向日葵
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『お兄ちゃん目の色真っ赤!勝己君とお揃いだ。いいなぁー』
鬱陶しいくらいに目をキラキラと輝かせながら、目の前にいるガキは俺を見つめはしゃいだ様子で言う。
『勝己君?』
『うん、勝己君!歌歩のね、お友達なの』
目の前のガキは嬉しそうに語り出す。
『勝己君ね、すごくすごーくかっこいいんだよ!お顔怖くて時々意地悪だけど』
キャッキャと続けるガキがうざったくて堪らない。なんなんだこのガキ。
『けどいつも、歌歩が困ってたりするとすぐに助けてくれるし守ってくれるの。だから歌歩、勝己君のことがだーい好きなの!』
キラキラと目を輝かせながら話すガキは、この世のありとあらゆる悪意というものと無縁に育っているのだろう。両親に愛され、友人に愛され、たくさんの愛情を注がれて育ったであろうこのガキは見ているだけで吐き気がしそうだ。
『今日お誕生日だからって言ってね、このお花の冠もくれたんだよ!そしたら出久君が歌歩ちゃんお姫様みたいでかわいいって褒めてくれたの!』
頭にのせてる花冠に大切そうに触れながらガキは何やら自慢話を始めた。
『そしたらパパも、歌歩は世界で1番可愛いお姫様だって言ってくれたのー!お姫様っていつも綺麗なドレス着れるんだよ。だからすっごく嬉しい!!歌歩はお姫様よりも勝己君のお嫁さんになれた方が嬉しいけど。………あっ!い、今の内緒だよ?内緒!』
『は?内緒?』
『うん!勝己君のお嫁さんになりたいって言う歌歩の夢!それは歌歩と出久君の内緒なの。だからお兄ちゃんも誰にも言わないでね!!』
焦ったように小さな指をしーっとさせながら言ってくる。鬱陶しい。
『誰にも言わねぇよ。つか興味もねぇ』
そう答えると
『ほんと?良かったぁ……ありがとう、お兄ちゃん!』
花が咲いたような笑顔でお礼を言って来た。そして
『やくそく!』
と言いながら自身の小指と俺の小指を絡ませ、
『ゆーびきーりげーんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った!』
と強制的に指切りげんまんをされた。……小さくて柔らかくて華奢で、少し力を入れて掴んだだけでも折れそうな手だ。手だけじゃねぇな。このガキ自体、俺が少し力を入れただけですぐにぶっ壊れそうだ。個性なんて使わなくても、跡形もなく壊せそうな気さえしてくる。……ぶっ壊してやりたいが、今この場でやったら先生に怒られる。だから我慢することにした。
——————その我慢も、もう少しで終わりだ。もう少しでぶっ壊してやるから。楽しみにしてろよ。歌歩ちゃん。
◇
息が、苦しい。首を圧迫されているような感覚に襲われて、飛び起きた。……辺りを見渡しても、誰もいない。ベッドから出て、鏡を確認する。首元を確認してみても、なんの跡もない。けど確かに、首を圧迫されるような感触と、絞められるような苦しさに襲われた。……あの時と、似てる……?マイク先生に病院へ連れて行ってもらった時に車の中で夢を視た時と……。あの、小さい男の子に名前を呼ばれて、首を絞められた夢を視た時と……。今日は、夢、視たっけ………?
『おにーちゃん目の色真っ赤!勝己君とお揃いだ。いいなぁー』
……勝己君と、お揃いの真っ赤な目をしたお兄さん……。あっそうだ、またあのお兄さんの夢を視たんだ。あの人は、誰……?
