THE 試験
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さて、試験が始まり所は高架ゾーン。
梯子を上って高速道路を模した場所に出るようだ。
「上鳴、何でついてきたんだ?」
「キミたちが走ってっちゃうからさァ‼ 寂しくてついてきちゃったの! なァ魚住⁉」
「私は別に寂しいとかじゃないよ」
勝己を放っておくわけにもいかなかったから、なんだけどな。
「えぇえ‼」
「うっせぇな‼」
梯子に上りながらワイワイ話していると先頭を登る勝己がキレた。
「うえぇ……なにその言い方……」
「やーめろって、爆豪」
「魚住ぃ大丈夫? あんな彼氏で」
「彼氏て、上鳴くん……」
まだ彼氏なんて言ってないんだけどなァ……
「上に何人もいたっぽいし、ここは四人で協力して――」
「しねェ‼」
当たりが酷い勝己を切島くんが宥める。勝己にしては冷静さを欠いている印象だ。上鳴くんがいたとしても、もう少し協力的な態度、というか周りを使う思考くらいならするというのに。
「そういうなって――あぶねぇ‼‼」
道路に出た途端、切島くんが勝己を押す。肉塊、のようなものが勝己のいた位置に飛んできた。
切島くんは勝己を庇って飛んできた肉塊をモロにくらってしまった。
「切島くん!」
切島くん、だったモノは肉塊に包まれ、先客の手元へ。切島くんには悪いが、直視できないタイプの様相だ。
「なんだありゃ⁉ どうなってんだ⁉」
「要するに、野郎の仕業ってことだろ。ぶっ殺す」
足元、その周囲に切島くんと同じような肉塊。梯子を上る前には見えた上にいた人たちだ。多分、あの数をこの人が一人で……
「我々士傑生は活動時制帽の着用を義務付けられている。何故か? それは、我々の一挙手一投足が士傑高校という伝統ある名を冠しているからだ。これは示威である。就学時より責務と矜持を涵養する我々と、粗野で徒者のまま英雄を志す諸君との水準差」
「嫌いなタイプだ」
私も好きなタイプではない。言い方が回りくどいし。
「何つったあの人⁉ 頭に入ってこねー!」
「目が細すぎて相手の実力見えませんだとよ」
「魚住ィ」
「まあ多分私たちが気に食わんのだろうかね」
難しい言葉で言っているからすぐにピンとはこなかったけど、この考え方ってヒーロー殺しっぽい考え方だよな。ヒーローに対する責務とかなんとかって。
面倒くさい人と遭遇してしまった感じだ。
「雄英高校……私は尊敬している。御校と伍する事に誇りすら感じていたのだ。それを一年A組は品位を貶めてばかり……」
「さっきのまた来るぞ‼ キモイやつ‼」
「うるせえ」
士傑の面倒くさい目の細い人の後ろに、切島くんがやられた気持ち悪い肉塊が現れた。
道具入れからアイテムの「如意棒もどき」を取り出していつでも戦える体勢を取った。
「責務? 矜持ィ? ペラペラペラペラと……口じゃなくって行動で示して下さいヨ先パイ!」
「特に貴様だよ‼ 爆豪‼‼」
勝己の新技の乱れ撃ち‼
「名付けて徹甲弾機関銃‼」
「つーかおまえ方々から同じような理由で嫌われてんな……」
あの肉塊、物理は効くんだ。操ってるのは、自分自身の肉、でいいんだろうか。直接触れられるとアウトって感じか。
触れない、ってなると私は完全に不利になるな。
「私が手折り気付かせよう。帰属する場に相応しい挙止。それが品位であると」
「何なんだこの人は‼」
また難しい言葉を言っている。何なんだ、本当に。
「うるせえ奴だ、ブッ殺す」
「だー待て試験だぞ、忘れんなよ」
殺すと言って本当に殺したことはないから、そこは大丈夫だと思う。
にしても、中距離系ないと、この相手はキツイな。
「勝己、上鳴くん、私が歌って動きとめるから一気に――」
