爆豪勝己連載の番外編を置いていきます。
向日葵 番外編
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今日はなんだか頭がクラクラする。昨日学校帰りに雨に降られてしまい、傘がなかったために濡れながら帰ってしまったことが原因で風邪を引いてしまったのかもしれない。だけどもう少しで期末試験があるのに休んでなんてしまったら授業についていけなくなってしまって試験で赤点を取ってしまうかもしれない。だから学校を休むわけにはいかない。
「…なぁ、無居。お前今日顔色悪くないか?」
階段を登っていると心操君にそう声を掛けられた。
「え……そう、かな……」
「なんか赤いというか…足元も覚束ないし。保健室行くか?」
送るぞ、と言ってくれている心操君に大丈夫だよ、心配しないでと言いながら階段を登る。1段、2段と登っていたのだが、次の段に登ろうとした瞬間、足を踏み外してしまった。
周りの人達の叫び声や、焦った様に目を見開いて手を伸ばす心操君が、遠くに見える。地面へぶつかるのかな…ぶつかったら痛いかな…痛いのは嫌だな…と、なんだか意外と冷静な自分に驚きそうだ。そんなことを考えながら衝撃をまっていたらふわり、と突然宙に浮かぶような感覚と
「おい!何してんだテメェは!!」
という、聞き覚えのある声が耳に入って来たと同時に意識を手放した。
◇
小さい頃、転んで泣く度に勝己君がおんぶして私のことを家まで送り届けてくれた。その背中はとても温かくて、安心してしまって私はいつもうとうとしていた。そのたび勝己君は「風邪ひいても知らねーぞ」と呆れたように、でも優しくそう言っていた。その声を聞くと余計安心して、いつも眠ってしまってたっけ。
勝己君の背中は私の特等席だった。他の子たちは知らない、私だけが知っている特別な場所。
◇
揺ら揺らと心地の良い感覚がする。なんだか昔、こんな感覚をよく味わっていた気がする。すごく温かくて気持ちよくて、安心するこの感じ…。なんだっけこれ…。
「ん…?」
目を開くと、よく見知ったミルクティーカラーのツンツンとした髪が目に入ってきた。
「歌歩、起きたのか?」
そう言いながら勝己君が振り返って私の顔を見ている。勝己君におんぶされている様だ。
「勝己君…?私、どうして…」
「階段から落ちたんだよ。ったく、熱あんのに無理してんじゃねーよバカ。同じクラスの奴すげー焦ってたぞ。あんま心配かけんなよ」
同じクラスの…あぁ、心操君か。迷惑かけてしまったんだ。後で謝らないと。そしてふと思う。
「勝己君、学校は…?」
「早退した」
「え…」
「保健室で休ませても、全然熱下がらねーから帰った方がいいだろってバァさんとテメェんとこの担任が言ってたんだよ。けどばあちゃんに連絡しても繋がんなかったっつってたから俺が早退して今家まで送ってるとこだ。…荷物は後でデクが届けるってよ」
「うそ、ご、ごめ…」
「謝るくらいなら風邪引いてる時に無理すんじゃねぇよ」
そういう勝己君に、何も言い返せなくなって黙り込む。
「……帰ったらちゃんと飯食ってよく寝てとっとと風邪治せよ」
今日みたいに必ず助けてやれるとは限らねぇんだから、とぶっきらぼうにいう勝己君の言葉を聞きながらまた、眠気がやって来た。
子供の頃よりも大きくなった背中は、あの頃と変わらず温かくて気持ちいい…。
勝己君の背中は、いつも私を安心させてくれる。
◇
背中から寝息が聞こえ始めた。どうやらまた歌歩は眠ってしまったようだ。…風邪が悪化したらどうするんだよ。早く家まで送ってやらねーと。眠る歌歩を起こさないように気を付けながら早歩きで足を進める。
おぶってやると眠っちまうなんて、ガキの頃と変わらねーな。
『歌歩、勝己君におんぶしてもらうの大好き!勝己君の背中、あったかい…』
ガキの頃、何度も何度も言われた言葉を思い出す。そう言って笑うコイツの顔は、俺だけしか見ることの出来ない、俺だけの特権だった。他の奴には見せない、特別な笑顔。コイツの親も、俺の親も、デクも知らない、俺だけが知っている笑顔だった。
