爆豪告白大作戦
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三日目の晩ご飯は肉じゃが。
「爆豪君、包丁使うのうま! 意外やわ……」
「意外ってなんだコラ‼ 包丁に上手い下手なんざねぇだろ」
勝己が手際よく人参を切っていく。初めて見る人たちは驚いて勝己を見ては才能マンと呟く。
「魚住もうまいな。ジャガイモ……」
「ん、まぁ料理作ることはよくあるし……――轟くん、それは玉ねぎ剝きすぎだねぇ」
しゅるしゅるとジャガイモの皮をむく私の手元を見て轟くんが言った。
轟くんの手元の玉ねぎは随分と小さい。剥きすぎている。
「わりぃ」
「大丈夫、使えるから。……私が玉ねぎ切っとくね」
「すまねぇ」
玉ねぎを剝きすぎた轟くんには、玉ねぎを切らせる作業はよくない。多分涙がボロボロと出てしまうだろう。
右側で軽く冷やしてもらった玉ねぎを切りながら轟くんと話す。
「そういや、晩飯の後は肝試しをやるんだってな」
肝試し、その一言に誤って指を切りそうになった。
「え……?」
「あ、そうかお前いなかったか。クラスごとに脅かし役と脅かされ役やる肝試し……」
「ま……聞いてねぇ……」
トトトと包丁を動かすペースを早くする。やばい、冷や汗が出る。
足は少しガクガクするし、手元も誤りそうになる。どうしよう、どうやって乗り越えよう。
魚住奏、十六歳。苦手な夏のイベントは肝試し。
腹もふくれて皿も洗い終えた。
さて、今夜の行事は……
「肝を試す時間だ‼‼」
肝試しはA組、B組とに分かれたクラス対抗。先にB組が脅かす側に回る。
私たちA組は二人一組で三分おきに出発。お札を貰って帰ってくるのがミッション。所要時間は大体十五分くらい。プッシーキャッツが所有している森の中を歩く。
今回、補習組は相澤先生と一緒に補習授業。賑やかし組がごっそりと抜けることになってしまった。
「二十一人いて補習が五人だから……アレ?」
「ん? 一人いないな」
余ることなく二人組になるハズが出久があぶれた。
「……奏ちゃん」
「げっ」
気配を消して隠れているのに出久が声をかけてきやがった。
「爆豪の後ろに隠れてたのか」
勝己とペアになった轟くんが私を覗き込んだ。
「おい、手ェ離せ」
「イヤだ。ムリ」
ガクガクと震えながら勝己のTシャツを掴んでいた。
「奏ちゃんめちゃくちゃ震えてるじゃん!」
「昔に何かあった? トラウマとか?」
心配そうに透ちゃんと耳郎ちゃんがこちらへとやってくる。耳郎ちゃんも確か肝を試す系は苦手だったんだっけか。
「トラウマ……アッまさか……!」
「ふっ……それは、小学校に入るか入らないか――むしろ、個性が発現するかしないか、そんな昔の頃だった……」
「急に語り出した」
あれは――近所の同年代の子……もちろん勝己や出久も含んだ友達と近所の森へ肝試しに行ったんだ。そう、今回みたいに二人一組で行くことになって、私のペアは出久だった。でも、肝試しの夜、出久は来なかった。私一人で森を歩いて行ったんだけど、道中の記憶は全くなかった。残っていたのは、暗闇の恐ろしさとゴールに着いた途端勝己に泣きついたことだけだった。
「あれのことか」
「奏ちゃん、それについては……お母さんにバレちゃって……」
「それでも私は忘れんぞ、出久ぅぅぅ‼‼」
ギャっと叫んで出久に噛みついた。多分出久がいればあんなことにはならなかったはずだ。
私が肝試しに恐怖を感じることになるなんてなかったはずなのに。
「人格変わってるし……」
「やめろ、服引っ張るな」
「んー……意地でも離れるつもりはなさそうね……」
勝己のTシャツのみならず、轟くんの服の端も掴んだ私を見てマンダレイが悩んだ。
「仕方ないわ。埒が明かないし、三人で行ってもらおうか。緑谷君は悪いけど一人ね」
「チッ」
勝己が隠そうともせずに舌打ちをかまして肝試しは開始された。
「魚住、大丈夫か?」
「大丈夫だったら、足がこんなに震えてないっての……」
二番目に出発した私たちに待ち構えていたのは、地中から現れた小大さんだった。