赤い2つの、勝己君と同じ色の目……。あの目、どこかで見た。でも、どこで……?もう少し…本当にもう少しで思い出せそうなのに、思い出せない……。まるで肝心なところで靄がかかってしまっているみたいだ……。
「あっ歌歩ちゃんもう起きてたんですね」
不意に扉を開く音と私のことを呼ぶ声が聞こえてきた。声の方に目を向けてみると
「おはよ~、自分で起きれて偉いね~」
そうにこにこと笑いながらトガヒミコが声をかけてきた。
「見て見て、このワンピース!すっごくかぁいいでしょ?絶対に歌歩ちゃんに似合うと思うんだ」
黒いリボンとレースのついた、グレーのワンピースを広げながら、嬉しそうに私の前までやって来た。後退りをしようとしたら、腕を掴まれて引き寄せられ、
「早速着せてあげるね!」
と無邪気に笑い、寝る前に着せられたパジャマを脱がされ、たった今持ってきたワンピースに着せ替えられた。
「思った通り!やっぱりこのワンピースもすっごく似合いますね」
はしゃいだように声を上げて、力一杯抱きしめられて苦しい。眉間に皺を寄せる私のことなんて気にも留めないみたいだ。
「あっそうだ。せっかくですし髪もアレンジしましょう!」
歌歩ちゃんの髪、結んでみたいな~ってずっと思ってたの!と言ったかと思うと、ドレッサーの前に座らされた。そしていつものように鼻歌を歌いながら私の髪をブラッシングし始めた。
「どんな風にしようかな~。ハーフアップも編み込みも、ツインテールも似合いそうなのです。迷っちゃうな~!」
と楽しそうに独り言を言うトガヒミコの様子をぼーっと眺めることしか出来ない。
◇
「歌歩ちゃんてほんとお人形さんみたいでかぁいい!!」
何着ても似合っちゃうからお洋服選びがとても楽しいのです、と弾んだ声で言われ、椅子から立たされて抱き締められる。やめて……なんて言っても聞いてもらえないから諦める。
「歌歩ちゃん最近私が持ってくるお洋服嫌がらずに着てくれるようになってすっごく嬉しい!」
そう言ってまた、無邪気に笑いきつく抱きしめられる。このまま窒息してしまうんじゃないかという気がしてくる。
「今日は何して遊びましょうねぇ。かくれんぼ…はこの部屋じゃ隠れる場所ないし。鬼ごっこ…はこの前やりましたし……」
せめて外に行けたらいいのになぁ~……そしたら遊ぶ選択肢も増えそうなのに……とため息を吐きながら考え込み始めた。少し、腕の力が緩んだ気がする。その隙に離れようとそっと身動きを取ろうとしたら、すかさず引き寄せられて、抱きこまれてそのまま床に座り込まれた。そのため膝の上に座らされて、さっきまで以上に密着されてしまった。もう1度抵抗を試みると、骨を砕かれそうな勢いで絞め上げられた。あまりの苦しさに諦めると、にっこりと笑って頭を撫でられた。
……どうして私は、この子にこんなに執着されてるの。ここまで執着されるようなことした記憶も、気に入られるようなことした記憶も、全くない。
「おままごと…なんてする年齢でもないですし…」
「何言ってんだ今更。ままごとならいつもしてんじゃねぇか」
不意にまた1つ、声が増えた。
「もしくは人形遊びか?いつもいつも楽しそうだよな、お気に入りのおもちゃ手に入れられて」
とケラケラ笑いながら荼毘が部屋に入ってきた。
「お気に入りのおもちゃ?何のことですか?」
トガヒミコがきょとんとしながら首を傾げて尋ねると
「そのガキ以外何があるんだよ」
連れて来てから毎日毎日飽きもせず服着せ替えたり髪弄ったりして遊んでんじゃねぇかと笑われると
「歌歩ちゃんはおもちゃじゃありません!私の大切なお友達です!!」
ムッとしたような顔で頬を膨らませ、私のことを抱き締めながら荼毘を睨んでいる。そんな様子に対して
「そうかよ。ま、お前がそう思ってるんだったらそう思っとけばいいんじゃねぇの」
ガキの方がどう思ってるかは知らねぇけどと言いながら、私のことを見てニヤッと笑う。思わず目を逸らしてしまった。
「もうっ!荼毘君意地悪!嫌ですねぇ~、こんなお兄さん」
そう言いながら私の頭を撫でてくる。
「ところで荼毘君はどうしてこの部屋へ来たんですか?いつもあんまり近寄らないのに」
ひょっとして一緒に遊びに来たの?とどこか嬉しそうに言うトガヒミコのことをすごく迷惑そうな顔で見つめながら
「んなワケねぇだろ、お前と一緒にすんな。今日はミーティングがあるって言われてただろ。早く来い」
呆れ気味な様子で言った。
「えぇー!せっかく歌歩ちゃんといっぱい遊べると思ったのに……」
頬を膨らませたまま拗ねるトガヒミコを見ると荼毘が舌打ちをし
「後にしろよ。時間なら腐るほどあるだろ」
