向日葵
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歌歩が退院してきた日の朝、
『体調も安定してきたらしくてな。無居の退院と入寮が今日に変更になった。女子はよかったら部屋の整理とか手伝ってやってくれ。それから退院についてなどあまり質問攻めとかはしないでやってくれ』
相澤先生の言葉を聞き、歌歩の身に何かあったのだろうということは、すぐに分かった。
当日いきなり退院日が変わるなんてどう考えても可笑しいだろ。何かあったに決まってんじゃねェか。
だが歌歩に何があったのか聞いてもアイツはまた、あの不細工な笑顔で大丈夫だと、何もなかったと抜かしやがった。ふざけんなよ。
何でいつも、いつもそうなんだよ。俺には訳も話せねぇってのかよ。クソが。
「かっちゃん…どこまで行くの?まずいよ、こんな時間に…!」
後ろを歩くデクの声が静寂の中響き渡るのを無視して歩き続ける。
恐らくコイツは退院前に歌歩の身に何が起きたのか知っている。なんでだ。コイツには訳話してんのに、どうして俺には何も話さねェンだ…!
『勝己君はいつも歌歩のこと守ってくれて助けてくれるから歌歩のヒーローだね!』
何で、だよ。俺はもう、お前のヒーローじゃねぇのかよ。
『勝己君だーいすき!!!』
もう、あの笑顔で俺にそう言ってくれねぇのかよ。
「ね、ねぇ!かっちゃん!!」
コイツが歌歩の一大事をわかっているのに何で。なんで俺は何もわかってねェンだよ。
なんで、なんで。なんでオールマイトも、歌歩も、俺じゃなくてコイツなんだ。
「かっちゃん!!!…って、ここ、グラウンドℬ…?」
目的地に着き立ち止まる俺に釣られるように立ち止まったデクが呟いた。
「………デク。テメェ、歌歩のことでなんか隠してんだろ」
そう問いかけると、目を見開き視線を泳がせた。
その反応でやはり何があったのか知っているんだと確信した。
「言え。何隠してやがる」
問い詰める俺から目を逸らし、
「……っ……ごめん、かっちゃん」
噛み締める様に、絞り出すようにして謝罪してきやがった。
「テメェ…」
謝罪なんか聞きたいんじゃねぇんだよ。
ガキの頃からいつもいつも後ろに張り付いてきやがって。どんなにぶちのめしてもそこにいやがって。ずっと気色悪かった。
ヘドロの時から…いや、オールマイトが街に来たあの日からどんどんどんどん登りつめてきやがって。マジで俺を追い抜いて行くみてぇな顔しやがって。
この雑魚がこんな強くなってんのに、成長してんのに、オールマイトに認められて個性まで貰ってやがるのに、仮免試験受かってんのに、歌歩の支えになってやることが出来てんのに。
なのに俺は、何にも出来てねェじゃねェか。それどころか、最高のヒーローである、憧れのヒーローのオールマイトを終わらせちまって。守りたいと思ってるやつのことは何にも守ってやれなくて。
何でだよ。可笑しいだろこんなの。
「俺と戦えや」
デクがなんだかごちゃごちゃと言っているがそんなの知ったことか。確かめるんだ。コイツの何がオールマイトにそうまでさせたのか。
どうしてコイツを、オールマイトと歌歩が選ぶのか。
戦えば、何かわかるかもしれない。
◇
「俺の…勝ちだ…」
なんでだよ。オールマイトの力、持ってるくせして、最高のヒーローに認められたくせして、何負けてんだこの野郎は。
なんでだよ。オールマイトの力持ってるくせに。歌歩に頼られてるくせに。なんで。
「なんでオールマイトも、歌歩も、テメェを選ぶんだ」
その呟きは、自分でもわかる位に弱々しいものだった。
そんな俺に対してデクは違うだの歌歩は俺のことを頼ってるだのなんだのと抜かしてやがる。
同情でもしてんのか?ふざけんな。
アイツが今も俺をヒーローだと思ってる?頼りにしてる?じゃあなんで俺に助けてって言わねェンだ。なんで俺に訳話さねェンだ。
俺がアイツにしてやったことはなんだ?無責任に出来もしねぇ約束しちまって無理することを癖にさせちまっただけだ。しかもアイツがヒデェ目に遭ってる時に、肝心な時に傍にいてやれねぇで。そんな奴のこと、頼る訳がねぇ。ヒーローだなんて思う訳がねぇ。なんで、こうなっちまったんだよ。誰よりも守りてぇのに。なんで守れねぇんだよ。
クソ雑魚だった、ただの石ころだったハズのデクがオールマイトに認められて。歌歩のこと守ってて。なのに、そのくせ、なんで、なに、俺に負けてやがるんだ…!
