職場体験
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翌日、どの新聞も一面を飾ったのは、保須でのヒーロー殺しの事件だった。
ヒーロー殺しはエンデヴァーによって確保。あろうことか、敵連合との繋がりも判明した。
また、メッセージで出久に吐かせたところ、その事件は、飯田くんや轟くんも関わったらしい。怪我を負ったと言っていた。
「奏、今日は私保須の方に行く用事があるの。ちょっとついて来てもらっていい?」
母が車を出して保須へと向かうことになった。
「少し時間に余裕ができるから、出久くんたちのお見舞いに行ってもいいわよ」
「あ、ありがとう。お母さん」
「――でもね、奏の血による治癒は個性による医療行為。緊急事態を除けば、ヒーロー免許が必要になる。仮免取れてない貴方が今やればそれは違法になる。お見舞いは許すけど、血を使うことは許可しないわよ」
「……わかりました」
私の個性を役立たせる……人を助けるためにはやっぱり強くならなくちゃだ。
「出久くん、また腕壊したの?」
「あ、いや、出久はいつもみたいに腕壊したわけではなくて……飯田くんが両腕やられたって」
「あら、出久くんが腕壊さずに済むなんてすごいわねー。個性の使い方に慣れてきたのかしら?」
「今の歳なら使いこなせて当たり前だけどね」
そう言えば、なんで増強型の個性なんだろうな、出久……
おじさんは火ぃ吹くので、おばさんは物を引き寄せる…突然変異?というものなんだろうか?
「そうそう、勝己くんは職場体験どこに行ったの?」
「……ベストジーニストのところ。多分」
勝己から職場体験先を直接聞くことはなかった。切島くん経由で知ったものだ。
「トップヒーローの所いったのね。奏、もう少しで着くから出久くんに電話しておきなさい」
「はーい」
高校に入学してから交換した出久の番号に電話を掛ける。何度もコールが鳴って、アナウンスが流れた。
『おかけになった電話は現在話し中です……』
「電話だめだ……メールしとこ」
「奏、着いたわよ。私の用事が終わったら電話するから」
「はい」
道中に購入した焼き菓子を片手に受付へ向かった。
「緑谷出久の見舞いに来ました」
「○○○号室です」
受付の看護師さんに案内されて病室へ向かう。飯田くん達と同じ病室だそうだ。
「おじゃましまーす」
「奏ちゃん⁉」
病室に入ると出久が驚いた声を出して振り返った。
「出久、お見舞いに行くってメール送っておいたんだよ」
「へえっ⁉ ……あ、ホントだ」
「魚住、どうしてここまで……」
「職場体験先の事務所の社長……うちの母親がこっちに用事があるってことで連れて来られたの。三人とも怪我は大丈夫なの?」
飯田くんは両腕包帯グルグルか……
「僕や轟くんは大丈夫なんだけど……」
「左手、後遺症が残るそうだ」
飯田くんの左腕。腕神経叢という場所がやられたそうだ。と言っても、手指の動かし辛さと多少の痺れくらいで、神経移植をすれば、治る可能性もあるらしい。
「そっか……私はまだ自分の個性で医療行為をすることができないんだよね。だから飯田くんの腕治せないのが悔しいや」
「奏ちゃん……」
私の血は不死の為にあるんじゃない。人を治す為にある。人の役に立てるようになりたいな。
「それにしても、かなり無理したね」
飯田くんならこんなに怪我するようなことしないと思っていた。
「ヒーロー殺しを見つけたとき、何も考えられなくなった。マニュアルさんにまず伝えるべきだった。奴は憎いが…奴の言葉は真実だった。だから、俺が本当のヒーローになるまで、この左手は残そうと思う」
詳しいことは結局出久から聞かなかった。けど、これまでの飯田くんの様子からしてヒーロー殺しと因縁のようなものがあったんだろう。