とっとと準備しろと、不機嫌なのを隠そうともしていない。
「はいはい、わかりましたよもう……」
よいしょ、と立ち上がり私のことを抱き上げて、椅子に座らせて
「歌歩ちゃんごめんね!すぐに帰ってくるから、お利口さんにして待っててね」
そう言ってまた、いつも通り縛り付けられる。
「じゃあ、行ってきます!歌歩ちゃん、帰ってきたらすぐに解いてあげるからね!!」
そう言って笑いかけると、走りながら部屋を出て行った。
「ったく、やっと行ったか。呼びに来る前に行けっての」
という言葉と、溜息を吐く荼毘の声が部屋中に響いた。
「お前も可哀想にな、こんな悪趣味な部屋に閉じ込められて。毎日毎日毎日あのイカレ野郎の相手させられて」
俺だったら病んじまいそうだよと、ケラケラ笑いながら私の頭を撫でてからトガヒミコの後を追って行ってしまった。部屋に1人残されて、静寂に包みこまれると自分がこの世でたった1人ぼっちになってしまったんじゃないか。そんな錯覚に支配されてしまいそうだ。
また、椅子に縛り付けられて外から聴こえて来る鳥の鳴き声を聴いて過ごすだけの時間が始まるのかと絶望に吞み込まれそうになった瞬間、外から突然怒号と凄まじい物音が響いてきた。
「な、なに……?」
思わずそんな声を漏らすが、それにこたえてくれる人物は当然誰もいない。窓の外を見てみればいいんだろうけども、怖くて出来ない。その間にも、どんどん喧騒が大きくなっていく。何人もの人の叫び声や悲鳴や怒鳴り声、物音が複数聞こえて来て恐怖が増してくる。いったい今、何が起こってるって言うの……?
鬱陶しいくらいに目をキラキラと輝かせながら、目の前にいるガキは俺を見つめはしゃいだ様子で言う。
『勝己君?』
『うん、勝己君!歌歩のね、お友達なの』
目の前のガキは嬉しそうに語り出す。
『勝己君ね、すごくすごーくかっこいいんだよ!お顔怖くて時々意地悪だけど』
キャッキャと続けるガキがうざったくて堪らない。なんなんだこのガキ。
『けどいつも、歌歩が困ってたりするとすぐに助けてくれるし守ってくれるの。だから歌歩、勝己君のことがだーい好きなの!』
キラキラと目を輝かせながら話すガキは、この世のありとあらゆる悪意というものと無縁に育っているのだろう。両親に愛され、友人に愛され、たくさんの愛情を注がれて育ったであろうこのガキは見ているだけで吐き気がしそうだ。
『今日お誕生日だからって言ってね、このお花の冠もくれたんだよ!そしたら出久君が歌歩ちゃんお姫様みたいでかわいいって褒めてくれたの!』
頭にのせてる花冠に大切そうに触れながらガキは何やら自慢話を始めた。
『そしたらパパも、歌歩は世界で1番可愛いお姫様だって言ってくれたのー!お姫様っていつも綺麗なドレス着れるんだよ。だからすっごく嬉しい!!歌歩はお姫様よりも勝己君のお嫁さんになれた方が嬉しいけど。………あっ!い、今の内緒だよ?内緒!』
『は?内緒?』
『うん!勝己君のお嫁さんになりたいって言う歌歩の夢!それは歌歩と出久君の内緒なの。だからお兄ちゃんも誰にも言わないでね!!』
焦ったように小さな指をしーっとさせながら言ってくる。鬱陶しい。
『誰にも言わねぇよ。つか興味もねぇ』
そう答えると
『ほんと?良かったぁ……ありがとう、お兄ちゃん!』
花が咲いたような笑顔でお礼を言って来た。そして
『やくそく!』
と言いながら自身の小指と俺の小指を絡ませ、
『ゆーびきーりげーんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った!』
と強制的に指切りげんまんをされた。……小さくて柔らかくて華奢で、少し力を入れて掴んだだけでも折れそうな手だ。手だけじゃねぇな。このガキ自体、俺が少し力を入れただけですぐにぶっ壊れそうだ。個性なんて使わなくても、跡形もなく壊せそうな気さえしてくる。……ぶっ壊してやりたいが、今この場でやったら先生に怒られる。だから我慢することにした。
——————その我慢も、もう少しで終わりだ。もう少しでぶっ壊してやるから。楽しみにしてろよ。歌歩ちゃん。
◇
息が、苦しい。首を圧迫されているような感覚に襲われて、飛び起きた。……辺りを見渡しても、誰もいない。ベッドから出て、鏡を確認する。首元を確認してみても、なんの跡もない。けど確かに、首を圧迫されるような感触と、絞められるような苦しさに襲われた。……あの時と、似てる……?マイク先生に病院へ連れて行ってもらった時に車の中で夢を視た時と……。あの、小さい男の子に名前を呼ばれて、首を絞められた夢を視た時と……。今日は、夢、視たっけ………?
