向日葵
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歌歩の母親は、いつもニコニコと笑っていて、自分の娘である歌歩のことはもちろん他人である俺やデクのことも見守ってくれているような人だった。美人で料理上手で優しくて、世間一般的によく言われるような理想的な母親だったと思う。
『勝己君、いつもありがとう。歌歩ったら勝己君に甘えてばっかりで本当、ダメな子ね。迷惑ばっかりかけちゃってごめんね』
泣く歌歩をおぶって家まで送るたびそう言いながら柔らかく笑う顔と、優しく頭を撫でてきた手の感触を、未だに覚えてる。
そんな記憶の中に残っているおばさんと、今この男が語るおばさんが全く結びつかない。
「歌歩、おい、言い返せよ…!」
お前の母親は、そんな奴じゃねぇだろ?いつもいつも、おじさんやお前のことを大切に思っているような人だろ?コイツが言ってることは全部嘘だろ?早く言い返せよ。なんで黙り込んでるんだよ…?
「君のお母さん、随分外面が良かったんだね。家ではあんなにヒステリックに喚いて、君のことを責め立て、叩いたり突き飛ばしたり髪を引っ張ったりしていたのに、そんな君の母親のことを優しい人だというなんてね」
男の話すおばさんと、俺の知っているおばさんは本当に同一人物なのか…?よく知っているつもりでも所詮は他人。見えていなかった部分があるのは当然だ。だが、こんなにも違うものなのか…?歌歩は相変わらず、男の話しをがたがたと震えながら聞いている。
「”歌歩さえいなければ、私もあの人もこんなに苦しまずに済んだのに…”そう僕に電話で言ってきたこともあったね」
青ざめ、震えながら聞いている歌歩を見ながら男は心底楽しそうに話し続ける。
「あぁ、そういえば昨年君のお母さん、自殺未遂をしたんだってね。幸い一命を取り留めたが未だに精神病院に入院しているんだってね」
は…?自殺…未遂…?
「歌歩、おばさん、過労で倒れて入院してるんじゃねぇのか…?」
ばあちゃんからも、歌歩からも仕事のしすぎで倒れたため入院していると聞いていた。俺にも、うちの家族にもデクやデクんとこのおばさんにもそう伝わっていたハズだ。
「あぁ、爆豪君には話していなかったのか。ごめんね、勝手に言ってしまって」
謝る気など一切なさそうな様子の男に、どうしようもない怒りが込み上げてくる。そんな男のことを歌歩は酷く怯えた様子で見つめている。元々悪かった顔色が尚更悪くなっている。
「歌歩…!」
どうしたらいいか分からず、名前を呼んでみるが俺の声は耳に届いていない様だ。
「君は本当に可哀想な子だね。無居歌歩さん。友達と一緒にいられなくなるのは嫌だと言ってしまったことをきっかけに父親はいなくなってしまい、母親とは上手くいかなくなった。そして何より、ずっと一緒にいたいと願っていた幼馴染達とはずっと一緒にいられなかった。大好きな父親が君のことを思ってした行動は、君の幸せを願ってしたことは、君を幸せにする所か逆に不幸にした。皮肉な話だね」
「やめろ!歌歩、こんな奴の話し聞くな!」
そう歌歩に言い聞かせようとしても、やはり俺の声は届かない様だ。目を見開き、カタカタと震え、息切れを起こしている。
「でも、君の不幸の始まりは君自身がきっかけだけどね」
何、言ってんだこの男は…?
「ふざけんじゃねぇ!そんな訳ねぇだろ、悪いのは…!」
「僕かい?どうしてだい?僕はただ、頼まれたことをしただけだ。個性を与えてくれと言われたからその通りに与えただけ。それが不幸の始まりだとしても、元はと言えばこの子が父親に”無個性は嫌だ”そう言ったからだろう?」
その言葉を聞くと、歌歩は膝から崩れ落ちてしまった。そして
「私の、せい…全部、ぜんぶ…!」
震える声で、虚ろな目で、呟いている。
お前のせいじゃねぇよ、お前は何も悪くねぇよ!いくらそう言っても、コイツには届かない。
俺は、またコイツを助けてやれないのか…?
父親に会わせてやるなんて出来もしねぇこと無責任に約束しちまって、案の定会わせてやれなくて、そのせいで作り笑いさせるようにしちまって。無理させるようにしちまって。
誘拐されて、ヒデェ目に遭わされてるっつー時に呑気に合宿なんかして。助けてやれたかもしれねぇのに、なんも出来ねーで。ヒーロー達が来るまで何もできねーで。
終いには、今目の前で深く傷ついてるってのに、なんにもしてやれねぇで。言葉すらかけてやれねぇのかよ…?