「……飯田くん、僕も……同じだ。一緒に強く……なろうね」
「出久……」
体育祭の怪我で傷跡の残った出久の手。飯田くんと通じる部分があったんだろうな。
「……なんか……わりぃ……」
轟くんが申し訳なさそうに呟いた。
「何が……」
「俺が関わると…手がダメになるみてぇな……感じに……なってる……」
そうか、出久の手の怪我は体育祭で轟くんと戦った時のやつだったっけ。
「あっははははははは何を言っているんだ!」
「轟くんも冗談言ったりするんだね」
「いや、冗談じゃねえ。ハンドクラッシャー的存在に……」
「ハンドクラッシャーーーー‼‼ あはははは‼ 轟くんて面白いね‼」
「笑うな」
「いやだって、体育祭の時の轟くんと比べると……」
ちょっと前まであった重々しい雰囲気を背負った轟くん。ハンドクラッシャーとか言ってしまう轟くん。丸くなったなぁ。
「奏ちゃんの職場体験はどう?」
「……CDが出る」
「CD⁉」
「事務所でシングル出す人がいて……そのカップリング曲をね、私が歌うことにね。これデモ」
鞄に入れてあったデモ曲を出久に渡す。スピーカーから流れる曲を三人が黙って聴いた。私の声じゃないけどとても恥ずかしい。
「買わねばならないな‼」
「俺も買う」
「恥ずかしいから買わんといて……」
出久の顔が私の恋愛感情描いてるねって顔してるからなおさら恥ずかしいんだよなぁ。
「そう言えばさ、翼の生えた脳無が僕を攫おうとして……」
「あ、その脳無テレビで見たよ。私さー、あの脳無の翼、どこかで見たことあるような気がするんだよね……」
兄ちゃんも覚えがある感じだったし、気になって仕方がない。
「僕も……なんか初めて見た感覚がないんだ。多分、昔見たことがあるのかも……」
「出久もか……羽……翼……あ」
もしかして……
「奏ちゃん何か思い出した?」
「出久……ツバサくんて覚えてる?」
「あ……」
出久も思い出したか。
ツバサくん……昔に勝己たちと一緒に遊んでいた子。小学校までは一緒で、中学は私と同じように違う中学に行った。
私らの住んでいる地域の病院の「ツバサ医院」の息子だったし、名門中学とかにでも行ったのかと思っていた。
まあ、切島くんとB組の人みたいに個性が似ていることだってあるんだけど、もしかしたら…と思ってしまう。
「そうだ、奏ちゃん。最近かっちゃんと一緒じゃないけど進展あった?」
「……それ、今聞く?」
出久とこの話をするのは体育祭以来か。
「ム、何かあったのかい?」
「……」
飯田くんはあの時試合中でいなかったのか。轟くんはあの後話したから知ってるんだよね……
「……いや、その実は……私、体育祭の時に勝己に……告白、しまして……その……返事がまだない、と言うか、何と言うか……」
グッと腕で顔を覆うように話す。多分顔が赤い。
「照れ方……緑谷に似てるな……」
「え? なんか言った? 轟くん。――そのお茶子ちゃんや梅雨ちゃんにも話してさ、押してダメなら引いてみろ作戦決行中で……あんまり喋んないようにしてる……体育祭の後からちょいちょい機嫌悪いから一緒に帰らなくなったし……」
「決勝で俺が手ぇ抜いちまったせいか」
「轟くんの所為じゃないから!勝己は自分が納得してないだけだから! ……出久ぅ~~私、このままでいいのかなぁ……」
出久に泣きついてしまった。不安が心を埋め尽くす。
勝己関連の弱音って出久にしか吐き出せない感じだ。
「だ、大丈夫、大丈夫だよ。かっちゃんはちゃんと奏ちゃんのこと見てる」
「……うん」
「自信持って! 奏ちゃん‼ 昔みたいに堂々とかっちゃんの横にいていいんだから‼」
