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ドリームワールドオンライン

 ぽわん、と吐き出した煙が上っていく。見上げた空は何処までも青く、たなびく雲の合間に竜の群が見えた気がした。咥えていた煙管をくるりと一回転、袋にしまうまでもなく細やかなポリゴン片と化して送還されていく。だから背負い直したリュックに意味などない、ただのかっこつけだ。
「さて、行くかね」
 目的地など、特にない。行く当ても、勿論ない。時間の無駄かもしれない、けれど此処ではそれが許される。
 歩き出せば、ふわりと浮き上がって追ってくる、古ぼけた紙のような何か。覗き込めば、不完全な地図が見えることだろう。自分が足を運んだ場所のみを記した地図だ。今のところ、寄り道しながらもひたすら東へ歩いているだけなので、どんどん横長になってきている。
 嗚呼、今日も好い天気だ。下手な鼻歌が飛び出そうとした、ちょうどその時。
 一羽の鳥が、空から舞い降りた。
 鳥の脚に結びつけられていた紙のような何かを解くと、それは友の顔を映し出す。
『やあやあ。元気かい?』
「そうだね、概ね元気じゃないかな」
『お暇なら、お茶会来ないかなーと思って』
 お茶会……ね。
「わかった、そっち向かうよ」
『わぁい!』
 今日の散歩は、此処までとしよう。
「何分後が良い?」
『今すぐにでも!』
 どうやら、今日の友は相当暇を持て余しているようだ。
 地図に記された現在地を軽くタップし、前回分から上書きする。後は、行き慣れた友の家を思い浮かべれば、次の瞬間にはもうそこが目の前だ。
 扉をノックする、その前に扉の方から開かれる。
「やあ、いらっしゃい。相変わらずの荷物だねぇ」
「手ぶらなのは落ち着かないんだよ」
 とは言うものの、家の中では邪魔になるので、これも送還。
 友はそれを見て、笑った。
「いつ見ても便利だよねぇ、瞬間移動に荷物収納」
「まあ、此処ならではだよね」
 微妙にファンタジー、微妙にサイバーパンク。
 ここは、ドリームワールドオンライン。
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