口を開けた途端に私目掛けて肉塊が飛んでくる。
「っぶねぇ‼‼」
棒でなんとか弾いた。ギリギリ棒なら一瞬触れても平気か。
そりゃあ、私対策するよね。体育祭は全国放送だものね、私が歌でスタン系攻撃できるのわかるよね。てか、この人の言動だと勝己を目の敵にしてるし、勝己と対戦した私のこともそりゃあ覚えてるよな、こん畜生‼
「目障りだ、先に丸めてやろうか」
「俺を無視すんな!」
「してないが?」
「勝己、後ろ!」
さっきの爆破でほとんどの肉塊を散らしたはずなのに、なんで、後ろに⁉
「あアん⁉」
「さて……先程切島で見たであろう。その肉は」
まずい、肉は触られたら――
「触れたら、終わりだ」
「爆豪‼‼」
「ッソ……! オイアホコレ……」
「あ⁉」
勝己が何かを上鳴くんに投げた。
「かっちゃ――」
勝己も切島くんと同じように気持ち悪い肉の塊になってしまった。
元が勝己でも気持ち悪いな。申し訳ないけど。
「ウッソぉ……」
「これは示威である。今試験は異例の少数採用。オールマイトが引退し、時代は節目。本来であれば、ヒーローは増員して然るべきではないか? 即ち、これらが示唆するは、有象無象の淘汰。ヒーローという職をより高次のモノにする選別が始まったと推察する。私はそれを賛助したく、こうして諸君らを排している」
本当に、面倒くさい人だ。この細目…
「試験そっちのけでやることスか……⁉」
「ホントに……私らは相応しくないって勝手に決めやがって……」
「おかしーよ、なんかそれ……」
「徒者が世に憚る方がおかしい。ちなみにこの姿でも痛覚等は正常に働く。放電は皆も傷つけるぞ、上鳴電気」
細目野郎が足元の切島くんを踏みつける。痛覚は残ってるって言ってそれをやるかよ、この野郎。
「――……上鳴くん、私が歌って動きを……」
「魚住、俺に任せてくんね?」
上鳴くんが手元を見せる。そして細目の身体越しに見える柵を指さした。
「……わかった!」
ここは上鳴くんに任せよう。上鳴くんのやり方が確実だ。
――それに、上鳴くんも怒ってる。
「……さっきからあんたも大概中傷ひでーからね? 効くからやめてほしいんだよね……」
「それはおのれに自覚があるからだ。省してくれれば幸い」
「俺の事じゃねえよ」
勝己のヒーロースーツの装備は無駄がない。籠手は誤作動を起こさないように二段構えにしているし、膝の装備は膝で殺すことを目的とした鈍器だ。
そして、腰につけている小さな手榴弾。あれには籠手の貯蔵タンクの勝己の汗が入っている。本物の自家製手榴弾だ。
勝己は肉塊にこねられる前に上鳴くんにこれを渡していた。多分、上鳴くんもこの装備の仕組みは知っている。勝己が知らない相手に渡すはずないし、これは確実だ。
「ところで先輩、良い位置によろけましたね」
上鳴くんの電撃が一直線に細目に伸びた。
上鳴くんのサポートアイテム。このポインターがあれば上鳴くんの放電は一直線に収束する。つまり、肉塊になった切島くんや勝己、それに私を巻き込まずに戦える。
「ソヤで下水道みてーな奴だけど、割とマジメにヒーローやろうとしてますよ。とっさに手榴弾くれたのも打開の為の冷静な判断じゃないスか?それに切島だって……友だちの為に敵地乗り込むようなバカがつくくらい良い奴なんスよ」
「……!」
勝己と切島くんの肉塊が微かに動いた。見間違いじゃない。
もしかしたら、この男の個性……
「断片的な情報だけで知った気んなって……こいつらをディスってんじゃねえよ‼」
「上鳴くん、そのまま放電準備!」
「立場を自覚しろという話だ、馬鹿者が‼‼」
上鳴くんの放電をモロにくらってからピクリともしなかった肉塊が動き出していた。つまり、ダメージ次第で解除される個性!
