デクVSかっちゃん2
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そして。
寮に戻るとそこには相澤先生が待ち受けていて、私たち――主に勝己と出久の怪我の処置を済ますと、捕縛布で縛り上げられた。
「試験終えたその晩にケンカとは、元気があって大変よろしい」
「相澤くん待って、捕縛待って」
私もケンカはしていないけれど、寮を抜け出したから縛り上げられた。
「原因は私にあるんだよ」
「はい? 原因?何です」
勝己と出久の喧嘩の原因を聞かれる。ワン・フォー・オールのことは話せない。
どうするんだろうと固まっている勝己と出久を見た。
オールマイトが何やら先生に耳打ちする。力のことは誤魔化しているみたいだ。
「……んん…………だからルールを犯しても仕方ない……で済ますことはできません。然るべき処罰は下します。先に手ぇ出したのは?」
「俺」
「僕もけっこう……ガンガンと……」
「魚住は」
「……二人にグーで一発ずつ入れました。抜け出してごめんなさい」
捕縛布が軽く緩められたので、頭を下げた。敵に狙われる身でありながら寮を抜け出す。馬鹿かお前と怒られても仕方がない。
「爆豪は四日間! 緑谷、魚住は三日間の寮内謹慎! その間共有スペース清掃! 朝と晩‼ プラス反省文の提出‼ 怪我については痛みが増したりひかないようなら保健室へ行け! ただし余程の事でなければ婆さんの“個性”は頼るな。魚住の“個性”もだ。勝手な傷は勝手に治せ!」
捕縛布が完全に解かれて、処分を言い渡される。言い終わった相澤先生はもう一度部下いため息を吐くと
「以上! 寝ろ!」
と私たちを部屋から出した。
出久が先にエレベーターで部屋に戻る。勝己は少しだけリビングに残った。
「寝ないの、勝己」
「……」
出久と一緒にエレベーター乗るのが嫌だから残ったんだろう。こういう雰囲気の後にエレベーターみたいなところで二人きりとか気まずすぎる。
共有スペースの冷蔵庫にあった麦茶を一杯飲む。
「部屋、戻るんか」
「うん。寝るし……明日朝から掃除じゃん」
正直頭で考えることは色々あるからすぐに寝付けそうにはないけど、ベッドで横になってしまいたい。
コップを洗って片づけると勝己がついてくる。
「部屋、行かせろ」
有無を言わせない声音ではなかった。でも、この勝己の声は何となく無視しちゃいけない。
今日初めて聞いた勝己の吐き出した本音の声と似ていた。
エレベーターで女子棟の五階に上がる。梅雨ちゃんとヤオモモちゃんを起こさないように部屋に戻った。
そういえば、寮に引っ越してきた最初の日、勝己が突然やって来たんだったか。
何をするとかはなかったけれど、最後に一回勝己は私を抱きしめた。
今考えるとあれは、勝己なりに私に甘えていたんだろうか。吐き出してしまいたい気持ちを抑えてそういうことをしたんだろうか。
そう思ってしまうと、本当にあの時の私は浮かれポンチで腹が立つ。あの時に戻れるなら自分を殴っていた。
ベッドに腰かけて隣にポンと手を置く。
勝己は黙って隣に座ってくれた。
「勝己。……ん」
両手を広げた。何でも受け入れますよの意だ。
勝己は黙って私の両腕の中に納まる。髪の毛がチクチクと首筋にあたってむずがゆい。
「……殴ってごめん。あと気づけなくてごめん」
殴ったのは明日出久にも謝らなくちゃいけない。
「おまえに気付いてほしいなんて思っちゃいねぇ」
勝己の声が幾分か弱々しい。こんな声今まで聞いたことなんかなかった。
オールマイトは力を失ったのは勝己の責任じゃないと何度も言ってくれた。いずれ限界は来ていたからと。でも、もしも私が勝己の立場だったら。私だってあの時、敵連合に攫われていた可能性はあった。オールマイトを終わらせた原因が私になっていたかもしれなかった。
もし私が勝己だったら、自分の責任じゃないと言われても多分一生忘れはしないはずだ。
「けど、私はかっちゃんに弱音吐いて欲しかった。思ってること全部言える存在だと思ってた」
「弱音なんざねぇんだよ」
「う~ん。かっちゃんはそうだね……」
やっぱ勝己は強がっちゃうか。悔しいな。
「……もう少しこのままでいろ」
前言撤回。まだ勝己に全部を言ってもらえるようにはならないけど、少しは役に立てるみたいだ。
「はーい」
嬉しさで上ずる声を抑えながら返事をした。
「そうだ、勝己。ちょっと確認」
一応それっぽいことは言ってもらえたけど確認だ。世の中確認は必要だ。遠回しに言ってしまうとどこかで間違った受け取り方をしてしまうかもしれない。
