向日葵
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「んじゃあ無居さん、先に終わったら出ててドア近くの廊下で待っててね。誰か不審な人とかいたらすぐ私呼びな」
「はい。あ、あの。すみません、ご迷惑おかけしてしまって…」
謝罪する私に「気にするなー!」と笑い飛ばしながら言うジョークさん。一次試験はA組全員突破することが出来た。後は今しがた終わった二次試験の結果でどうなるか、ということらしい。合格発表までの時間がまだありそうであったため、お手洗いへ行きたかったためその旨を伝えると、さすがに相澤先生についてきてもらうのは…ということになりジョークさんについて来てもらっていた。
◇
用を足して個室から出るとジョークさんの姿はまだなかったので言われた通りにお手洗いから出て廊下で待つことにした。
「うわぁ、カァイイハリネズミのスマホカバー」
スマホを弄りながらジョークさんを待っていると突然そんな声が上から降ってきた。驚いて顔を上げて見るとラバースーツの様なヒーロースーツに身を包んだ女の人…確か士傑高校の人が私のことを見下ろしていた。
「あ、あの…」
「こんにちは、歌歩ちゃん。お話したかったからこっそりついて来ちゃった」
そう言いながら詰め寄ってくる士傑の人に少し怖くなり後退りすると壁に背がついてしまった。
「フフ、歌歩ちゃんカァイイ…大丈夫ですよ、私と少しお話しましょう」
この人…初めて会うハズ…だけどどうしてだろう、前にもどこかで会った事がある気がするのは…。
「あ、あの…」
「ハリネズミ。好きなんだね」
「え…」
スマホカバーをじっと見つめながら言ってくる士傑の人に恐る恐る頷くとその人は嬉しそうに笑う。…やはり、何故かこの人のことを知っている気がする。私が忘れているだけでどこかで会った事がある、の…?
「カァイイですもんねぇ、ハリネズミ。なんとなくバクゴー君に似ている気がします。カァイイ…同じくらい歌歩ちゃんも」
そう言いながら伸びてきたその人の手が、私の頬を撫でた。彼女の冷たい手に、得体のしれない恐怖が襲ってくる。なんなのこの人…。早く離れたい…。
「あ、あの…そろそろ戻った方が…」
「ハリネズミ好きなのはやっぱり、パパにもらった宝物のハリネズミのヌイバがきっかけ?」
ハリネズミの、ヌイバ…
「な、なんで…知ってるの…?」
パパがくれた私の宝物のヌイバ…それを知っているのは勝己君と出久君と……ま、まさかこの人…!
「ト…!」
トガヒミコ…!そう口に出そうとした瞬間、すぐ様口を塞がれた。
「わぁ、気づいてくれたんですねぇ、嬉しいなぁ…。だけど今はその名前で呼ばないでね」
そう言いながらニタァッと笑う士傑の人…に変身しているらしいトガヒミコから目を離すことが出来ない。
「弔君たらズルいんですよぉ。私も歌歩ちゃんに会いに行きたいって言ったのに、お前は留守番だって言って連れて行ってくれなかったんです」
頬を膨らませて拗ねたように言うトガヒミコの姿に、大声で助けを呼び出したいが無理だ。
「だから今日お会いできてとーっても嬉しいです。歌歩ちゃんにも会えて、しかも出久君にも会えるなんて幸せ。欲を言えば出久君とはもっとお話したかったけども。…あっ歌歩ちゃんごめんね、口塞いでたらお話できないね。…大声、上げたりしないでね?」
そう言ってじっと見つめてくるトガヒミコに震えながら頷くとにっこりと笑い彼女の手が口から離れた。
「…私に、何の用ですか?」
震えそうになる声を必死に抑えながら尋ねると、「別に用があったとかじゃないですよ。出久君に会いたかったからこの子に変身して紛れ込んでたんです。そしたら出久君だけじゃなくて歌歩ちゃんも来ていてびっくりしちゃいました」そう笑いながら言うトガヒミコは本当に嬉しそうで。なんだか普通の女の子みたいだ。連続失血死事件の犯人だなんて嘘みたい。だけれどもそれは紛れもない事実で。刺されたあの時の恐怖が蘇ってきた。
…待って。確かこの人、相手に変身するためにその人から血を採ってその血を飲む…んじゃなかった…?今目の前にいるトガヒミコは士傑高校の人の姿。ということは本物のこの人はトガヒミコに血を採られたってことじゃ…!それってすごくまずい状況なんじゃ…!
