向日葵
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小さい頃の私はきっと、世界一の幸せ者だった。無個性ではあっても運動も勉強も出来る優しい父に、美人で料理上手な母。泣き虫で少し頼りないけれども誰よりも友達思いの出久君。…乱暴で意地悪で我儘で自分勝手だけれども不器用で素直じゃないだけで本当はすごく優しくて、いつも私のことを思ってくれて大切にしてくれて、守ってくれた大好きな大好きな勝己君…。沢山の大切な人達に囲まれて、間違いなく幸せ者だった。
『歌歩…もしも歌歩が無個性だったら、悲しい?』
その言葉を投げかけてきた時、父の声は、どんな声だっただろう。
『むこせーだったら?わかんない!』
父の膝の上に座りながら足をブラブラさせ呑気に答える私のことを、父はどんな顔で見ていただろうか。
『……無個性だったら、勝己君と出久君と一緒にいられなくなるかもしれない、って言われたら悲しい?』
勝己君と出久君と一緒に居られなくなるかもしれない…その言葉は、当時の私にとってどんな言葉よりも残酷なものだった。
『むこせーだったら、2人と一緒に居られなくなっちゃうの…?』
だってあの頃の私にとっては、2人と一緒にいることが1番の幸せだったから。
『もしかしたら、そうなっちゃうかもしれない…』
2人と一緒に居られなくなるなんて、世界の終わりなんじゃないかというくらいショックだった。
『やだやだ!勝己君と出久君と一緒に居られなくなっちゃうなんてヤダよ!2人とずっと一緒にいたい!!』
そう言って泣き喚く私のことを、父はどんな思いで見ていたのだろう。
今にして思う。私は父に、とても酷いことを言ってしまったのではないかと。
◇
「歌歩…どういう意味だよ、無個性だったら俺とデクと一緒にいられなくなっちまうかもしれないって…」
勝己君が私のことをじっと見つめながら聞いてくるけれども、何も答えられない。
「”歌歩は女の子で、2人は男の子だからただでさえ遊べないことがあるのに、個性までないとなったら2人と余計遊べなくなってしまうかもしれない。それどころか、他の子達とも一緒に遊べなくなるかもしれない、独りぼっちになってしまうかもしれない。他人から腫れもの扱いされてしまうかもしれない。そんなことになってしまったら歌歩が可哀想だ。僕みたいな思いはさせたくない。この子は僕の宝物だ。悲しませたくない。だからどうか、どうかこの子に個性を与えてあげてください。”そう言っていたよ。きっと君のお父さんは、無個性ということで沢山辛い思いをしたんだろうね」
震えが止まらない。動悸がする。
『歌歩はパパの宝物だ!世界で1番幸せになってもらわないとな』
私を抱き上げながらいつも口癖の様に言っていた父の言葉が頭の中に響き渡ってくる。
「泣かせる話だね、娘への愛の深さを感じるよ。その話に僕はとても感動してね、だから君に個性を与えたんだ」
感動した…と言っているが、絶対に嘘だ。私や父のことを嘲笑っているのが嫌というほど伝わってくる。
「あぁそうだ。君のお父さんがなぜ君の前から姿を消してしまったのか教えてあげるよ。個性を与える代わりに、僕の頼みはなんでも聞いてくれると言ってね。だから僕の協力者となってもらうことになったんだ。だから君たち家族の前からいなくなってしまったんだね」
他人事の様にいう声が耳に響く。
「そのことを君のお母さんは知っていた。だから君のことを責め続けた」
『歌歩、どうしてパパがいなくなっちゃったのか教えてあげる』
男の人の声と、母の声が重なる。
『アンタのせいでいなくなったの』
「みんなみんな、君のせいだ」
『アンタが』
「君が」
『すぐ泣くから、我儘ばっかり言うから』
「だからお父さんはいなくくなってしまったんだ、そう毎日毎日言われて、辛かったね」
気が狂いそうだ。今にも叫び声を上げたいのに、声が出ない。
