魚住:オリジン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
全身の鈍い痛み。節々の痛さが残る中、私は目を覚ました。
「……ここ、は…」
身体を起き上がらせることはできずに、そのままの体勢でキョロキョロと首を動かした。
「起きたかね」
私が眠っていたベッドの横にリカバリーガールが立っていた。
「ここは保健室だよ。外傷はほとんど治り始めているね。アンタ、個性上回復力が高いから動いても大丈夫だね」
シンリンカムイの形をしたペッツを出されて素直に食べる。
「……ありがとうございます」
ベッドから起き上がると、隣のベッドから声を掛けられた。
「奏ゃん……」
轟くんと戦ってボロボロになっていた出久が横たわっていた。
「出久……! だ、大丈夫なの⁉ その怪我……!」
「ま、まあ……それより奏ちゃん……髪……」
「ああ……」
出久の言葉で思い出す。勝己と戦って、燃えて、ボロボロになってしまったんだった。
至る所がボロボロで酷いものだ。
「――よし、切っちゃうか」
「ええええええええええ⁉⁉⁉」
驚いた声を出す出久。見た目のわりに随分と元気そうだ。
「い、いいの⁉ かっちゃんの為に伸ばしてたんじゃ……」
「ヒーローになる為に私情は……色恋は持ち込まない! それに、戦闘の時邪魔になっちゃうしさ。ほら、私近接格闘するタイプだし。リカバリーガールさん、髪、切ってもらえませんか?」
デスクに座っていたリカバリーガールに声をかける。私たちのやり取りを聞いていたようだ。
「別にいいが……上手くないよ」
「揃えてもらうだけで十分です」
「……わかった。そこに座りな」
「はい」
髪を切って…気持ち新たに私の夢の再出発だ。
「これくらいでいいかね?」
リカバリーガールに鏡を渡されて長さを確認する。
ちょうどいい長さだ。肩につかないで動く時に邪魔にならない。
「はい。ありがとうございました」
「奏ちゃん…いいの……? 本当に」
出久が深刻そうな顔で見てくる。
「いいの、いいの! すぐ伸びちゃうし! ――よし、ちょっくら宣戦布告してくるね」
「え⁉」
私の突然の言葉に出久がベッドの中でもがく。残念ながら私を止めることはできない。
「それ終わったらまた戻って来るからね~!」
まずは私の意思表示しなくちゃ!
次の試合までまだ余裕のある勝己はクラスの観覧席に座っていた。
「勝己‼」
観覧席の一番上で私は勝己に声をかけた。大きい声だったから観覧席にいたクラスの皆がこちらを振り向いた。
「え、うそ魚住⁉」
「髪切ったのか⁉」
「爆豪ちゃんの時にかなりボロボロになっていたものね」
私の様変わりした姿にみんな驚いていた。勝己はちょっといつもより目を見開いただけで表情には出していない。
「……んだよ」
「――轟くんが言った通り、私のやってることは恋愛ごっこかもしれない……ヒーローを志す人間が言うようなことじゃないけど……私は…私は勝己の事が好きだよ。昔から、ずっと」
「……んなこと知ってる」
「おい、ナチュラルに公開告白始めんのやめてくれ」
勝己のすぐ近くにいた上鳴くんがぼやいた。
「……さっき、勝己と戦ったとき……その感情が色々と邪魔してるのが痛いほどわかった。昔の事、ずっと引きずって…本気出せなかった。……だけど‼ 私は絶対にこの周りに迷惑をかけてしまう個性でもヒーローになるって決めたから! 強くなって、私の所為で誰かが傷つくことなんてないようにする! 守られてばかりじゃいられないから! 私は……私は勝己の隣で戦えるヒーローになる‼ 勝己への気持ちなくさないでも強くなるから! 勝己に振り向いてもらうまで諦めないんだかね! じゃあね‼」
言いたいことを言いきってその場を立ち去ろうとした。けど、勝己に呼び止められた。
「オイコラ待て‼」
「なに?」
「――……ほらよ」
振り返ると勝己に何かを投げてよこされた。
「何投げたんだ?」
私の手元を瀬呂くんがのぞき込んだ。
勝己が投げてよこしてきたのは、さっきの戦いでフィールドに捨てた髪留め。
勝己がくれた赤い髪留めだった。
「……今度、新しいのやる」
「……ありがと、勝己」
こういうことしてくるからずっと、好きなんだよなぁ。
保健室に戻る途中、やっぱりみんなから離れたところにいる轟くんを見かけた。
「……おや、轟くん」
「……⁉ 魚住、か」
私の髪に少し驚いていた。
「髪の毛切ったからわかんなかったな? ――轟くん、ありがとうね。自分の気持ちにけじめがつけられた」
「……そうか」
「轟くんはどうだったの? 出久と戦ってさ。左側使ったんでしょ?」
「少し……悩んでいる」
どこか憑き物が取れたような表情だ。出久が轟くんの変わるきっかけを作ったんだろう。
「――うん、思いっきり悩みなさいな、青少年。若いうちに悩んどけ、悩んどけ」
「魚住だって同い年だろ」
「……そこは置いておいてだね。――轟くんは左の個性も右の個性もどっちも轟くんのものだと私は思うよ。詳しい事情はわからないけど」
「……」
「そんじゃーね、試合頑張ってね」
