爆豪勝己:オリジン
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「街への被害などクソくらえだ」
何だ……
「試験だなんだと考えてると痛い目見るぞ。私は敵だ。ヒーローよ、真心こめてかかってこい」
何なんだよ……この……威圧感‼
作戦も何もない状態での正面戦闘……絶対にマズイ。
「正面戦闘はマズイ、逃げよう‼」
「うん!」
出久の声に答えたのは、私だけだった。
「俺に指図すんな‼」
「かっちゃん‼」
勝己はオールマイトの前に飛び出していく。
「オールマイト‼ 言われねぇでもハナから――そぉつぉぃあよ」
「あイタたたたたたたた」
顔を掴まれた状態で多少威力は下がっていると言っても、勝己の攻撃が一切効いていない。正攻法じゃ、平和の象徴は倒せない。
一体、どうすれば…
「君も君だ、緑谷少年!」
「うわ‼」
背後に回り込まれた出久が後ろへ飛び退く。
「チームを置いて逃げるのかい⁉」
「出久、まずは勝己引っ張ってここから離脱! 一回立て直そう……」
「うんうん、魚住少女は妥当な判断だ! ――しかし、緑谷少年とだけ連携を取っても……それは逃げだぞ」
くっそ……わかってる、わかってるのに……!
「おっとそいつは……よくない」
「出久、後ろ‼」
「バッどけ‼」
「かっちゃ……」
空中で勝己と出久がぶつかる。連携が取れていない証拠だ。
勝己は何が何でも打倒オールマイト。出久は逃げの一手。
オールマイトの位置取りから見ても、ステージを脱出するためには戦闘は絶対に避けられない。
ゲート前で戦闘をして逃げ切るか、ここで動きを封じるか……
私の歌なら動きを封じることができる。けど、今回はオールマイト相手。人魚にならなきゃダメだ。失敗すれば動けなくなる。
だからこそ、あの二人がちゃんと協力してもらわないとなのに。
「だから! 正面からぶつかって勝てるはずないだろ⁉」
「喋んな。勝つんだよ。それが……ヒーローなんだから」
『勝つヒーロー』……
小さい頃の記憶が蘇る。勝己はいつもオールマイトが勝つ姿をキラキラした目で見ていた。何度も何度も私に「かっけぇヒーロー」の話をしてくれていた。
「じゃあ尚更ここでの戦闘は……」
「放せ。触ん……」
「とりあえず」
上からオールマイトの声がした。
「逃げたい君にはこいつをプレゼントだ!」
ガードレールで出久の動きが封じられてしまった。
「かつ――」
ドフッ
重たい音を立てて勝己が殴り飛ばされる。
「勝己‼」
「魚住少女、忘れたのかい? 自分の個性は、敵に狙われるものだと……」
「っ‼」
オールマイトに抱えられる。人質にされた。
「奏ちゃん……かっちゃん……!」
そうだ……油断してた。先生を敵そのものと想定しないとだ。
ああ嫌だ、こういう時に思い知らされる……自分の個性。
「くそが‼‼」
「おっと、口が悪いぞ、魚住少女。――爆豪少年、わかるよ……緑谷少年の急成長だろ? でもさ、レベル一とレベル五十の成長速度が同じハズないだろう? もったいないんだ君は! わかるか⁉ わかってるんだろ⁉ 君だってまだいくらでも成長できるんだ! でもそれは力じゃない……」
勝己は周りを見ないでよく突っ走って行っちゃうよ。敵だって多い。
でも、どんな事だろうとアンタは絶対……勝者であろうとする‼
小さい頃、目を輝かせて憧れていたのは、どんなにピンチでも勝つ存在。
敵に狙われた私をいつも助けてくれた。
私が好きになった人は……
「黙れよオールマイト……‼ あのクソの力ぁ借りるくらいなら……負けた方がまだ……マシだ」
私が好きになった人は……‼‼
「……そっか。後悔はないようにな」
「っそが……‼」
オールマイトに捕まっていた。わずかな隙。偶然だった。
私の脚は考えるまでもなく動いていた。
それは出久もそうだった。
「負けた方がマシだなんて……アンタ/君が言わないでよ‼‼ /言うなよ‼‼」
負けた方がマシだなんて言う勝己を私も出久も見たくなかった。
私が勝己を蹴り上げたの、出久が勝己を殴ったの、ほぼ同時だった。
そうだよ、私が好きになった人は、『勝つヒーロー』なんだ。
殴り飛ばされた勝己を抱えて出久が戦線を離脱。
私も後を追いたい。
倒さなくていい。必要なのは、私がここから離れられる少しだけの時間。
『オールマイト、私を放せ』
もって数十秒。
緩んだ腕の隙間から抜け出す。抜け出すついでに脚で身体を押した。体勢が崩れるはずだ。
「むぅっ‼」
脱出成功だ!