「そこまでにしよう、2人共」
沈黙の中、俺達以外の声が響いた。
「悪いが聞かせてもらったよ」
俺達の視界に、そう言いながら近づいて来ているオールマイトの姿が入って来た。
「気付いてやれなくて、ごめん」
…今更謝罪なんてされたところでどうしろっていうんだよ。
なんでデクだったんだ、ヘドロの時からだろ…と聞くと、デクのことを非力で誰よりもヒーローだったと評し、俺のことは元から強い男だと思ったからと、既に土俵に立つ俺ではなくてデクを土俵に立たせるべきだと判断したと語った。
「俺だって弱ェよ…。アンタみてぇな強ェ奴になろうって思ってきたのに!弱ェから…!!アンタをそんな姿に!!」
そう言う俺に対し、オールマイトは「これは君のせいじゃない。いずれもう限界だったんだ」というが、そう言われても納得出来る訳がない。
「爆豪少年、君は本当に、本当に強い男だ。君が強いから、君が守り抜いたからだから、無居少女は敵連合から救出されたんじゃないか」
「それはアンタや切島達が来たからなんとかなっただけで、俺はアイツのこと守れてもねぇし助けられてもねぇよ…。だからもう、昔みてぇに頼らねぇんだろ…」
口を開けば、情けない泣き言しか出て来ねェ。不甲斐ねぇ。
「そんなことないさ。君が無居少女のことを守り続けていたのは紛れもない事実じゃないか。…なんて、私が言ったところで君は納得しないだろうね。だから後は、直接本人に聞いてみるといいんじゃないかな。ね。君も、こっちへ来て話しをしないか?」
そう言ってオールマイトが振り返った先には
「歌歩…」
「歌歩ちゃん…」
物陰からそっと姿をのぞかせ、俯きながら立っている歌歩がいた。
『体調も安定してきたらしくてな。無居の退院と入寮が今日に変更になった。女子はよかったら部屋の整理とか手伝ってやってくれ。それから退院についてなどあまり質問攻めとかはしないでやってくれ』
相澤先生の言葉を聞き、歌歩の身に何かあったのだろうということは、すぐに分かった。
当日いきなり退院日が変わるなんてどう考えても可笑しいだろ。何かあったに決まってんじゃねェか。
だが歌歩に何があったのか聞いてもアイツはまた、あの不細工な笑顔で大丈夫だと、何もなかったと抜かしやがった。ふざけんなよ。
何でいつも、いつもそうなんだよ。俺には訳も話せねぇってのかよ。クソが。
「かっちゃん…どこまで行くの?まずいよ、こんな時間に…!」
後ろを歩くデクの声が静寂の中響き渡るのを無視して歩き続ける。
恐らくコイツは退院前に歌歩の身に何が起きたのか知っている。なんでだ。コイツには訳話してんのに、どうして俺には何も話さねェンだ…!
