向日葵
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連れて来られたこの場所が、近頃巷を騒がせている敵連合のアジトだと気がつくのには、少し時間がかかった。このバーに連れて来られてどれくらいの時間が経ったのだろう。荷物は全て奪われてしまっているため、スマホなどで日時を確認することが出来ない。せめて祖母に心配しないようにと連絡させてもらえないかと聞いてみたが、聞き耳持ってもらえなかった。その時にまだそこまで日にちは経っていないと言われたが正確な日数は教えてもらえなかった。
私に用があると言っているらしい先生という人物はまだ姿を現さない。その為なぜ自分が誘拐されたのか未だにわからない。
「このガキもう連れてきたのか?おっせーんだよ!もっと早く連れてこいよな!」
突然聞こえてきた声に驚いて顔を上げてみると、ラバースーツの様な格好に覆面をつけた男の人がいた。初めて見る人だ。
「トゥワイス、少し黙ってろ作戦に集中しろ」
私のことを指さす男の人に向かって言う死柄木弔。なんだか少しテンション高い…?この前までの気だるげな雰囲気と少しだけ違う気がする。作戦ってなんだろう…。
「あーあ、残念です。歌歩ちゃんともっとたっくさんお話してたいです。お仕事だから仕方ないですけど…。帰って来たら恋バナいっぱいしようね!」
女の子━━トガヒミコが私に抱き着きながら言う。ただでさえ拘束されていて苦しいのに、抱きしめられたりなんてしたら更に苦しい。
そもそも沢山の話しなんて私はしたくない。無事に家に帰らせてほしい。先生という人が私の所へ来たとして、無事に帰らせてもらえるのだろうか。死柄木の言っていた『少なくとも用が終わるまでは殺さない』という言葉…じゃあ用が終わったら?終わったら私は殺されてしまうの?それともこのまま一生捕まったまま?どっちにしても怖い事には変わりない。恐怖で真っ黒に塗り潰されてしまいそうだ。
こんな時、勝己君がいてくれたらどうにかしてくれるんじゃないかとか、助けてくれるんじゃないかとかそんなことばかり考えてしまう。普段は怖いとか苦手とか、そんなことばかり言っているくせしてこんな時ばかり頼ってしまうなんて調子のいい奴だなと自分でも思う。…そんなだから、怒らせてしまうのかな。勝己君はきっと、私のそういうところが気に入らないのだろう。甘えないって決めたくせして、結局私はいつも勝己君に縋ってしまう。最低だ。そんなだから、そんなだから…!
「あ、でも帰って来た時は歌歩ちゃん私よりも爆豪君の相手ばかりしそうですね。爆豪君の相手だけじゃなくてトガの相手もして欲しいです」
勝己君…?
「どうして勝己君が出てくるんですか…?」
かすれる声を精一杯絞り出して尋ねるとトガヒミコは楽しそうに
「スカウトするのです!私達の仲間にならないかって。そのためにここへ連れて来るのです」
と答えた。
「勝己君をスカウト…?何、言ってるんですか…?」
そういう私に対して死柄木が答える。
「爆豪勝己はヒーロー側にいるべき人間じゃない。彼はヴィラン側にいるべき人間だ。ギッチギチなルールに縛られた堅苦しい社会はアイツには似合わない。だから相応しい道へ導いてやるんだ。……あぁ、爆豪クンを仲間に引き入れられたらその時はお前も敵連合に入れてやろうか。雄英の生徒が2人も入ってくれりゃ、俺らにとっても好都合だ」
どうする?とニタァ…と笑い顔を近づけてくる死柄木が、不快で堪らない。
「勝己君は、絶対にヴィランになんてなりません」
気がつくと私は口を開いて声に出していた。本当に自分の口から出たのかと疑いたくなるくらい、はっきりとした声だった。場の空気が一瞬にして重くなったのを感じる。だけどもう、口を動かすのを止めることは出来ない。