「奏ちゃん、脱出できた?」
「ばっちり」
路地裏に入って出久たちと合流する。グッと親指を立ててやった。
「僕にはオールマイトに勝つ算段も逃げ切れる算段もとても思いつかないんだ」
「あ⁉」
「諦める前に僕を使うくらいしてみろよ! 負けていいなんて言わないでよ!」
「勝つのを諦めないのが……『かっちゃん』でしょ」
小さい頃に呼んでいたあだ名。いつしか呼ぶのをやめてしまったけど、『かっちゃん』は私にとって一番カッコイイヒーローだ。
私に何度も話してくれた。一番凄いヒーローは最後に必ず勝つんだから。
「出久、策はあるの?」
「う~ん……」
「……ある」
「勝己!」
勝己が口を開いた。
「二度は言わねぇぞ、クソナード。あのバカみてぇなスピード相手じゃどう逃げ隠れしても戦闘はさけらんねぇ」
「でも……戦いになんてならないよ。あのオールマイト相手に……」
「てめぇ黙ってろぶっ飛ばすぞ! 半端な威力じゃビクともしねぇのはさっきの連打でわかった……じゃあゼロ距離で最大威力だ。ダメージを与えつつ距離を取る唯一の手段――コレ使え」
勝己が差したのは、籠手。確か汗が貯蓄されて爆発させることができる仕組みが……
勝己の言わんとすることがわかった。
「……オールマイトの隙、私と勝己が取る。後ろから奇襲して一旦、注意を勝己に向ける。その後、私がオールマイトに攻撃されない場所で歌って、動きを止める。もって十数秒」
「そんな場所から声が届くの⁉」
「母さんの案でサポート会社に作ってもらったハイテクスピーカー。どっかの誰かみたいに耳栓しても直接私の歌が脳に届くようになってる。さっき人質まがいにされた時にオールマイトに細工してきた。バレてなけりゃ多分いける。んで、出久だ。爆破の軌道はオールマイトが最初に破壊した直線上。ゲートを背にして打て。爆破の衝撃でゲートに近づける。攻撃成功したら二人ともすぐ全速力。私もすぐ動くから」
「うん……!」
この位置が一番だ。
ギリギリバレないで歌えるし、ゲートからも一直線だ。
準備はできた。と二人に合図を送る。
「どこぉ見てんだあ⁉」
「! 背後だったか――……」
勝己がオールマイトの背後を取る。
『よっしゃ、戦意喪失……最大限‼』
脳に直接歌声が届いたオールマイトは動きを鈍らせる。
「デク‼ 撃て‼」
勝己は多分、死ぬほど嫌だったと思う。出久と協力するなんて本当に嫌だった。でも、『勝つ』のなら、今はその手を選ぶしかないのだ。
「ごめんなさいオールマイト‼」
特大火力が放たれた。これはきっと成功だ。
「奏‼ 急げ‼‼」
ゲートへ向かって全速力で走りだす。
勝己は私の前を走っていた。
「……! うん‼」
私の前を走る勝己の背中。
いつもの、『勝つヒーロー』の背中だ。
私のヒーローの背中だ。
何だ……
「試験だなんだと考えてると痛い目見るぞ。私は敵だ。ヒーローよ、真心こめてかかってこい」
何なんだよ……この……威圧感‼
作戦も何もない状態での正面戦闘……絶対にマズイ。
「正面戦闘はマズイ、逃げよう‼」
「うん!」
出久の声に答えたのは、私だけだった。
「俺に指図すんな‼」
「かっちゃん‼」
勝己はオールマイトの前に飛び出していく。
「オールマイト‼ 言われねぇでもハナから――そぉつぉぃあよ」
「あイタたたたたたたた」
顔を掴まれた状態で多少威力は下がっていると言っても、勝己の攻撃が一切効いていない。正攻法じゃ、平和の象徴は倒せない。
一体、どうすれば…
「君も君だ、緑谷少年!」
「うわ‼」
背後に回り込まれた出久が後ろへ飛び退く。