『勝己君はいつも歌歩のこと守ってくれて助けてくれるから歌歩のヒーローだね!』
ガキの頃、口癖のように…毎日のように言われてた言葉を思い出す。何がヒーローだ!助けてやれなくて、守ってやることも出来なくて…。
こんなザマで、何が俺を頼れだよ。情けねェ…。
「…やはり、来ているな」
男がそう呟いた次の瞬間、
「全てを返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」
凄まじい爆風とともに、平和の象徴・オールマイトが現れた。
『勝己君、いつもありがとう。歌歩ったら勝己君に甘えてばっかりで本当、ダメな子ね。迷惑ばっかりかけちゃってごめんね』
泣く歌歩をおぶって家まで送るたびそう言いながら柔らかく笑う顔と、優しく頭を撫でてきた手の感触を、未だに覚えてる。
そんな記憶の中に残っているおばさんと、今この男が語るおばさんが全く結びつかない。
「歌歩、おい、言い返せよ…!」
お前の母親は、そんな奴じゃねぇだろ?いつもいつも、おじさんやお前のことを大切に思っているような人だろ?コイツが言ってることは全部嘘だろ?早く言い返せよ。なんで黙り込んでるんだよ…?
「君のお母さん、随分外面が良かったんだね。家ではあんなにヒステリックに喚いて、君のことを責め立て、叩いたり突き飛ばしたり髪を引っ張ったりしていたのに、そんな君の母親のことを優しい人だというなんてね」
男の話すおばさんと、俺の知っているおばさんは本当に同一人物なのか…?よく知っているつもりでも所詮は他人。見えていなかった部分があるのは当然だ。だが、こんなにも違うものなのか…?歌歩は相変わらず、男の話しをがたがたと震えながら聞いている。
「”歌歩さえいなければ、私もあの人もこんなに苦しまずに済んだのに…”そう僕に電話で言ってきたこともあったね」
青ざめ、震えながら聞いている歌歩を見ながら男は心底楽しそうに話し続ける。
「あぁ、そういえば昨年君のお母さん、自殺未遂をしたんだってね。幸い一命を取り留めたが未だに精神病院に入院しているんだってね」
は…?自殺…未遂…?
「歌歩、おばさん、過労で倒れて入院してるんじゃねぇのか…?」
ばあちゃんからも、歌歩からも仕事のしすぎで倒れたため入院していると聞いていた。俺にも、うちの家族にもデクやデクんとこのおばさんにもそう伝わっていたハズだ。
「あぁ、爆豪君には話していなかったのか。ごめんね、勝手に言ってしまって」
謝る気など一切なさそうな様子の男に、どうしようもない怒りが込み上げてくる。そんな男のことを歌歩は酷く怯えた様子で見つめている。元々悪かった顔色が尚更悪くなっている。
「歌歩…!」
どうしたらいいか分からず、名前を呼んでみるが俺の声は耳に届いていない様だ。
「君は本当に可哀想な子だね。無居歌歩さん。友達と一緒にいられなくなるのは嫌だと言ってしまったことをきっかけに父親はいなくなってしまい、母親とは上手くいかなくなった。そして何より、ずっと一緒にいたいと願っていた幼馴染達とはずっと一緒にいられなかった。大好きな父親が君のことを思ってした行動は、君の幸せを願ってしたことは、君を幸せにする所か逆に不幸にした。皮肉な話だね」
「やめろ!歌歩、こんな奴の話し聞くな!」
そう歌歩に言い聞かせようとしても、やはり俺の声は届かない様だ。目を見開き、カタカタと震え、息切れを起こしている。
「でも、君の不幸の始まりは君自身がきっかけだけどね」
何、言ってんだこの男は…?
「ふざけんじゃねぇ!そんな訳ねぇだろ、悪いのは…!」
「僕かい?どうしてだい?僕はただ、頼まれたことをしただけだ。個性を与えてくれと言われたからその通りに与えただけ。それが不幸の始まりだとしても、元はと言えばこの子が父親に”無個性は嫌だ”そう言ったからだろう?」
その言葉を聞くと、歌歩は膝から崩れ落ちてしまった。そして
「私の、せい…全部、ぜんぶ…!」
震える声で、虚ろな目で、呟いている。
お前のせいじゃねぇよ、お前は何も悪くねぇよ!いくらそう言っても、コイツには届かない。
俺は、またコイツを助けてやれないのか…?
父親に会わせてやるなんて出来もしねぇこと無責任に約束しちまって、案の定会わせてやれなくて、そのせいで作り笑いさせるようにしちまって。無理させるようにしちまって。
誘拐されて、ヒデェ目に遭わされてるっつー時に呑気に合宿なんかして。助けてやれたかもしれねぇのに、なんも出来ねーで。ヒーロー達が来るまで何もできねーで。
終いには、今目の前で深く傷ついてるってのに、なんにもしてやれねぇで。言葉すらかけてやれねぇのかよ…?
『勝己君はいつも歌歩のこと守ってくれて助けてくれるから歌歩のヒーローだね!』
ガキの頃、口癖のように…毎日のように言われてた言葉を思い出す。何がヒーローだ!助けてやれなくて、守ってやることも出来なくて…。
こんなザマで、何が俺を頼れだよ。情けねェ…。
「…やはり、来ているな」
男がそう呟いた次の瞬間、
「全てを返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」
凄まじい爆風とともに、平和の象徴・オールマイトが現れた。