「勝己君は、己に勝つって書いて勝己って名前です。その名前の通り、自分に勝つことが出来る強い人です。だから貴方達がどんなことを言っても、どんな手を使っても、貴方達の仲間になんてなりません。勝己君のこと何も知らないくせに、上辺だけしか見てないくせに、勝手に決めつけて知ったような口利かないで下さい」
粗暴で我儘で、口が悪くて自分勝手でみみっちくて……負けず嫌いで自分にも人にも厳しくて、誰よりも努力家で、いつも立ち止まらずに前に進んでて、強くて、面倒見がよくて、ぶっきらぼうで素直じゃないけど優しい…爆豪勝己という人間は、そんな人だ。そんなことも知らない人達に、上辺だけしか見ようとしない人達に勝己君のことを語られたくない。
「勝己君は、誰が相手でも最後には絶対に勝つ、オールマイトをも超えるヒーローになる人です。だから絶対、ヴィランになんてならない…!」
辺り一面から、刺すような視線を感じる。死柄木が、私のことを無表情で見つめている。狂気に満ちた目玉と視線がぶつかる。怖い。その視線だけで殺されてしまいそうだ。だけど絶対目は逸らさない。逸らしてたまるか。
じとりと、重苦しい沈黙が続く。冷や汗が止まらない。気持ち悪い。
「あぁー…やっぱお前も、雄英通ってるってだけあるな」
死柄木が突然ぼりぼりと首を掻き毟りながら口を開いた。そして
「吐き気がしそうなくらい鬱陶しい」
ぐしゃり。と私の頭を鷲掴みにした。
「お前はその中でも特に鬱陶しい。弱いくせに、1人じゃなんもできやしないくせに、随分な口利いてくれるな、ガキ」
みしみしっと音がしそうなくらい力いっぱい私の頭を掴んでいる。4本の指で掴まれているとは思えないくらい強い力だ。痛みに顔が歪む。
「先生がお前に用があるって言ってなかったら殺してやるのに…。胸糞悪いガキだな、お前」
そう言いながら椅子ごとひっくり返された。痛みに苦しみ悶える私のことを、死柄木は底冷えする様な冷たい目で見下ろしている。そして徐に拘束を外し、
「…トガ。お前この前言ってたな、コイツと遊びたいって。沢山遊んでやれ、勿論死なない程度にな」
そう言いながら私をトガヒミコの目の前に転がした。それを聞いた彼女はとても嬉しそうに
「ほんとですか?!弔君ありがとう!」
と言い、私を床に押えつけながらナイフを取り出した。
「歌歩ちゃん色白ですからね…。きっと赤がとーっても似合いますよ。それに今ちょうど着ているお洋服も真っ白だからすごく映えてきっと素敵です」
抵抗しようと暴れてみるが、相手は女の子とは思えないくらい強い力で抵抗になんてまるでならない。
「そんなに怖がらないで大丈夫ですよ、チウチウするだけなのです」
そう言いながら腕を思い切り刺された。
「ッ…!ッ…」
悲鳴を上げそうになったが何とか堪えた。力いっぱい目を瞑り、唇を噛み締める。絶対に、泣いたり悲鳴を上げたりなんてしない。それが私に出来る、精一杯の抵抗だからだ。
「うわぁ…やっぱり思った通り、歌歩ちゃん赤がよく似合いますね…。とっても素敵だよぉ、歌歩ちゃん……」
そっと目を開くと、恍惚としたトガヒミコの姿が目に入ってきた。その表情は今まで生きてきた人生で見た何よりも悍ましい気がする。狼狽える私のことなど気にも留めず、トガヒミコは私の腕に注射器のようなものを当てた。そして恍惚とした表情を浮かべたまま「チウチウ…チウチウ……」と呟いている。何をされているのか、理解が出来なかった。
血を吸われているんだ…そう気がついたのは、意識が遠退き出してからだった。
「…このガキ、度胸あるな、こんな状況に置かれてるっつ―のにはっきりモノ言って」
「度胸あるんじゃなくて自分の立場も考えれねぇバカなだけだろ」