「お」
と勝己と轟くんは驚いたのかもわからないような微妙な声を上げた。
「いぎゃあああああああああ」
反対に私は情けない叫び声をあげて二人にすがった。
おかげで足が生まれたての小鹿並みにプルプルだ。ついでに中間地点の突然現れたラグドールにもビビりちらして恐怖の臨界点を突破している。
「さっさと歩けや」
「なら爆豪が負ぶってやったらいいんじゃないか?」
「と、轟くん⁉」
急に何を言い出すんだ轟くんは……
「さ、さすがに勝己に負ぶってもらうのはアレだしさ……私もまだ歩けてるしね⁉」
「でも、魚住歩くのしんどいだろ。爆豪もさっさと終わらせたいんだし合理的、ってやつじゃないのか?」
「だったら俺じゃなくてもてめぇが負ぶってやりゃいいだろうが‼」
「ちょっと、勝己……」
こんなところで喧嘩をするべきではないってのに……
「別に俺が負ぶってもいいけど……魚住はいいか?」
「え、ええ~~?」
確かに負ぶってもらえれば、さっさと進めて勝己の機嫌はよくなる。けど、負ぶってもらうってのが中々につらい。片や好きな人。あと普通に轟くんに申し訳ない。
「いや、さすがに二人に悪いからだいじょう――」
『皆! 敵二名襲来‼ 他にも複数いる可能性アリ! 動ける者は直ちに施設‼ 会敵しても決して交戦せず撤退を‼』
ビビっとしてマンダレイのテレパスが脳に流れた。
「敵⁉」
「施設の場所って限られた人しか知らないんじゃなかった⁉」
森の中心が明るくなっていた。火の手が上がっていた。
「一体どうなって――」
森の中には脅かし役のB組の人たちがたくさんいる。一体、どうなっているんだ。
「奏、下がれ‼」
炎の煙ではない何かが揺蕩ってきた。勝己に首根っこを掴まれて下がらせられた。
「なにこれ……」
勝己の掌で口と鼻を覆われた。
「ガス⁉」
むごごと音を出すと勝己が頷いた。
「魚住、来てくれ! 円場が!」
B組の円場くんが倒れていたのを轟くんが見つけてきてくれた。
「どうだ」
「気を失ってるだけ……でもこのガスを吸ってるんだと思う。できるだけ動かさないようにして施設に連れて行こう」
「ああ」
「爆豪君、包丁使うのうま! 意外やわ……」
「意外ってなんだコラ‼ 包丁に上手い下手なんざねぇだろ」
勝己が手際よく人参を切っていく。初めて見る人たちは驚いて勝己を見ては才能マンと呟く。
「魚住もうまいな。ジャガイモ……」
「ん、まぁ料理作ることはよくあるし……――轟くん、それは玉ねぎ剝きすぎだねぇ」
しゅるしゅるとジャガイモの皮をむく私の手元を見て轟くんが言った。
轟くんの手元の玉ねぎは随分と小さい。剥きすぎている。
「わりぃ」
「大丈夫、使えるから。……私が玉ねぎ切っとくね」
「すまねぇ」
玉ねぎを剝きすぎた轟くんには、玉ねぎを切らせる作業はよくない。多分涙がボロボロと出てしまうだろう。
右側で軽く冷やしてもらった玉ねぎを切りながら轟くんと話す。
「そういや、晩飯の後は肝試しをやるんだってな」
肝試し、その一言に誤って指を切りそうになった。
「え……?」
「あ、そうかお前いなかったか。クラスごとに脅かし役と脅かされ役やる肝試し……」
「ま……聞いてねぇ……」
トトトと包丁を動かすペースを早くする。やばい、冷や汗が出る。
足は少しガクガクするし、手元も誤りそうになる。どうしよう、どうやって乗り越えよう。
魚住奏、十六歳。苦手な夏のイベントは肝試し。
腹もふくれて皿も洗い終えた。
さて、今夜の行事は……
「肝を試す時間だ‼‼」
肝試しはA組、B組とに分かれたクラス対抗。先にB組が脅かす側に回る。
私たちA組は二人一組で三分おきに出発。お札を貰って帰ってくるのがミッション。所要時間は大体十五分くらい。プッシーキャッツが所有している森の中を歩く。
今回、補習組は相澤先生と一緒に補習授業。賑やかし組がごっそりと抜けることになってしまった。
「二十一人いて補習が五人だから……アレ?」
「ん? 一人いないな」
余ることなく二人組になるハズが出久があぶれた。
「……奏ちゃん」
「げっ」