「私と勝己は付き合ってる……でいいんだよね?」
以前に彼女って言ってもらった。そういうことでいいんだよな。とその時はなったわけだけど、確認。
「それ以外にあんのか」
勝己が一度私から離れる。少し不機嫌な表情になって眉間が険しくなる。けどちょっと耳が赤くなっている。なるほど、勝己はそこが赤くなるタイプか。
「それ以外に何もなくて嬉しいです。――あと、私たちの事、他の人に言う?芦戸ちゃんとかから質問攻めにされちゃうし……」
お茶子ちゃんや梅雨ちゃん、あと飯田くんに出久、それに轟くんには相談に乗ってもらったから報告はしておきたいなぁ、と伝える。
「っんでデクに聞いとンだ……!」
勝己の目が吊り上がる。
「いや、一番理解あるの出久かなぁって……」
「……勝手にしろ」
「お、わかった」
勝手にしろ、つまり多分言ってもいいってことだ。相談に乗ってもらった人たちには報告はしておくとして、芦戸ちゃんはやっぱり質問攻めになっちゃうから様子を見てかな。絶対勝己の方にも行くよなァ。
「つーかよ、付き合ってもいねぇ女の部屋に行くか。付き合ってもいねえ女の腕ん中でおとなしくしてるか」
「……そ、そうだね……」
勝己の言葉に納得する。勝己ってそういうのちゃんとしているタイプだな。変な所でマジメと言うかみみっちぃと言うか。
勝己の言葉がむずがゆくて変に顔が歪む。多分好きな人には見せてはならない部類な気がする。
「んだその顔はよ」
「う、嬉しいからです……」
勝己が弱めのデコピンをしてきた。軽い衝撃のおかげで変な顔も元に戻る。
「――改めてかっちゃん。好きです、子どもの頃からずっと」
「ん、俺も好きだ」
勝己が視線を逸らす。私はそれを見て笑った。
勝己の手が伸びる。私の髪の毛先を軽くいじる。
「勝己は、髪の長い方が好き?」
「別に……おまえはおまえだろ」
つまり私が髪を伸ばしていたのってあんまり意味がなかったのか?私の髪の長さって勝己にとっちゃ対して関係なかったのか。
「私も、どんな勝己でも大好きだよ」
例え不安で押しつぶされそうでも、泣きそうなくらい目を腫らしても、何があっても最終的に勝己は前を強く見る。どんな勝己でも絶対にそこだけは変わらないから。
「っとに奏はよォ……」
勝己が呆れたように笑う。釣られて私も笑った。
その日、私は初めて恋人として勝己とキスをした。
寮に戻るとそこには相澤先生が待ち受けていて、私たち――主に勝己と出久の怪我の処置を済ますと、捕縛布で縛り上げられた。
「試験終えたその晩にケンカとは、元気があって大変よろしい」
「相澤くん待って、捕縛待って」
私もケンカはしていないけれど、寮を抜け出したから縛り上げられた。
「原因は私にあるんだよ」
「はい? 原因?何です」
勝己と出久の喧嘩の原因を聞かれる。ワン・フォー・オールのことは話せない。
どうするんだろうと固まっている勝己と出久を見た。
オールマイトが何やら先生に耳打ちする。力のことは誤魔化しているみたいだ。
「……んん…………だからルールを犯しても仕方ない……で済ますことはできません。然るべき処罰は下します。先に手ぇ出したのは?」
「俺」
「僕もけっこう……ガンガンと……」
「魚住は」
「……二人にグーで一発ずつ入れました。抜け出してごめんなさい」
捕縛布が軽く緩められたので、頭を下げた。敵に狙われる身でありながら寮を抜け出す。馬鹿かお前と怒られても仕方がない。
「爆豪は四日間! 緑谷、魚住は三日間の寮内謹慎! その間共有スペース清掃! 朝と晩‼ プラス反省文の提出‼ 怪我については痛みが増したりひかないようなら保健室へ行け! ただし余程の事でなければ婆さんの“個性”は頼るな。魚住の“個性”もだ。勝手な傷は勝手に治せ!」
捕縛布が完全に解かれて、処分を言い渡される。言い終わった相澤先生はもう一度部下いため息を吐くと
「以上! 寝ろ!」
と私たちを部屋から出した。
出久が先にエレベーターで部屋に戻る。勝己は少しだけリビングに残った。
「寝ないの、勝己」
「……」
出久と一緒にエレベーター乗るのが嫌だから残ったんだろう。こういう雰囲気の後にエレベーターみたいなところで二人きりとか気まずすぎる。
共有スペースの冷蔵庫にあった麦茶を一杯飲む。
「部屋、戻るんか」
「うん。寝るし……明日朝から掃除じゃん」
正直頭で考えることは色々あるからすぐに寝付けそうにはないけど、ベッドで横になってしまいたい。
コップを洗って片づけると勝己がついてくる。
「部屋、行かせろ」
