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かくて明らかになる

 聖也が戻ってこないからと、輝夜の書斎ではアンジェの開く雑貨店の話に花が開いていた。聖也が抜ければ、その場にいるのは女性のみ。当たり障りのない内容ともなれば、話題は自ずと限られてくる。
 そのうち、白華がどことなくそわそわとし始めた。璃音から、もう少しで到着するという通信を受けたためだが、今は輝夜の書斎にいるため、出迎えることができない。
 それからまもなく。
 さっと顔色を変えた白華が、唇を戦慄かせる。そして輝夜の疑問の声や真理亜の制止を振り切って、書斎を飛び出した。
 長時間満足に歩けないはずの白華が、全力疾走して駆け込んだ先は、彼女に与えられていた客間。慌てて後に続いた女性二人が部屋を覗くと、そこには予想以上の人間が集まっていた。
 大きな網に捕らえられた堕天使、満面の笑顔の風薫、狼狽えている聖也。
「これだから、人間は!」
 悲鳴に乗せて叫ぶ少女に、翼持つ少年が強い視線を送る。
「来るなと言っただろう!」
「だから人間なんて、関わったってロクな事にならないって! そこの女は、どんなに外面だけ似てても、詩音じゃない」
 自分のことを言われたと悟った風薫が真顔になった。網に捕らえられた瞬間は抵抗しようとした堕天使。風薫の姿を認めた瞬間大人しくなったのには、何か理由があってのことだと今の会話が示していたからだ。
 罠の中の堕天使に縋り付いた白華は、何を思ったのか、下肢に巻いていた包帯を解きだした。
 そういえば、と輝夜は思う。白華の傷は、彼女自身が医療機関の診察を拒み続けていたこともあって、応急手当のみの状態だった。だが、それにしては不自然な点があったのだ。いつまでも、いつまでも同じように手当を続けている。それはまるで、傷が自然には治らないものであるかのような。
「馬鹿っ、よせ奏音!」
 カノン、と呼んだ堕天使に、呼ばれた少女は儚い笑顔を見せる。
 包帯の下から現れた傷に、誰もが息を呑んだ。
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