「まぁ、そうだな。お友達のことを庇いたくなる気持ちはわかる。けど君はまず、自分の置かれている状況をよく考えてから発言すべきだった。そんな風に後先考えずに発言すると、早死にしてしまうかもしれないよ。それが嫌なら気を付けな、可愛いお嬢さん」
薄れ行く意識の中、そんな会話をしているのが聞こえた気がする。
私に用があると言っているらしい先生という人物はまだ姿を現さない。その為なぜ自分が誘拐されたのか未だにわからない。
「このガキもう連れてきたのか?おっせーんだよ!もっと早く連れてこいよな!」
突然聞こえてきた声に驚いて顔を上げてみると、ラバースーツの様な格好に覆面をつけた男の人がいた。初めて見る人だ。
「トゥワイス、少し黙ってろ作戦に集中しろ」
私のことを指さす男の人に向かって言う死柄木弔。なんだか少しテンション高い…?この前までの気だるげな雰囲気と少しだけ違う気がする。作戦ってなんだろう…。
「あーあ、残念です。歌歩ちゃんともっとたっくさんお話してたいです。お仕事だから仕方ないですけど…。帰って来たら恋バナいっぱいしようね!」
女の子━━トガヒミコが私に抱き着きながら言う。ただでさえ拘束されていて苦しいのに、抱きしめられたりなんてしたら更に苦しい。
そもそも沢山の話しなんて私はしたくない。無事に家に帰らせてほしい。先生という人が私の所へ来たとして、無事に帰らせてもらえるのだろうか。死柄木の言っていた『少なくとも用が終わるまでは殺さない』という言葉…じゃあ用が終わったら?終わったら私は殺されてしまうの?それともこのまま一生捕まったまま?どっちにしても怖い事には変わりない。恐怖で真っ黒に塗り潰されてしまいそうだ。
こんな時、勝己君がいてくれたらどうにかしてくれるんじゃないかとか、助けてくれるんじゃないかとかそんなことばかり考えてしまう。普段は怖いとか苦手とか、そんなことばかり言っているくせしてこんな時ばかり頼ってしまうなんて調子のいい奴だなと自分でも思う。…そんなだから、怒らせてしまうのかな。勝己君はきっと、私のそういうところが気に入らないのだろう。甘えないって決めたくせして、結局私はいつも勝己君に縋ってしまう。最低だ。そんなだから、そんなだから…!
「あ、でも帰って来た時は歌歩ちゃん私よりも爆豪君の相手ばかりしそうですね。爆豪君の相手だけじゃなくてトガの相手もして欲しいです」
勝己君…?
「どうして勝己君が出てくるんですか…?」
かすれる声を精一杯絞り出して尋ねるとトガヒミコは楽しそうに
「スカウトするのです!私達の仲間にならないかって。そのためにここへ連れて来るのです」
と答えた。
「勝己君をスカウト…?何、言ってるんですか…?」
そういう私に対して死柄木が答える。
「爆豪勝己はヒーロー側にいるべき人間じゃない。彼はヴィラン側にいるべき人間だ。ギッチギチなルールに縛られた堅苦しい社会はアイツには似合わない。だから相応しい道へ導いてやるんだ。……あぁ、爆豪クンを仲間に引き入れられたらその時はお前も敵連合に入れてやろうか。雄英の生徒が2人も入ってくれりゃ、俺らにとっても好都合だ」
どうする?とニタァ…と笑い顔を近づけてくる死柄木が、不快で堪らない。
「勝己君は、絶対にヴィランになんてなりません」
気がつくと私は口を開いて声に出していた。本当に自分の口から出たのかと疑いたくなるくらい、はっきりとした声だった。場の空気が一瞬にして重くなったのを感じる。だけどもう、口を動かすのを止めることは出来ない。
「勝己君は、己に勝つって書いて勝己って名前です。その名前の通り、自分に勝つことが出来る強い人です。だから貴方達がどんなことを言っても、どんな手を使っても、貴方達の仲間になんてなりません。勝己君のこと何も知らないくせに、上辺だけしか見てないくせに、勝手に決めつけて知ったような口利かないで下さい」