「ほ、本物の…貴女が今変身してる人は…」
無事なの…?そう聞きたいけれども、怖くてその先を聞けずにいる私の疑問を察したらしく
「あぁ、本物のこの子ですか?大丈夫ですよ、無事です。少し眠っているだけですよ。あともう少ししたら目を覚ますと思います」
そう答えられて、少し安心した。
「そんなに怖がっているのに、他の人の心配するなんて歌歩ちゃんは優しいねぇ。優しくていつもいつもカァイイ…血ィ出てた時はもーっとカァイかったよぉ…」
ぞわっと、背筋が凍りついた。あの時の恐怖が再び襲ってくる。カタカタと震えている私のことをトガヒミコは恍惚の表情を浮かべて見ている。怖い…以外の感情が出てこない。また刺される…!そう思った時だった。
「でも今日はチウチウしている場合じゃないので残念です。そろそろ帰らないと怒られてしまいます。もっとゆっくり沢山お話したかったなぁ…。また今度会おうね、バイバイ歌歩ちゃん!」
そう言って去って行った。驚きと安心と、沢山の感情が入り混じって、その場にへたり込んでしまった。力が抜けて、立てそうにない。まだ震えている。こんなことしている場合じゃない。早く、誰かに伝えないと。トガヒミコが女生徒に変身してこの場に紛れ込んでいた、ということを早く誰かに伝えないとと頭ではわかっているのに、膝に力が入らない。
「無居さん?どうした?」
トイレを済まして出て来たらしいジョークさんがへたり込んで震えている私の様子を見て、ただ事ではないと察してくれたらしく慌てて駆け寄ってきてくれた。息を整え、まだドキドキと音をたてている心臓を抑えながらジョークさんにトガヒミコのことを伝えた。
私の話を聞くとジョークさんがすぐに運営の人と相澤先生を呼んでくれた。だがすでにトガヒミコは逃走してしまった様だった。
「すみません、私が鉢合わせた時に声を上げていたら…」
「いや、寧ろよく声を上げずに冷静に対応してくれたな。お前が落ち着いていたお陰で大騒ぎにならずに済んだ。ありがとう。…そして済まなかった。俺がついて行くべきだった…」
「いや、イレイザーが悪いんじゃない。私の判断ミスだ。廊下で1人で待たせるなんてするべきじゃなかった…。ごめんね、無居さん…」
そう言いながら相澤先生とジョークさんが深々と頭を下げてきた。そんな2人に慌てて大丈夫だと伝えると、何かされなかったかや、危害を加えられたりしなかったかなど、色々と聞かれた。
何もなかったことを伝えると、2人共少し安堵した様だった。
相澤先生が雄英に、ジョークさんが警察に連絡した。
まだトガヒミコや敵連合の誰かが近くにいる可能性がないとは言い切れないということになり、私は警察と手の空いていたヒーローに送ってもらいみんなよりも一足先に雄英へ帰ることになった。そのため私は、みんなの試験の結果を最後まで見届けることが出来なかった。
「はい。あ、あの。すみません、ご迷惑おかけしてしまって…」
謝罪する私に「気にするなー!」と笑い飛ばしながら言うジョークさん。一次試験はA組全員突破することが出来た。後は今しがた終わった二次試験の結果でどうなるか、ということらしい。合格発表までの時間がまだありそうであったため、お手洗いへ行きたかったためその旨を伝えると、さすがに相澤先生についてきてもらうのは…ということになりジョークさんについて来てもらっていた。
◇
用を足して個室から出るとジョークさんの姿はまだなかったので言われた通りにお手洗いから出て廊下で待つことにした。
「うわぁ、カァイイハリネズミのスマホカバー」
スマホを弄りながらジョークさんを待っていると突然そんな声が上から降ってきた。驚いて顔を上げて見るとラバースーツの様なヒーロースーツに身を包んだ女の人…確か士傑高校の人が私のことを見下ろしていた。
「あ、あの…」
「こんにちは、歌歩ちゃん。お話したかったからこっそりついて来ちゃった」
そう言いながら詰め寄ってくる士傑の人に少し怖くなり後退りすると壁に背がついてしまった。
「フフ、歌歩ちゃんカァイイ…大丈夫ですよ、私と少しお話しましょう」
この人…初めて会うハズ…だけどどうしてだろう、前にもどこかで会った事がある気がするのは…。
「あ、あの…」
「ハリネズミ。好きなんだね」
「え…」
スマホカバーをじっと見つめながら言ってくる士傑の人に恐る恐る頷くとその人は嬉しそうに笑う。…やはり、何故かこの人のことを知っている気がする。私が忘れているだけでどこかで会った事がある、の…?
「カァイイですもんねぇ、ハリネズミ。なんとなくバクゴー君に似ている気がします。カァイイ…同じくらい歌歩ちゃんも」
そう言いながら伸びてきたその人の手が、私の頬を撫でた。彼女の冷たい手に、得体のしれない恐怖が襲ってくる。なんなのこの人…。早く離れたい…。
「あ、あの…そろそろ戻った方が…」
「ハリネズミ好きなのはやっぱり、パパにもらった宝物のハリネズミのヌイバがきっかけ?」
ハリネズミの、ヌイバ…
「な、なんで…知ってるの…?」
パパがくれた私の宝物のヌイバ…それを知っているのは勝己君と出久君と……ま、まさかこの人…!
