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かくて歯車は集う

「救い出す、とはまた、穏やかじゃないな」
 輝夜はそう言いつつも膝をつき、寝台に座る奏音と視線の高さを合わせようとする。真理亜に小突かれた聖也が慌てて室内にあった椅子を用意したので、礼の言葉と共に椅子に腰掛けた。
 その間に奏音は、風薫の同席をこのまま続けてもらうか、一旦席を外してもらうべきか考える。心情的には席を外してもらいたいが、中途半端な情報から更に独自の行動をされても厄介かと思った。なので、黙認することとして、輝夜が再度奏音の話を聴く体勢になるのを待った。
「待たせたな。さて、救い出すとは、璃音の妹だという、詩音のことか」
「ええ。詩音は今、囚われていて、その行方すら定かではないのです。私にできるのは、彼女と通信を続け、彼女の負担を少しでも減らして意識を繋ぎ止めておくことだけで。でも、それも私にしか今のところ、できていないから」
「それが璃音の言っていた、アナタを経由しないと届かないってこと?」
 口を挟んだ風薫を、奏音は肯定した。
「今は私も万全の状態ではないので、詩音も意識を埋没させているでしょうね。仕事が仕事なだけに行方は厳重に隠されているし、もし居場所が判ったとしても、簡単に迎えに行く訳にもいかなくて。天音兄さんは軽く奪還してくれば良いじゃんなんて言ってくださいますけど、璃音兄さんが気に病むと思います」
 ふむ、と輝夜は唸る。
「奏音が通信して手助けできる、大層な仕事か」
 奏音は申し訳なさそうな顔をした。何せ、今から明かすことは、特大の爆弾だ。
「風薫さんが来られる前に話していたことを、輝夜さまは何処まで覚えていらっしゃいますか」
「ザイオンサーバーのことだな。絡繰師に注目していて、意に沿わぬことには抵抗するが奏音には場所を与えた。そこまでは覚えているぞ」
 怪訝な顔で話題の転換に答えた輝夜の表情が固まった。そう、不思議な物言いだと、違和感があったのだ。この内容では、まるでザイオンサーバーが意思を持って生きているようではないかと。
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