…いつかまた、その笑顔を見れる日が戻ってくるのだろうか。
「……歌歩。もっとガキの頃みたいに俺のことを頼れよ。無茶すんじゃねぇよ。そんなに俺は、頼りなく見えんのかよ」
眠っている歌歩に問うが当然返事は来ず、俺の声はその場に虚しく響き渡った。
「…なぁ、無居。お前今日顔色悪くないか?」
階段を登っていると心操君にそう声を掛けられた。
「え……そう、かな……」
「なんか赤いというか…足元も覚束ないし。保健室行くか?」
送るぞ、と言ってくれている心操君に大丈夫だよ、心配しないでと言いながら階段を登る。1段、2段と登っていたのだが、次の段に登ろうとした瞬間、足を踏み外してしまった。
周りの人達の叫び声や、焦った様に目を見開いて手を伸ばす心操君が、遠くに見える。地面へぶつかるのかな…ぶつかったら痛いかな…痛いのは嫌だな…と、なんだか意外と冷静な自分に驚きそうだ。そんなことを考えながら衝撃をまっていたらふわり、と突然宙に浮かぶような感覚と
「おい!何してんだテメェは!!」
という、聞き覚えのある声が耳に入って来たと同時に意識を手放した。
◇
小さい頃、転んで泣く度に勝己君がおんぶして私のことを家まで送り届けてくれた。その背中はとても温かくて、安心してしまって私はいつもうとうとしていた。そのたび勝己君は「風邪ひいても知らねーぞ」と呆れたように、でも優しくそう言っていた。その声を聞くと余計安心して、いつも眠ってしまってたっけ。
勝己君の背中は私の特等席だった。他の子たちは知らない、私だけが知っている特別な場所。
◇
揺ら揺らと心地の良い感覚がする。なんだか昔、こんな感覚をよく味わっていた気がする。すごく温かくて気持ちよくて、安心するこの感じ…。なんだっけこれ…。
「ん…?」
目を開くと、よく見知ったミルクティーカラーのツンツンとした髪が目に入ってきた。
「歌歩、起きたのか?」
そう言いながら勝己君が振り返って私の顔を見ている。勝己君におんぶされている様だ。
「勝己君…?私、どうして…」
「階段から落ちたんだよ。ったく、熱あんのに無理してんじゃねーよバカ。同じクラスの奴すげー焦ってたぞ。あんま心配かけんなよ」
同じクラスの…あぁ、心操君か。迷惑かけてしまったんだ。後で謝らないと。そしてふと思う。
「勝己君、学校は…?」
「早退した」
「え…」
「保健室で休ませても、全然熱下がらねーから帰った方がいいだろってバァさんとテメェんとこの担任が言ってたんだよ。けどばあちゃんに連絡しても繋がんなかったっつってたから俺が早退して今家まで送ってるとこだ。…荷物は後でデクが届けるってよ」
「うそ、ご、ごめ…」
「謝るくらいなら風邪引いてる時に無理すんじゃねぇよ」
そういう勝己君に、何も言い返せなくなって黙り込む。
「……帰ったらちゃんと飯食ってよく寝てとっとと風邪治せよ」
今日みたいに必ず助けてやれるとは限らねぇんだから、とぶっきらぼうにいう勝己君の言葉を聞きながらまた、眠気がやって来た。
子供の頃よりも大きくなった背中は、あの頃と変わらず温かくて気持ちいい…。
勝己君の背中は、いつも私を安心させてくれる。
◇
背中から寝息が聞こえ始めた。どうやらまた歌歩は眠ってしまったようだ。…風邪が悪化したらどうするんだよ。早く家まで送ってやらねーと。眠る歌歩を起こさないように気を付けながら早歩きで足を進める。
おぶってやると眠っちまうなんて、ガキの頃と変わらねーな。
『歌歩、勝己君におんぶしてもらうの大好き!勝己君の背中、あったかい…』
ガキの頃、何度も何度も言われた言葉を思い出す。そう言って笑うコイツの顔は、俺だけしか見ることの出来ない、俺だけの特権だった。他の奴には見せない、特別な笑顔。コイツの親も、俺の親も、デクも知らない、俺だけが知っている笑顔だった。
…いつかまた、その笑顔を見れる日が戻ってくるのだろうか。
「……歌歩。もっとガキの頃みたいに俺のことを頼れよ。無茶すんじゃねぇよ。そんなに俺は、頼りなく見えんのかよ」
眠っている歌歩に問うが当然返事は来ず、俺の声はその場に虚しく響き渡った。