「ト…!」
トガヒミコ…!そう口に出そうとした瞬間、すぐ様口を塞がれた。
「わぁ、気づいてくれたんですねぇ、嬉しいなぁ…。だけど今はその名前で呼ばないでね」
そう言いながらニタァッと笑う士傑の人…に変身しているらしいトガヒミコから目を離すことが出来ない。
「弔君たらズルいんですよぉ。私も歌歩ちゃんに会いに行きたいって言ったのに、お前は留守番だって言って連れて行ってくれなかったんです」
頬を膨らませて拗ねたように言うトガヒミコの姿に、大声で助けを呼び出したいが無理だ。
「だから今日お会いできてとーっても嬉しいです。歌歩ちゃんにも会えて、しかも出久君にも会えるなんて幸せ。欲を言えば出久君とはもっとお話したかったけども。…あっ歌歩ちゃんごめんね、口塞いでたらお話できないね。…大声、上げたりしないでね?」
そう言ってじっと見つめてくるトガヒミコに震えながら頷くとにっこりと笑い彼女の手が口から離れた。
「…私に、何の用ですか?」
震えそうになる声を必死に抑えながら尋ねると、「別に用があったとかじゃないですよ。出久君に会いたかったからこの子に変身して紛れ込んでたんです。そしたら出久君だけじゃなくて歌歩ちゃんも来ていてびっくりしちゃいました」そう笑いながら言うトガヒミコは本当に嬉しそうで。なんだか普通の女の子みたいだ。連続失血死事件の犯人だなんて嘘みたい。だけれどもそれは紛れもない事実で。刺されたあの時の恐怖が蘇ってきた。
…待って。確かこの人、相手に変身するためにその人から血を採ってその血を飲む…んじゃなかった…?今目の前にいるトガヒミコは士傑高校の人の姿。ということは本物のこの人はトガヒミコに血を採られたってことじゃ…!それってすごくまずい状況なんじゃ…!
「ほ、本物の…貴女が今変身してる人は…」
無事なの…?そう聞きたいけれども、怖くてその先を聞けずにいる私の疑問を察したらしく
「あぁ、本物のこの子ですか?大丈夫ですよ、無事です。少し眠っているだけですよ。あともう少ししたら目を覚ますと思います」
そう答えられて、少し安心した。
「そんなに怖がっているのに、他の人の心配するなんて歌歩ちゃんは優しいねぇ。優しくていつもいつもカァイイ…血ィ出てた時はもーっとカァイかったよぉ…」
ぞわっと、背筋が凍りついた。あの時の恐怖が再び襲ってくる。カタカタと震えている私のことをトガヒミコは恍惚の表情を浮かべて見ている。怖い…以外の感情が出てこない。また刺される…!そう思った時だった。
「でも今日はチウチウしている場合じゃないので残念です。そろそろ帰らないと怒られてしまいます。もっとゆっくり沢山お話したかったなぁ…。また今度会おうね、バイバイ歌歩ちゃん!」
そう言って去って行った。驚きと安心と、沢山の感情が入り混じって、その場にへたり込んでしまった。力が抜けて、立てそうにない。まだ震えている。こんなことしている場合じゃない。早く、誰かに伝えないと。トガヒミコが女生徒に変身してこの場に紛れ込んでいた、ということを早く誰かに伝えないとと頭ではわかっているのに、膝に力が入らない。
「無居さん?どうした?」
トイレを済まして出て来たらしいジョークさんがへたり込んで震えている私の様子を見て、ただ事ではないと察してくれたらしく慌てて駆け寄ってきてくれた。息を整え、まだドキドキと音をたてている心臓を抑えながらジョークさんにトガヒミコのことを伝えた。
私の話を聞くとジョークさんがすぐに運営の人と相澤先生を呼んでくれた。だがすでにトガヒミコは逃走してしまった様だった。
「すみません、私が鉢合わせた時に声を上げていたら…」
「いや、寧ろよく声を上げずに冷静に対応してくれたな。お前が落ち着いていたお陰で大騒ぎにならずに済んだ。ありがとう。…そして済まなかった。俺がついて行くべきだった…」
「いや、イレイザーが悪いんじゃない。私の判断ミスだ。廊下で1人で待たせるなんてするべきじゃなかった…。ごめんね、無居さん…」
そう言いながら相澤先生とジョークさんが深々と頭を下げてきた。そんな2人に慌てて大丈夫だと伝えると、何かされなかったかや、危害を加えられたりしなかったかなど、色々と聞かれた。
何もなかったことを伝えると、2人共少し安堵した様だった。
相澤先生が雄英に、ジョークさんが警察に連絡した。
まだトガヒミコや敵連合の誰かが近くにいる可能性がないとは言い切れないということになり、私は警察と手の空いていたヒーローに送ってもらいみんなよりも一足先に雄英へ帰ることになった。そのため私は、みんなの試験の結果を最後まで見届けることが出来なかった。