『おにーちゃん目の色真っ赤!勝己君とお揃いだ。いいなぁー』
……勝己君と、お揃いの真っ赤な目をしたお兄さん……。あっそうだ、またあのお兄さんの夢を視たんだ。あの人は、誰……?
赤い2つの、勝己君と同じ色の目……。あの目、どこかで見た。でも、どこで……?もう少し…本当にもう少しで思い出せそうなのに、思い出せない……。まるで肝心なところで靄がかかってしまっているみたいだ……。
「あっ歌歩ちゃんもう起きてたんですね」
不意に扉を開く音と私のことを呼ぶ声が聞こえてきた。声の方に目を向けてみると
「おはよ~、自分で起きれて偉いね~」
そうにこにこと笑いながらトガヒミコが声をかけてきた。
「見て見て、このワンピース!すっごくかぁいいでしょ?絶対に歌歩ちゃんに似合うと思うんだ」
黒いリボンとレースのついた、グレーのワンピースを広げながら、嬉しそうに私の前までやって来た。後退りをしようとしたら、腕を掴まれて引き寄せられ、
「早速着せてあげるね!」
と無邪気に笑い、寝る前に着せられたパジャマを脱がされ、たった今持ってきたワンピースに着せ替えられた。
「思った通り!やっぱりこのワンピースもすっごく似合いますね」
はしゃいだように声を上げて、力一杯抱きしめられて苦しい。眉間に皺を寄せる私のことなんて気にも留めないみたいだ。
「あっそうだ。せっかくですし髪もアレンジしましょう!」
歌歩ちゃんの髪、結んでみたいな~ってずっと思ってたの!と言ったかと思うと、ドレッサーの前に座らされた。そしていつものように鼻歌を歌いながら私の髪をブラッシングし始めた。
「どんな風にしようかな~。ハーフアップも編み込みも、ツインテールも似合いそうなのです。迷っちゃうな~!」
と楽しそうに独り言を言うトガヒミコの様子をぼーっと眺めることしか出来ない。
◇
「歌歩ちゃんてほんとお人形さんみたいでかぁいい!!」
何着ても似合っちゃうからお洋服選びがとても楽しいのです、と弾んだ声で言われ、椅子から立たされて抱き締められる。やめて……なんて言っても聞いてもらえないから諦める。
「歌歩ちゃん最近私が持ってくるお洋服嫌がらずに着てくれるようになってすっごく嬉しい!」
そう言ってまた、無邪気に笑いきつく抱きしめられる。このまま窒息してしまうんじゃないかという気がしてくる。
「今日は何して遊びましょうねぇ。かくれんぼ…はこの部屋じゃ隠れる場所ないし。鬼ごっこ…はこの前やりましたし……」
せめて外に行けたらいいのになぁ~……そしたら遊ぶ選択肢も増えそうなのに……とため息を吐きながら考え込み始めた。少し、腕の力が緩んだ気がする。その隙に離れようとそっと身動きを取ろうとしたら、すかさず引き寄せられて、抱きこまれてそのまま床に座り込まれた。そのため膝の上に座らされて、さっきまで以上に密着されてしまった。もう1度抵抗を試みると、骨を砕かれそうな勢いで絞め上げられた。あまりの苦しさに諦めると、にっこりと笑って頭を撫でられた。
……どうして私は、この子にこんなに執着されてるの。ここまで執着されるようなことした記憶も、気に入られるようなことした記憶も、全くない。
「おままごと…なんてする年齢でもないですし…」