『勝己君はいつも歌歩のこと守ってくれて助けてくれるから歌歩のヒーローだね!』
何で、だよ。俺はもう、お前のヒーローじゃねぇのかよ。
『勝己君だーいすき!!!』
もう、あの笑顔で俺にそう言ってくれねぇのかよ。
「ね、ねぇ!かっちゃん!!」
コイツが歌歩の一大事をわかっているのに何で。なんで俺は何もわかってねェンだよ。
なんで、なんで。なんでオールマイトも、歌歩も、俺じゃなくてコイツなんだ。
「かっちゃん!!!…って、ここ、グラウンドℬ…?」
目的地に着き立ち止まる俺に釣られるように立ち止まったデクが呟いた。
「………デク。テメェ、歌歩のことでなんか隠してんだろ」
そう問いかけると、目を見開き視線を泳がせた。
その反応でやはり何があったのか知っているんだと確信した。
「言え。何隠してやがる」
問い詰める俺から目を逸らし、
「……っ……ごめん、かっちゃん」
噛み締める様に、絞り出すようにして謝罪してきやがった。
「テメェ…」
謝罪なんか聞きたいんじゃねぇんだよ。
ガキの頃からいつもいつも後ろに張り付いてきやがって。どんなにぶちのめしてもそこにいやがって。ずっと気色悪かった。
ヘドロの時から…いや、オールマイトが街に来たあの日からどんどんどんどん登りつめてきやがって。マジで俺を追い抜いて行くみてぇな顔しやがって。
この雑魚がこんな強くなってんのに、成長してんのに、オールマイトに認められて個性まで貰ってやがるのに、仮免試験受かってんのに、歌歩の支えになってやることが出来てんのに。
なのに俺は、何にも出来てねェじゃねェか。それどころか、最高のヒーローである、憧れのヒーローのオールマイトを終わらせちまって。守りたいと思ってるやつのことは何にも守ってやれなくて。
何でだよ。可笑しいだろこんなの。
「俺と戦えや」
デクがなんだかごちゃごちゃと言っているがそんなの知ったことか。確かめるんだ。コイツの何がオールマイトにそうまでさせたのか。
どうしてコイツを、オールマイトと歌歩が選ぶのか。
戦えば、何かわかるかもしれない。
◇
「俺の…勝ちだ…」
なんでだよ。オールマイトの力、持ってるくせして、最高のヒーローに認められたくせして、何負けてんだこの野郎は。
なんでだよ。オールマイトの力持ってるくせに。歌歩に頼られてるくせに。なんで。
「なんでオールマイトも、歌歩も、テメェを選ぶんだ」
その呟きは、自分でもわかる位に弱々しいものだった。
そんな俺に対してデクは違うだの歌歩は俺のことを頼ってるだのなんだのと抜かしてやがる。
同情でもしてんのか?ふざけんな。
アイツが今も俺をヒーローだと思ってる?頼りにしてる?じゃあなんで俺に助けてって言わねェンだ。なんで俺に訳話さねェンだ。
俺がアイツにしてやったことはなんだ?無責任に出来もしねぇ約束しちまって無理することを癖にさせちまっただけだ。しかもアイツがヒデェ目に遭ってる時に、肝心な時に傍にいてやれねぇで。そんな奴のこと、頼る訳がねぇ。ヒーローだなんて思う訳がねぇ。なんで、こうなっちまったんだよ。誰よりも守りてぇのに。なんで守れねぇんだよ。
クソ雑魚だった、ただの石ころだったハズのデクがオールマイトに認められて。歌歩のこと守ってて。なのに、そのくせ、なんで、なに、俺に負けてやがるんだ…!
「そこまでにしよう、2人共」
沈黙の中、俺達以外の声が響いた。
「悪いが聞かせてもらったよ」
俺達の視界に、そう言いながら近づいて来ているオールマイトの姿が入って来た。
「気付いてやれなくて、ごめん」
…今更謝罪なんてされたところでどうしろっていうんだよ。
なんでデクだったんだ、ヘドロの時からだろ…と聞くと、デクのことを非力で誰よりもヒーローだったと評し、俺のことは元から強い男だと思ったからと、既に土俵に立つ俺ではなくてデクを土俵に立たせるべきだと判断したと語った。
「俺だって弱ェよ…。アンタみてぇな強ェ奴になろうって思ってきたのに!弱ェから…!!アンタをそんな姿に!!」
そう言う俺に対し、オールマイトは「これは君のせいじゃない。いずれもう限界だったんだ」というが、そう言われても納得出来る訳がない。
「爆豪少年、君は本当に、本当に強い男だ。君が強いから、君が守り抜いたからだから、無居少女は敵連合から救出されたんじゃないか」
「それはアンタや切島達が来たからなんとかなっただけで、俺はアイツのこと守れてもねぇし助けられてもねぇよ…。だからもう、昔みてぇに頼らねぇんだろ…」
口を開けば、情けない泣き言しか出て来ねェ。不甲斐ねぇ。
「そんなことないさ。君が無居少女のことを守り続けていたのは紛れもない事実じゃないか。…なんて、私が言ったところで君は納得しないだろうね。だから後は、直接本人に聞いてみるといいんじゃないかな。ね。君も、こっちへ来て話しをしないか?」
そう言ってオールマイトが振り返った先には
「歌歩…」
「歌歩ちゃん…」
物陰からそっと姿をのぞかせ、俯きながら立っている歌歩がいた。