「チームを置いて逃げるのかい⁉」
「出久、まずは勝己引っ張ってここから離脱! 一回立て直そう……」
「うんうん、魚住少女は妥当な判断だ! ――しかし、緑谷少年とだけ連携を取っても……それは逃げだぞ」
くっそ……わかってる、わかってるのに……!
「おっとそいつは……よくない」
「出久、後ろ‼」
「バッどけ‼」
「かっちゃ……」
空中で勝己と出久がぶつかる。連携が取れていない証拠だ。
勝己は何が何でも打倒オールマイト。出久は逃げの一手。
オールマイトの位置取りから見ても、ステージを脱出するためには戦闘は絶対に避けられない。
ゲート前で戦闘をして逃げ切るか、ここで動きを封じるか……
私の歌なら動きを封じることができる。けど、今回はオールマイト相手。人魚にならなきゃダメだ。失敗すれば動けなくなる。
だからこそ、あの二人がちゃんと協力してもらわないとなのに。
「だから! 正面からぶつかって勝てるはずないだろ⁉」
「喋んな。勝つんだよ。それが……ヒーローなんだから」
『勝つヒーロー』……
小さい頃の記憶が蘇る。勝己はいつもオールマイトが勝つ姿をキラキラした目で見ていた。何度も何度も私に「かっけぇヒーロー」の話をしてくれていた。
「じゃあ尚更ここでの戦闘は……」
「放せ。触ん……」
「とりあえず」
上からオールマイトの声がした。
「逃げたい君にはこいつをプレゼントだ!」
ガードレールで出久の動きが封じられてしまった。
「かつ――」
ドフッ
重たい音を立てて勝己が殴り飛ばされる。
「勝己‼」
「魚住少女、忘れたのかい? 自分の個性は、敵に狙われるものだと……」
「っ‼」
オールマイトに抱えられる。人質にされた。
「奏ちゃん……かっちゃん……!」
そうだ……油断してた。先生を敵そのものと想定しないとだ。
ああ嫌だ、こういう時に思い知らされる……自分の個性。
「くそが‼‼」
「おっと、口が悪いぞ、魚住少女。――爆豪少年、わかるよ……緑谷少年の急成長だろ? でもさ、レベル一とレベル五十の成長速度が同じハズないだろう? もったいないんだ君は! わかるか⁉ わかってるんだろ⁉ 君だってまだいくらでも成長できるんだ! でもそれは力じゃない……」
勝己は周りを見ないでよく突っ走って行っちゃうよ。敵だって多い。
でも、どんな事だろうとアンタは絶対……勝者であろうとする‼
小さい頃、目を輝かせて憧れていたのは、どんなにピンチでも勝つ存在。
敵に狙われた私をいつも助けてくれた。
私が好きになった人は……
「黙れよオールマイト……‼ あのクソの力ぁ借りるくらいなら……負けた方がまだ……マシだ」
私が好きになった人は……‼‼
「……そっか。後悔はないようにな」
「っそが……‼」
オールマイトに捕まっていた。わずかな隙。偶然だった。
私の脚は考えるまでもなく動いていた。
それは出久もそうだった。
「負けた方がマシだなんて……アンタ/君が言わないでよ‼‼ /言うなよ‼‼」
負けた方がマシだなんて言う勝己を私も出久も見たくなかった。
私が勝己を蹴り上げたの、出久が勝己を殴ったの、ほぼ同時だった。
そうだよ、私が好きになった人は、『勝つヒーロー』なんだ。
殴り飛ばされた勝己を抱えて出久が戦線を離脱。
私も後を追いたい。
倒さなくていい。必要なのは、私がここから離れられる少しだけの時間。
『オールマイト、私を放せ』
もって数十秒。
緩んだ腕の隙間から抜け出す。抜け出すついでに脚で身体を押した。体勢が崩れるはずだ。
「むぅっ‼」
脱出成功だ!
