎……」
「無事でいて」とは言えない。向こうは私たちとは全く力量が違う。六年生が束になってかかってやっと足止めが出来る状態だろう。
未だに痛む腹を抑えていると、留三郎が私の肩に手を置いた。
すぐにわかった。
心配するなって顔。私は学園長先生を守ることを、後輩を守ることを第一に考えなくては。
私たちは言葉を交わすことはなく、私は洞窟の奥へ、留三郎は暗殺者へ向かっていった。
遠くで彼のいつもの言葉が聞こえた。
「勝負だ」
キノコ岳に到着した。留三郎が暗殺者を足止めしてくれたおかげで無事に学園長先生をお守りすることが出来た。ユキちゃんにもケガはない。
暗殺者に追われる中、山田先生が合流した。私一人では守り切れなかった。
「山田先生、鞘はどうされたのですか?」
伊作ももう一人の暗殺者と遭遇して深手を負ったそうだ。無事にここまで来て欲しい。
「小春、よく、守り抜いた」
「…ありがとう、ございます…」
山田先生に深々と頭を下げた。ユキちゃんがもっぱんを投げてくれなかったから学園長先生はやられていただろうし、留三郎が足止めをしていてくれなければ、足腰の弱い学園長先生を連れていた私たちは暗殺者に追いつかれていた。
まだ、到底力になれていないのに、山田先生は褒めてくださった。
「小春先輩、大丈夫ですか!?」
安心して力なく膝をついた私にユキちゃんが声をかける。
「大丈夫よ。ユキちゃんのあれがなかったら危なかった。ありがとう」
「でも、先輩…」
いつも明るいユキちゃんの声がワントーン落ちた。
「後輩を守るのは先輩として当然。暗殺者に攻撃を入れられたのも私の力が足りなかったから。そういうことなんだから、気にしないで」
まだ11歳なのにこんな恐ろしい場面に遭遇させてしまったのがとても辛いよ、私は。
すると続々と他のチームがゴールしてきた。
一番に着いたのが、どんぐり。少し高いところでぶんぶんと手を振っている。
小平太が底抜けに笑うのを見て、いつもの雰囲気が戻ってきたのを実感した。二番目はぽぽたん。きり丸君が酷いけがをしていて長次が負ぶってここまで連れてきたようだった。暗殺者は学園長先生から山田先生を引き離すためにきり丸君に怪我をさせたようだ。
三番目に五年生。
ヘロヘロになって戻ってきた。
「よく頑張ったなぁ、八左ヱ門」
ゴールで座り込んだ八左ヱ門に声をかける。
「え、小春ちゃん、顔、切れてる、え、なんで!!??」
「うるさい、慌てる体力あるんだったらもう一往復する?」
「いえ、大丈夫です…」
「もう血は止まってるし傷口も浅い。ドクタケと戦ったんだってな、よくやったよ。お前たち三人」
へにゃへにゃになった五年生を見る。三人して私を見上げてきた。
「清水先輩~~!!」
「豆腐食べますか」
久々知君が高野豆腐を出してくる。それはさすがに遠慮した。
遅れて浜君としんべヱ君が到着した。
「浜君、留三郎は?」
「食満先輩は…伊作先輩と乱太郎を待って…」
「…そう…伊作たちを…」
離れた場所に留三郎の背中が見えた。伊作を待っている。伊作は必ずゴールすると信じている背中だ。
「伊作先輩と乱太郎、ちゃんとゴールできるかなぁ…」
留三郎の見つめる方向を見ながらしんべヱ君が呟く。
「大丈夫、大丈夫だよ。きっと二人とも笑って戻ってくるから」
しんべヱ君に目線を合わせて言った。きっと、大丈夫だ。
結果発表が始まった。
「…最後にぴよこちゃんチームは……山田先生」
「この競技はチームが一緒にゴールするという決まりがあります。ぴよこちゃんチームは……」
「留三郎~~~~~~~~~!!!!!!」
伊作の声だ。
「お待たせ」
「おい、伊作!何やってたんだ!!遅かったぞ!!」
「ちょっと色々あってさ」
「間に合った…よかった…よかった、留三郎……」
運動会が始まる前に留三郎が言っていたのを思い出す。きっとこの運動会は私たちにとっては最後だから、絶対に勝ちたい、勝たせてやりたい。って。
「みんな、怪我はない?」
いつも通りの伊作の言葉に私たち全員の顔がほころぶ。一番重傷なのはお前だってのに。
「はーい」
声を揃えて伊作に応える。
ミツバチに刺されてしまった乱太郎君を抱えた留三郎がこっちに帰ってくる。伊作と一緒に山田先生へ鞘をお返しすると、最初の目的だったチームのタスキをたなびかせた。
ぴよこちゃんチームが今、ゴールした。
「!小春、どうしたその傷」
隣に立った私の右頬の傷に気が付く。優しく指が傷跡をなぞった。
「暗殺者と戦った時についただけだよ。もう血は止まってるし」
「そうか…」
「それよりも!おかえり、留三郎」
「おう、ただいま。小春」
一等明るい笑顔でこちらを見る。つられて私も笑う。
キノコ岳の桜が舞ってとてもきれいだ。よく、「小春は桜が似合うなぁ」なんて留三郎が言っていたけど、留三郎だって桜が似合うんだよ。
いや、私よりも似合うよ。私は、伊作を待つ留三郎の背中にずっと、ずっと、見惚れていたんだから。
これぞ忍者の大運動会だ!これにてめでたしめでたし。