有無を言わせない声音ではなかった。でも、この勝己の声は何となく無視しちゃいけない。
今日初めて聞いた勝己の吐き出した本音の声と似ていた。
エレベーターで女子棟の五階に上がる。梅雨ちゃんとヤオモモちゃんを起こさないように部屋に戻った。
そういえば、寮に引っ越してきた最初の日、勝己が突然やって来たんだったか。
何をするとかはなかったけれど、最後に一回勝己は私を抱きしめた。
今考えるとあれは、勝己なりに私に甘えていたんだろうか。吐き出してしまいたい気持ちを抑えてそういうことをしたんだろうか。
そう思ってしまうと、本当にあの時の私は浮かれポンチで腹が立つ。あの時に戻れるなら自分を殴っていた。
ベッドに腰かけて隣にポンと手を置く。
勝己は黙って隣に座ってくれた。
「勝己。……ん」
両手を広げた。何でも受け入れますよの意だ。
勝己は黙って私の両腕の中に納まる。髪の毛がチクチクと首筋にあたってむずがゆい。
「……殴ってごめん。あと気づけなくてごめん」
殴ったのは明日出久にも謝らなくちゃいけない。
「おまえに気付いてほしいなんて思っちゃいねぇ」
勝己の声が幾分か弱々しい。こんな声今まで聞いたことなんかなかった。
オールマイトは力を失ったのは勝己の責任じゃないと何度も言ってくれた。いずれ限界は来ていたからと。でも、もしも私が勝己の立場だったら。私だってあの時、敵連合に攫われていた可能性はあった。オールマイトを終わらせた原因が私になっていたかもしれなかった。
もし私が勝己だったら、自分の責任じゃないと言われても多分一生忘れはしないはずだ。
「けど、私はかっちゃんに弱音吐いて欲しかった。思ってること全部言える存在だと思ってた」
「弱音なんざねぇんだよ」
「う~ん。かっちゃんはそうだね……」
やっぱ勝己は強がっちゃうか。悔しいな。
「……もう少しこのままでいろ」
前言撤回。まだ勝己に全部を言ってもらえるようにはならないけど、少しは役に立てるみたいだ。
「はーい」
嬉しさで上ずる声を抑えながら返事をした。
「そうだ、勝己。ちょっと確認」
一応それっぽいことは言ってもらえたけど確認だ。世の中確認は必要だ。遠回しに言ってしまうとどこかで間違った受け取り方をしてしまうかもしれない。
「私と勝己は付き合ってる……でいいんだよね?」
以前に彼女って言ってもらった。そういうことでいいんだよな。とその時はなったわけだけど、確認。
「それ以外にあんのか」
勝己が一度私から離れる。少し不機嫌な表情になって眉間が険しくなる。けどちょっと耳が赤くなっている。なるほど、勝己はそこが赤くなるタイプか。
「それ以外に何もなくて嬉しいです。――あと、私たちの事、他の人に言う?芦戸ちゃんとかから質問攻めにされちゃうし……」
お茶子ちゃんや梅雨ちゃん、あと飯田くんに出久、それに轟くんには相談に乗ってもらったから報告はしておきたいなぁ、と伝える。
「っんでデクに聞いとンだ……!」
勝己の目が吊り上がる。
「いや、一番理解あるの出久かなぁって……」
「……勝手にしろ」
「お、わかった」
勝手にしろ、つまり多分言ってもいいってことだ。相談に乗ってもらった人たちには報告はしておくとして、芦戸ちゃんはやっぱり質問攻めになっちゃうから様子を見てかな。絶対勝己の方にも行くよなァ。
「つーかよ、付き合ってもいねぇ女の部屋に行くか。付き合ってもいねえ女の腕ん中でおとなしくしてるか」
「……そ、そうだね……」
勝己の言葉に納得する。勝己ってそういうのちゃんとしているタイプだな。変な所でマジメと言うかみみっちぃと言うか。
勝己の言葉がむずがゆくて変に顔が歪む。多分好きな人には見せてはならない部類な気がする。
「んだその顔はよ」
「う、嬉しいからです……」
勝己が弱めのデコピンをしてきた。軽い衝撃のおかげで変な顔も元に戻る。
「――改めてかっちゃん。好きです、子どもの頃からずっと」
「ん、俺も好きだ」
勝己が視線を逸らす。私はそれを見て笑った。
勝己の手が伸びる。私の髪の毛先を軽くいじる。
「勝己は、髪の長い方が好き?」
「別に……おまえはおまえだろ」
つまり私が髪を伸ばしていたのってあんまり意味がなかったのか?私の髪の長さって勝己にとっちゃ対して関係なかったのか。
「私も、どんな勝己でも大好きだよ」
例え不安で押しつぶされそうでも、泣きそうなくらい目を腫らしても、何があっても最終的に勝己は前を強く見る。どんな勝己でも絶対にそこだけは変わらないから。
「っとに奏はよォ……」
勝己が呆れたように笑う。釣られて私も笑った。
その日、私は初めて恋人として勝己とキスをした。