「奏ちゃん、脱出できた?」
「ばっちり」
路地裏に入って出久たちと合流する。グッと親指を立ててやった。
「僕にはオールマイトに勝つ算段も逃げ切れる算段もとても思いつかないんだ」
「あ⁉」
「諦める前に僕を使うくらいしてみろよ! 負けていいなんて言わないでよ!」
「勝つのを諦めないのが……『かっちゃん』でしょ」
小さい頃に呼んでいたあだ名。いつしか呼ぶのをやめてしまったけど、『かっちゃん』は私にとって一番カッコイイヒーローだ。
私に何度も話してくれた。一番凄いヒーローは最後に必ず勝つんだから。
「出久、策はあるの?」
「う~ん……」
「……ある」
「勝己!」
勝己が口を開いた。
「二度は言わねぇぞ、クソナード。あのバカみてぇなスピード相手じゃどう逃げ隠れしても戦闘はさけらんねぇ」
「でも……戦いになんてならないよ。あのオールマイト相手に……」
「てめぇ黙ってろぶっ飛ばすぞ! 半端な威力じゃビクともしねぇのはさっきの連打でわかった……じゃあゼロ距離で最大威力だ。ダメージを与えつつ距離を取る唯一の手段――コレ使え」
勝己が差したのは、籠手。確か汗が貯蓄されて爆発させることができる仕組みが……
勝己の言わんとすることがわかった。
「……オールマイトの隙、私と勝己が取る。後ろから奇襲して一旦、注意を勝己に向ける。その後、私がオールマイトに攻撃されない場所で歌って、動きを止める。もって十数秒」
「そんな場所から声が届くの⁉」
「母さんの案でサポート会社に作ってもらったハイテクスピーカー。どっかの誰かみたいに耳栓しても直接私の歌が脳に届くようになってる。さっき人質まがいにされた時にオールマイトに細工してきた。バレてなけりゃ多分いける。んで、出久だ。爆破の軌道はオールマイトが最初に破壊した直線上。ゲートを背にして打て。爆破の衝撃でゲートに近づける。攻撃成功したら二人ともすぐ全速力。私もすぐ動くから」
「うん……!」
この位置が一番だ。
ギリギリバレないで歌えるし、ゲートからも一直線だ。
準備はできた。と二人に合図を送る。
「どこぉ見てんだあ⁉」
「! 背後だったか――……」
勝己がオールマイトの背後を取る。
『よっしゃ、戦意喪失……最大限‼』
脳に直接歌声が届いたオールマイトは動きを鈍らせる。
「デク‼ 撃て‼」
勝己は多分、死ぬほど嫌だったと思う。出久と協力するなんて本当に嫌だった。でも、『勝つ』のなら、今はその手を選ぶしかないのだ。
「ごめんなさいオールマイト‼」
特大火力が放たれた。これはきっと成功だ。
「奏‼ 急げ‼‼」
ゲートへ向かって全速力で走りだす。
勝己は私の前を走っていた。
「……! うん‼」
私の前を走る勝己の背中。
いつもの、『勝つヒーロー』の背中だ。
私のヒーローの背中だ。