私が懐に飛び込んで殴ってトドメか、上鳴くんの放電でトドメかのどちらかで片が付く。
「んの、肉やろ――」
と思ったら、
「ありがとな、上鳴」
「遅んだよ、アホ面‼」
個性が解除された勝己と切島くんが先に殴り込んでしまった。
「私の出番……っ!」
「ひでえな‼ やっぱディスられても仕方ねえわおまえ‼」
上鳴くんがいつもの調子に戻る。
「でも、さっきの上鳴くん格好良かったよ。私もあの細目野郎にムカついてたし」
「え、ホントぉ⁉」
半泣きの上鳴くんが嬉しそうに顔を明るくする。私は、勝己と切島くんにいいトコロ取られて悔しいよ。
「つーか後ろ‼ 丸くこねられたのは、おまえらだけじゃねえぞ!」
先にこねられていた受験者たちも個性が解除されて元に戻っている。
数は十を超えている。
「――なら、今度こそ私の出番だね。この中で範囲攻撃強いの私でしょ」
この試験、要は無力化した受験者のターゲット当てちゃえばいい話だ。なら、正面戦闘よりも無力化してしまった方がいい。
「私の必殺技……『地這う人魚姫の歌声 』‼‼」
こねられていた受験者たちを蹴散らし、私たち四人は無事に一次試験を通過。
控室に向かっていると周りの状況がよく見えてきた。
あちこちでバトっている。通過が許されるのはあと一八名。一次試験も佳境となっているのだろう。
「あら? オイねぇアレ瀬呂たちじゃん⁉ やったあスッゲオーイ!」
向こうに瀬呂くん、お茶子ちゃん、出久の姿が見える。三人も今しがた合格した様子だ。
「上鳴くん! やったあスッゲオーイ!」
「クラスの皆一緒にいるのかと思ってた」
「序盤で分散させられちまってよ。俺らも他の連中の状況はわからん」
ということは他の皆もまだ残っている可能性があるのか……
「皆さんよくご無事で! 心配していましたわ」
控室に入るとヤオモモちゃんが迎えてくれた。先に通過していたみたいだ。
「ヤオモモーゴブジよゴブジ! つーか早くね皆⁉」
「俺達もついさっきだ。轟が早かった」
轟くんは完全に単独行動していたけど、早かったのか。さすがだ。
「爆豪も絶対もういると思ってたけど、なる程! 上鳴が一緒だったからか」
「はァ⁉ おまえちょっとそこなおれ!」
耳郎ちゃんが上鳴くんに軽口を言ってやる。
「上鳴くんのおかげで危機を脱せたところもあるし、そんなことないよー」
「魚住ぃ‼ ホント良い奴! 爆豪にはもったいない‼」
上鳴くんが泣きつく。
「――で、結局爆豪とはどうなってんのさ、魚住」
「うっ、耳郎ちゃん目敏い……」
芦戸ちゃんがいないから聞き出してこないと思っていたのに……
ちらりと勝己を盗み見る。さっさとターゲットを片づけている。周りに興味なさそうだ。
「……私が言っていいのかわからない、から。勝己が言う気になったら話すね」
「ふーん」
「えー爆豪に聞いてみていい?」
「爆破されても良いなら」
「それはヤダー」
勝己は言う気があるのかわからない。なんとなくそういう話ができていない。試験に向けて今まで訓練漬けだったからタイミングが合わなかった。
それになにより、なんだか勝己が言えていないことがある気がして何も聞くことができなかった。
梯子を上って高速道路を模した場所に出るようだ。
「上鳴、何でついてきたんだ?」
「キミたちが走ってっちゃうからさァ‼ 寂しくてついてきちゃったの! なァ魚住⁉」
「私は別に寂しいとかじゃないよ」
勝己を放っておくわけにもいかなかったから、なんだけどな。
「えぇえ‼」
「うっせぇな‼」
梯子に上りながらワイワイ話していると先頭を登る勝己がキレた。
「うえぇ……なにその言い方……」
「やーめろって、爆豪」
「魚住ぃ大丈夫? あんな彼氏で」
「彼氏て、上鳴くん……」
まだ彼氏なんて言ってないんだけどなァ……
「上に何人もいたっぽいし、ここは四人で協力して――」
「しねェ‼」
当たりが酷い勝己を切島くんが宥める。勝己にしては冷静さを欠いている印象だ。上鳴くんがいたとしても、もう少し協力的な態度、というか周りを使う思考くらいならするというのに。
「そういうなって――あぶねぇ‼‼」
道路に出た途端、切島くんが勝己を押す。肉塊、のようなものが勝己のいた位置に飛んできた。
切島くんは勝己を庇って飛んできた肉塊をモロにくらってしまった。
「切島くん!」
切島くん、だったモノは肉塊に包まれ、先客の手元へ。切島くんには悪いが、直視できないタイプの様相だ。
「なんだありゃ⁉ どうなってんだ⁉」
「要するに、野郎の仕業ってことだろ。ぶっ殺す」
足元、その周囲に切島くんと同じような肉塊。梯子を上る前には見えた上にいた人たちだ。多分、あの数をこの人が一人で……
「我々士傑生は活動時制帽の着用を義務付けられている。何故か? それは、我々の一挙手一投足が士傑高校という伝統ある名を冠しているからだ。これは示威である。就学時より責務と矜持を涵養する我々と、粗野で徒者のまま英雄を志す諸君との水準差」
「嫌いなタイプだ」
私も好きなタイプではない。言い方が回りくどいし。
「何つったあの人⁉ 頭に入ってこねー!」
「目が細すぎて相手の実力見えませんだとよ」
「魚住ィ」
「まあ多分私たちが気に食わんのだろうかね」
