爆豪告白大作戦
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想定ではもう少しマシなタイミングだった。
せめてあいつの好きな水族館とか。
この時期だったら花火大会とか。
病院のベッドの上は考えていなかった。
それに、こんな最悪の状況でなんか伝える気はさらさらなかった。雪斗に言われた通り、こいつの目覚めるきっかけになるだけのつもりでいた。
さらさらなかった、のにだ。
口から言葉が零れていた。
「好きだ」
たった一言。たった三文字。それだけあいつは、彼女は、奏はぽろぽろと涙をこぼした。
奏の泣き顔は好きじゃない。奏が泣くのはいつも辛い思いをしたときだ。
けど、今のこれは嬉しい時の涙だとわかる。
「……かっちゃん、ありがと……」
初めて俺が奏を守った時の顔が脳をよぎる。
俺はこいつの笑った顔が好きだ。
ごしごしと繋がれていない方の手で涙を拭う。青い瞳の周りが真っ赤になる。
「お……おそい、遅いよ。ばかぁ」
体育祭から数か月、いや十数年。俺は奏を待たせすぎた。
「待たせた」
愛想をつかされなかったのは奇跡と言ってもよかった。
「ばかぁ……かっちゃんの……あほぉ……」
「ん」
ぼろぼろと泣き出す奏をまるで割れ物を扱うかのように抱きしめた。自分がこんなことをできたのかと驚く。
「だいすきだよ、ばか……」
目が覚めてから一応の検査があり、とくに異常もないということで、私は早々に退院することになった。
勝己はあの後病室に入ってきた兄と言い合いをしながら帰って行った。
家に帰ってからあの夜の事件の後何があったのかを兄から聞いた。
神野事件のこと、オールマイトのこと。
二人がいつも憧れていたヒーローは引退した。とてつもない虚無感。私もオールマイトを見て育ったから寂しさを感じる。
そして、これからの社会への不安。象徴がいない社会がやってくる。
「……」
「ということだな。あと轟くんにもお礼言っとけよ、貧血で低体温症になってた奏を温め続けてくれてたから」
「うん。わかった」
「――で、だ。奏、今日から爆豪さんちな」
「は?」
私の父は、ヒーロー雑誌のジャーナリストで、母はヒーロー事務所の経営者。兄は言わずもがなヒーロー。
父は、オールマイトの引退に関する記事が修羅場。母は、神野事件の事後処理で事務仕事に追われ、兄も現場での作業が残っている。
家に私が一人になるということ。
さらわれはしなかったものの、私も敵連合に狙われた身。家に一人でいるよりは、同じく敵連合にさらわれた勝己と一緒にいる方が護衛監視するときは楽なんだそうだ。ということで爆豪さんちにお泊りとなる。
「あと、家庭訪問な。俺が相澤さんに連絡は入れとくし、勝さんと光己さんの方にも親父たちが頼んであるから、爆豪さんちで受けとけ」
「わかった」
今回の件で雄英は全寮制となることを決定した。ヒーロー科1年は被害を受けたということで家庭訪問を行うそうだ。
「雄英にはこれからも通うってことでいいんだよな」
「あたりまえでしょ。私の目標のためには雄英が……勝己のいる雄英が一番だから」
林間合宿の事件から雄英に対する世間の目は厳しいものになった。実際生徒に被害が出てしまっている。保護者にとっては雄英に通わせるのを不安に思うこともあるということだ。
うちの両親も一応不安に思っているみたいだが、私の意志を尊重するらしい。まあ、昔から敵に狙われるのは私の常だ。
「親父たちもそうだろうと思ってたよ。……っと、そろそろ現場戻んねぇと。――奏、勝己と一つ屋根の下になるけど、間違いを起こすなよ」
兄の神妙な顔が近づく。
「なっ、何言ってんの! そんなことになるわけないじゃんか‼」
ベしんと平手で兄の顔を遠ざけて叫んだ。