出久は私よりもずっと長く勝己を見てきた。「見てきた」の意味は私とは全くの別物だけど、出久の言葉は信頼できる。
「……ありがと、出久」
ヒーロー殺しはエンデヴァーによって確保。あろうことか、敵連合との繋がりも判明した。
また、メッセージで出久に吐かせたところ、その事件は、飯田くんや轟くんも関わったらしい。怪我を負ったと言っていた。
「奏、今日は私保須の方に行く用事があるの。ちょっとついて来てもらっていい?」
母が車を出して保須へと向かうことになった。
「少し時間に余裕ができるから、出久くんたちのお見舞いに行ってもいいわよ」
「あ、ありがとう。お母さん」
「――でもね、奏の血による治癒は個性による医療行為。緊急事態を除けば、ヒーロー免許が必要になる。仮免取れてない貴方が今やればそれは違法になる。お見舞いは許すけど、血を使うことは許可しないわよ」
「……わかりました」
私の個性を役立たせる……人を助けるためにはやっぱり強くならなくちゃだ。
「出久くん、また腕壊したの?」
「あ、いや、出久はいつもみたいに腕壊したわけではなくて……飯田くんが両腕やられたって」
「あら、出久くんが腕壊さずに済むなんてすごいわねー。個性の使い方に慣れてきたのかしら?」
「今の歳なら使いこなせて当たり前だけどね」
そう言えば、なんで増強型の個性なんだろうな、出久……
おじさんは火ぃ吹くので、おばさんは物を引き寄せる…突然変異?というものなんだろうか?
「そうそう、勝己くんは職場体験どこに行ったの?」
「……ベストジーニストのところ。多分」
勝己から職場体験先を直接聞くことはなかった。切島くん経由で知ったものだ。
「トップヒーローの所いったのね。奏、もう少しで着くから出久くんに電話しておきなさい」
「はーい」
高校に入学してから交換した出久の番号に電話を掛ける。何度もコールが鳴って、アナウンスが流れた。
『おかけになった電話は現在話し中です……』
「電話だめだ……メールしとこ」
「奏、着いたわよ。私の用事が終わったら電話するから」
「はい」
道中に購入した焼き菓子を片手に受付へ向かった。
「緑谷出久の見舞いに来ました」
「○○○号室です」
受付の看護師さんに案内されて病室へ向かう。飯田くん達と同じ病室だそうだ。
「おじゃましまーす」
「奏ちゃん⁉」
病室に入ると出久が驚いた声を出して振り返った。
「出久、お見舞いに行くってメール送っておいたんだよ」
「へえっ⁉ ……あ、ホントだ」
「魚住、どうしてここまで……」
「職場体験先の事務所の社長……うちの母親がこっちに用事があるってことで連れて来られたの。三人とも怪我は大丈夫なの?」
飯田くんは両腕包帯グルグルか……
「僕や轟くんは大丈夫なんだけど……」
「左手、後遺症が残るそうだ」
飯田くんの左腕。腕神経叢という場所がやられたそうだ。と言っても、手指の動かし辛さと多少の痺れくらいで、神経移植をすれば、治る可能性もあるらしい。
「そっか……私はまだ自分の個性で医療行為をすることができないんだよね。だから飯田くんの腕治せないのが悔しいや」
「奏ちゃん……」
私の血は不死の為にあるんじゃない。人を治す為にある。人の役に立てるようになりたいな。
「それにしても、かなり無理したね」
飯田くんならこんなに怪我するようなことしないと思っていた。
「ヒーロー殺しを見つけたとき、何も考えられなくなった。マニュアルさんにまず伝えるべきだった。奴は憎いが…奴の言葉は真実だった。だから、俺が本当のヒーローになるまで、この左手は残そうと思う」
詳しいことは結局出久から聞かなかった。けど、これまでの飯田くんの様子からしてヒーロー殺しと因縁のようなものがあったんだろう。
「……飯田くん、僕も……同じだ。一緒に強く……なろうね」