「何言ってんだ今更。ままごとならいつもしてんじゃねぇか」
不意にまた1つ、声が増えた。
「もしくは人形遊びか?いつもいつも楽しそうだよな、お気に入りのおもちゃ手に入れられて」
とケラケラ笑いながら荼毘が部屋に入ってきた。
「お気に入りのおもちゃ?何のことですか?」
トガヒミコがきょとんとしながら首を傾げて尋ねると
「そのガキ以外何があるんだよ」
連れて来てから毎日毎日飽きもせず服着せ替えたり髪弄ったりして遊んでんじゃねぇかと笑われると
「歌歩ちゃんはおもちゃじゃありません!私の大切なお友達です!!」
ムッとしたような顔で頬を膨らませ、私のことを抱き締めながら荼毘を睨んでいる。そんな様子に対して
「そうかよ。ま、お前がそう思ってるんだったらそう思っとけばいいんじゃねぇの」
ガキの方がどう思ってるかは知らねぇけどと言いながら、私のことを見てニヤッと笑う。思わず目を逸らしてしまった。
「もうっ!荼毘君意地悪!嫌ですねぇ~、こんなお兄さん」
そう言いながら私の頭を撫でてくる。
「ところで荼毘君はどうしてこの部屋へ来たんですか?いつもあんまり近寄らないのに」
ひょっとして一緒に遊びに来たの?とどこか嬉しそうに言うトガヒミコのことをすごく迷惑そうな顔で見つめながら
「んなワケねぇだろ、お前と一緒にすんな。今日はミーティングがあるって言われてただろ。早く来い」
呆れ気味な様子で言った。
「えぇー!せっかく歌歩ちゃんといっぱい遊べると思ったのに……」
頬を膨らませたまま拗ねるトガヒミコを見ると荼毘が舌打ちをし
「後にしろよ。時間なら腐るほどあるだろ」
とっとと準備しろと、不機嫌なのを隠そうともしていない。
「はいはい、わかりましたよもう……」
よいしょ、と立ち上がり私のことを抱き上げて、椅子に座らせて
「歌歩ちゃんごめんね!すぐに帰ってくるから、お利口さんにして待っててね」
そう言ってまた、いつも通り縛り付けられる。
「じゃあ、行ってきます!歌歩ちゃん、帰ってきたらすぐに解いてあげるからね!!」
そう言って笑いかけると、走りながら部屋を出て行った。
「ったく、やっと行ったか。呼びに来る前に行けっての」
という言葉と、溜息を吐く荼毘の声が部屋中に響いた。
「お前も可哀想にな、こんな悪趣味な部屋に閉じ込められて。毎日毎日毎日あのイカレ野郎の相手させられて」
俺だったら病んじまいそうだよと、ケラケラ笑いながら私の頭を撫でてからトガヒミコの後を追って行ってしまった。部屋に1人残されて、静寂に包みこまれると自分がこの世でたった1人ぼっちになってしまったんじゃないか。そんな錯覚に支配されてしまいそうだ。
また、椅子に縛り付けられて外から聴こえて来る鳥の鳴き声を聴いて過ごすだけの時間が始まるのかと絶望に吞み込まれそうになった瞬間、外から突然怒号と凄まじい物音が響いてきた。
「な、なに……?」
思わずそんな声を漏らすが、それにこたえてくれる人物は当然誰もいない。窓の外を見てみればいいんだろうけども、怖くて出来ない。その間にも、どんどん喧騒が大きくなっていく。何人もの人の叫び声や悲鳴や怒鳴り声、物音が複数聞こえて来て恐怖が増してくる。いったい今、何が起こってるって言うの……?