「……魚住、その髪似合ってるな」
立ち去る直前に轟くんにそう言われた。
「あら、ありがとう」
「……ここ、は…」
身体を起き上がらせることはできずに、そのままの体勢でキョロキョロと首を動かした。
「起きたかね」
私が眠っていたベッドの横にリカバリーガールが立っていた。
「ここは保健室だよ。外傷はほとんど治り始めているね。アンタ、個性上回復力が高いから動いても大丈夫だね」
シンリンカムイの形をしたペッツを出されて素直に食べる。
「……ありがとうございます」
ベッドから起き上がると、隣のベッドから声を掛けられた。
「奏ゃん……」
轟くんと戦ってボロボロになっていた出久が横たわっていた。
「出久……! だ、大丈夫なの⁉ その怪我……!」
「ま、まあ……それより奏ちゃん……髪……」
「ああ……」
出久の言葉で思い出す。勝己と戦って、燃えて、ボロボロになってしまったんだった。
至る所がボロボロで酷いものだ。
「――よし、切っちゃうか」
「ええええええええええ⁉⁉⁉」
驚いた声を出す出久。見た目のわりに随分と元気そうだ。
「い、いいの⁉ かっちゃんの為に伸ばしてたんじゃ……」
「ヒーローになる為に私情は……色恋は持ち込まない! それに、戦闘の時邪魔になっちゃうしさ。ほら、私近接格闘するタイプだし。リカバリーガールさん、髪、切ってもらえませんか?」
デスクに座っていたリカバリーガールに声をかける。私たちのやり取りを聞いていたようだ。
「別にいいが……上手くないよ」
「揃えてもらうだけで十分です」
「……わかった。そこに座りな」
「はい」
髪を切って…気持ち新たに私の夢の再出発だ。
「これくらいでいいかね?」
リカバリーガールに鏡を渡されて長さを確認する。
ちょうどいい長さだ。肩につかないで動く時に邪魔にならない。
「はい。ありがとうございました」
「奏ちゃん…いいの……? 本当に」
出久が深刻そうな顔で見てくる。
「いいの、いいの! すぐ伸びちゃうし! ――よし、ちょっくら宣戦布告してくるね」
「え⁉」
私の突然の言葉に出久がベッドの中でもがく。残念ながら私を止めることはできない。
「それ終わったらまた戻って来るからね~!」
まずは私の意思表示しなくちゃ!
次の試合までまだ余裕のある勝己はクラスの観覧席に座っていた。
「勝己‼」
観覧席の一番上で私は勝己に声をかけた。大きい声だったから観覧席にいたクラスの皆がこちらを振り向いた。
「え、うそ魚住⁉」
「髪切ったのか⁉」
「爆豪ちゃんの時にかなりボロボロになっていたものね」
私の様変わりした姿にみんな驚いていた。勝己はちょっといつもより目を見開いただけで表情には出していない。
「……んだよ」
「――轟くんが言った通り、私のやってることは恋愛ごっこかもしれない……ヒーローを志す人間が言うようなことじゃないけど……私は…私は勝己の事が好きだよ。昔から、ずっと」
「……んなこと知ってる」
「おい、ナチュラルに公開告白始めんのやめてくれ」
勝己のすぐ近くにいた上鳴くんがぼやいた。
「……さっき、勝己と戦ったとき……その感情が色々と邪魔してるのが痛いほどわかった。昔の事、ずっと引きずって…本気出せなかった。……だけど‼ 私は絶対にこの周りに迷惑をかけてしまう個性でもヒーローになるって決めたから! 強くなって、私の所為で誰かが傷つくことなんてないようにする! 守られてばかりじゃいられないから! 私は……私は勝己の隣で戦えるヒーローになる‼ 勝己への気持ちなくさないでも強くなるから! 勝己に振り向いてもらうまで諦めないんだかね! じゃあね‼」
言いたいことを言いきってその場を立ち去ろうとした。けど、勝己に呼び止められた。
「オイコラ待て‼」
「なに?」
「――……ほらよ」
振り返ると勝己に何かを投げてよこされた。
「何投げたんだ?」
私の手元を瀬呂くんがのぞき込んだ。
勝己が投げてよこしてきたのは、さっきの戦いでフィールドに捨てた髪留め。
勝己がくれた赤い髪留めだった。
「……今度、新しいのやる」
「……ありがと、勝己」
こういうことしてくるからずっと、好きなんだよなぁ。
保健室に戻る途中、やっぱりみんなから離れたところにいる轟くんを見かけた。
「……おや、轟くん」
「……⁉ 魚住、か」
私の髪に少し驚いていた。
「髪の毛切ったからわかんなかったな? ――轟くん、ありがとうね。自分の気持ちにけじめがつけられた」
「……そうか」
「轟くんはどうだったの? 出久と戦ってさ。左側使ったんでしょ?」
「少し……悩んでいる」
どこか憑き物が取れたような表情だ。出久が轟くんの変わるきっかけを作ったんだろう。
「――うん、思いっきり悩みなさいな、青少年。若いうちに悩んどけ、悩んどけ」
「魚住だって同い年だろ」
「……そこは置いておいてだね。――轟くんは左の個性も右の個性もどっちも轟くんのものだと私は思うよ。詳しい事情はわからないけど」
「……」
「そんじゃーね、試合頑張ってね」
「……魚住、その髪似合ってるな」
立ち去る直前に轟くんにそう言われた。
「あら、ありがとう」