気配を消して隠れているのに出久が声をかけてきやがった。
「爆豪の後ろに隠れてたのか」
勝己とペアになった轟くんが私を覗き込んだ。
「おい、手ェ離せ」
「イヤだ。ムリ」
ガクガクと震えながら勝己のTシャツを掴んでいた。
「奏ちゃんめちゃくちゃ震えてるじゃん!」
「昔に何かあった? トラウマとか?」
心配そうに透ちゃんと耳郎ちゃんがこちらへとやってくる。耳郎ちゃんも確か肝を試す系は苦手だったんだっけか。
「トラウマ……アッまさか……!」
「ふっ……それは、小学校に入るか入らないか――むしろ、個性が発現するかしないか、そんな昔の頃だった……」
「急に語り出した」
あれは――近所の同年代の子……もちろん勝己や出久も含んだ友達と近所の森へ肝試しに行ったんだ。そう、今回みたいに二人一組で行くことになって、私のペアは出久だった。でも、肝試しの夜、出久は来なかった。私一人で森を歩いて行ったんだけど、道中の記憶は全くなかった。残っていたのは、暗闇の恐ろしさとゴールに着いた途端勝己に泣きついたことだけだった。
「あれのことか」
「奏ちゃん、それについては……お母さんにバレちゃって……」
「それでも私は忘れんぞ、出久ぅぅぅ‼‼」
ギャっと叫んで出久に噛みついた。多分出久がいればあんなことにはならなかったはずだ。
私が肝試しに恐怖を感じることになるなんてなかったはずなのに。
「人格変わってるし……」
「やめろ、服引っ張るな」
「んー……意地でも離れるつもりはなさそうね……」
勝己のTシャツのみならず、轟くんの服の端も掴んだ私を見てマンダレイが悩んだ。
「仕方ないわ。埒が明かないし、三人で行ってもらおうか。緑谷君は悪いけど一人ね」
「チッ」
勝己が隠そうともせずに舌打ちをかまして肝試しは開始された。
「魚住、大丈夫か?」
「大丈夫だったら、足がこんなに震えてないっての……」
二番目に出発した私たちに待ち構えていたのは、地中から現れた小大さんだった。
「お」
と勝己と轟くんは驚いたのかもわからないような微妙な声を上げた。
「いぎゃあああああああああ」
反対に私は情けない叫び声をあげて二人にすがった。
おかげで足が生まれたての小鹿並みにプルプルだ。ついでに中間地点の突然現れたラグドールにもビビりちらして恐怖の臨界点を突破している。
「さっさと歩けや」
「なら爆豪が負ぶってやったらいいんじゃないか?」
「と、轟くん⁉」
急に何を言い出すんだ轟くんは……
「さ、さすがに勝己に負ぶってもらうのはアレだしさ……私もまだ歩けてるしね⁉」
「でも、魚住歩くのしんどいだろ。爆豪もさっさと終わらせたいんだし合理的、ってやつじゃないのか?」
「だったら俺じゃなくてもてめぇが負ぶってやりゃいいだろうが‼」
「ちょっと、勝己……」
こんなところで喧嘩をするべきではないってのに……
「別に俺が負ぶってもいいけど……魚住はいいか?」
「え、ええ~~?」
確かに負ぶってもらえれば、さっさと進めて勝己の機嫌はよくなる。けど、負ぶってもらうってのが中々につらい。片や好きな人。あと普通に轟くんに申し訳ない。
「いや、さすがに二人に悪いからだいじょう――」
『皆! 敵二名襲来‼ 他にも複数いる可能性アリ! 動ける者は直ちに施設‼ 会敵しても決して交戦せず撤退を‼』
ビビっとしてマンダレイのテレパスが脳に流れた。
「敵⁉」
「施設の場所って限られた人しか知らないんじゃなかった⁉」
森の中心が明るくなっていた。火の手が上がっていた。
「一体どうなって――」
森の中には脅かし役のB組の人たちがたくさんいる。一体、どうなっているんだ。
「奏、下がれ‼」
炎の煙ではない何かが揺蕩ってきた。勝己に首根っこを掴まれて下がらせられた。
「なにこれ……」
勝己の掌で口と鼻を覆われた。
「ガス⁉」
むごごと音を出すと勝己が頷いた。
「魚住、来てくれ! 円場が!」
B組の円場くんが倒れていたのを轟くんが見つけてきてくれた。
「どうだ」
「気を失ってるだけ……でもこのガスを吸ってるんだと思う。できるだけ動かさないようにして施設に連れて行こう」
「ああ」