「ふざけんな、おばさんがそんなこという訳ねぇだろ…!歌歩、何黙って聞いてんだよ…?なんか言い返せよ、テメェの母親は、そんなヒデェこと娘に向かっていうような奴じゃねぇだろ…?」
私の肩を力強く掴んで言う勝己君が、なんだかすごく遠くに見える。
『歌歩…もしも歌歩が無個性だったら、悲しい?』
その言葉を投げかけてきた時、父の声は、どんな声だっただろう。
『むこせーだったら?わかんない!』
父の膝の上に座りながら足をブラブラさせ呑気に答える私のことを、父はどんな顔で見ていただろうか。
『……無個性だったら、勝己君と出久君と一緒にいられなくなるかもしれない、って言われたら悲しい?』
勝己君と出久君と一緒に居られなくなるかもしれない…その言葉は、当時の私にとってどんな言葉よりも残酷なものだった。
『むこせーだったら、2人と一緒に居られなくなっちゃうの…?』
だってあの頃の私にとっては、2人と一緒にいることが1番の幸せだったから。
『もしかしたら、そうなっちゃうかもしれない…』
2人と一緒に居られなくなるなんて、世界の終わりなんじゃないかというくらいショックだった。
『やだやだ!勝己君と出久君と一緒に居られなくなっちゃうなんてヤダよ!2人とずっと一緒にいたい!!』
そう言って泣き喚く私のことを、父はどんな思いで見ていたのだろう。
今にして思う。私は父に、とても酷いことを言ってしまったのではないかと。
◇
「歌歩…どういう意味だよ、無個性だったら俺とデクと一緒にいられなくなっちまうかもしれないって…」
勝己君が私のことをじっと見つめながら聞いてくるけれども、何も答えられない。
「”歌歩は女の子で、2人は男の子だからただでさえ遊べないことがあるのに、個性までないとなったら2人と余計遊べなくなってしまうかもしれない。それどころか、他の子達とも一緒に遊べなくなるかもしれない、独りぼっちになってしまうかもしれない。他人から腫れもの扱いされてしまうかもしれない。そんなことになってしまったら歌歩が可哀想だ。僕みたいな思いはさせたくない。この子は僕の宝物だ。悲しませたくない。だからどうか、どうかこの子に個性を与えてあげてください。”そう言っていたよ。きっと君のお父さんは、無個性ということで沢山辛い思いをしたんだろうね」
震えが止まらない。動悸がする。
『歌歩はパパの宝物だ!世界で1番幸せになってもらわないとな』
私を抱き上げながらいつも口癖の様に言っていた父の言葉が頭の中に響き渡ってくる。
「泣かせる話だね、娘への愛の深さを感じるよ。その話に僕はとても感動してね、だから君に個性を与えたんだ」
感動した…と言っているが、絶対に嘘だ。私や父のことを嘲笑っているのが嫌というほど伝わってくる。
「あぁそうだ。君のお父さんがなぜ君の前から姿を消してしまったのか教えてあげるよ。個性を与える代わりに、僕の頼みはなんでも聞いてくれると言ってね。だから僕の協力者となってもらうことになったんだ。だから君たち家族の前からいなくなってしまったんだね」
他人事の様にいう声が耳に響く。
「そのことを君のお母さんは知っていた。だから君のことを責め続けた」
『歌歩、どうしてパパがいなくなっちゃったのか教えてあげる』
男の人の声と、母の声が重なる。
『アンタのせいでいなくなったの』
「みんなみんな、君のせいだ」
『アンタが』
「君が」
『すぐ泣くから、我儘ばっかり言うから』
「だからお父さんはいなくくなってしまったんだ、そう毎日毎日言われて、辛かったね」
気が狂いそうだ。今にも叫び声を上げたいのに、声が出ない。
「ふざけんな、おばさんがそんなこという訳ねぇだろ…!歌歩、何黙って聞いてんだよ…?なんか言い返せよ、テメェの母親は、そんなヒデェこと娘に向かっていうような奴じゃねぇだろ…?」
私の肩を力強く掴んで言う勝己君が、なんだかすごく遠くに見える。