「出久……」
体育祭の怪我で傷跡の残った出久の手。飯田くんと通じる部分があったんだろうな。
「……なんか……わりぃ……」
轟くんが申し訳なさそうに呟いた。
「何が……」
「俺が関わると…手がダメになるみてぇな……感じに……なってる……」
そうか、出久の手の怪我は体育祭で轟くんと戦った時のやつだったっけ。
「あっははははははは何を言っているんだ!」
「轟くんも冗談言ったりするんだね」
「いや、冗談じゃねえ。ハンドクラッシャー的存在に……」
「ハンドクラッシャーーーー‼‼ あはははは‼ 轟くんて面白いね‼」
「笑うな」
「いやだって、体育祭の時の轟くんと比べると……」
ちょっと前まであった重々しい雰囲気を背負った轟くん。ハンドクラッシャーとか言ってしまう轟くん。丸くなったなぁ。
「奏ちゃんの職場体験はどう?」
「……CDが出る」
「CD⁉」
「事務所でシングル出す人がいて……そのカップリング曲をね、私が歌うことにね。これデモ」
鞄に入れてあったデモ曲を出久に渡す。スピーカーから流れる曲を三人が黙って聴いた。私の声じゃないけどとても恥ずかしい。
「買わねばならないな‼」
「俺も買う」
「恥ずかしいから買わんといて……」
出久の顔が私の恋愛感情描いてるねって顔してるからなおさら恥ずかしいんだよなぁ。
「そう言えばさ、翼の生えた脳無が僕を攫おうとして……」
「あ、その脳無テレビで見たよ。私さー、あの脳無の翼、どこかで見たことあるような気がするんだよね……」
兄ちゃんも覚えがある感じだったし、気になって仕方がない。
「僕も……なんか初めて見た感覚がないんだ。多分、昔見たことがあるのかも……」
「出久もか……羽……翼……あ」
もしかして……
「奏ちゃん何か思い出した?」
「出久……ツバサくんて覚えてる?」
「あ……」
出久も思い出したか。
ツバサくん……昔に勝己たちと一緒に遊んでいた子。小学校までは一緒で、中学は私と同じように違う中学に行った。
私らの住んでいる地域の病院の「ツバサ医院」の息子だったし、名門中学とかにでも行ったのかと思っていた。
まあ、切島くんとB組の人みたいに個性が似ていることだってあるんだけど、もしかしたら…と思ってしまう。
「そうだ、奏ちゃん。最近かっちゃんと一緒じゃないけど進展あった?」
「……それ、今聞く?」
出久とこの話をするのは体育祭以来か。
「ム、何かあったのかい?」
「……」
飯田くんはあの時試合中でいなかったのか。轟くんはあの後話したから知ってるんだよね……
「……いや、その実は……私、体育祭の時に勝己に……告白、しまして……その……返事がまだない、と言うか、何と言うか……」
グッと腕で顔を覆うように話す。多分顔が赤い。
「照れ方……緑谷に似てるな……」
「え? なんか言った? 轟くん。――そのお茶子ちゃんや梅雨ちゃんにも話してさ、押してダメなら引いてみろ作戦決行中で……あんまり喋んないようにしてる……体育祭の後からちょいちょい機嫌悪いから一緒に帰らなくなったし……」
「決勝で俺が手ぇ抜いちまったせいか」
「轟くんの所為じゃないから!勝己は自分が納得してないだけだから! ……出久ぅ~~私、このままでいいのかなぁ……」
出久に泣きついてしまった。不安が心を埋め尽くす。
勝己関連の弱音って出久にしか吐き出せない感じだ。
「だ、大丈夫、大丈夫だよ。かっちゃんはちゃんと奏ちゃんのこと見てる」
「……うん」
「自信持って! 奏ちゃん‼ 昔みたいに堂々とかっちゃんの横にいていいんだから‼」
出久は私よりもずっと長く勝己を見てきた。「見てきた」の意味は私とは全くの別物だけど、出久の言葉は信頼できる。
「……ありがと、出久」