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堕天使

 布にくるまれ、ほぼ目隠し状態でレンコーされて、遠く遠く、来てしまった。もう、上が暗いのか暗くないのかもわからず、いつものようにシオンの待つ家へ帰られる気がしなくて、身体がふるりとした。
 ……シオンは、ちゃんとお薬をもらえたのだろうか。もう、ゼーゼーしていないかな。
 待っててね、シオン。リオンは、お金の分、ジッケンに付き合ってくる。
 ジッケンが終わったら直ぐに帰るから、だから、
「ふーん、このボロ布の塊が?」
 あれ、レンコーしてきたオジサンの声じゃない、もっと若いオニーサンの声。
 いきなり全身を覆っていた布を引っ張られて、いきなり何かされるのは割といつものことではあるけれど、目隠しは初めてだったから、またこけた。今日はよく引っ張られてこける。痛い。
 ぐいぐいと引っ張られて、目の前の布も取られているのか、周りが明るいなと思って、というかいきなりすぎて目が痛くて、ぎゅっと閉じた。
「うわぁ、ドロドロでガリガリなのは一万歩譲って目を瞑るとしても、ちっさ! これ、使いものにするの?」
 そっと目を開けたら、周りにはカケルにぃみたいにキレイでぴったりとした布をまとった人の群れ。上を見たら、ふさがっている。
 上の上がこんなに見えないなんて、シオンのお薬を出してくれるセンセーの家くらいだと思っていた。でも、センセーの家だって、こんなに広くはなかった。
 どうしよう、とんでもない場所にレンコーされてしまった。ここはどこ。どうやって帰ればいい。
 涙が出そうだけれど、ここで涙を見せると大抵、笑われるし蹴られるから、こらえる。
 人の群れの中でも若い、さっきの声のオニーサンが、リオンの目を見てニンマリとした。背中がぞわっとした。
「……ふうん? で、これの名前は?」
「こいつは璃音と言います」
 オジサンがカケルにぃみたいに話している。
「璃音?」
 オニーサンがリオンと言ったから、すごく身体がブルブルしそうなのをこらえて、一歩、近付いた。頑張って、オニーサンの顔を見上げる。
「リオンのこと呼んだ?」
 オニーサンが、プルプルした。
「くっ、これが胸キュンか……! 取り敢えず、璃音はお風呂に入るべきだ」
「オフロ?」
 知らない単語。
「オフロに入るジッケンをしたら、帰れるの?」
「ふうん」
 あ、オニーサン、またニンマリとした。背中がまた、ぞわぞわしてきた。
 オニーサンのニンマリ、イヤだな。
「取り敢えず、と言っただろう? まず璃音は身体をキレイにしてくれないと、実験もできやしない」
 オフロに入ると身体がキレイになるらしい。そして、リオンは汚いから、ジッケンもできないらしい。
 どうしよう、本当にとんでもない場所にレンコーされてしまった。リオンは、帰れるのだろうか。
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