難しい言葉で言っているからすぐにピンとはこなかったけど、この考え方ってヒーロー殺しっぽい考え方だよな。ヒーローに対する責務とかなんとかって。
面倒くさい人と遭遇してしまった感じだ。
「雄英高校……私は尊敬している。御校と伍する事に誇りすら感じていたのだ。それを一年A組は品位を貶めてばかり……」
「さっきのまた来るぞ‼ キモイやつ‼」
「うるせえ」
士傑の面倒くさい目の細い人の後ろに、切島くんがやられた気持ち悪い肉塊が現れた。
道具入れからアイテムの「如意棒もどき」を取り出していつでも戦える体勢を取った。
「責務? 矜持ィ? ペラペラペラペラと……口じゃなくって行動で示して下さいヨ先パイ!」
「特に貴様だよ‼ 爆豪‼‼」
勝己の新技の乱れ撃ち‼
「名付けて徹甲弾機関銃‼」
「つーかおまえ方々から同じような理由で嫌われてんな……」
あの肉塊、物理は効くんだ。操ってるのは、自分自身の肉、でいいんだろうか。直接触れられるとアウトって感じか。
触れない、ってなると私は完全に不利になるな。
「私が手折り気付かせよう。帰属する場に相応しい挙止。それが品位であると」
「何なんだこの人は‼」
また難しい言葉を言っている。何なんだ、本当に。
「うるせえ奴だ、ブッ殺す」
「だー待て試験だぞ、忘れんなよ」
殺すと言って本当に殺したことはないから、そこは大丈夫だと思う。
にしても、中距離系ないと、この相手はキツイな。
「勝己、上鳴くん、私が歌って動きとめるから一気に――」
口を開けた途端に私目掛けて肉塊が飛んでくる。
「っぶねぇ‼‼」
棒でなんとか弾いた。ギリギリ棒なら一瞬触れても平気か。
そりゃあ、私対策するよね。体育祭は全国放送だものね、私が歌でスタン系攻撃できるのわかるよね。てか、この人の言動だと勝己を目の敵にしてるし、勝己と対戦した私のこともそりゃあ覚えてるよな、こん畜生‼
「目障りだ、先に丸めてやろうか」
「俺を無視すんな!」
「してないが?」
「勝己、後ろ!」
さっきの爆破でほとんどの肉塊を散らしたはずなのに、なんで、後ろに⁉
「あアん⁉」
「さて……先程切島で見たであろう。その肉は」
まずい、肉は触られたら――
「触れたら、終わりだ」
「爆豪‼‼」
「ッソ……! オイアホコレ……」
「あ⁉」
勝己が何かを上鳴くんに投げた。
「かっちゃ――」
勝己も切島くんと同じように気持ち悪い肉の塊になってしまった。
元が勝己でも気持ち悪いな。申し訳ないけど。
「ウッソぉ……」
「これは示威である。今試験は異例の少数採用。オールマイトが引退し、時代は節目。本来であれば、ヒーローは増員して然るべきではないか? 即ち、これらが示唆するは、有象無象の淘汰。ヒーローという職をより高次のモノにする選別が始まったと推察する。私はそれを賛助したく、こうして諸君らを排している」
本当に、面倒くさい人だ。この細目…
「試験そっちのけでやることスか……⁉」
「ホントに……私らは相応しくないって勝手に決めやがって……」
「おかしーよ、なんかそれ……」
「徒者が世に憚る方がおかしい。ちなみにこの姿でも痛覚等は正常に働く。放電は皆も傷つけるぞ、上鳴電気」
細目野郎が足元の切島くんを踏みつける。痛覚は残ってるって言ってそれをやるかよ、この野郎。
「――……上鳴くん、私が歌って動きを……」
「魚住、俺に任せてくんね?」
上鳴くんが手元を見せる。そして細目の身体越しに見える柵を指さした。
「……わかった!」
ここは上鳴くんに任せよう。上鳴くんのやり方が確実だ。
――それに、上鳴くんも怒ってる。
「……さっきからあんたも大概中傷ひでーからね? 効くからやめてほしいんだよね……」
「それはおのれに自覚があるからだ。省してくれれば幸い」
「俺の事じゃねえよ」
勝己のヒーロースーツの装備は無駄がない。籠手は誤作動を起こさないように二段構えにしているし、膝の装備は膝で殺すことを目的とした鈍器だ。
そして、腰につけている小さな手榴弾。あれには籠手の貯蔵タンクの勝己の汗が入っている。本物の自家製手榴弾だ。
勝己は肉塊にこねられる前に上鳴くんにこれを渡していた。多分、上鳴くんもこの装備の仕組みは知っている。勝己が知らない相手に渡すはずないし、これは確実だ。
「ところで先輩、良い位置によろけましたね」
上鳴くんの電撃が一直線に細目に伸びた。
上鳴くんのサポートアイテム。このポインターがあれば上鳴くんの放電は一直線に収束する。つまり、肉塊になった切島くんや勝己、それに私を巻き込まずに戦える。
「ソヤで下水道みてーな奴だけど、割とマジメにヒーローやろうとしてますよ。とっさに手榴弾くれたのも打開の為の冷静な判断じゃないスか?それに切島だって……友だちの為に敵地乗り込むようなバカがつくくらい良い奴なんスよ」
「……!」
勝己と切島くんの肉塊が微かに動いた。見間違いじゃない。
もしかしたら、この男の個性……
「断片的な情報だけで知った気んなって……こいつらをディスってんじゃねえよ‼」
「上鳴くん、そのまま放電準備!」
「立場を自覚しろという話だ、馬鹿者が‼‼」
上鳴くんの放電をモロにくらってからピクリともしなかった肉塊が動き出していた。つまり、ダメージ次第で解除される個性!