粗暴で我儘で、口が悪くて自分勝手でみみっちくて……負けず嫌いで自分にも人にも厳しくて、誰よりも努力家で、いつも立ち止まらずに前に進んでて、強くて、面倒見がよくて、ぶっきらぼうで素直じゃないけど優しい…爆豪勝己という人間は、そんな人だ。そんなことも知らない人達に、上辺だけしか見ようとしない人達に勝己君のことを語られたくない。
「勝己君は、誰が相手でも最後には絶対に勝つ、オールマイトをも超えるヒーローになる人です。だから絶対、ヴィランになんてならない…!」
辺り一面から、刺すような視線を感じる。死柄木が、私のことを無表情で見つめている。狂気に満ちた目玉と視線がぶつかる。怖い。その視線だけで殺されてしまいそうだ。だけど絶対目は逸らさない。逸らしてたまるか。
じとりと、重苦しい沈黙が続く。冷や汗が止まらない。気持ち悪い。
「あぁー…やっぱお前も、雄英通ってるってだけあるな」
死柄木が突然ぼりぼりと首を掻き毟りながら口を開いた。そして
「吐き気がしそうなくらい鬱陶しい」
ぐしゃり。と私の頭を鷲掴みにした。
「お前はその中でも特に鬱陶しい。弱いくせに、1人じゃなんもできやしないくせに、随分な口利いてくれるな、ガキ」
みしみしっと音がしそうなくらい力いっぱい私の頭を掴んでいる。4本の指で掴まれているとは思えないくらい強い力だ。痛みに顔が歪む。
「先生がお前に用があるって言ってなかったら殺してやるのに…。胸糞悪いガキだな、お前」
そう言いながら椅子ごとひっくり返された。痛みに苦しみ悶える私のことを、死柄木は底冷えする様な冷たい目で見下ろしている。そして徐に拘束を外し、
「…トガ。お前この前言ってたな、コイツと遊びたいって。沢山遊んでやれ、勿論死なない程度にな」
そう言いながら私をトガヒミコの目の前に転がした。それを聞いた彼女はとても嬉しそうに
「ほんとですか?!弔君ありがとう!」
と言い、私を床に押えつけながらナイフを取り出した。
「歌歩ちゃん色白ですからね…。きっと赤がとーっても似合いますよ。それに今ちょうど着ているお洋服も真っ白だからすごく映えてきっと素敵です」
抵抗しようと暴れてみるが、相手は女の子とは思えないくらい強い力で抵抗になんてまるでならない。
「そんなに怖がらないで大丈夫ですよ、チウチウするだけなのです」
そう言いながら腕を思い切り刺された。
「ッ…!ッ…」
悲鳴を上げそうになったが何とか堪えた。力いっぱい目を瞑り、唇を噛み締める。絶対に、泣いたり悲鳴を上げたりなんてしない。それが私に出来る、精一杯の抵抗だからだ。
「うわぁ…やっぱり思った通り、歌歩ちゃん赤がよく似合いますね…。とっても素敵だよぉ、歌歩ちゃん……」
そっと目を開くと、恍惚としたトガヒミコの姿が目に入ってきた。その表情は今まで生きてきた人生で見た何よりも悍ましい気がする。狼狽える私のことなど気にも留めず、トガヒミコは私の腕に注射器のようなものを当てた。そして恍惚とした表情を浮かべたまま「チウチウ…チウチウ……」と呟いている。何をされているのか、理解が出来なかった。
血を吸われているんだ…そう気がついたのは、意識が遠退き出してからだった。
「…このガキ、度胸あるな、こんな状況に置かれてるっつ―のにはっきりモノ言って」
「度胸あるんじゃなくて自分の立場も考えれねぇバカなだけだろ」
「まぁ、そうだな。お友達のことを庇いたくなる気持ちはわかる。けど君はまず、自分の置かれている状況をよく考えてから発言すべきだった。そんな風に後先考えずに発言すると、早死にしてしまうかもしれないよ。それが嫌なら気を付けな、可愛いお嬢さん」
薄れ行く意識の中、そんな会話をしているのが聞こえた気がする。