相手は勝己だぞ、そんなこと天地がひっくり返っても起きるわけないだろう。多分。
せめてあいつの好きな水族館とか。
この時期だったら花火大会とか。
病院のベッドの上は考えていなかった。
それに、こんな最悪の状況でなんか伝える気はさらさらなかった。雪斗に言われた通り、こいつの目覚めるきっかけになるだけのつもりでいた。
さらさらなかった、のにだ。
口から言葉が零れていた。
「好きだ」
たった一言。たった三文字。それだけあいつは、彼女は、奏はぽろぽろと涙をこぼした。
奏の泣き顔は好きじゃない。奏が泣くのはいつも辛い思いをしたときだ。
けど、今のこれは嬉しい時の涙だとわかる。
「……かっちゃん、ありがと……」
初めて俺が奏を守った時の顔が脳をよぎる。
俺はこいつの笑った顔が好きだ。
ごしごしと繋がれていない方の手で涙を拭う。青い瞳の周りが真っ赤になる。
「お……おそい、遅いよ。ばかぁ」
体育祭から数か月、いや十数年。俺は奏を待たせすぎた。
「待たせた」
愛想をつかされなかったのは奇跡と言ってもよかった。
「ばかぁ……かっちゃんの……あほぉ……」
「ん」
ぼろぼろと泣き出す奏をまるで割れ物を扱うかのように抱きしめた。自分がこんなことをできたのかと驚く。
「だいすきだよ、ばか……」
目が覚めてから一応の検査があり、とくに異常もないということで、私は早々に退院することになった。
勝己はあの後病室に入ってきた兄と言い合いをしながら帰って行った。
家に帰ってからあの夜の事件の後何があったのかを兄から聞いた。
神野事件のこと、オールマイトのこと。
二人がいつも憧れていたヒーローは引退した。とてつもない虚無感。私もオールマイトを見て育ったから寂しさを感じる。
そして、これからの社会への不安。象徴がいない社会がやってくる。
「……」
「ということだな。あと轟くんにもお礼言っとけよ、貧血で低体温症になってた奏を温め続けてくれてたから」
「うん。わかった」
「――で、だ。奏、今日から爆豪さんちな」
「は?」
私の父は、ヒーロー雑誌のジャーナリストで、母はヒーロー事務所の経営者。兄は言わずもがなヒーロー。
父は、オールマイトの引退に関する記事が修羅場。母は、神野事件の事後処理で事務仕事に追われ、兄も現場での作業が残っている。
家に私が一人になるということ。
さらわれはしなかったものの、私も敵連合に狙われた身。家に一人でいるよりは、同じく敵連合にさらわれた勝己と一緒にいる方が護衛監視するときは楽なんだそうだ。ということで爆豪さんちにお泊りとなる。
「あと、家庭訪問な。俺が相澤さんに連絡は入れとくし、勝さんと光己さんの方にも親父たちが頼んであるから、爆豪さんちで受けとけ」
「わかった」
今回の件で雄英は全寮制となることを決定した。ヒーロー科1年は被害を受けたということで家庭訪問を行うそうだ。
「雄英にはこれからも通うってことでいいんだよな」
「あたりまえでしょ。私の目標のためには雄英が……勝己のいる雄英が一番だから」
林間合宿の事件から雄英に対する世間の目は厳しいものになった。実際生徒に被害が出てしまっている。保護者にとっては雄英に通わせるのを不安に思うこともあるということだ。
うちの両親も一応不安に思っているみたいだが、私の意志を尊重するらしい。まあ、昔から敵に狙われるのは私の常だ。
「親父たちもそうだろうと思ってたよ。……っと、そろそろ現場戻んねぇと。――奏、勝己と一つ屋根の下になるけど、間違いを起こすなよ」
兄の神妙な顔が近づく。
「なっ、何言ってんの! そんなことになるわけないじゃんか‼」
ベしんと平手で兄の顔を遠ざけて叫んだ。
相手は勝己だぞ、そんなこと天地がひっくり返っても起きるわけないだろう。多分。