私が懐に飛び込んで殴ってトドメか、上鳴くんの放電でトドメかのどちらかで片が付く。
「んの、肉やろ――」
と思ったら、
「ありがとな、上鳴」
「遅んだよ、アホ面‼」
個性が解除された勝己と切島くんが先に殴り込んでしまった。
「私の出番……っ!」
「ひでえな‼ やっぱディスられても仕方ねえわおまえ‼」
上鳴くんがいつもの調子に戻る。
「でも、さっきの上鳴くん格好良かったよ。私もあの細目野郎にムカついてたし」
「え、ホントぉ⁉」
半泣きの上鳴くんが嬉しそうに顔を明るくする。私は、勝己と切島くんにいいトコロ取られて悔しいよ。
「つーか後ろ‼ 丸くこねられたのは、おまえらだけじゃねえぞ!」
先にこねられていた受験者たちも個性が解除されて元に戻っている。
数は十を超えている。
「――なら、今度こそ私の出番だね。この中で範囲攻撃強いの私でしょ」
この試験、要は無力化した受験者のターゲット当てちゃえばいい話だ。なら、正面戦闘よりも無力化してしまった方がいい。
「私の必殺技……『
こねられていた受験者たちを蹴散らし、私たち四人は無事に一次試験を通過。
控室に向かっていると周りの状況がよく見えてきた。
あちこちでバトっている。通過が許されるのはあと一八名。一次試験も佳境となっているのだろう。
「あら? オイねぇアレ瀬呂たちじゃん⁉ やったあスッゲオーイ!」
向こうに瀬呂くん、お茶子ちゃん、出久の姿が見える。三人も今しがた合格した様子だ。
「上鳴くん! やったあスッゲオーイ!」
「クラスの皆一緒にいるのかと思ってた」
「序盤で分散させられちまってよ。俺らも他の連中の状況はわからん」
ということは他の皆もまだ残っている可能性があるのか……
「皆さんよくご無事で! 心配していましたわ」
控室に入るとヤオモモちゃんが迎えてくれた。先に通過していたみたいだ。
「ヤオモモーゴブジよゴブジ! つーか早くね皆⁉」
「俺達もついさっきだ。轟が早かった」
轟くんは完全に単独行動していたけど、早かったのか。さすがだ。
「爆豪も絶対もういると思ってたけど、なる程! 上鳴が一緒だったからか」
「はァ⁉ おまえちょっとそこなおれ!」
耳郎ちゃんが上鳴くんに軽口を言ってやる。
「上鳴くんのおかげで危機を脱せたところもあるし、そんなことないよー」
「魚住ぃ‼ ホント良い奴! 爆豪にはもったいない‼」
上鳴くんが泣きつく。
「――で、結局爆豪とはどうなってんのさ、魚住」
「うっ、耳郎ちゃん目敏い……」
芦戸ちゃんがいないから聞き出してこないと思っていたのに……
ちらりと勝己を盗み見る。さっさとターゲットを片づけている。周りに興味なさそうだ。
「……私が言っていいのかわからない、から。勝己が言う気になったら話すね」
「ふーん」
「えー爆豪に聞いてみていい?」
「爆破されても良いなら」
「それはヤダー」
勝己は言う気があるのかわからない。なんとなくそういう話ができていない。試験に向けて今まで訓練漬けだったからタイミングが合わなかった。
それになにより、なんだか勝己が言えていないことがある気がして何も聞くことができなかった。